思ったより色々練るのに時間が掛かっております。ちょい待ち。
79こと不鎖の暴鬼ちゃんの過去編です
今明かされる衝撃の真実…!
不鎖の暴鬼/鬼武スイは鬼に憧れた。
傍若無人で。何者にも縛られず。
己を貫く鬼に憧れた。
政治が嫌いだった。
政治の駒として使われることが。
個人としてではなく武力として見られるのが。
組織が嫌いだった。
上の言う事を聞かなければならないのが。
個として持つ意思を上から押さえつけるやり方が。
舌戦が嫌いだった。
本音を隠して人を欺くことが。
必死に懇願する、弱者を相手に。口の上ではどうとでも言えるような話で、ひらりひらりといなし。『この件は無かった事に』と流す屑どもが。
嫌いなものばかりの居場所に、留まる理由は無かった。
・・・・・・
今日はとある会社に居る。
バッチリと正装を決めるなんてことはなく、普段着だ。右手には金棒。左手には先ほど握りつぶした、かつて拳銃だった何か。
目の前に立ち塞がるのは、巨大な鋼鉄の扉だ。その奥で騒ぎ立てているのは、この会社の社長。表向きは善良な会社を自称しつつも、裏ではブラックマーケットに資金を流す悪徳会社だ。悪事はそれに飽き足らず、確認出来ているだけでも数名の生徒が被害に遭っている。被害者生徒の多くは、トリニティ総合学園。
誰も彼もが会社の権力で口封じをされており、ヴァルキューレも手が出せないでいた。事実確認が出来ていても、法で裁くだけの証拠には至らないのだ。のらりくらりと追求を躱し、今に至るまで被害者を増やし続けてきた。到底、許せたものでは無い。
特殊合金の鉄板だとか、規格外の分厚さだとか。今に正実が来るだとか。
…知るか、そんなもん。
金棒を真横に振り抜けば、紙屑のように潰れる扉。
くっだらない。この扉にすら、被害者から奪った金が使われていると思うだけで虫唾が走る。
「ひぃ…やめろ!一体何で暴れるんだ!誰かの差金か⁉︎そうだろ⁉︎」
「……」
答えるかよ。お前みたいな屑野郎は。
…そんなこと、知らなくて良い。
・・・・・・
かつて、トリニティ総合学園に通う一人の少女が居た。
トリニティに居るくせに、頭には禍々しい角があった。それもそのはず。少女はゲヘナ自治区出身だった。
当然のことながら、あまり良い顔をされることは無かったが。孤立してゆく少女に対し、手を差し伸べた者がいた。現在のティーパーティーにおけるホスト、フィリウス分派のリーダー。幼き日の、桐藤ナギサだった。
最初は打算だった。古くから続くゲヘナとの確執。その排除に使えるのではないかという、打算。
けれど、月日が流れる事に。そんな風には思えなくなっていった。ナギサは絆されていたのだ。人一倍の力がありながらも、それを振りかざすのを好まぬ少女に。いつしか政治の道具としてではなく、一人の友として…親友として接していた。
そんなナギサの姿を見ていた少女もまた、確かな友情と親愛を感じていた。このままずっと一緒に居たいと思えるほどに、少女はナギサを好いていた。
時は過ぎ、桐藤ナギサは政治の場に立つこととなる。まだまだ未熟ながらも、必死に頑張るナギサの姿を側で見て。少女は心底応援していた。自分も頑張らなくちゃと、嫌がっていた自警団へも入った。
…けれど。
少女を、そしてナギサを襲うのは。
あまりに醜悪な現実だった。
・・・・・・
少女は政治を嫌った。
震えそうになる体を必死に抑え込み、さもなんでもないかのように振る舞おうとする親友の姿を見ていたから。
助けたくても、自分に出来るのは暴力だけ。その力だって、ムカつく奴らに良いように利用されるだけだから。
少女は組織を嫌った。
どんな命令だろうと、上司の言うことは絶対。
自分の信念に反する事でも、やらなければいけないから。
己の仁義に、正義に背くのが嫌だった。
少女は…
スイは舌戦を嫌った。
苦しむ親友の姿を、見ていられなかった。
本当の感情を封じ込めて、必死で堪えて。
溢れそうな涙を、貼り付けたような笑顔の仮面で隠す姿を。
政治、組織、舌戦。
あぁ、ここはなんて窮屈なんだろう。
こんな所にいても、私は自由になれはしない。
出よう。ここを。こんな所は抜け出して、暴れてしまおう。力の限り、私のやりたいように。私は私の道を行く。好きなようにしてやる。政治など、組織など知ったことか。私は、私が思うやり方で生きる。
利害なんて知るか。ナワバリ?こっちから行ってやるよ。子分?いらない。邪魔なだけだ。どうせ私の名で、また弱者を弄ぶだけだろう?
私は。私が助けたいと思った相手を助ける。
私は。私が許せないと思ったものを打ち砕く。
私は。私の親友が出来ないことをする。
立場という鎖で雁字搦めにされて、身動きの取れない親友に代わって。
あの子が引きたくても引きたくても…どうやっても引けない引き金を、代わりに引いてやる。それが私だ。
彼女がどれだけ凄腕でも。情報が足りなければ、確たる証拠がなければ。どうにもならないことがあると古巣で嫌と言うほど知っているから。
だったら私がやってやる。
言い訳?理由?そんなの簡単だろ。
私は、『暴れたくてやってる』んだ。
誰にだって文句は言わせない。暴れる場所が『たまたま』そこだっただけだ。『偶然』弱者を虐げた屑をぶちのめす結果になっただけ。
……ただ、それだけだ。
・・・・・・
「ひぃ…やめろ!一体何で暴れるんだ!誰かの差金か⁉︎そうだろ⁉︎」
何で暴れてるかなんて知らなくて良い。お前なんかに教えてやるものか。お前のせいでどれだけあの子が苦しんでいたか。訴えるに足る証拠が無くたって、聡明なあの子なら今回の件だって把握していたはずだ。お人好しのあの子が、自分の学園の生徒が傷付けられているのを知ってどう思ったか。今すぐにでも撃ってしまいたいような相手を前に、それを悟らせないように立ち回る姿を想うだけで…怒りが込み上げてくる。
あの子の怒りも悲しみも理解出来ない、屑野郎。弱者を虐げ、それを罪とも思っていない最低野郎。
「無駄ですボス!こいつは何の意味もなく、ただ暴れるだけの!『鬼』なんです!」
そうだ。それで良い。
私は気分で暴れているだけ。色々と偶然が重なって、たまたま会社が壊滅しただけ。後で会社を調べてみれば、実は悪い会社だったってだけ。
ただ、それだけだ。
私は鬼だ。ただ意味もなく、好きなように暴れる鬼。
何者にも縛られることない、鬼。どんな鎖だろうと、私を縛ることは出来やしない。そうだ。私は。
『不鎖の暴鬼』、鬼武スイだ。
・・・・・・
スイは鬼に憧れた。
傍若無人で。何者にも縛られず。
己を貫く鬼に憧れた。
ただ。
なぜ鬼か、と聞かれるならば…
「あなたの角、まるでお伽話の鬼みたいですね」
「どういうこと?鬼って悪いやつの事なんじゃ…」
「えぇと…(困りましたね…咄嗟に口をついて出てしまいました…何か良い意味として伝えなければ…!)
…そうです!鬼は傍若無人で何者にも縛られず、己を貫き通すのですよ?悪役として見られがちですが、こういった視点で見ればとても凄いのです!
ですから、その角を貶めようとしたといった意図は無く…」
「へぇ…!確かに…鬼ってすごい…!」
「…分かっていただけたならよかったです」
「…じゃあさ、私はいつか鬼になる!ほら、名前も鬼だし!それなら今より、もーっとすごくなるでしょ?」
「えぇ…?そういう事では無いのですが…ええと…!」
…こんな会話が、あったからかもしれない。
明日は鬼武スイと胃痛ちゃんです
胃痛ちゃんメインの予定!
まぁキャラ的にどうしてもスイが関わるのでそこはね…
これからの出番や掘り下げについて!改訂版!(一個前のアンケート分も含めます)
-
不鎖の暴鬼/79
-
マッドなロマン派博士/39
-
胃痛の矯正局員/86
-
新キャラ(新コテ勢)が見たい!