歩く。歩く。歩く。
あれから一体どれだけ経っただろうか。
偶然接続した掲示板のおかげで、この手紙についての事が分かって本当に良かった。途中ケタケタヘルメット団に襲われもしたけど、物凄く強い助っ人のお陰でどうにかなった。あの人がまさかあんな性格だとは思わなかったけど。世間の風評はあまり参考にならないなぁ…と考えつつ、真上を見上げた。
この街で最も高い塔。まるで天まで届きそうなほど高く伸びるそれは、この建物の主である連邦生徒会のキヴォトスにおける権力の強さを物語っているようだった。
「ここがサンクトゥムタワー…すごい…」
凄いとしか形容できないこの建物に気を取られていたのが良くなかったのか。それともボクが弱すぎるせいなのか。
路地裏から飛び出してきたヘルメット団に驚いた事で尻餅をついたボクは、回避することもできず正面から銃撃を浴びてしまう。あまりの痛みに叫ぶ事すらできないまま、いとも簡単に気絶させられた挙句。なんとも情けないことにそのまま袋に詰め込まれて拉致させることになったのだ。まる。
「いったた…あれ?ここは?」
目を開けると、そこはベッドだった。もしかしてまた誰かに助けてもらったのかな。一瞬体に響く痛みに顔を顰めながらもムクリと身体を起こす。辺りを見回してみるが、嫌な予感しかしない。
一面コンクリートの壁や天井を見た限り、病院って雰囲気ではなさそうだ。所々ヒビが入っていたり、落書きがしてある。清楚で清潔な真っ白い病院のイメージとはその真逆。どちらかと言うと悪い人のアジトとかそういう感じだ。あれ?って事はボク、まだ助かってない?
「よう、起きたか嬢ちゃん?」
急に真横から声をかけられたせいで変な声が出てしまった。声の主はボクと同じくらいの女の子。でも凄くドスの聴いた声だ。恐る恐る横を向いてみると、そこにはヘルメットがあった。あっはいもう結構です。ヘルメット団ですね分かりますぅ…!
「うぇっ⁉︎はい!えーっと…あなたは?」
っと落ち着けボク。どう見てもヘルメットを被っているものの、一縷の望みを託して質問する。ほら、もしかしたら違うかもしれないし。単に室内でもヘルメットを被ってるだけの物好きな人とか…そういう可能性が…!
「アタシか?アタシはここゲラゲラヘルメット団のボスだ!」
「ヒェッ!」
やっぱりダメじゃん‼︎しかも前のとは別のヘルメット団!逆恨みでやられたとかそういうのじゃないの⁉︎もうダメだぁ…ボクはこのまま酷い事されるんだぁ…!思わず涙が込み上げてくる。せっかく原作が始まろうとしてるのに。あのシャーレに所属出来て、先生と会えるかもしれないのに。こんなところでボコボコにされた挙句、下手をすればブラックマーケットで…!
「ヒック…うっ…ぐすっ…うう…」
「おいおい泣くなよ…そうだ飯でも食わないか?ウチの料理は旨いぞ?」
「りょう…り…?」
「おう!おいお前ら!オーダー1名、入ったぞ!」
「「「了解ですボス!」」」
「…???」
唐突すぎて思考が追いつかない。泣いているせいもあるけれど、それにしたって急だろう。ボクは単に返答しただけで食べるとまでは言ってなかったけど…まぁお腹も空いてるしお言葉に甘えようかな。
「誤解させちまったな?アタシらはもうお前に手出しする気はねぇんだよ…」
「確かに攫ったのは私達なんだけどね…」
「…???」
益々訳が分からない。他のヘルメット団との抗争の結果助けてもらったとかでもなく、最初からボクを攫う目的だったのにこれ以上手出ししない?頭の中に疑問符しか湧いてこない。
「完成しましたよボス!」
「うっひょー!美味そー!」
「運びますよボス!」
「おっ出来たか!さぁ食え!食いながら話してやるから!」
でもなんか向こうはノリノリでご飯作ってくれてるし。まぁなるようになれだ。良い香りも漂っているし、毒とかも入ってないはず。多分。運ばれてきた料理は…チャーハンかな?具材はそれほど多くないけど、香ばしい香りが食欲をそそる。
「い…いただきます」
食事の前だし両手を合わせて合掌。恐る恐るスプーンに手をかけ、一息に掬って口に運ぶ。うっ。これは。
「お…おいひぃ…!」
「そうかそうか、そりゃ何よりだ!」
「はむっ!はぐっ…!」
「おいおい…そんなにかきこんだら喉に…」
「…⁉︎…!…!」
「って詰まってるじゃねぇか!しっかりしろおい!」
・・・・・・
気絶しそうになるのを背中を叩いて助けてもらった事でなんとかなった。あーびっくりした。
いや喉に詰まった事じゃなく、このチャーハンの美味しさにだ。素朴ながらもしっかりとした旨味、ちょっと濃いめの味付けが食べるたびに更なる食欲を呼び込む。思わず手が止まらなくなったのも仕方ないだろう。しかもやけにお腹が空いていたし。
「そんなに焦らなくったってまだあるぜ?まぁ無理もないか!気絶してからかなり経つもんな…半日くらいか?」
「…⁉︎…!」
「おい大丈夫か⁉︎また喉に詰まらせて…!」
・・・・・・
本日2回目の喉詰まり。なんて言われたんだよ⁉︎ボク的にはせいぜい2時間…長くても4時間程度だと思ったのに。
「いやぁ…攫ったは良いが全然目を覚まさなくてな!予定だと10分ちょっと気絶してもらう程度だったんだが…悪かった!しかも撃った場所は軽く当てただけなのに青いアザになっちまったし…」
「そんな事があったんですね…」
「元々人質として攫ったんだが、こんな貧弱な奴を囮に使ったらそれこそ死んじまうと思ってな?」
「う…分かってはいますが直に言われると心に来ます…!」
「悪い悪い、とにかくもうゲラゲラヘルメット団は手出ししねぇ!一応信用できるツテのヘルメット団にも話しておいたからな、周辺の奴らにはもう狙われたりはしないはずだ!」
「色々ありがとうございます…ご飯だけじゃなくそんなとこまで!」
「いやぁ…だって元はと言えばアタシらが全部悪いしな」
「にしても全部信じるとは…」
「チョロいのに身体も弱いし心配だな…」
凄い。これなら襲われずにサンクトゥムタワーまで行けそうだ。ってあれ?なんでボクはサンクトゥムタワーに行こうとしたんだっけ。えーっと。確か何かがあったんだ。手紙…青封筒…あっ、掲示板。
「ああああー!!」
「どうした⁉︎どっか痛いのか?」
「わ…忘れてた…!早くサンクトゥムタワーに行かないと!」
「なんかあったのか?そんなに急ぐ用事…」
「ありました!めちゃくちゃ重要で急ぐやつ!」
やばい。手紙には、『サンクトゥムタワーで先生を出迎えて欲しい』とあった。掲示板の人曰く、先生は生徒会長が失踪してから1週間後に来るっていう話だった。となると…今日!
「あばばば…た…大役任されてるのに…!」
「サンクトゥムタワーか…あそこは今[災厄の狐]が占拠してるぞ?いくらなんでも…」
「…でも行かなきゃいけないんです!どうしても!」
「バカ言うな!アタシらみたいな弱小相手であれだけ気絶するんだぞ?[災厄の狐]なんて到底…」
「それでもです!行かなきゃいけない使命があるんです‼︎」
こうしちゃ居られない。痛む身体をなんとか引き摺って、ベッドから降りる。
「うぎゃあ!」
訂正。ベッドから転げ落ちる。身体が痛過ぎて上手く立てなかった。生まれたての子鹿の様にプルプルとなりながらなんとか立ち上がり、一歩ずつ進んでいこうとする。
「お前…」
「止められたって行きます!任せられた仕事は絶対…」
「あーもう分かった分かった!協力してやるから大人しくしてろ!」
「え…?」
「しょうがないだろ?怪我したのもアタシ達のせい、遅れたのもアタシ達のせい!ならせめて送り届けてやるのが悪人なりの仁義ってもんだ!」
かっこいい…!でも言われてみれば確かに悪いのは向こうか。じゃあお言葉に甘えようかな?どうせこのままだと何日経っても辿り着けないかもしれないし。
「じゃあお願いします…ってうわぁ⁉︎」
「どうだこの戦車!色々()あって手に入ったウチの虎の子だ!これで一気に駆け抜けるぞ!」
間近で見る戦車の威容に驚いていると、ポイっと戦車の中に投げ込まれる。ちょっと扱い雑じゃない?そう思ったのも束の間、初めて見る戦車の内部に興奮が隠せない。わぁ…!なんか色々あるー!
「すごい…これなら!」
「いくぞゲラゲラヘルメット団!目標はサンクトゥムタワー!GO!」
「「GO!」」
「ごー!」
色々あったけど、なんとか先生が来るまでには間に合うと良いな。そういえば何か忘れているような…あっ。脳内掲示板で生存報告するの、忘れてた…!
・・・・・・
137:名無しの転生生徒
あれっきり半日も18が音信不通…
138:名無しの転生生徒
惜しい奴を無くした…かもしれない
139:79
案外どうにかなってるかも?
まぁなんとなくの勘だけどね
キヴォトス人の生命力の恐ろしさって凄いですよね
なお18ちゃん
これからの出番や掘り下げについて!改訂版!(一個前のアンケート分も含めます)
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不鎖の暴鬼/79
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マッドなロマン派博士/39
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胃痛の矯正局員/86
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新キャラ(新コテ勢)が見たい!