ゴーティス使い俺、呪術の次元は禁止カードが多すぎる【改訂版】   作:月日は花客

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☆23:ゴーティスの新一年

 

「俺の術式は『遊戯王』! カードをあれやこれやして呪霊を祓うぞ! という事で君たちも遊戯王をやってみないか」

「私カードゲームって興味無いのよね」

 

 バッサリである。

 

 ここまでストレートに切られるとは……今年の一年生は骨があるな。

 実際、女性メンバーにはあまり遊戯王が響いていないのである。悲しいことに。

 遊戯王には可愛いテーマもいっぱいあるが、それはそれとして「カードゲーム」というシステム自体に女子は馴染みがないらしい。

 イラストの絵柄で釣っても、システムの複雑さで挫折されかねない。

 

 しかーし! 俺には秘密兵器がある。

 

「釘崎ちゃん、あの五条になんかムカつくことされなかった?」

「されたわ」

「その五条を、今なら遊戯王でコテンパンにのせるぜ」

「やるわ」

「遊海??」

 

 ええい後進にカッコ悪いところ見せたくなかったら遊戯王を学べ!

 虎杖くんはそんなこと関係なくやってくれるそうです。光属性の香りがする……!

 釘崎ちゃんも五条を倒せる可能性とくればやる気が出たようで。もう既にどれだけのヘイトを買ってるのよ、五条悟お前って男は。

 今すぐ鞄からデッキたちを出して、初めてのデッキ選びを観覧したいところだ。

 

 が、顔合わせなので取り敢えずここまで。時間に余裕がないのだ、一年にもこれから任務があるしね〜。

 俺はそこそこ暇だけど、これを冥冥さんに言うと想像以上の仕事を詰め込まれるから嫌!! ダラダラする!!

 五条の面倒見るって仕事に入りませんか?

 

「三人で任務? 気をつけてね、命だいじに!」

「はい、頑張ってきます」

 

 *

 

「っ、玉犬が破壊されたか……」

 

 釘崎が地面に飲み込まれた時、伏黒は自身の式神が破壊されたことを察知した。

 釘崎や自身を守るために索敵の役割を果たしてくれるはずの玉犬・白は、壁の中で息絶えていた。伏黒の額に汗が浮かぶ。

 

「まだリクルートの手段はある……」

 

 十種影法術の式神は、本来破壊されると二度と使うことはできない。その力は他の式神に継がれ、完全に途絶えることはないものの、術式として痛烈なダメージを受けることになる。

 しかし、今の伏黒は違う。

 伏黒にとって、“破壊”とは一つの状態に過ぎない。“墓地”へ行くか、“除外”されるか、あるいは……。

 

「永続魔法化、こんな早く役に立つとはな……」

 

 伏黒の使うデッキテーマ、《宝玉獣》は少し特殊なテーマだ。破壊された時、モンスターを永続魔法扱いで魔法罠ゾーンに置くことができる。

 現在、玉犬・白は永続魔法として伏黒の隣に浮かんでいた。

 永続魔法化は、伏黒が一部の式神に付与した拡張術式である。

 破壊された際、式神は“墓地”へ行くか“永続魔法罠ゾーン”へ行くか選ぶことができる。

 永続魔法罠に置かれた式神は、他の式神の効果によって再度召喚されない限り何もすることはできない。しかし、墓地へ行くことを免れることができる。

 呪力は消費し続けるので、破壊と魔法罠どちらを優先するかはその時の状況次第だ。墓地へ行けば呪力消費は止まる。

 宝玉獣の動きを、伏黒は見事に術式で再現して見せたのだ。

 それにより、現状の焦りはそれ程でもない。しかし釘崎の事は心配だし、生得領域を展開できる相手がここにいることに改めて意識を引き締めた。

 まだまだ、このレベルの相手をするには“効果”も“打点”も足りない。

 例えるなら《ゴーティスの双角アスカーン》に《宝玉獣ルビー・カーバンクル》のみで挑むようなこと。

 

「釘崎の前に、撤退だ虎杖!」

「でもっ──」

 

 そう叫んだ時だった。

 二人の間に、異形のヒトガタが現れる。ひとの形をしているのに、決定的に違う、化け物の姿が。

 明らかに特級。勝てない相手。

 二人とも、突然の強大な存在に動けない。

 うごけ、はやく、にげろ、と頭が警鐘を鳴らすと言うのに。

 特級呪霊はケタケタと笑う。

 

「う゛あ゙あ゙あ゙あ゙!!!」

 

 虎杖が絶叫した。ただ恐怖に突き動かされて。

 しかし、それを呪霊は軽々と避け、また笑うのみ。……舐められていた。

 そう、この呪霊は油断している。

 自分たちを、取るに足らない存在だと、侮っている。

 それが決闘者にとってどれほどのアドバンテージか、伏黒はよく理解していた。

 小学生、初めて遊海のまともなデッキに勝利したことを思い出す。

 

「逃げるぞ!!」

 

 すぐさま溢れ出す、兎、兎、兎。

 伏黒の式神、脱兎の大群だ。

 辺り一面が真っ白な毛色で染まる。

 

 伏黒も、虎杖も、特級呪霊をも飲み込んで、目の前を眩ませた。

 状況が理解できていない虎杖の首根っこを引っ掴み、伏黒は走る。それこそ、脱兎のように。

 

「今の俺たちに特級は無理だ! 逃げるぞ虎杖!」

「でも、釘崎、が」

「ここで全滅するのが一番最悪ってわかれよ!!」

 

 一人でもフィールドに残っているなら、次のドローに繋げられるなら、伏黒たちの勝ちだ。

 そのためには目先の犠牲を気にしてなんていられない。俺たちは「任務」でここに来てるんだぞ。

 呪霊を、祓うために戦ってるんだ。

 意地になって、死んで、呪霊も祓えませんでした。なんて最悪にも程がある。

 手札が無くなったら、ただ伏せるしか……イタズラに破壊されるしかなくなる。ジリ貧になる。

 そんな長期戦、奇跡が起きない限り負けだ。そしてその奇跡は、簡単に願うだけじゃ起きてくれない。

 妥協してでも、セットカードでも一枚残される道を選んだ方がよっぽどマシだ!

 

「俺が宿儺に変われば」

「黙ってろ!」

 

 それで被害が拡大したらどうすんだ!

 相手のモンスターを倒せても、自爆ダメージで撃沈したら意味ねーんだよ!!

 伏黒は必死に酸素を吸い込みながら、頭の中で叫んだ。虎杖には今度改めてその切り札の危険性を教えねばなるまい。

 

 今は逃げて、隠れて、逃げ切って……。

 (ドロー)に繋げろ、伏黒恵!!

 

「ゆ、かいさ、ここに──特級(ワンBOX)が、います!!」

「オーケー! これ終わったら開封式な!」

 

 そのパーカーは、爽やかなまでの青を映していた。

 

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