憤怒の魔人の異世界英雄譚〜転生したら人類の敵だったが、俺はこの世界で生き抜く〜   作:杓子綽々

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プロローグ「選択」

 俺たちは常に選択をしている。

 

 それは何も進路や将来の様な仰々しいものではなく、朝は米にするかパンにするか、帰りは遠回りするか、あるいは近道を通ってショートカットするか。

 そんな、ほんの少しずつの選択の積み重ねにより人生は変わってゆく。

 

 学校終わりの通学路、今日は歩道橋を渡るかそれとも横断歩道にするか……うーん。

 

 「よう!ユキナリ、また悩んでんのか?」

 

 こうして俺を呼ぶこいつの名前は名郷裕也、俺は小学校から常に優柔不断ですぐに人に頼ってしまう癖があり、周りの友達もそれにほとほと困り果て周りの友達はどんどん減っていった。

 そんな中でも僕の友達を辞めることなく付いてきてくれた唯一の親友だ。裕也には何度も俺の選択をゆだねてきた。

 

 「うん、歩道橋にするかそれとも、横断歩道にするか悩んでるんだ」

 

 「まーた、変なところで悩んでやがる。それだったら横断歩道にしろよ」

 

 こうやっていつの裕也は優柔不断な僕の手を引いて、少し強引だけど導いてくれた。

 

 「ありがとう、裕也。じゃあ行こうか」

 

 俺と裕也は生まれた時からの幼馴染だ。小中と同じ学校に進み、高校では別々の学校を選んだが駅からお互いの家までのルートがほとんど同じなので、必然と時間があった時は一緒に帰宅している。

 

 2人は信号が青になると歩みをそろえて横断歩道に足を踏み入れる。

 

 すると突然、裕也の動きや周りの人達、風景の動きがスローになり、ついには完全に静止してしまった。あまりに突然の出来事に周りを見渡し周囲の状況がどうなっているのか確認しようとするも体がピクリとも動かない。

 まるで意識だけが先行しているかの様に思考をすることは可能なのだがそれ以外を全くと言っていいほど動かすことができず、助けをもと模様にも声は出せず、目玉すら動かすことができないので周囲の状況を確認することすらできない。

 そこで俺は確信した、これは時が止まっているのだと。

 

 そうして俺が必死に思案を巡らせている中、本来誰も動けるはずのない、そのため音一つない完全なる静寂の世界に1つの音が鳴る。

 カツン、カツンとまるで尖った何かが固いものに当たった時の音とカチャカチャという金属どうしが擦れ合い奏でる音。

 音の方を見ることはできないがそれでも必死に意識を研ぎ澄まし確認しようとすると、時が止まったであろう世界の中で音を鳴らし動いている人物が目の前に現れる。見た目こそヒールにドレスを着用しスカートに異様な程の武器を携えたピエロメイクの女性という一見するとおちゃらけた格好のように見えるがそこには恐ろしいほどのオーラというべきナニカがあり、動けないはずの体でも震えが止まらない。

 

 「当選、おめでとうございま〜す!♡厳正なる審査の結果、あなたが選ばれました〜♡次の"ステージ"へと進むことができま〜す!♡」

 

 そう言うと女はさも当然かのようにあの女とはまた違ったまがまがしいオーラを放つ剣や矛先にいくつもの棘のついた人苦しめるためとしか思えない槍などスカートについた様々なおぞましい武器の中からシンプルな拳銃を一丁取り出すと、銃口を俺の額にしずかに当て口端をゆがめて不気味に笑うとそのまま引き金を引いた。

 

 パァン!

 

 引き金が引かれるのと同時にあの女が忽然と消えると時の流れが元に戻る。

 そしてそれと同時に鳴り響く銃声。

 よほど高威力だったのか俺の脳のほとんどを吹き飛ばされたようで薄れゆく意識の中で銃で撃たれた反動により倒れてゆく自分の体を自覚すると痛みを感じぬほど早く意識を手放し死んでしまう。

 

 

 

 

 「ここは……」

 

 目覚めるとそこは布団に姿見、小さなテーブルの上にアタッシュケースが1つ置いてあるだけで窓がないという点を除けばまるで日本のアパートのようだがアパートというには狭すぎるワンルームだけの特にこれといった特徴のない簡素な部屋であった。

 

 ただ俺は学校からの帰りに友達と会い喋っていただけだというのに突然時が止まり、あの薄気味の悪いもう二度と会いたくないようなイカレたクレイジーサイコピエロ女が現れ、拳銃で眉間を撃ち抜かれ脳みそをブチ撒かれて死ぬという衝撃的すぎる出来事が起きしばらく脳が処理しきれずにフリーズしてしまった。

 

「ハッ!ここはどこだ?見たこともねぇ部屋だもしかしてここがあの世、いやいやいやまさか……だよな。というよりさっきの何だったんだよ、あれは夢か?でこれが現実?いやないな、そもそも俺はここまで来た記憶がない、それにさっきのは夢にして妙にリアリティーがあったし一瞬だがあの痛みは本物だ。ということはどっちも現実か」

 

 そうして自分の出した答えに絶望していると、この部屋にあるアタッシュケースが目に入る。

 

「現状この部屋にあるのはこのアタッシュケースのみか、正直こんな状態で外にも出たくねぇし、やるしかないか」

 

 そうしていざ、このケースと向き合ってみるとえも言われぬ緊張感がある。

 いったいこの中には何があるのやら、鬼が出るか蛇が出るか、ええいままよ!

 

 そうして勢いよく開けてはみたものの、しばらくたっても特に何も起きなかったので恐る恐る目を開けると、そこには腕輪が入っていた。

 

 「なんだこれ、単なる腕輪か?いや、絶対この腕輪にも何かある。今度はいったい名が起こるのやら」

 

 疑いつつも渋々腕輪をつけてみると、目の前にホログラムのような半透明の淡く光るパソコンのウィンドウの様なものが現れる。

 

 『name:カミキユキナリ

   age:16

   EXP:0/0

 status

HP◼️◼️◼️

  MP◼️◼️◼️

  ATK ◼️◼️◼️

  DFE ◼️◼️◼️

  STR ◼️◼️◼️

  AGI ◼️◼️◼️

  DEX ◼️◼️◼️

  INT ◼️◼️◼️

  HIT ◼️◼️◼️

  LUK ◼️◼️◼️

  VIT ◼️◼️◼️

  CON ◼️◼️◼️

  MGR ◼️◼️◼️

  

SKILL『◼️◼️◼️』 『◼️◼️◼️』

 

 「なんだよ、これ。ステータス?」

 

 現れたのはまるでRPGゲームの様なステータスの羅列。

 だが、おかしいところがある。

 

 「全てのステータスが隠されてる?」

 

 そう、それはHPやMP、攻撃力、スキルに至るまでなぜか全てのステータスの表記が秘匿されていることだった。

 

 「うーん、いくら考えてもわかんねぇな。さっきまでのことと関連性がなさすぎる、無理やり一つ上げるとすれば、あの女が身に着けていた武器達か。まるでゲームや創作の中に出てくるようなものばかりだと思っていたが、まさかあいつは異世界の人間?だとしたら何となく納得できる気がする。あの時の時止めも恐らく魔法と呼ばれる類のものだろうな」

 

 この訳のわからない状況でさっきまでの情報をもとに無理やり結論づけるのだとしたら、考えうる限り1番あり得るのが『異世界転生』か……」

 

 あの時俺はあの女に銃で打たれて死んだ、だが俺の姿は殺された時から変わっていない、いや、むしろ直っている。

 あの女に銃で打たれたことによって死にこの場所に転生したとも考えられるが姿が変わっていないから転移とも取れる。

 それに俺が知ってるアニメやラノベの話だと展開的に神様なんかが出てきても良い頃合いだと思うんだが、まさか転生先がこんな狭い部屋の一室なんてな。

 

 「これ以上考えても正直、埒が開かない。おそらくだがこのままこの部屋にいても何も起きない、となれば」

 

 この部屋で何かありそうな物はもうないとなった以上、おそらく部屋の扉の外には異世界が広がっていると考えた方がよさそうだな。

 

 そうして部屋の扉に手をかけドアノブをひねると外への一歩を踏み出すのだった。

 

 

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