ゴーティス使い俺、呪術の次元は禁止カードが多すぎる【改訂版】 作:月日は花客
ついにクリスマスになってしまった。
「遊撃班、遊海。配置完了でーす」
インカムで答えれば、冥冥さんの「了解」という返事が返ってくる。
俺は東京の郊外、他の術師達と離れた場所に一人配置されていた。
遊撃兼捜索のため、少し隠れている形だ。
これから俺は《次元の裂け目》により東京と京都を行き来し、暗躍していると思われる呪詛師を捜索する。
首都には大量の術師、補助監督、窓が配置され、異様な雰囲気となっていた。帷も下ろされている。
蠢く数多の気配。それは、東京に向かってくる大量の呪霊の気配だ。
「──想定時間に到達。これより行動を監視します」
「了解」
さぁ、闇の百鬼夜行の始まりだぜ!
*
「こっちに新手!」
「二級術師は西方に援護を!」
「負傷者は一度下がって!」
「うわー……地獄絵図」
五条も頑張っているので想定より余裕はあるが、大量の呪霊相手は流石に骨が折れる。
夏油君は京都で頑張っているらしいが、あっちもこんな感じでやべー景色になってるんだろうな。
俺も俺で仕事せねば。
「特級の気配はここには無し……もう少し離れるか」
次元の裂け目でポンポンと飛んでいくが、いるのは逸れたらしい雑魚呪霊くらい。全然特級は見つからない。
祓いつつ、呪霊が氾濫しているエリア周辺を回ってみたが、収穫は無かった。せいぜい二級だ。
ここは一度報告のために戻るべきか、と五条達の元へやってきたのだが……。
「遊海! 今すぐ高専に向かってくれ!」
「はぁ!? なんだよ急に!!」
珍しく焦った五条が、急に駆け寄ってきたのだ。その目隠しされた顔にはいつもの余裕が消えている。
「呪詛師の狙いが憂太かもしれない! 明らかに戦力配分がおかしい!」
「っ!! わかった!」
叫ぶように言われたそれ。確かに、呪術高専の方向には行っていなかった。
あそこは五条達にとって拠点に等しい。
この、大量の呪霊がそのための陽動だったとしたら……?
俺は即次元の裂け目を発動させ、高専の敷地内に向かった。
「……!!」
警報が鳴っている。
異質な呪力を感じた時の、未登録者を知らせる音が。
そして、倒れたパンダと狗巻君が、いた。
「パンダ! 狗巻君!」
「っがぁ……」
「お゛が……か……」
満身創痍。あちこちの骨が折れ、狗巻君は口から多量の血を吐いている。明らかな敵襲の跡だった。
俺は急いで彼らを高専の隅に運び、介抱する。
「あ……ゆ、かい……」
「無理に喋るな。安静にしてろ」
「…………」
狗巻君もう声も出ないようだ。最悪声帯がイカれてるかもしれない。
俺はリュックの中から《ご隠居の猛毒薬》によって二人を回復させる。こういった他人に向ける回復は、普段より大きく呪力を消費してしまうが、構うことはなかった。
なんとか安定した呼吸を取り戻したパンダが、俺の腕を掴む。
「真希と……憂太が……」
「っ呪詛師か!?」
「ああ……知らない、顔だ……」
「わかった。ここで休んでろ。《氷水のアクティ》、《氷水帝コスモクロア》、二人を守ってくれ。……万が一の時は、悪いが……破壊されてくれ」
召喚された氷水のふたりは、その言葉に静かに頷いた。俺はこの2枚のカードを狗巻くんの制服のポケットに入れる。ボディーガードとしては働いてくれるだろう。
わざわざ攻撃する必要はないと伝え、俺は走り出す。
真希ちゃん、乙骨君、無事でいてくれ……!!
*
「かはっ……!」
「真希さん!!」
俺の目の前に広がるのは、呪霊によって吹き飛ばされる真希ちゃんと、それに叫ぶ乙骨君の姿。
明らかに特級の呪力を擁する呪霊と、知らない男の存在だった。
吹き飛んできた真希ちゃんを受け止める。どっと重い衝撃は、その呪霊に喰らったダメージの大きさを表している。
真希ちゃんの口から逆流した胃液が溢れている。
「テメェら……!」
「っ遊海さん、逃げて!」
「逃げる訳ねぇだろ!!」
乙骨君が俺に気づいて声を上げるが、それよりも俺は怒りに燃えていた。
ぎちり、と奥歯が鳴る。
「おい、
「ああ……君は……遊海宙、だったかな?」
ガシャリ、俺のデュエルディスクがカードをシャッフルし始めた。
ディスクが起動し、変形する。銀河の渦を模した形から、深海の深さを湛えたボード状になっていく。
デッキからも、やる気が伝わってくる。短い間だが、ともに戦った戦友への所業に怒っているようだった。
「遊海さん、相手は特級で……!」
「だ、まれ! 憂太」
「……! 真希さ──」
「ここで一番戦力があるのは……遊海、だ」
真希ちゃんの言葉に、乙骨君が口を噤む。しかし、まだその瞳には諦めきれていない「己も戦う」という感情があった。
俺は、余裕そうに髪をいじる呪詛師を通り過ぎ、乙骨君の肩に手を置いた。
「真希ちゃんを頼んだ」
「…………っはい……」
さぁて、乱入ペナルティ2000ポイントくれてやる。
だが、俺の怒りはたった2000じゃ済まないと思えよ。
「──決闘!!」
「良いだろう、観察させてくれ」
相手は二人を相手にしたのに、まだ1ポイントも減っていない。
フィールドには特級が一体。しかしどこかにまだ隠れていそうだ。なんとなく気配がする。
俺は手札を構える。
ぐっちゃぐちゃにしてやらぁ。
「先行後攻かはダイスロールだ。──5」
「3だ」
「俺が先行を貰う! 手札から《ゴーティスの灯ペイシス》を召喚!」
ふわふわと虹色のメンダコがフィールドに現れる。その読めない表情は、しかし怒気を感じさせる。
「ふむ、聞いていた通り特殊な術式だね……私の知るものではない」
「ペイシスの効果! ペイシスを除外し、《ゴーティスの妖精シフ》を特殊召喚! さらに効果を発動したので、《ゴーティスの兆イグジープ》を特殊召喚!」
どんどん展開していくぞ。
イグジープとシフでシンクロ召喚だ。
「《ゴーティスの大蛇アリオンポス》! ……ターンエンド」
「ふむ、身体の重さが解けた……ターン制、なるほど」
頭に縫い目のある不気味な男は、その茶髪を弄りながら特級呪霊を構えさせた。
「相手スタンバイフェイズ、除外されたペイシスは戻ってくる! そしてさらにシンクロ召喚! 《ゴーティスの死棘グオグリム》!!」
「相手ターンにも動けるのか! なるほどなるほど」
……観察されているみたいで居心地が悪い。ていうかなんだその頭の縫い目、キモいよ。それパッカーンしたら脳見えそう、怖い。
乙骨君と真希ちゃんも棒立ちってわけではない。真希ちゃんは肋がどこかが折れてるのか、フラフラとしか立てない。ので、乙骨が反転術式でそれを治している。背後にいる怨霊──リカちゃんというらしい──が、怖い
「ふむ……そのグオグリムとやらの効果は?」
「教えてやろう、ただし、お前の術式の情報と引き換えにな」
「良いだろう。私の術式は『呪霊調教術』……。呪霊操術の劣化版さ。捕まえた呪霊を呪力で調教し、従える。問答無用で操れないのは玉に瑕だがね」
「……グオグリムは水属性、レベル8の魚族シンクロモンスター。1ターンに一度、攻撃してきた相手を除外する効果と、相手スタンバイフェイズに自身を除外しシンクロ素材としたモンスター1組を特殊召喚できる」
「なるほど」
何がなるほどだ、遊戯王のルール知ってんのかオメー。
「ゆっくりいこう、楽しい夜は始まったばかりだ」
「その余裕面引っぺがしてやる」
羂索(知らん人のすがた)参戦!!