全てを破壊する最強の剣
配点(木の棒)
追加点(それお前だけだろ!?)
■ ■
朝だ。とても穏やかな朝だ。
ちゅんちゅんと声を張って、朝の報せを鳴らす鳥達のご挨拶を聞くと、くぁ……と、青年は口元を右手で覆いながら大きく欠伸をした。
準バハムート級航空都市艦・“武蔵”を構成する八つの艦船の一つ、中央後艦・“奥多摩”にある極東の主教導院“アリアダスト教導院”の橋の上にて。
其処に集まったアリアダスト教導院三年梅組の生徒達と、その担任。
黒い軽装甲型ジャージの、背筋の伸びた短い髪の女だ。背中に青塗りに白紋、金属が柄の直剣を背負った女が声を張る中、その生徒達の一人である青年は欠伸を抑え切れずにいた。
「か、カイ君、ね、眠たい、の?」
「
女教師の声にかき消されてしまっても何ら不思議ではない、か細く、そして途切れ途切れで喋る、前髪で目元を隠した小柄の少女の声を青年は拾い、目尻に浮かんだ涙を拭いながら返事する。
カイと呼ばれた眠たげな青年の本名は、
朝から眠たげな彼に話し掛けた少女の名前は、
ちなみにカイというのは、彼の名前である灰燼の灰から取った渾名であると同時に、彼の“通神”上の呼び名でもあった。
まぁ、
鈴は、途切れ途切れながらもカイを窘める様に言った。
「今、お、オリオトライ、先生が、し、喋ってる、から……ちゃ、ちゃんとしなきゃ、ダメ、だよ?」
「そうよー? よく言ったわ、鈴。灰燼、貴方ちゃんと話聞いてた?」
「えっとー……葵(姉の方)が三件隣の中村さんが飼い犬に同じ名前を付けたからジョセフィーヌからベルフローレに変わって、ナイゼとナルぜがそれに対してなんか言ってた所までは聞こえてたけど。合ってる?」
「だいたい合ってるけど肝心の先生の話全然入ってねぇじゃねぇか!!!!!!!!!!」
「ありゃ?」
生徒の大半からの総ツッコミに、錆は違ったかー、と苦笑した。
本来しっかり聞く筈の教師オリオトライの体育授業内容を全く耳に通さず、同級生の女子三人の言葉だけを耳に挟むとはこれ如何に。
相変わらずだぁ……と苦笑する友人達を他所の、パンパンッ! と、手を叩いてオリオトライは注目を己へと集める。
「はい、ちゅうーもくッ! じゃ、話聞いてなかった灰燼の為に改めて説明ね。ちょっと先生は品川までヤクザの所まで殴り込みに行くから、貴方達はしっかり着いて来なさい! 着いてからは実技になるから、そのつもりでね。あと、品川に辿り着くまでに先生に1回でも攻撃を当てたら出席点を5点あげるわ。いい? 出席点を5点、つまり5回サボれるって事よ」
「Jud.。じゃあ、張り切って行こうかな。5回もサボれるし」
先程までとは打って変わって、錆はやる気に満ちた表情を浮かべる。
しかし! と、そんな錆を制す様にオリオトライは続けた。
「灰燼は私の話を聞いてなかったので、残念だけどペナルティとして制限を設けるわ!」
「うそーん」
「その一、《
「えぇ……もうそれ俺に攻撃当てさせる気ねぇじゃん」
「アンタ相手なら、これでもまだまだ足りないわよ。
(否定出来ないのがマジで怖いんだよなぁ……)
―――約数年前の出来事である。
襲名者でもない、ただ一人の青年は。
ただ一振り。何処にでもある様な木の棒をただ一振りしただけで。
一つの教室を全壊させた。
全刀流
それまで誰一人として知らなかった、かつて極東に存在していたとされる幻の剣術。
それはあらゆる全ての物体を、一切の例外なく『刀』として振るう事が出来るという特性ならぬ特製を持った一振りの『刀』であると同時に『人』であり、そして失敗作でもあった。
それは確かに剣士としては『完全』だったのだろうけれども、しかし結局の所、それは『刀』ではなく『剣技』であり『使用者』であり、決して『刀』としての『完了』には至らなかった。