先に申しておかなければいけないことがある。
私は、決して! 断固としてロリコンではないことを、神に誓おう。
決して中等部のプール授業の時だけわざわざ見に行ってはないし、ヒナのことを誘拐したことだってない。
まぁ神に誓ってと言うのも、私のとある決断は世間的にも稀なケースだからだ。勿体ぶらず言おう。
「先生! 早く起きてください!」
私は自分の請け負った生徒、「天童アリス」を養子に取ったのだ。
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一番最初にアリスから先生の養子にしてくださいと言われた時には本当に驚いた。
キヴォトスでは私に好意を抱いてくれていたような生徒も、おそらく少なくなく……? 大勢からの呼び出しは告白か何かだろうと思っていた。
そのどれもに私は良い返事をすることはできなかったが、最後にきたアリスだけは様子が違っていた。
どこか神妙な面持ちで、三年間の成長を目の当たりにした。私はあんな顔をするアリスを見たことがなかった。
「先生」
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「あー! もう! 先生、寝ぼけてるふりをしないでください!」
「う、うぐぅ……」
朝から瞑想をする私に対してアリスは尻に火をつけてくる。それもそうだが、今日は同居してから一週間。まだ少し思い出に耽ってたっていいじゃないか。
「ほら、目を開けてください〜!」「いで、いでで」
無理矢理でも私を起こそうとするアリス。相変わらずの力だが、手加減を覚えたようである。成長成長。
ここにきた当日、私の瞼ははち切れそうになった記憶がある。恐ろしい。
「ほら、パンも今日は焦げてませんから!」
「……確かに」
瞼を開いた先に映るのは美味しそうな一枚の焼いたパンと好きなコーヒー。
香りがとても良い。朝に日差しも相まってようやく体も起きた。
「一週間でパンをちゃんと焼けるようになるなんて……」
「頑張りました!」
腰に手を当てふんすっ! とでも言わんがばかりのアリス。微笑ましい。
同居1日目は真っ黒だったもんな。すごいよ。
「それじゃあアリスはモモイ達と今日もゲームを作ってきます!」
「うん〜……行ってらっしゃい〜」
私がご飯を手に取ってテレビを見ていれば、いつの間にかエプロン姿から大人びた可愛さのある服装に着替えていた。
社会人はここまですごかったのかとまた目を開いた。
アリスは卒業後、モモイやミドリ、ユズらと共にゲーム会社を電撃設立。
部活時代から溜め込んでいたゲームを続々発売することで、ネットニュースはその会社の話題で持ちきりだ。
私も会社を設立する上でちょいと資金を渡した。知らないうちにチーフになってて笑ったよ。
ガシャン。玄関のドアが閉まった。
「さて、始めるか」
アリスが玄関を通り過ぎたあとが私の出番だ。部屋の掃除から夜ご飯の準備まで、家事掃除は任せてもらえた。
正直、これがないと私はこの家でただ置き物になってしまう。
この家の何もかもはアリスが買ったものだ。私の退職金からは一切出ていない。
「先生は十分頑張ったから、もう休んでください!」
「いや、その……存在意義が欲しいよ……」
そんな会話を初日に小一時間はしていた。お金を出してないならせめてものということだ。やはり気が休まらないのはある。ようやくアリスが折れて
「無理はしないでくださいね」
そう言って私に任せてくれた。優しさに少し目が潤んだよ。
「じゃじゃーん! 先生のアロナちゃんも頑張りますよー!」
「アロナは休んでて。充電が減る」
「せ、先生!? そんな悲しいこと言わ」ブツッ……
「言わんこっちゃない……刺しといてあげるか」
あの職を辞めて、アロナはあのタブレットに残るのかと思っていた。
まあ、言わなくてもわかるだろう。私のスマホの充電食いになった。数分で数パー持っていくなんて聞いてないよ。
どうやって移ったかは普通に知らない。キヴォトスの全情報と権限の具現化が私のスマホにいることの方が怖いぜ。
ただ、今はその権限も失ったのか。ただ喋りかけてくるだけである。本当に電池を食うだけの……とは言わないでおく。良いしゃべり相手だ。
きっとアリスも、そんな無防備になった私の護衛をしなきゃ行けないと思ってくれたのかもしれないな。
「……! 生き返りました! 先生! 寝る前にちゃんと充電を刺しといてください!」
「ごめごめ、悪かったね」
「〜! 今日だけですよ!? 次からは家電動かしませんよ!?」
「アロナはそこで見てて、別に手伝わなくても大丈夫だから」
「もう〜!!!」
こうして1人で家事掃除をしている度に思う。
別世界の先生。あの先生から託された『大人の責任』
生徒の行く末を任された私が、簡単にあの職を離れることへの葛藤。
退職届なんて紙っぺらで逃げたんじゃないかって、自問自答だ。
……もうどうすることも出来ないけどね。
「……神妙な面持ちですね? 先生」
「考え事だよ。なんも無いさ」
「私にぐらいは話してくださいよ〜」
「プラナちゃんもいるでしょ。だーめ」
「私にだけは話せないのですか」
「うわでた」
「失礼しました。プラナ、私の存在は先生にとって不要ということで自己破壊プログラムを「冗談! 冗談だから! プラナちゃんやめてぇ!」
「私とは大違いですね??」
「青封筒が嫌いなんだ。仕方ないでしょ」