しがない一転生者の徒然 作:ふなぐち又兵衛
今回、捏造設定めいた箇所があります、ご了承ください。
あれは、僕らの間に息子が生まれて、首がすわった頃のことだった。
その日、僕は息子の
久しぶりに
息子を紹介したりして、歓迎とお祝いの言葉を、
特に
それと、
かたやよく日焼けした肌を、かたやまばゆく豊かな金髪を持った、
すらりとした手足ながら、ふくよかな少女のシキガミたちや、
おなじく
黒井くんのおばあさんの次くらいには、熱心に息子を気にかけてくれていたのは、
嬉しくもあり、気恥ずかしくも、申し訳なくも、何よりありがたくもあり、
なんとも複雑な、それでいてあたたかくなるような気持ちだった。
それはきっと、ナナコさんと久闊を叙しつつ、彼女が黒井くんとの間にもうけた娘たちという、
ふたりの赤ちゃんの姿に顔をほころばせた、ミナも同じだったと思う。
「
「保護眼鏡ニキ、牡丹ネキ、あなたたちも、幼馴染同士で夫婦になった、って聞いて……」
長い黒髪をポニーテールに結わえて日焼けした方のシキガミが、
人懐こさを強調するような、支部長と共通する尖った歯並びをしていたからかもしれない。
それはそうとして、「男の子が生まれたらやべえな、義叔母ハーレムじゃねーか……!」
などと、彼女たちから目をそらしながら小声でおののいていた
そりゃあ
しかし、マシロさんは、そのハリセンをどこに仕舞っていたのだろう。
祝い酒と称してどこからともなく一升瓶を取り出して、
話を戻そう。
シキガミの少女たちや、たまたま手すきだったという黒札や金札の人たちが、
かわるがわる僕らと言葉を交わしに来てくれているうちに、ふと気になったことがある。
子育ての経験者である、白い
黒井くんと明日子くんそれぞれのご両親はわかる。
ご老人のお孫さんや、黒井くんの子どもたちと関わる機会が多いとおぼしき人造の彼女たちと、
2児の母となり、ただいま子育て真っ最中のナナコさんもわかる。
不思議と、あどけない少女にしか見えない鞍草さんと、
もと僧侶にして今は探偵だと名乗った巨漢の
ことに上手に息子をあやしてくれていたように感じた。
「
と、ミナは言っていたけれど。
……僕らが福島を訪れて、良くも悪くも一番大きな声で出迎えてくれた、黒井くんのおばあさん?
まるで自分の孫か曾孫かという勢いで、僕らの息子を蕩けきった笑顔で見てから、
紫色の巻き毛で槍の穂がついた日傘を手にした耳の長いドレス姿の少女*1や、
明日子くんのお母さん、ご老人の奥方だというハタチくらいの女性に、
癖のない長く白い髪を振り乱しながら、感極まって抱きついていたなあ……。
「
と、金の瞳が納まる軽く吊り上がった目尻に、薄く涙を溜めながら。
「ヒノちゃあ、気ぃ
好きも嫌いもわがんねべ? ふだりども口きげるようになっちぇがら
のように言い聞かせて、黒井くんのおばあさんを落ち着かせてくれた、
赤い瞳と波打つ長い白髪をした奥方には、頭があがらないという確信があった。
「ヒノエばーちゃんといっしょに
金札のひとたづも、福島支部のひとは、みーんな訛っちぇ、ちっと恥ずかしな……。
よその黒札の人だど、わだすらのこどばは、わがんねがもしんにべし」
まあ、ついつい、笑っちまっけどなあ、
うちのおっ
そううそぶいてから鼻を鳴らす、祖母そっくりの髪質で、
父親譲りらしい金色の髪をした少女が、軽く口の端を吊り上げていたのも印象に残っている。
その娘が、僕の方を向いて、
「ほごめが…んー……
「ああ、黒井くんのおばあさんとのつきあいも、それなりになるからね」
「そっか、ならよかった」
こんなやりとりを交わしたからかもしれない。
『シュウ、スマン。
オマエトミナガ、息子ヲ連レテ来ルト聞イテカラ、
ヒノエハ、ズーットコンナ感ジナンダ』
うん、予想はしてたよ、
どうも僕は、黒井くんのおばあさんの亡くなった旦那さんの若い頃とそっくりの容姿らしいし。
半終末の、日本の戸籍制度が健在だった頃に調べてみたら、
僕と黒井くんとは、
だからか、黒井くんのおばあさんからは、僕と息子に対する執着を強く感じる。
「アルト、飯野さん、それは違うよ、
ヒノエばーちゃんは、
わたしたち福島支部の、黒札も金札もシキガミも仲魔もみんな、
孫とか姪とか甥みたいなもんだ、って言ってるから。
わたしの婆ちゃんと爺ちゃんは、姉や兄としか思えない、だって」
だからおなかいっぱい食べさせたい、危ない悪魔やメシア教のひとたちはやっつけたい、
って言ってたけど、ちょっとだけ、重たい、かな? その、しゅーちゃく、ってやつが。
たいせつにされてるとは、思うんだけどね。
年齢に似合わず疲れ気味の笑顔を見せてきた少女に対して、
きっとその時の僕も、似たような表情を返したハズだった。
『ダロウナ、フタリトモ、スマン。
ヒノエハ、ナントイウカ、群レノ為ニ生キテ死ヌト決メタ、
イヌノヨウナヤツナンダ、オレハ最近ツクヅクソウ思ウ』
「アルト、そこはせめてオオカミって言ってあげて」
『ダガナア』
そしてアルトくんは彼女の名を呼んで、
『ヒノエノ先祖ノ悪魔モ、
ヒノエノ孫デアル、
ダメ押シニ、ゴスノ血液ヲ材料ニ造ラレタ、オレノ見タ目モ、イヌヲ模シタ、ハニワダ』
「それはそう」
彼の言葉に、今度は年齢相応の表情をした少女に、僕は何故か少し安心した。
終末の前まではありふれていたハズの笑顔が、懐かしかったからだと思う。
ああ、
それが起きた原因を、太平洋戦争の頃から延々と舗装し続けたメシア教も、
なんで未だにのうのうと存在しているんだろうな。
半終末にもならない頃から妻も黒井くんも交えてつきあいがある、
ガイア連合の支部を沖縄の地に若くして立ち上げた彼らが、
黒井くんのおばあさんにも勝るとも劣らない憎悪と殺意をもって、
天使とメシアンを鏖殺せんと血にまみれたのも頷ける。
いや、そいつらの血にまみれたのは、僕も、妻もだったか。
僕もまた、沖縄の少女のような彼や、北神奈川のバイクの彼女とともに、
おぞましい欲にまみれた悪霊と遜色ない穢らわしい目をしていた連中の、
生っ白い額や欲に高鳴る心臓に狙いを定めて、引き金を引いたのだから。
兵庫の彼女が白い袖を翻して射た破魔矢が雲霞のような悪魔を消し飛ばし、
女神と化したあのひとの子守唄が、すべてを永遠の眠りに引きずり込んだ、
沖縄の彼らが
ここで、僕は頭を振って、色も臭いも鉄錆じみた悪夢の回想を押し込めた。
こんな小さな子の前で、そんなモノに囚われているわけにはいかないのだから。
黒井くんのおばあさんは、今も現世と、その悪夢を行き来しているハズだけど。
曾孫や、息子夫婦の前で、悪夢の残滓に曳かれてしまうことはないのだろうか。
……いや。
──
──うんにゃ、そのイカ臭え鉄錆さ、
──メシア教を鉄錆
などと、
おまけ・いつも通り、書きたかったのはこっちなんだ
「な…草神ネキと、あ、リンボニキが、赤ちゃんをあやすのがうまくてびっくりしました」
「まあ、年季が違うからな。
前世の記憶が完全に戻るまでの、私と
廣井の後見人だった
私の実家とも懇意にしてくださってた、
「あら、あの頃みたいに『なひたおんばー』って呼んでもいいのよ、お
「シラフではそうもいきませんよ、
「懐かしいわね、
きくりちゃんは『おきくっちぇ呼ばねでけろ、番町皿屋敷みでぇだべした!』なんていうし、
イライザちゃんは『わだすだげ『おイラちゃん』ちぇ呼ばらんにノハ、お得かもしんにノス』
なんていうから、ケンカになると『『『おいらぁ! ごくつまぁ! さらやしきぃ!』』』ってねえ」
「菜日田おんばぁ、
「えーと、おんばー、デスか?」
「ええ、お酒を飲むと、福島の黒札はみんな、
草神ネキを『菜日田おんば』って呼んでしまうんですの、
私たちだけではなく、豆柴ニキも、クロアネキも」
「ンン、ただし拙僧やドカルトニキは別でありまする。
我々が草神ネキを菜日田おんばあとお呼びしても、けんもほろろにて」
「はあ……
「あはは……あれ?
そういえば黒井くん…豆柴ニキは、覚醒しても治らなかったくらいの、
下戸下戸げこっぴじゃ? なのに、お酒?」
「そうね、でも、ご家族みんなで、
煮物や串焼きを食べて気が緩んだら、たまにポロっと呼ばれるの、菜日田おんばって。
そこのドラマーネキやキアラネキもだけど、呼んだ後で照れくさそうにするのが可愛くてね」
「「やめてください草神ネキ、その言葉は私たちに効きますから」」
「なんでしょう、鞍草さんは、僕らが親しくしている
「あのコとも趣味はわりと近いかもしれないわね、飯野先生?*4」
「コ!?」
「今世の年齢だと、脱毛ネキはうちの真人ニキ鉄球ネキ夫妻と同じくらいだもんな」
「あらさあ、って明日子ちゃんなら言いそうデスね……」
「ミナ、そんな『あらまあ』じゃないんだから」
「なひたです☆ あらふぃふです☆」*5
「きあらです、あらさあ、ですわ♪」*6
「……しま……、あらさあ、だ……」*7
「「「「「「…………」」」」」」
「忘れて」
「忘れてくださいます?」
「忘れろ、忘れてくれ」
「はい」「アッハイ」
「身内ばかりの席で良かったと言わざるをえませんな、
拙僧も今の■■■■3連きゃる〜ん☆がDDSネットに流れていたらと思うと、
脊髄にじかにブフダインをブチ込m「「「
「うわあ貫通撃2発も火炎ガードキル付きの火龍撃も顎とコメカミにキッチリめり込んでる……。
そして気を失った尼子さんのカツラが、カツラがつるんって」
「さっきの尼子さんじゃないけれど、ここに
「「「それはそう」」ですわね」
「「「「「…………」」」」」
「ねえ保護眼鏡ニキに牡丹ネキ、私もトシかしら、
『えりざ! あら! さあ! よ!』*8とか、
『ゆーとスわ、あらさあ、ス』*9みたいな幻聴が聞こえるんだけど」
「ノーコメントでお願いします」
「あの、菜日田さん……廣井さんは?」
「牡丹ネキ、それは一升瓶を入れてからか? それともシラフでか?
『きくりでーす! あらさーでーす!』*10なのか、
『あの、きくり、です……あら、さー、です……』*11なのか」
「いずれにせよ、寿司侍ネキとクロアネキはまだ場違いですわね」
「いずれは来る道だけどな、私たちが来たように」
「そうそう、アラフィフの私と、三十路の鉄球ネキが通り過ぎたみたいに……って何言わせるの」
「んー、ねえシューくん、わたしも、
『ミナでっす! あ、ら、さ、あ、デス!』みたいに言ってみた方がいい?」
「ああ……できれば、やめてほしいかな。
島崎先生も、奥さんがそういうポーズをとるのは、やめてほしいだろうし。
……直の教育にも悪そうだし」「ゔっ」
「ンンン……見事な総攻撃でありましたな、拙僧不覚にも
あのー、保護眼鏡ニキ、何故に牡丹ネキは失意体前屈を?」
「ナナコさん案件です、もしくは埼玉の
「……わたし
「おーキレイに顎に入ってまあ……言いふらしてるのはシキガミの方だと思うけどね、どっちも」
「なあ、キアラネキ」
「なんでしょう、ドラマーネキ」
「何で見せつけたがるんだろうな、黒札も、シキガミも、ああいうのを」
「さあ……
保護眼鏡ニキの一人称といいながら、またしても福島支部の、
特に草神ネキときくりネキたちの捏造思い出話になっちまった気がします。
タマヤ与太郎さん、毎回ごめんなさい。
……ようじょのお話の方で、SICKHACKの三人娘が、
今世では幼馴染とか、ドラマーネキは元ネタ通りお寺の娘なんていうから、妄想がするっと。
拙い文ですが、読んでくださってありがとうございました。