しがない一転生者の徒然   作:ふなぐち又兵衛

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一人称のリハビリのつもり……だったのですが、首をひねりつつ、初投稿です。
今回、捏造設定めいた箇所があります、ご了承ください。


飯野修の探訪〜福島支部談話録?~

あれは、僕らの間に息子が生まれて、首がすわった頃のことだった。

 

その日、僕は息子の(なお)をおぶって、妻である牡丹ネキ(ミナ)とともにガイア連合福島支部を訪れて、

久しぶりに豆柴ニキ(黒井くん)クロアネキ(明日子くん)、ふたりそれぞれのご両親や黒井くんのおばあさん、

きくりネキ(廣井支部長)を筆頭に福島支部の人たちと挨拶を交わしたり。

息子を紹介したりして、歓迎とお祝いの言葉を、

特に黒井(くろい)くんのおばあさんと、黒井くんの嫁シキガミ(奥さん)であるナナコさんから受けたわけだけど。

 

それと、真人ニキと鉄球ネキ(島崎先生夫妻)の妹のようなものだと名乗った、

チェストニキ(島宮くん)嫁シキガミ(奥さん)を思い出させる、

かたやよく日焼けした肌を、かたやまばゆく豊かな金髪を持った、

すらりとした手足ながら、ふくよかな少女のシキガミたちや、

おなじく草神ネキ(鞍草さん)の娘だと名乗る、猫のようなふたつの尾を持つ少女のシキガミが。

黒井くんのおばあさんの次くらいには、熱心に息子を気にかけてくれていたのは、

嬉しくもあり、気恥ずかしくも、申し訳なくも、何よりありがたくもあり、

なんとも複雑な、それでいてあたたかくなるような気持ちだった。

それはきっと、ナナコさんと久闊を叙しつつ、彼女が黒井くんとの間にもうけた娘たちという、

ふたりの赤ちゃんの姿に顔をほころばせた、ミナも同じだったと思う。

 

衿座(えりざ)真人(まひと)の子が生まれた時のっ、予行練習ってことで、ねっ?」

「保護眼鏡ニキ、牡丹ネキ、あなたたちも、幼馴染同士で夫婦になった、って聞いて……」

 

島崎(しまざき)先生と奥さんのシキガミたちが、そう口にして笑っていたのも、やけに心に残った。

長い黒髪をポニーテールに結わえて日焼けした方のシキガミが、

人懐こさを強調するような、支部長と共通する尖った歯並びをしていたからかもしれない。

 

それはそうとして、「男の子が生まれたらやべえな、義叔母ハーレムじゃねーか……!」

などと、彼女たちから目をそらしながら小声でおののいていた明日子(あすこ)くん、自重したまえ。

そりゃあクロアネキの嫁シキガミ(マシロさん)もキミの後頭部をハリセンでひっぱたき(に龍槌閃を叩き込んだり)もするよ。

しかし、マシロさんは、そのハリセンをどこに仕舞っていたのだろう。

祝い酒と称してどこからともなく一升瓶を取り出して、

鞍草(くらくさ)さんとドラマーネキ(岩下さん)からツープラトン(ハリセンでの覇国)を食らっていた、廣井(ひろい)支部長と同じとは思うが。

 

 

 

 

話を戻そう。

シキガミの少女たちや、たまたま手すきだったという黒札や金札の人たちが、

かわるがわる僕らと言葉を交わしに来てくれているうちに、ふと気になったことがある。

 

子育ての経験者である、白いリーゼント(ポンパドール)とヒゲのご老人(ドカルトニキ)夫妻、

黒井くんと明日子くんそれぞれのご両親はわかる。

 

ご老人のお孫さんや、黒井くんの子どもたちと関わる機会が多いとおぼしき人造の彼女たちと、

2児の母となり、ただいま子育て真っ最中のナナコさんもわかる。

 

不思議と、あどけない少女にしか見えない鞍草さんと、

もと僧侶にして今は探偵だと名乗った巨漢のリンボニキ(尼子さん)が、

ことに上手に息子をあやしてくれていたように感じた。

 

(くら)…草神ネキは、ああ見えて50歳くらいになるって言ってたし、年の功、じゃないかな?

 (あま)…リンボニキも、今世の年齢は、それくらいだよね?」

 

と、ミナは言っていたけれど。

 

……僕らが福島を訪れて、良くも悪くも一番大きな声で出迎えてくれた、黒井くんのおばあさん?

まるで自分の孫か曾孫かという勢いで、僕らの息子を蕩けきった笑顔で見てから、

紫色の巻き毛で槍の穂がついた日傘を手にした耳の長いドレス姿の少女*1や、

明日子くんのお母さん、ご老人の奥方だというハタチくらいの女性に、

癖のない長く白い髪を振り乱しながら、感極まって抱きついていたなあ……。

 

ワタシの家系(オラゲ)曾孫(ひこ)()将来の伴侶(オヤジ)が来てくれた(くっちゃ)!! オヤジがハア、来てくっちゃんだあ!!」

 

と、金の瞳が納まる軽く吊り上がった目尻に、薄く涙を溜めながら。

 

「ヒノちゃあ、気ぃ()ええど、まだ(まんだ)ゆなちゃん*2も、その直っちぇ(ぼん)も、

 好きも嫌いもわがんねべ? ふだりども口きげるようになっちぇがら(はなし)すっぺ? な?」

 

のように言い聞かせて、黒井くんのおばあさんを落ち着かせてくれた、

赤い瞳と波打つ長い白髪をした奥方には、頭があがらないという確信があった。

 

「ヒノエばーちゃんといっしょに()っどハ、わだすも婆ちゃんも、黒札さん(きくりさん)(たづ)も、

 金札のひとたづも、福島支部のひとは、みーんな訛っちぇ、ちっと恥ずかしな……。

 よその黒札の人だど、わだすらのこどばは、わがんねがもしんにべし」

 

まあ、ついつい、笑っちまっけどなあ、

うちのおっ()ぁや、大使ニキ(さん)みたい(みで)なすましたひとまで、ポロッと訛りが出っから。

 

そううそぶいてから鼻を鳴らす、祖母そっくりの髪質で、

父親譲りらしい金色の髪をした少女が、軽く口の端を吊り上げていたのも印象に残っている。

その娘が、僕の方を向いて、

 

「ほごめが…んー……飯野(いいの)、さん、わたしたちのことば、わかる?」

「ああ、黒井くんのおばあさんとのつきあいも、それなりになるからね」

「そっか、ならよかった」

 

こんなやりとりを交わしたからかもしれない。

 

『シュウ、スマン。

 オマエトミナガ、息子ヲ連レテ来ルト聞イテカラ、

 ヒノエハ、ズーットコンナ感ジナンダ』

 

うん、予想はしてたよ、豆柴ニキのアガシオン(アルトくん)

どうも僕は、黒井くんのおばあさんの亡くなった旦那さんの若い頃とそっくりの容姿らしいし。

半終末の、日本の戸籍制度が健在だった頃に調べてみたら、

僕と黒井くんとは、四従兄弟(よんいとこ)などと称される、遠い親戚*3だったようだし。

だからか、黒井くんのおばあさんからは、僕と息子に対する執着を強く感じる。

 

「アルト、飯野さん、それは違うよ、

 ヒノエばーちゃんは、

 わたしたち福島支部の、黒札も金札もシキガミも仲魔もみんな、

 孫とか姪とか甥みたいなもんだ、って言ってるから。

 わたしの婆ちゃんと爺ちゃんは、姉や兄としか思えない、だって」

 

だからおなかいっぱい食べさせたい、危ない悪魔やメシア教のひとたちはやっつけたい、

って言ってたけど、ちょっとだけ、重たい、かな? その、しゅーちゃく、ってやつが。

たいせつにされてるとは、思うんだけどね。

 

年齢に似合わず疲れ気味の笑顔を見せてきた少女に対して、

きっとその時の僕も、似たような表情を返したハズだった。

 

『ダロウナ、フタリトモ、スマン。

 ヒノエハ、ナントイウカ、群レノ為ニ生キテ死ヌト決メタ、

 イヌノヨウナヤツナンダ、オレハ最近ツクヅクソウ思ウ』

「アルト、そこはせめてオオカミって言ってあげて」

『ダガナア』

 

そしてアルトくんは彼女の名を呼んで、

 

『ヒノエノ先祖ノ悪魔モ、

 ヒノエノ孫デアル、豆柴ニキ(ゴス)ガ変身デキル悪魔(地霊コボルト)モ、イヌノ姿ヲシテイルカラナア。

 ダメ押シニ、ゴスノ血液ヲ材料ニ造ラレタ、オレノ見タ目モ、イヌヲ模シタ、ハニワダ』

「それはそう」

 

彼の言葉に、今度は年齢相応の表情をした少女に、僕は何故か少し安心した。

終末の前まではありふれていたハズの笑顔が、懐かしかったからだと思う。

 

ああ、この世界(今世)から現代社会を奪った終末という奴も、

それが起きた原因を、太平洋戦争の頃から延々と舗装し続けたメシア教も、

なんで未だにのうのうと存在しているんだろうな。

 

半終末にもならない頃から妻も黒井くんも交えてつきあいがある、

ガイア連合の支部を沖縄の地に若くして立ち上げた彼らが、

黒井くんのおばあさんにも勝るとも劣らない憎悪と殺意をもって、

天使とメシアンを鏖殺せんと血にまみれたのも頷ける。

 

いや、そいつらの血にまみれたのは、僕も、妻もだったか。

 

僕もまた、沖縄の少女のような彼や、北神奈川のバイクの彼女とともに、

おぞましい欲にまみれた悪霊と遜色ない穢らわしい目をしていた連中の、

生っ白い額や欲に高鳴る心臓に狙いを定めて、引き金を引いたのだから。

 

兵庫の彼女が白い袖を翻して射た破魔矢が雲霞のような悪魔を消し飛ばし、

女神と化したあのひとの子守唄が、すべてを永遠の眠りに引きずり込んだ、

沖縄の彼らが鬨の声(うぶごえ)をあげた、異界に堕ち果てた廃校舎での夜から、ずっと。

 

ここで、僕は頭を振って、色も臭いも鉄錆じみた悪夢の回想を押し込めた。

こんな小さな子の前で、そんなモノに囚われているわけにはいかないのだから。

 

黒井くんのおばあさんは、今も現世と、その悪夢を行き来しているハズだけど。

曾孫や、息子夫婦の前で、悪夢の残滓に曳かれてしまうことはないのだろうか。

 

……いや。

 

──引っ張られない(ひっぱらんに)ようにする(すっ)為に、オレは糞鳥(あっぽどり)とシラミ坊主の首を刈ってんだわ、(しゅう)さん。

──うんにゃ、そのイカ臭え鉄錆さ、こども(わらし)小さい(ちんちぇ)手っコはハア、触らしたぐねぇべしよお。

──メシア教を鉄錆()棺桶(がんばこ)さ蹴っ込むのは、一族郎党を滅ぼされた(滅ぼさっちゃ)、オレの…権利? だど。

 

などと、彼女(ヒノエさん)は、小ぶりな鼻を鳴らすだけな気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ・いつも通り、書きたかったのはこっちなんだ

 

「な…草神ネキと、あ、リンボニキが、赤ちゃんをあやすのがうまくてびっくりしました」

「まあ、年季が違うからな。

 前世の記憶が完全に戻るまでの、私ときくりネキ(廣井)寿司侍ネキ(イライザ)の面倒を見てくれたのは、

 廣井の後見人だった草神ネキ(菜日田さん)と、

 私の実家とも懇意にしてくださってた、リンボニキ(尼子和尚)だったから」

「あら、あの頃みたいに『なひたおんばー』って呼んでもいいのよ、お志麻(しま)ちゃん?」

「シラフではそうもいきませんよ、菜日田(なひた)さん……あとお志麻はやめてください」

「懐かしいわね、

 きくりちゃんは『おきくっちぇ呼ばねでけろ、番町皿屋敷みでぇだべした!』なんていうし、

 イライザちゃんは『わだすだげ『おイラちゃん』ちぇ呼ばらんにノハ、お得かもしんにノス』

 なんていうから、ケンカになると『『『おいらぁ! ごくつまぁ! さらやしきぃ!』』』ってねえ」

「菜日田おんばぁ、(わだす)らがこども(わらす)の頃の話でねか、やめてくんちぇ」「ん、ごめんなんしょ?」

「えーと、おんばー、デスか?」

「ええ、お酒を飲むと、福島の黒札はみんな、

 草神ネキを『菜日田おんば』って呼んでしまうんですの、

 私たちだけではなく、豆柴ニキも、クロアネキも」

「ンン、ただし拙僧やドカルトニキは別でありまする。

 我々が草神ネキを菜日田おんばあとお呼びしても、けんもほろろにて」

「はあ……自分(ワガ)のおっ()ぉみでなトシのお爺ちゃん(ジッチ)や、

 (あんにゃ)(しゃで)みでなトシのおじさん(おんつぁ)にまではハァ、おばさん(おんば)っちぇ呼ばっちゃぐね! だからね」

「あはは……あれ?

 そういえば黒井くん…豆柴ニキは、覚醒しても治らなかったくらいの、

 下戸下戸げこっぴじゃ? なのに、お酒?」

「そうね、でも、ご家族みんなで、私の居酒屋(ここ)に10日に1回くらいは来るのよ、晩ごはん食べに。

 煮物や串焼きを食べて気が緩んだら、たまにポロっと呼ばれるの、菜日田おんばって。

 そこのドラマーネキやキアラネキもだけど、呼んだ後で照れくさそうにするのが可愛くてね」

「「やめてください草神ネキ、その言葉は私たちに効きますから」」

「なんでしょう、鞍草さんは、僕らが親しくしている脱毛ネキ(舞原さん)と似ておられるような気がします」

「あのコとも趣味はわりと近いかもしれないわね、飯野先生?*4

「コ!?」

「今世の年齢だと、脱毛ネキはうちの真人ニキ鉄球ネキ夫妻と同じくらいだもんな」

「あらさあ、って明日子ちゃんなら言いそうデスね……」

「ミナ、そんな『あらまあ』じゃないんだから」

「なひたです☆ あらふぃふです☆」*5

「きあらです、あらさあ、ですわ♪」*6

「……しま……、あらさあ、だ……」*7

「「「「「「…………」」」」」」

「忘れて」

「忘れてくださいます?」

「忘れろ、忘れてくれ」

「はい」「アッハイ」

「身内ばかりの席で良かったと言わざるをえませんな、

 拙僧も今の■■■■3連きゃる〜ん☆がDDSネットに流れていたらと思うと、

 脊髄にじかにブフダインをブチ込m「「「■■■■■■■■■■(リンボニキぃいいいい)!!!!」」」ンンンソン!!」

「うわあ貫通撃2発も火炎ガードキル付きの火龍撃も顎とコメカミにキッチリめり込んでる……。

 そして気を失った尼子さんのカツラが、カツラがつるんって」

「さっきの尼子さんじゃないけれど、ここにナマモノネキ(姫木くん)がいなくて良かったと心から思うよ」

「「「それはそう」」ですわね」

「「「「「…………」」」」」

「ねえ保護眼鏡ニキに牡丹ネキ、私もトシかしら、

『えりざ! あら! さあ! よ!』*8とか、

『ゆーとスわ、あらさあ、ス』*9みたいな幻聴が聞こえるんだけど」

「ノーコメントでお願いします」

「あの、菜日田さん……廣井さんは?」

「牡丹ネキ、それは一升瓶を入れてからか? それともシラフでか?

『きくりでーす! あらさーでーす!』*10なのか、

『あの、きくり、です……あら、さー、です……』*11なのか」

「いずれにせよ、寿司侍ネキとクロアネキはまだ場違いですわね」

「いずれは来る道だけどな、私たちが来たように」

「そうそう、アラフィフの私と、三十路の鉄球ネキが通り過ぎたみたいに……って何言わせるの」

「んー、ねえシューくん、わたしも、

『ミナでっす! あ、ら、さ、あ、デス!』みたいに言ってみた方がいい?」

「ああ……できれば、やめてほしいかな。

 島崎先生も、奥さんがそういうポーズをとるのは、やめてほしいだろうし。

 ……直の教育にも悪そうだし」「ゔっ」

「ンンン……見事な総攻撃でありましたな、拙僧不覚にも気絶し(おち)て……ンン?

 あのー、保護眼鏡ニキ、何故に牡丹ネキは失意体前屈を?」

「ナナコさん案件です、もしくは埼玉の地味子ネキ(黒川くん)案件と言いますぐぁっ!?」

「……わたし露出(シたシないを言いふらす)趣味は無いもん、黒井くんや、茨城の手羽先ニキ(水橋くん)じゃあるまいし」

「おーキレイに顎に入ってまあ……言いふらしてるのはシキガミの方だと思うけどね、どっちも」

「なあ、キアラネキ」

「なんでしょう、ドラマーネキ」

「何で見せつけたがるんだろうな、黒札も、シキガミも、ああいうのを」

「さあ……殺生院淑女会(私のツテ)の皆さんも、そういうケがある方は多々見受けられますけれど、ね」

 

*1
田舎ニキ推しのビビアンちゃんこと、福島県西部(会津)のご令嬢・雪華ビビアンさん

*2
豆柴ニキの長女のフルネームは黒井(くろい)有那(ゆうな)

*3
互いの曽祖父が従兄弟にして高祖父が兄弟だと、四従兄弟だそうで

*4
保護眼鏡ニキの前世は小学校の教師

*5
CV:田村ゆかりの横ピース

*6
CV:田中理恵の手でハート

*7
CV:河瀬茉希の右手はギャルピース、左手は横ピース

*8
CV:大久保瑠美のダブルピース

*9
CV:声変わり前の少年声をご自由にどうぞ、のしかめっ面の顎下に両手の拳のぶりっ子ポーズ

*10
CV:千本木彩花のダブルメロイックサイン

*11
同上の目線そらし、右手で左肘を抑えながら




保護眼鏡ニキの一人称といいながら、またしても福島支部の、
特に草神ネキときくりネキたちの捏造思い出話になっちまった気がします。
タマヤ与太郎さん、毎回ごめんなさい。

……ようじょのお話の方で、SICKHACKの三人娘が、
今世では幼馴染とか、ドラマーネキは元ネタ通りお寺の娘なんていうから、妄想がするっと。

拙い文ですが、読んでくださってありがとうございました。
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