しがない一転生者の徒然 作:ふなぐち又兵衛
今回、「ウチの子の本名はそんなんじゃねーぞ」な発言が、
非常に多くなっておりますが、発言者2名の訛りが酷いということで、ご了承ください。
先日から、妙な同行者がふたり増えた。
「おはようございます! 手羽先さん、しぐれさん!」
「……どもっす」
「おはようございます」
「……おはよう、ございます」
修行場異界の入場手続き窓口にて、揃いの小ぶりで華奢な
花咲くような笑顔を見せる、波打つ長い金髪の
ぺこりと頭を下げてくる、
どちらも一神教の聖職者を連想させるような、露出と装飾の少ない衣装に身を包んでおり、
右手の薬指で小さな孔雀石を孕んで淡く光る、細い銀の指輪が目を惹く。
私も主とともに愛用している、製造部所属のとある人物の手による【呪殺無効】つきのペアリングだ。
それらを手がけたのは、やけに目つきと八重歯が鋭い、
威圧的な容姿だが、口を開けば気さくな御仁であった。
……ただ、「ちゃん」付け呼びだけはやめてほしかったな、
私といい、その場に居合わせたどこぞのメスカクエンといい、
彼のシキガミだという、金色のショートヘアと瞳を持ち、作業用の衣類に身を固めた、
怜悧な容貌の女性も、明らかに呆れたような視線を向けていたと思う。
その時の主は、今と同じく、どこか困ったように微笑んでいらしたのだったか、豆柴ニキともども。
「はあ……僕らよりレベル高いんだよな、あの男子生徒と、
「犬耳の黒鉄アルトといい、指輪造ってくれた邪竜おじさんといい、
お友達の
「がんばんなきゃ、だよね……でもつらい、つかれる、いたいのこわい、しぐにおぼれてたい」
昨夜、ため息を寝言にスライドさせながら、私の胸で、主がこぼしていた愚痴である。
クロガネだのジャリューオジサンだのハッシャクサマだのとは何のことなのだろう、
それぞれどれが誰を指しているのはわかるのだが。
それにしても、私
安らぎに堕ちてゆく
と、桃色な方面に流れかけていた、しばしの回想を、勢いのあるソプラノが引き裂く。
現世に意識を戻した私の目に飛び込んで来たのは、頬を膨らませた金髪の少女だった。
「セージ! 『どもっす』はダメですよ!
こう元気よく『おはよーございまーす!』じゃないと!」
「朝っぱらからデカい声出すなっつーの、近所迷惑だぞ、エリー」
「もう! はぐらかさないでください!」
……賑やかなことだ。
きっと、私も、主そっくりの苦笑を浮かべているものだと思…いたい。
私の表情筋も、
そういえば、
ハンドルネームはそれぞれ『鳥天』と『ふぉあぐら』だったか。
前者は『鳥頭な天使』の略、後者はなんだか響きが美味しそうだから、らしい。
主のハンドルネームが『手羽先』なせいか、ほんの少しながら、彼らには親近感が湧く。
……しかしエリー嬢、キミのあだ名は本当に
私のじう。も、『時雨』の呼び替えから取った、
いいかげん安直なネーミングだが、ガチョウの脂肪肝だぞ、その言葉は。
「いーんすよ、コイツ油物ばっか食うんで」
その旨を訊ねてみた時の、鳥天ニキの答えがこうだったか。
で、そんないかにも「俺げんなりしてます」と言いたげなことを口にしておきながら、
シキガミにねだられるままに、ハムカツだのメンチカツだのロースカツだの、
唐揚げだの竜田揚げだのを、次から次へと注文して、食べさせてやっていた気がするのだが。
契約と呪詛で雁字搦めのシロモノとはいえ、五感のある実体を得られた祝いだ、
などと称していた気もするが、見ているだけで胸焼けしそうだったことしか思い出せんのだ。
それにしても、豆柴とメスカクエンの
主と関わりがある『俺たち』*3と名乗り呼び合う人種は何故だか、
【犬の躾に失敗してしまう飼い主】の典型例ばかりが揃っているように感じる*4。
なに、鏡を見ろ? ゴツい編み上げブーツを履き、腰に大小の刀を差して血の色の瞳をした、
ポニーテールの無愛想なデカ女がブー垂れているな、巫女とも女侍ともつかない身なりで。
そしてその傍らに、革製のツナギめいた衣装に身を包んで楚々として立つ、
双眸に蒼穹を納めたような、カフェオレ色の髪の少年は実に愛らしかろう、私の、私だけの主だ。
私より頭ひとつと半ばかり小さく華奢な肢体は、誰にも触れさせてなるものか、
コレは私のモノだ、髪の一筋血の一滴胤の一粒MAGの一雫魂の一欠片に至るまで、と強く思う。
ああ、少年といえば、だ。
通りすがりの、膝まで届く緑の髪と光の無い赤い瞳が印象的な、色黒の少年*5が、
何故かふぉあぐらと主に「僕のところで創った試供品です、どうぞ」と、
瑞々しい葡萄を差し出してきたのを受け取りつつ──って、コイツさっそく食いやがった、
「あっまーい! ごちそうさまでした! ありがとうございます!!」じゃないが──、
私たちは異界へと足を踏み入れた、のだったか。
……葡萄をつまむ主の幸せそうな微笑み、プライスレス。
私以外が原因で、私以外にもこんな緩み切った顔を見せたのが、いささか癪に障るが、
件の少年には、感謝してもいいか……ふむ、【バプテスマ】、というのだな、この葡萄は。
腐臭が混じる異界の風を、刃と鎚が、押し寄せる【屍鬼】どもの朽ちかけた骨肉ごと喰い破る。
或いは、実体と霊体の区別無く、紅蓮の炎が、一切の不浄を焼き祓って、灰燼に帰す。
呪詛を紡がんとした【悪霊】の群れを視認した端から消し飛ばすのは、
二重に迸る浄化の光と、唸りをあげる【白龍撃】。
『俺たち』からすれば忌々しいものなのだろうが、私と即席の相棒からすればいとおしい、
それぞれの伴侶の翼からこぼれる白い羽毛が、桜吹雪めいて幻想的に舞っていた。
さすがに、破魔の適性が高い者が3人も居ると、こういう
ダメ押しに、私の適性たる火炎も、死者を弔う方面には向いていることだし。
墓地を模した修行場異界の片隅で、目に映る動くものすべてを鏖殺した私たちは意気揚々と、
次のエリアに歩を進めた……途端、とんでもないものを目にすることになってしまったのだが。
『俺たち並びにぃい! シキガミ心得ー!!』
『穢教鳥はあ!!』
『みぃなごろし
そのような男女混成の蛮声とともに、私たちの視界に飛び込んで来たのは。
鳥天ニキと同年代とおぼしき少年たちと、あどけない容姿の小柄な巫女が、
破魔矢を銃弾を釣瓶撃ちし、紫電を岩塊を横殴りの瀑布めいて飛ばし、
或いは白銀の斬撃と、浮き出た血管とオーラに彩られた鉄拳をもって、
天を舞う有翼のヒトガタどもを、片っ端から血煙とMAGの残光に帰していく屠殺場であった。
酸鼻を極める光景を前に、私の鈍感な表情筋が、
大陸風の人馬と、桃色の髪の麗人をかたどった
おのが主人たちと阿鼻叫喚の大合奏を紡ぎ出す片手間に、
それぞれ左手の親指を立てたり、片目をつむったりして見せてきたからだ。
精が出ることだ、主人が愉しそうで何よりだ。
我らが同族になって日が浅い少女が、仔猫めいた青い目をひん剥いているのを無視できれば、だが。
押し殺された低い声が、私たちの耳朶を這い回る。
それに応えるのは、変声期とは無縁な、快いボーイソプラノであった。
「エリー、じっとしてろ、声も出すな、鼻から限界までゆっくり息吸って、
口からゆっくり吐いて、吐ききったら、吸って、吐いて、吸って、吐いて、ってしてろ」
「そういえば、今日は
「あの雷のヤツと、前衛で暴れてるふたりはよく覚えてる、外人とチビと眼鏡*7もアレだ、
『
ってお説教してきた先生*8といっしょにいた連中っすわ、目がこえーんだよ、マジで」
「沖縄の若支部長と同期の子たちに……あの巫女さん*9は、アンチメシア教最右翼の一角、だったかな」
「あの先生のお仲間、ってことっすね、おっかねえ」
「『オイ、頼むからオレの前で、アタシの見えるところで【羽根を伸ばす】な、命の保障はできねーぞ』
って言われてる気がするんだよ、あの子たちみたいな、ガチモンのアンチ天使勢見てると……。
……分かりやすく警告してくれてるだけ、マシなんだろうな」
「あー……そーゆーわけだわエリー、ここ抜けるまでは、じっとしてろ、黙ってろ、な?」
そう言い聞かせる鳥天ニキに応える、ふぉあぐらことエリー嬢のしぐさは、
どこぞのメスカクエンいうところの、赤べこなる郷土玩具と瓜二つであった。
「
何かの拍子でどこぞのメスカクエンがのたまった時は、私も、宮城支部のNoire*10も、
今のふぉあぐらと同じように、赤べこになっていたのは、余談である。
まあ、3人まとめて、それぞれの主人に尻を平手で引っ叩かれて、嬌声の三重奏をあげたわけだが*11。
話を戻そう。
「あの人たちがやっつけてた天使は、人の子にひっどいことをしたくて、地上に降りてきたんですよね?
セージを攫おうとしたり、無理やり言うことを聞かせようとしたり、
MAGやアレを好き勝手に搾り取ったりしたいから、出てきた人たちと同じなんですよね?
あのこわい先生が教えてくれたみたいに、あとで牧師さんも神裂さんもミナミィさんも*12、
うっかり生焼けのピーマン食べちゃった時みたいな顔で教えてくれたみたいに。
なら、同情なんて、する理由も必要も無いです!!」
そして「セージは私のものなのにー!!」と、顔を真っ赤にして声を荒げていたな、
帰還後、件のシーンについて、私が訊ねてみた時の、エリー嬢は。
実に理解しやすい価値観と、主に対する執着っぷりが、親しみやすくて大変よろしい。
しかし彼女は、その……
「メシア教どころか、一神教の知識全般に疎い、男性ネットユーザーがイメージするような天使みたいですね」
「つまりよー、ふぉあぐらちゃんの核になったのは、オレらみたいなヤツが妄想する、エロゲ天使なんだろ?」
「これでもっとこう、色々育ってたら、なあ……でも金髪だし、何より幼馴染系だし、鳥天ニキが羨ましいぜ」
「「それな!」」
などと、のちに某自称軍師な俺たちがつぶやいて、友人たち*13とおしゃべりしていた通りの存在だと思う。
まあ、それを賑やかに評していた3人は、聞きつけた鳥天ニキに、
「そんなに羨ましいなら『拡張』してやろうか? 俺がスケベ部のセンパイたちにされたみたいに」と、
コメカミがひくついた笑顔で脅しつけられて、謝罪の言葉を吐きながら、震え上がっていたが。
なお。
「…………ちなみに、キモチイイんですか? アッチって」
「フツーにする方がイイに決まってるだろ、
コトが済んだらカミさんが幸せそうにしてるから、やった甲斐はあったけどな」
このような質問をしてきた、ローブ姿のとんがり帽子は、勇者だと思うし、
それに律儀に回答してやった鳥天ニキは、とてもつきあいがいいと思った。
しかし、顔を真っ赤にして鳥天ニキの肩を連打するふぉあぐらはともかく、
あの3人が向けていた畏敬のまなざしはなんなんだ、主まで似たような目で彼を見ていたし。
おまけ・深夜アニメ声でするやりとりか? これが……
「
「なじょした、
「あは、くだ巻いだ
んでよ、オラ、
「ん」
「さっぎまで、三馬
恋あねちゃど、オラとオラのオッカで、カラオゲさ、行っでたんだわ」
「ハア、ハイガラだな?」
「
……オラのオッカにばっか、恋あねちゃの
んでな? 閑くんがらな、
「ハア石鹸の匂い……そらすっぺよお」
「ちげえんだ、
「
「しぐれあねちゃがらも、おんなし石鹸の匂いしだんだわ。
んにゃ、しぐれあねちゃだけでね、
宮城のおリンちゃんがらも、
ハアこら奇態だわっで、思っだんだわ」
「んー……待でよ?
飛田のあんにゃ、いっぺ?
あんにゃがらも、おんなじ匂い、しねが?」
「……しでだがもしんにな」
「たぶんしでっつぉ、なんなら、飛丸くんがらもしでだなら、
「……言わっちぇみっど、たまーにしでだな」
「んだべ?
たぶん、閑くんと、しぐれあねちゃと、おリンちゃんと、飛田あんにゃは、
おんなし
んで、次に比嘉あんにゃど飛丸くんで、その次の次に、佐倉あねちゃも、おんなし匂いしてっつぉ」
「……
「聞かっちゃら怒りつげられんなぁ……んだけんじょな、しゃああんめど?」
「なして?」
「閑くんのオッカの、
飛田のあんにゃのオッカの、
……ここまで言っだら、わかっぺ?」
「……あ、
「んだな、◯ンゴしで、匂いうづったんだべな……天使って、石鹸ででぎでたっだか」
「いぎなしやらしごど言うな! オッカさ怒りつけられっつぉ!」
「たはは、わりわり」
「……って、オラのオッカなら言うど……ん?
んだば、なじょして、翔太あんにゃど、飛丸くんが、おんなし石鹸の匂い、しでんだ?」
「あー……明日子あねちゃあ、比嘉のあんにゃどごの
「……てんすでねが」
「んだべ? 沖縄の得物も、飛丸くんのマンマも、
「……オラ、アンジェロあんにゃさ、お疲れ様っちぇ言いたぐなっちぇ来だわ。
アンジェロあんにゃ、
そんじぇーで、黒札や金札のオヤジでもオッカでもねえべしよお」
「んだな、良い機会だし、佐倉あねちゃにも、命子あねちゃにも、桃贈っぺよ、魔除げにもなっしよお」
「んだなあ……お疲れ様っちぇ言えばよ、こねだ、新潟で、
「んだなあ、
おらのオッカとおんなしで、そろそろ、
「……まあ、有斗あんにゃの本命は、命子あねちゃでも、杏子ちゃんでも、
凍矢あんにゃと実槻じっつぁでも、凍矢あんにゃのオッカと子おでもねくて、
シオリあねちゃと、カレンあねちゃだべ?」
「ぶっ、
そら、男は、そのふだりや、
落ち着いだ女には、手ぇあわしたぐなっけんじょよお、おらオッカにしが
「ほんどがー? ほんどにほんどに勃だねがー? ミナあねちゃ言ってだどー?
有斗あんにゃが、シオリあねちゃや亜湖あねちゃさ、
「勃だねっつってっぺごのー!!」
「わー! ゆーどあんにゃが
「なーマシロちゃん、ゆーちゃんとあっちゃん、何ゆーてるかわかる?
ウチも眼帯したりステゴロしたりトリコ食材発明したり歌ったりした方がええのん?」
「ハア……わたす、空飛ぶ石鹸だっだがもしんに、です」
「はあ?」
・しぐれさん(HN:じう。)
語り部しぐちゃん
嫁シキガミたちからメスカクエンブラックと呼ばれがちなのが最近の悩み
・手羽先ニキ
覚醒してからコナ◯君気分な日々を送(らざ)る(をえない合法ショタな)黒札(20)
「穢教鳥のポークビッツ!!」って罵りの言葉が、真5仕様の地獄突きばりにブチ刺さってくるのが最近の悩み
・エリーちゃん(HN:ふぉあぐら)
名前の由来はエンジェル→エンジ「エル」→「エル」→エリー
英語で綴るとEllieになる、人なつこく食い意地の張った新米嫁シキガミ
・鳥天ニキ
「ウチはルター派なんだけどこんな神父っぽいカッコしていいのかな」とたまに悩んでいる
AAを当てるなら
・孔雀石の指輪
バーナーニキ謹製の耐性アクセサリー
孔雀石(マラカイト)の石言葉は、「癒し」「魔除け」「再会」「恋の成就」ときて、
「一途な想い(危険な愛)」だったりもすると聞いたもので、
つい……(じう。の眉間のシワだの、ふぉあぐらの膨らんだ頬だのからそっと目をそらしながら)
・一般通過ゼットくん
連載完結ほんとうにお疲れ様でした
【バプテスマ】及び【喜劇】のお得意様が4名ほど増えた
・沖縄支部の皆さん及び破魔ネキと、そのシキガミの皆様
天使禍デーとうまいことタイミングがあったので、ヒャッハーしてストレス発散にきたとおぼしき人たち
みんなこんなテンションでは暴れたりしねーよ! と言われましたら、ハイ、ごめんなさい
・
「か」行と「た」行が濁りがち、「ら」行と「た」行が続く言葉が「っちぇ」「っちゃ」などに一体化しがち
何より「い」と「え」を混同しがちなので、「みんな標準語ペラペラですげーな」と思っているふぐすまケンミン
③こと①魔界と繋がってる【修業場】+ ②特定の用途のための『人工異界』の混ぜ物 、のパターンのひとつ、独自設定
ノワールさんのハンネはこちらででっち上げさせていただきました
とある二足歩行の豆柴「おらぁ
しがないデビルシフター「僕や幼女ネキには彼女たちの頭の位置は高過ぎるんだよね」
アビャゲイルさんの小ネタを目にしたら、つい……。
あと、豆柴ニキのみならず、クロアネキも出身地が同じ
オイふなぐち、ここまで訛ってるヤツぁジジババでもそうそういねえぞ、
ってえかところどころ南だか西だかの訛りもまざってねえか? と言われましたら、その、ハイ、すみません。
そして、この場をお借りして、ポポァさんの連載完結をお祝いさせていただきます。
いつも楽しく読ませていただいておりました、お疲れ様でした。
脳缶ニキたちのその後のお話もお待ちしております、頑張ってください。