先生「アリスを養子に取った」   作:ゆんゆんマル

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みなさんお気づきでしょうが、この話はもう直ぐ終わります。
元々短編1話を拡大したものでした。よければ最後までお付き合いください


再会

 何度目だろう。同窓会だ。

 薬を飲んで何とか体調の平静を保っているように見せている。ばれて……ないかな? 

 成人式から名を変え場を変え時を変え……その集まりは継続していた。

 私も一応毎回参加していた。さすがにアリスには送迎を頼んでないけど。

 

 

 ……まあ、予想はつくだろうが、年々参加者は減る。

 年月を重ねる毎に学生時代は思い出となり、感傷に浸りたくなる。

 ただ、その思い出はもう増えないのだ。

 何回も集まりを開けば、思い出話よりも身の上話の方が多く語られるに決まっている。

 

 私も減る人数に頷くしか無かった。成人式で終わりの見えない行列が出来ていたのが恋しい。

 

 しかもまあ、結婚式とか会う機会もそれなりにある頃だろうし、そもそも個別に合えばいい話。同窓会は正直コスパが悪いのかもね。

 

 

 

「……変わんない子もいるけども」

「? 急にどうしたんですか」

「いや、独り言だよ」

 

「独り言ですか。私と一緒にいれば独り言なんてつぶやく必要ありませんよ」

「うさぎは直ぐに家庭を持つそうですが、私はうさぎでは無いのでいつまでも待ちます」

 

「……どうしたもんかなあ……」

 

 

 ミヤコは毎回いるし、話を聞いても彼氏のカの字も出てこない。

 若い頃はミヤコ達は一貫して生徒としてみるようにしていた。

 けど、今じゃその意思も揺らいでる。ここまで私に一辺倒だと責任感じるよ……。

 本当はこんな後先短いじじいより、若い男をホイホイ拾って欲しい気持ちだ。

 20後半になってもミヤコは可愛らしいまんまなんだから……

 

 

 

 二次会には行かなかった。もう行ける体ではなかった。

 しつこくついてくる生徒らを引き剥がすのには苦労した。若い頃より血の気が増していた気がした。

 

 

 

 

 ──────────────

 

 

 

 

「先生が作るご飯……すごく美味しくなったよね」

「そうか、そうかもね。ありがとう」

 

 

 久しぶりにアリスと一緒にご飯を食べた。仕事かプライベートか、分からないが充実しているようで、夜ご飯も私一人が多かった。それでもアリスは冷めたご飯も食べてくれる。優しい子だ。

 こうやって食卓に言葉を受け止めてくれる人がいるだけで、心が軽い。

 

 

 

「そ、その、せん……お父さん」

「……」

「話したいことが、あるの」

 

 

 ダイニングキッチンからいつものように料理を渡し、2人で声を合わせて食べ始める。アリスの手はいつもよりも固いように見えた。

 仕事でなにかあったのか。私は不安だった。

 

 いや、そんな些細なことでは無い。私はアリスに、()()()お父さんと、言われた。私は嫌な予感がした

 

 

 

 

「……どうかした?」

「そ、その。お父さんに紹介したい……ひ、人がいるの」

 

「そっか」

 

 

 ……

 もっと気前よく返事しろ俺……! なぜ娘の門出を祝ってやれないんだ……! お前は本当にそれでも親か! 

 

 自問自答の言葉が私を凍らせる。急にそんなことを言われたからでは無い。

 お父さんと言われた瞬間からそうだ。

 

 

 

 私の悩みはいくつもあった。

 ただ、一つだけ、その一つだけ。

 脳みそから一時も離れたこともなかった。

 

 私は、アリスを養子に取ったのだ。

 養子にとる。私はお父さんなのだ。

 何ができた。アリスのために何ができた。

 私ばかりが養われて、アリスの補助がなきゃできない事ばかりで。

 俺は、お父さんだったのか? 

 お父さんとは、なんなんだ? 

 

 

 

「お、お父さん……?」

 

 

「……」

「あっ、ご! ごめん! 泣かないで先生!」

「いや、いやごめんよ。俺こそごめん。なんで泣いてるんだ俺。ごめん」

 

 

 

 

 いつからこんなに涙もろくなったのだろう。先生時代はいくら痛くとも辛くとも悲しくとも、絶対に泣かなかったのに。

 

 今まで俺は、アリスをちゃんと娘として見れてなかったのだ。今ここで思えた。父がいない私には、何が父親たるものか分からなかった。

 アリスに言わせた()()()()という言葉。

 

 もう一度だけ言って貰えたら、私は父としていることが出来ると思った。

 だがその日、その話はそこで終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────────

 

 

 

 

 

「先生、体調はいかがですか」

「はは……答える必要もないさ」

「そう言わないでください。我々共はあなたの命の輝きに価値を見出しているのです」

 

「他の奴らもか……まぁいいさ。今日の要件はなんだ?」

「特に要件などありませんよ。ただ車椅子を押して先生と話したかっただけなのです」

「お前らしくもない……目的達成以外の行動なんて柄じゃないだろ」

 

 

 青々とした芝生を横に整備された道を進む。

 黒いスーツを見に纏い、深くかぶったストローハットは黒服を常識人に仕立てている。

 そんなのに押される車椅子は、複雑だが心地よかった。久しぶりの自然の空気を感じていた。

 

 

「あの頃からそうでした。先生の内に比類ならない神秘が蓄積されていました」

「急に外からやってきた存在。あの常軌を逸したカード、タブレットに隠された謎」

「キヴォトス最高の神秘とはあなたのことでもあったのです」

「私はその行く末を見守る……責任? 義務? 嗜好? ……非論理的な何かに突き動かされているのです」

 

「相変わらず面倒臭いな」

「先生も変わりませんね」

「変わったさ」

 

 

「何年の生徒を養子として一緒に生活していた。ここにきてから人を愛するなんてことをしたこともなかった」

「だが変わったよ。請け負った生徒が成長していく様を見るのは、いつしかかけがえのないものになった」

「愛欲とか性欲とかではない、もっと純情な気持ちを今感じてるんだ」

 

「今日はお元気ですね、先生」

「会うのは数十年ぶりだろう、覚えてないさ」

 

 卒業式に校舎裏に潜んでいたのを見つけた以来だ。あの時はなんとも情けないポーズをしていたと記憶している。

 笑ってやったさ。

 

 

「さて、そろそろお開きですかね」

「……あぁ」

 

 私らは別々の方向の道へ進む。まるで何もなかったかのように、静かに、自然と。

 たった数分間の会合だった。もっと話す出来事はあった。がこれでいい。

 長ったらしく話すのも興が覚める。

 

 ドローンが私を追い越して行った。ずっと監視されていたのだろう。ここまで弱っても警備には抜かりない。

 

 タイヤを回す手を止める。別れた黒服を見る。

 そこにはもういなかった。

 

 本当に何もなかったかのように。

 

 

 

 




設定を盛り込むことを忘れていたので、一つだけ。
先生は父親がいません。
重要に見えて、そこまでです。次回かその次で終わります。
アリス視点は考えてもいますが、短く締めるのも乙ではないでしょうか
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