戦国ドリフト   作:C E L I C A

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※作者の趣味と偏った都合により、漂流者も廃棄物も全員、日本史(ほぼ戦国時代)の人物です。なるべくキャラは原作に寄った人にしていますが、ご了承ください。


二条御所の変

「殿、お逃げください!

斯様に突然の謀反では、惟任(これとう)もきっと完全に京を包囲できていないはず!」

 

「だから、何度も言っているだろう。

その油断こそが、惟任の謀略だと。

今までどんな時でも、金ケ崎の時でさえも脱出した父上が、あっさりと亡くなられたのだ。

避けようとしても、必ずや、無惨で不名誉この上ない最期を迎えるだろう」

 

 20代くらいの若武者が、1人、また1人と槍で敵を薙ぎ払いながら、炎に巻かれようとする廊下を歩いていた。

 

 そのすぐ後ろを、敵と炎を器用に避けながら、家臣らしき男がついている。家臣とはいえど、白い小袖にある家紋は木瓜紋(もっこうもん)、つまり、織田家一門である。

 

 1582年、京の二条御所で、織田(おだ)左近衛中将(さこんのえのちゅうじょう)信忠(のぶただ)は、惟任(これとう)日向守(ひゅうがのかみ)光秀(みつひで)の手勢と戦っていた。

 

 ちなみに家臣の男の名は、織田(おだ)源五郎(げんごろう)長益(ながます)といい、信忠の叔父にあたる。

 

「しかし……、殿が亡き後に、一体どなたが織田を、いや天下を守るのですか!」

 

 長益の声は、悲痛に満ちていた。しかし信忠は、冷静に言葉を受けた上で返す。

 

「さぁ、知らん」

 

 冷静な口調でこんなことを言うのだから、思わず長益も黙って、信忠の顔を見つめた。

 

「もう既に、俺らは黄泉へ片足を突っ込んでいる。

今更、今生に関わることもそうはないだろうよ」

 

 信忠はそこまで言うと、足をとある場所で止めた。そこは、廊下ではない。広々とした空間で、多くの家臣たちが必死になって戦っていた。

 

 その様子を見た信忠は、不意にフッ、と笑った。程なく、父親にも負けない大音声で、こう叫んだのだ。

 

「そなたらの働き、誠に大義なり!

今生でその働きを称賛することは叶わないが、来世でこそ褒美を与えよう」

 

 その言葉を聞いた家臣は、一人、二人とまた笑い、自ら敵の方へと駆け出して行った。村井(むらい)春長軒(しゅんちょうけん)といった老齢で重鎮の家臣から、下方(しもかた)弥三郎(やさぶろう)といったまだ若い小姓までもが、次々と討死していった。

 

「……そろそろか」

 

 いつの間にか、敵も長益ら家臣も、信忠の前からいなくなっていた。炎はより激しく燃え、息をするのも段々と苦しくなり、両目から自然と涙が溢れた。滲む視界の中、信忠は腹を切った。

 

 その瞬間。

 

 信忠は、奇妙な空間にいた。

 

 ◯ ◯ ◯

 

 その空間は、永遠に続くかのようなほど長い廊下だった。白い壁には所狭しと扉が並び、その扉の種類は無限だった。

 

 信忠から10mほど先には、横長い机があり、どうやら1人の男が座っていた。男はチェック柄のシャツとネクタイ、ベストを着ており、眼鏡をかけていた。さながら、一昔前の役所勤めの人のようだった。信忠から見て机の右端にある整理券を取る機械が、その雰囲気を更に醸し出していた。

 

 とはいっても、信忠は戦国時代の武将である。

 

 場違いな、いや時代違いな光景に意識が釘付けられて、涙も枯れ、腹から血がどくどくと出続けることに気づかないまま、信忠は無数の扉のうちの1つに吸い込まれていった。




 試しに書いてみました。続きを書くか少し迷っていますが、不定期更新の予定です。
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