ゴーティス使い俺、呪術の次元は禁止カードが多すぎる【改訂版】   作:月日は花客

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☆2:ゴーティスの決闘

 

 化け物は除外ゾーンに行くのか。

 

 その疑問は、呆気なく氷解することになる。

 

「きききききぎぎぃぃぃいいい!!!」

「うわ……」

 

 ミチミチと体が圧縮され、骨が折れ、血が溢れる。まるで見えない何かに折り畳まれるようにカードの形にまで変形させられた化け物は、そのまま黒いオーラを噴射して消えてしまった。

 決闘(デュエル)が終了した扱いなのか、除外や墓地のカードがまたデッキに戻り、デュエルディスクも光を失う。

 残ったのは、息を切らしてその場に佇む俺のみ。

 さっきまでの嫌な空気は、どこにも無くなっていた。

 

「勝っ……た? 生きてる、よな」

 

 未だに痛む頬の傷が、心臓の鼓動に合わせて鈍痛を響かせる。それは俺がまだ死んでいない証でもあった。

 化け物と決闘して、俺が勝った。化け物は死んで、俺が生き残った。

 そういうことだろう。

 俺は安堵と共に地面にへたり込んだ。

 

「よ、よ、よかった〜……!」

 

 あの化け物は何だったのだろう。まるでホラーゲームのクリーチャーのような見た目で、でも現実に存在していて。

 あんなもの、生まれて初めて遭遇した。フィクションの存在だろ……なんで現実に出てきてるんだよ。

 そして、俺を助けてくれたデッキ。

 いつのまにか左腕に装着されていたデュエルディスクは、青く、銀河を思わせる渦のような形をしている。ゴーティスの雰囲気に合った、だが知らないデザインだ。

 直感的にデッキをセットする場所やモンスターゾーンがわかったけれど、よく考えるとおかしい。

 モンスターもアニメのソリッドビジョンのように実体を持って動いていた。俺の指示で動いてくれると信じられた。

 まるで自分がアニメの登場人物になったかのような出来事に、困惑と疑問が止まらない。

 でも、同時にワクワクも感じていた。カードの平たい姿しか見れなかったモンスターの立体的な姿、動き。全決闘者が夢に見たリアルソリッドビジョンがこの左腕にあるのだ。

 敵はちょっと……勘弁して欲しい見た目をしているけれど。

 

「なんかよくわからないけど……とんでもねぇ事態に巻き込まれてるってことか!?」

 

 ワープ、化け物、謎のデュエルディスク。非現実的な、しかし確かに現実で体験した事象は俺の胸を高鳴らせている。

 未知の非日常に、思わず鳥肌がたった。

 

 ふと、さっきまで化け物が居たところを見ると、遊戯王のパックが一つ落ちていた。

 明らかにさっきまで無かった、ピカピカのカードパックだ。パッケージデザインは遊戯王のロゴのみで、シンプル。手触りでいつものパックと内容は変わってなく思える。

 

「ドロップってやつかなぁ。なんかゲームみたいだけど」

 

 化け物を倒したことで落ちたと考えて良さそうだ。これでデッキを強化しろ……そういうことだろう。

 あとで開けてみるとして、これからどうしようか。

 もっと色々試してみたい、他モンスターの実体を見たい、戦法を検証してみたい。

 様々な考えが浮かぶが、おそらく決闘で負けたら死ぬか大怪我を負うだろう。興奮した頭を何とか冷やしつつ、道路を歩き始めた。

 

 何はともかく、飯が食いたい。

 

 *

 

「取り敢えず仙台まで来たぞー」

 

 あれからなんとか駅を発見し、乗り継ぎを繰り返し仙台にやってきた。宮城の中でもかなりの端っこだったらしい。

 しっかり都心にやって来たので、適当なファミレスで腹を満たした。

 腹が減っては決闘はできないぜ!!

 ここから新幹線でさらに東京に行く予定なのだが、一度仙台のカドショの品揃えを見ておきたくて、入店したのだが……。

 

「あれ……無い」

 

 遊戯王が無かった。

 たまたま専門にしてるTCGが違ったのかな、と別の店舗に行くと……無かった。

 もしかして仙台では遊戯王はマイナーなのか!? とまた別のカードショップに行くと、無かった。

 

 あまりに無さすぎるので店員に話を聞くと──「遊戯王」という作品自体が無くなっていた。

 漫画から始まり、アニメ、映画、グッズ……OCGも、何もかも無かった。遊戯王というコンテンツそのものが世界から消えていたのである。

 俺は発狂しそうになった。叫びそうだった。

 それをなんとか踏みとどまれたのは、俺のリュックには遊戯王のカードがあるとわかっていたからだ。

 つまりこの世界では、俺しか遊戯王を知らず、俺しか遊戯王を持っていない。そんな世界なのだ。

 あまりのショックに、そこから店を出て駅に向かい、新幹線に乗って東京まで来た記憶が無い。

 

 そんなショックに沈む俺を、さらなる追い討ちが襲った。

 東京に帰って来た俺は、自宅である賃貸のアパートに帰ろうとした。

 

 無かった。

 

 その建物ごと無くなり、売地として看板が建てられていた。

 そう遠く無い実家に行くと、実家が全く別の家になり、全く別の人が住んでいた。

 友人に公衆電話で連絡しようとしても、繋がらない。電話番号が使われていない。

 俺は、俺を知っている人全てが消えたことも理解してしまった。

 

「どうしよ……」

 

 今や心の拠り所は背にあるデッキのみだ。それだけが俺の精神がおかしくなっていないことを示してくれる。

 家も家族も知り合いも無くなってしまった今、おそらく大学の籍も無くなっているだろう。俺は無職のホームレスになったわけである。絶望。

 

「でもまぁ、クヨクヨしてらんないわな!」

 

 頬を叩き、気を取り直す。今夜はカプセルホテルにでも泊まろう。休んで、明日考えよう。

 パックも剥いてないし。

 俺は自覚している長所の中に切り替えが早いと書くタイプだった。

 金はそこそこある、デッキもある、体調も健康! なら何とかなるだろう!

 決闘者は逆境から這い上がるものだし。

 

 持ち直した俺は、ホテルを探すため街を歩き出すのだが、また化け物に襲われてパックをゲットする事になるとは、まだ知らないのである。

 

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