憤怒の魔人の異世界英雄譚〜転生したら人類の敵だったが、俺はこの世界で生き抜く〜   作:杓子綽々

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1話「疑惑」

 部屋の外に出ると、最初に目に飛び込んできたのはだだっ広い一面の平野だった。

 

 「すげー広いな、どこまで続いてるんだこの平野?」

 

 広いと言ってもどこまでも続いているということはなく、目を凝らすとうっすらではあるが外壁らしき物とその奥に街らしき建物の並びが見える。

 

 「げ、あそこまで歩いていくのかよ。めんどくさいし、一旦部屋にってええ!!」

 

 振り返るとそこにあったはずの部屋が姿かたちもなくすっかり消失していた。

 

 「って、今更か。」

 

 今まで起きた事に比べるとあまりにも些細な出来事に驚きはしたものの実際のところ何も思わなかった。

 

 

 ***

 

 

 「はぁはぁ、わかっちゃいたが流石に遠くねぇか?」

 

 体力はある方だとは思ってたんだが、この距離でここまで疲れるとはな。

 歩き始めてからしばらく経ったが思った以上に距離があり体悲鳴を上げだしているらしく、足が震え、気怠ささえ覚えているのであった。

 休憩しようと視線を落とすと近くにある切り株を発見する。

 切り株に腰掛け一息つくと、どこからか何者かが俺を狙うような、じっとりとした嘗め回されるような視線を感じる。

 

 誰だ?

 

 視線の方振り返るようにして見ると、そこには小学生くらいの背丈をした汚れたイボのある緑色の肌で耳を尖らせ、鋭い目つきをした、棍棒や短剣を持った醜い化物。

 俗にゴブリンと呼ばれるモンスターが忍び足をし俺を背後から攻撃をしようとしていた。

 

 あれはゴブリン?!

 おいおいマジかよ、定番の雑魚モンスターといえど生で見ると結構筋肉がついてて取り囲まれて一斉に襲われでもしたら抵抗できずに間違いなくまた命を落とすだろうな。それにこっちは丸腰だ、どうすれば……。

 

 ゴブリンたちは自分たちの存在が気づかれたことを知ると少し驚いたような表情を見せた後、それでも余裕そうな下卑た笑みを浮かべると作戦を変えたのか先頭のゴブリンが後方のゴブリン達に姿がバレたことを伝えると、後方で待機していたゴブリン2匹が姿を現し俺を取り囲もうとこちらに向かってくる。

 

 くっ、やるしかないのか!

 

 ゴブリン達と戦う覚悟を決めるとゴブリンたちは何かに気づいたように驚き、動きを止めると何かを恐れるように俺に背中を見せ一目散に逃げ出してしまった。

 

 「ゴブリンどもが逃げ出した?」

 

 ゴブリンたちがいきなり逃げ出したことに戸惑っていると、今度は町の方からたくさんの蹄音が聞こえてくる。

 

 振り返るとそこには荘厳な雰囲気を醸し出す、金の装飾がついたずいぶん大きく立派な馬車とそれを守るように隊列をなして走る全身装甲(フルプレート)の甲冑を身にまとった騎士と思われる騎馬隊がこちらへ向かってきていたのだった。

 

  「atisamisatinnekkahamasojies」

 

 「akonuiotadiasukayagutay?」

 「agusameiminuoyonnnenuoysonuutuhominiramaahetisin」

 

「akonnneimageraganonukoyramiisagamagamonaakakb!」

 

 向かってきている騎馬隊たちは俺を剣で指しながら何かを話しているようで何を言っているかまではわからないものの、こちらに剣を向けて何か言っていることからフレンドリーな雰囲気ではないことだけはわかる。

 

 なんだ、なんでこっちに向かってきているんだ?

 ゴブリンならいなくなったはずだ、それに周りには何もないはず、ってこともしかしたら目標は俺か?

 なんで俺を目標にしているのかは知らないが何かの勘違いだろう。

 言葉は通じなくても俺に先頭の意思がないことを示せば……。

 

 「おーい!そこの……」

 

 「eranotituzakionematuremisesukabohowiketnnoiranirakihoniukusetisinikakubihijahuokionimak!」

 

《adnnasoduziararap》

 

 

 手を振り向こうに気づいてもらおうとしたその時、先頭に騎士が何かを唱えるとその騎士の手に光が集約する。すると集約した光が槍のような形を成すとこちら目掛けて飛来する。

 いきなりの出来事に驚き動けずいると飛来した槍状の光が俺の体に目中する。

 すると痛みはないものの体が痺れ金縛りにあった様に動けなり倒れてしまう。

 

 「あっ、」

 

 運悪く倒れた先に石があり、その石に頭をぶつけ、その衝撃でまた俺は意識を手放してしまった。

 

 

***

 

 

  ここは何処だ?暗くて、苦しくて、動けない……いや、さっきまでと違って指先や顔は動かせる。

 これは拘束されてる?

 おそらく何か被せられて椅子に縛り付けられている状態なんだと思うが、いかんせん何もわからない。

 

 目覚めるそこは暗闇の監獄だった。暗闇といっても完全に光がないわけではなく、目を凝らせば微かに松明の持つ温かみのある光が届き周囲を見渡すくらいのことはできるので周囲を見渡し、周りを何度も確認する。だが、間違いや幻覚などではなく依然としてそこは監獄には変わりなかった。それに状態は最悪だった。薄暗くて寒く、湿っぽい空気の中で布を被せられたことにより呼吸がし辛くい。

 

 だがそれでも布越しに感じるほんの微かな灯りに希望を見出し全身を動かそうとするも、強く縛り付けられているため力を込めてもビクともせず、頑丈すぎる拘束具に半ば諦めの様な感情を持ちつつも辛うじて動かせる部位をほんの少しだけ動かし情報を求める。

 

 「akattakanakoguagiasukayami?」

 

 するとまたしても異世界語が聞こえてくる。

 

 状況的に考えて俺が気絶したあの後、奴らは俺をここまで運び拘束したらしい。しかも看守付きでだ、どうしても俺を捕えておかなければいけない理由でもあるようだが、どうにか奴らの言葉だけでもわかれば……どうにかできるかもしれないのに。

 

 『言語翻訳機能を解放しますか?』

 

 そう願っていると脳に声が直接響く。

 

 この声はなんだ?俺の脳に直接話しかけているのか?言語翻訳機能とか言ってたよな、なら頼む、言語翻訳機能を開放してくれ。

 

『言語翻訳機能の解放の承諾を確認しました、これより言語の翻訳を開始致します』

 

 脳に直接響く声からの提案に快諾すると、今まで何を喋っているかわからないのは相変わらずだがその言葉の意味が理解できる様になった。

 

 相変わらずどーやって喋ってんのかはわからないがとりあえず何を喋ってんのかは理解できる様にはなったぞ。

 なに、どれどれ、「厄災が目覚めた」「聖女様を呼んで来い」だって?何のことを言ってるんだ?厄災?

 まさか俺のことか……。厄災か、なぜか走らないが俺はこの世界では厄災と呼ばれているらしい。急いで誤解を解かねぇとな。

 

 「これを外してくれ、誤解だ、俺はなにもしていない」

 

 「厄災が目覚めたぞ!急げ!」

 

 俺が誤解を解こうと必死に説得を試みるが俺を監視していた看守達は聞く耳を持たず、俺が目覚めたことに看守たちが焦りだし、急いで何処かへ駆けて行く音が聞こえた。

 しばらくすると、援軍を連れて戻ってくると先ほどの騒ぎが嘘のように静かになる。すると、静寂の中で野太い声が一際大きく響く。

 

 「聖女様到着いたしました!」

 

 野太い声が響き、反響する中で今度はカツンカツンという音が牢獄の中に響きわたることにより、記憶が呼び覚まされ何か嫌な予感を想像させる。

 

 「貴様が厄災ですか、表をあげなさい」

 

 ひどく冷たく、まるで突き刺すのような声で事務的にそう言われると反射的に肩が竦む。

 聖女と呼ばれる女がその一言を発すると、今まで頭に被せられていた布が脇に立っていた騎士たちの手によって乱暴に外される。

 

 目の前に立っていたのは全身を包む純白のローブと金色の十字の紋章が入った顔を隠す程の長いレースがつけられた帽子を身につけ、扇に錫杖を持った1人の女性、聖女が立っていた。

 

 「うむ、確かにこいつは司教様がおっしゃっていた厄災で間違いない。だが、厄災にしては余りにも存在が矮小。そして、あまりも唯の少年のようにしか見えん。」

 

 聖女っていうくらいだ、きっとこの人なら何か話が通じて俺の事情をわかってくれて開放してくれるかもしれない。

 

 「なぁ解放してくれないか?その、司教様が俺のことを厄災って言ってたのもきっと何かの間違いなんだよ。俺は普通の人間で通じるか分からないけど唯の高校生なんだ、別に何も悪いことなんてやらかしちゃいねぇ。な、わかってくれるだろ聖女様」

 

 「うむ、やはりこの厄災は何らか特異なの力を使っているらしい、なにを言っているのかはさっぱり分からんが、なぜかその意図は意味は理解できた」

 

 そういうと聖女は考え込むそぶりを見せる。すると何か苦虫をかみつぶしたかのような顔で尋ねる。

 

「……まさかこの場所で魔法を使っているというのか?」

 

 「ああ、それはおそらくだがこの腕輪が……」

 

 そう言いかけると聖女が扇子を持った腕をこちらに狙いを定めるように構えるとほんの少しだが手が動く。すると俺の左半身が軽くなるような感覚を覚える。それにどことない違和感を覚え左腕のほうを見ると本来そこにあるべき腕が根元から切り取られ地面に転がっていた。その事実を遅れて脳が知覚するとまるで思い出したかのように大量の血液が切られた断面から出口をほんの少し絞められ、勢いを高められたホースのように溢れ出し未だ感じたこともないようなやけどにも似た暑さのような激痛が左腕から広がるように全身に走る。

 

 「がァァァァ!!!!」

 

 激痛による頭痛と眩暈、大量の出血による視界の明滅に脳の処理が限界を発し白目を剥き嘔吐すると、それを見かねた様な表情をした聖女が手をかざす。

 

 《神への祈りは賛美の祈り。ああ、我らの尊き神よかのものに癒しと救いを与えたまえ》

 

 『ライトヒール』

 

 そう唱えると、切られていた腕の肉が逆再生のように肉が盛り上がり傷口が塞がる。

 激痛はによるショックは治ったが失った血までは戻らないようで大量出血による貧血で気だるさや頭痛は取れず、意識が朦朧とする。

 

 「次からは容赦せん。貴様は誰から何の命令を受け、ここにきた?」

 

 ここからだった、聖女の尋問が拷問に変わったのは。

 

 「そんな、の知らな……」

 

 またもや激痛が走る。

 今度は右手の親指からだった。

 

 「がァァァァ!!」

 

 「貴様は誰から何の命令を受け、ここにきた?」

 

 「だか、ら、そんなの、知ら」

 

 またもや激痛が走る。

 今度は、右手の人差し指から、中指から、薬指から、小指から、右足の親指から、人差し指から、中指から、薬指から、小指から、左足の親指から、人差し指から、中指から、薬指から、小指から、右耳から、左耳から、右目から、左目から……………………………………………………

 切り落とされるたびに回復させられ、また切り落とされるも失った部位は戻らず、全身がだるまのようになってゆく。

 

 長い拷問の果て俺は一つのことに気が付いていた。

 

 それは聖女の行う拷問には最初から意味などはないのだと。なぜなら聖女の行う拷問はとても無機質であり、ただ作業を行っているようにしか見えなかったからだ。同じ質問を繰り返し、問い答えなければ体の部位を少しずつ切り落とす、そこには情報を引き出そうという意思を全く感じられなかったからだった。

 

 俺はそれを理解した時、ドス黒い感情に飲み込まれた。

 

 「あ、あぁ、ふざ、け、るな」

 

 目の前の聖女への怒り、理不尽にこの世界に飛ばしたあの女への怒りが、憤怒が、抑えきれなくなり心を覆いつくす。

 

 『解放条件を満たしました『カースドスキル『憤怒』を解放します』

 

name:カミキユキナリ

   age:16

   EXP:0/0

HP◼️◼️◼️

  MP◼️◼️◼️

  ATK ◼️◼️◼️

  DFE ◼️◼️◼️

  STR ◼️◼️◼️

  AGI ◼️◼️◼️

  DEX ◼️◼️◼️

  INT ◼️◼️◼️

  HIT ◼️◼️◼️

  LUK ◼️◼️◼️

  VIT ◼️◼️◼️

  CON ◼️◼️◼️

  MGR ◼️◼️◼️

  

SKILL『◼️◼️◼️』 『カースドスキル『憤怒』

 

SKILL UNLOCK:カースドスキル『憤怒』

◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️

 

 「スベテヲ壊シ、憎ミ、憎悪シ、呪イ、怨ミ、憤慨シ、殺シ尽クセ」

 

 何処からか聞こえてきたその声を皮切りに体の奥底から底の見えぬ怒りが、憎悪が湧き上がり、体を支配する。

 

 「グアアアアアアアアアアア!!!!!!!」

 

 すると、時が戻るかの様に聖女によって切れた部位が元に戻ってゆき、落ちていたはずの腕輪が生えた腕に装着される。体が怒りの力により溢れ出した赤黒く不定形のオーラに包まれる。オーラに包まれた体からは鱗の様なものが出現し、体の筋肉が盛り上がると爪や牙が尖り、ツノが突出し、尾と翼が出現する。

 

 「うむ、やはり厄災だったか。皆の者、転送陣の起動準備をしておけ。そして、マジックアイテムの仕様を只今より許可する。厄災を迎撃せよ!」

 

 聖女の後方で待機開いていた騎士たちが武器を構え、臨戦態勢を取り始めるとそのうちの何人かは部屋の外へと駆け出してゆく。

 

 「ウガアアアアアアア!!!」

 

 怒りの力が体を駆け巡り全身を拘束していた拘束具をいとも容易く破壊し殴りかかるも、聖女にその拳は当たることはなく、見えざる壁に阻まれてしまう。

 

 「今度の厄災には少しばかり期待をしていたのだがな。もはや知性なき獣に成り下がるとは……つまらん」

 

 「アアア!!」

 

 それでも止まる事なく殴り続けることで壁に歪みが生じるも次の瞬間、足元が発光し、体が浮遊感に包まれると目の前の景色が石壁に囲まれた部屋から何もない荒野へと変化する。

 

 「うむ、転移陣は有効か。ならば私が時間を稼ぐ。その間、皆の者は更なる増援を要請し詠唱を開始せよ!」

 

 「ガア!!」

 

 その言葉を理解したのか、それとも本能なのか聖女の放った言葉に反応し、自身の力を爪に収束させ黒色のエネルギーを纏った斬撃を放つも聖女は自身が持つ錫杖を掲げることにより光の壁を出現させ、それを防ぐ。

 すると今度は厄際の周囲に虚空の穴を出現させると、そこから光の鎖を出現させ厄災を捕縛する。

 

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 『アークエンジェルズカーテン』

 

 荒野に響く合唱の様な詠唱に呼応するかのように空が光り輝きはじめオーロラを形成する。そしてオーロラの光が収束すると天から騎士たちに向かって降り注ぎ、鎧に集まり翼を成し、剣に集まり大槍を成す。

 

「天使隊、突撃せよ!」

 

 「「「うぉぉぉぉ!!!!」」」

 

 「ジャマ、ダ!」

 

 向かってくる天使隊たちを前に力を振り絞り鎖を破壊し天使隊の規模を確認すると、奥歯をガチリと噛み締め、極大の黒炎によるブレスを吐き出す。天使隊の前衛が盾を掲げるもその約半分程は炎に包まれ、灰となってしまった。

 

 「下がれ、下がれ!!」

 

 「ふむ、少しばかり不味いな。やはり、我々は奴を侮っていたようだな退却だ!」

 

 そうすると今度は敵側の足元が光り始め、その姿を消した。

 

 

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