ゴーティス使い俺、呪術の次元は禁止カードが多すぎる【改訂版】   作:月日は花客

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☆15:ゴーティスの判断力

 

「……って言ってもよぉ」

 

 それぞれのデッキの回し方を説明し終わった頃、ふと、真希ちゃんが目を伏せた。

 悩ましげに組まれた腕からは、俺への疑問を感じる。

 

「私は天与呪縛で術式が無い。これで拡張術式のあれこれを学んでも、戦闘には活かせないと思うんだが」

 

 憂太も、そうホイホイ使える物じゃねぇしな。

 と、尖らせた口から飛び出た不満。それは俺も、正直思っていたことだった。

 真希ちゃんの天与呪縛については、こちらにも知らされている。とても、とてもざっくりだが。

 しかし、それでも俺がデッキを選ばせたのは、ある一つの思想があったから。

 俺は真希ちゃんのデッキをシャッフルしながら、口を開く。

 

「じゃあここで問題だ。敵呪霊によって味方が殺される直前、真希ちゃんの手の届く範囲にはA、B、Cの味方がいる。殺されそうになっているのはCだが、戦力的優先度は下からB、C、Aの順番で高い。また、他の味方もギリギリで体勢が崩れそうだ。この時、君は何をすべきか?」

「……はぁ!? なんて??」

「時間切れだ。ちょっと意地悪な質問だが、これが実戦だったらどうする」

「っ……!」

 

 そう言えば、真希ちゃんは唇を噛んで黙り込んだ。

 

 そう、今この瞬間、俺や一年生たち、はたまた真希ちゃん自身が呪霊に襲われたっておかしく無い。五条の存在はパスするとして。

 その時、何が一番重要となるか。

 それは「判断力」だ。

 自分の力がなんであれ、傷の深さがどうあれ、その時の状況、行動を判断できる力は、どれだけあっても腐らない。

 今の真希ちゃんには、それが欠けていた。…‥俺もちょっとそれは理不尽だろと思うけどさ、こう言う世界なんだもの。

 

「……Cを守りに行く」

「それによってA、Bが死んでも? あるいは、君が致命傷を負うことになっても?」

「じゃあどうすりゃ良いんだよ! それしか無いだろ」

「そう、その『それしかない』が今の君の限界なんだよ」

「……はぁ?」

 

 真希ちゃんは意味がわからないと言ったように首を傾げた。他の一年生も、よくわからないと言ったように黙っている。

 五条だけは、何か察しているようだけど。

 

「『他にもどんなことができるか』を考えるのも、判断力のひとつだ。見捨てる、見捨てない。庇う、庇わないの判断しかできないなら、正直言って判断力は低い」

「…………」

「もちろん、庇ったり見捨てることも時には重要だ。しかし他にも手はあるだろう。攻撃対象を移動させるか? C自身に防御させるか? Aに向けられた攻撃を誘導するか? そして、それらのどれを選ぶか。それをできる限り早く、現実にできる範囲で考え決を下すのが『判断力』だ」

「…………!」

 

 冷静に、ゆっくりと、わかりやすく。

 シャッフルの音だけが、BGMとして響くように。俺は少し声を低くして、諭す。

 

「戦術的優先度を考えるなら、俺はBに庇わせる。あるいは、Aを襲う呪霊と相打ちさせるかな。Bは戦力的な優先度が低いし、逆にAは高い。保持すべき戦力を考えると、個々の能力にもよるがな」

「……命に優先順位をつけろと?」

「命の話はしてないんだよ、今は。戦術的優先度は命と違う。“その状況をどれだけ犠牲を抑えて対処できるか”だ。その時々で優先度は変わり、逆転する」

「……つまり?」

「よくわかってなさそうだな。お前は多対一でタイマンが得意なやつを優先して守るか? 逆も然りだ。コストの大きいやつに消耗戦をやらせるか?」

「ああ……なるほど!」

 

 乙骨君がポンと手を叩く。

 効果破壊中心のやつに、戦闘破壊耐性を建ててもしょうがない。除外のやつに墓地メタをしてもしょうがない。

 どれだけ強かろうが、オールマイティだろうが、コストが重けりゃ動きにくい。

 軽く動けても、打点が低けりゃ棒立ちになる。

 そういう話なのだ、戦術的優先度というものは。

 命は、理想論的には同列だけれど、判断によってはその理想も切り捨てねばなるまい。

 そういう、世界なんだもの。

 

「それを考える力を伸ばすのも、今回の目的だ。今は優しく教えているが、慣れてきたら対戦時間には制限を設けるし、一手を考える秒数も計る。戦場ではコンマ1秒も惜しいことはみんな分かるよな」

「おお〜、遊海がしっかり教師してる」

「お前はもっと教師然としろ駄教師」

「酷っ」

 

 な〜にが「教師してる〜」だ。お前の生徒だろうが。判断力の話なんて基本だぞオイ。

 まぁまぁまぁ、まだ一年生ということで抜けていた部分もあるだろう、先輩決闘者として導いてやろうじゃないか。

 

「戦場では常に考え続けろ。脳を休めるな。命を守りたきゃ、その場で出来ることを判断し続けること。なにより、生き延びるためにな」

「……肝に、銘じます」

 

 真希ちゃんは俺に頭を下げた。いや、教師だし当然のことを教えたまでだから、頭を下げられても困ってしまう。

 むしろこんな事を教えることになってしまったのが、大人の立場として悲しい。

 彼女も、平和な世界であれば街でスイーツを食べたり、友達と寄り道して笑い合うようなことができたのに。

 子供を巻き込むような事をしてしまっているのは、大人の世界では失格だろう。

 偉そうなこと言ってるけど、俺自身も何か改革しようとして動いてないあたり、判断力なんてご高説、説得力無いのかもしれない。

 

「いや……良いんだ、それで。君たちはまだ若い、でも当時の俺より余程ものを考えてる。厳しい事を言ったが、俺も偉そうに言えた事じゃ無いんだ」

「……? 遊海さんってそんなに歳離れてるんですか?」

「高菜?」

「遊海は僕より年上だよ」

「嘘ぉ!?!?」

 

 嘘じゃないんだなこれが。俺は確実にアラフォーであり、もう決して20代ではないのだ。

 見た目変わってないけど。

 

「生命の神秘ってやつ?」

「悟より若く見えるよな」

「あれで目隠せば年相応だもんな……」

「お〜い聞こえてるぞ☆」

 

 いや、俺の若々しさのことはいいから早く決闘しようぜ。

 真面目に話して疲れたよ俺は。

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