ゴーティス使い俺、呪術の次元は禁止カードが多すぎる【改訂版】 作:月日は花客
お前も水属性にしてやろうか。遊海です。
今日は任務帰り、たまにはちゃんとした飯を食いたいということでファミレスに来ています。普段は夏油君とかと飲みに行ったり、伏黒くんちでものを食べることもあるけど、食べないことも多いからね。
店の味が恋しくなる時期があるんですよ。
ということで、高専近くのファミレスにご入店。
「申し訳ありません、只今大変混み合っておりまして……相席でもよろしいですか?」
「かまいませんよ」
昼時のピークタイム、流石に店側も余裕が無かったらしい。特に潔癖でもないので相席は気にしない。ちゃちゃっと飯食って帰るだけだし。
何にしようかな〜。パスタ、グラタン、ピザ……サラダは欲しいな。
「すいません、こちらで相席しても構いませんか?」
「どうぞどうぞ」
「ありが──えっ」
店の一番奥、ちょうど壁で遮られた二人席。
そこに、あの時の呪霊調教師がいた。
「なんで、お前がここに……!」
「おおっと、ここでやり合うのは良そう。私のデラックストリプルアイスストロベリーバニラパフェが崩れてしまう」
「なんてもん食ってんだオイ呪詛師」
昇天ペガサスMIX盛りみたいなパフェを前に、俺は周りの視線も気にして渋々着席した。ただでさえ俺は腕のデュエルディスクで注目を浴びやすいのだ。
呪詛師はそんな俺に構わずパフェのアイスクリームを上機嫌で食べている。コイツが食べていると、いちごソースが違うものに思えてくるから不気味だ。
「で、なんで高専襲った謎の呪詛師がこんな所に?」
「君に会いに来た。……と言えば信じるかい?」
「ストーカーかよ、怖。なんの用」
「へぇ、意外と冷静なんだね」
「クソデカパフェ食ってるやつに言われてもなぁ……」
気が抜けると言うか、シリアスな空気になりきれないと言うか。
バニラとチョコといちごの三段アイスが目の前にあると、誰だって張り詰めた空気にはなれないだろう。ハート型のワッフル付きだし。
取り敢えず店員さんにハンバーグステーキと青豆サラダ、コーンクリームスープを頼む。久しぶりに来たわ〜、この世界にもあんだね、このファミレス。
昔は友達とよく来たわ、それぞれ好きなもの食いながら決闘するのが楽しくてね、学生時代の思い出。あー、あのメンバー今どうしてるのかな。
「まずは自己紹介でもしようか。私は羂索。気軽にけんちゃんとでも呼んでくれ」
「誰が呼ぶか。そんな羂索さんは俺に何の用ですか〜? 場合によっちゃ容赦しねぇよ」
「端的に言おう。君に興味がある」
「エッ」
俺は自分で自分を抱きしめて、少し羂索から距離を取った。鳥肌が立っている。
「え、なに、お前そっち系??」
「何か深刻な勘違いをされている気がする」
「羂索×遊海とかどこに需要があんの。コミケにも出ねぇよ。俺SMはちょっと……」
「本当に深刻な勘違いだね?? 同人誌とか腐ったお姉様方の方向性じゃないんだよ」
あ、こういうネタ知ってるんだコイツ……意外と俗っぽいところあるんだな。五条あたりには多分通じないぞコレ。
まぁそれはともかく、俺に興味……ね。
「仲間に引き抜こうって?」
「君は高専と縁深い。裏切るような事はしないだろう。私が興味があるのは君の身体……」
「俺女の子が好きです」
「いい加減そっちの考えを捨てろ。その不老の身体、どうやって手に入れたんだい?」
「……ああ」
そういう事か。
ここに来てから数十年。俺の見た目はここに来た大学生の姿から一切老いる事なく、若い姿を保っている。
呪霊との戦闘で受けた傷も痕に残らず、本当に「ここに来た時の姿」をずっと保っているのだ。睡眠も食事もいらないし、疲労も感じにくくなっている。
コレに関して、一回五条が本格的に調べたことがあった。六眼や医学、術式……それによって導き出されたのは、「何かが混ざり、何かが取り出されている」こと。
その
しかし、特に問題なく俺は生きているし、決闘は楽しい。だから俺自身がそれを気にすることはあまりなかったのだが……。
ここに来て、敵に興味を持たれてしまった。
「俺だけ情報を渡すのは不公平だと思わないか?」
「別にいいよ? 私が質問した数だけ、君にも質問する権利をあげよう。縛りを結んだっていい」
「……なんでそんな破格な」
「私はね、人類はもっと上のステージにいけると思っている。君はそれのヒントになるかもしれない。それに、面白い術式を持っているようだしね。喜びなよ、私からの好感度高いよ」
「なんも嬉しくねー」
何が嬉しくて敵から好かれにゃならんのだ。
しかし、百鬼夜行主犯格であろうこの男から情報を引き出せる機会は貴重だ。今聞いておかなければ、次いつ会えるかわからない。
真偽は後にして、有効活用するしかない。
「俺からも条件がある」
「なんだい?」
「この料理を俺が食べ切るまでが制限時間だ」
運ばれてきたハンバーグステーキたちは、美味しそうな湯気と香りを漂わせている。
その温度が、羂索の食べていたアイスをほのかに溶かした。
*
「つまり、君は遊戯王というカードゲームができるならその不老の秘密がわからなくても興味が無いと?」
「そうだな。別に今のところなにか苦労してるわけでも無いし……と、食い終わったのでここで終了でーす。カンカンカンカーン」
「時間切れか……。まぁ良い、なかなか面白い情報を得られたよ」
まぁ知らないもんは知らないので、回答にはほんのりの本当と嘘八百を混ぜました。本当の部分は「わからない、興味ない」の部分です。
と言っても適当なこと言っても詰められるだけだろうし、ほぼほぼ「知らん」で通したけどね。だって本当にわかんないし……。
今楽しく遊戯王できてるならそれで良いし……。
「それじゃあ今度はこっちの質問のターンだ。お前が質問した数だけこっちも聞かせてもらうぜ」
「どうぞ」
食後のコーヒーを飲みつつ、俺は居住まいを正した。すっかり食べ切られたパフェの大きな容器が邪魔で、羂索の顔がよく見えない。
俺の頭から胸くらいまであるクソデカパフェグラスを見るだけで胸焼けしそうだ。
「百鬼夜行の主犯はお前か?」
「そうだよ」
「なぜ百鬼夜行なんてものを起こした?」
「興味深いフリー呪術師が高専に入り浸っていると聞いて」
「お前にとって『人類のワンステージ上』とは?」
「色々ありすぎて語りきれないな」
「カードゲームの経験は?」
「花札」
「……遊戯王に興味ある?」
「ある」
「君有望だね、何使う? ニューロンやってる?」
「は?」
黙れ。俺は遊戯王をやれる相手なら例え呪詛師だろうと勧誘する。決闘者はデュエルで敵を拘束するもんだ。全てをデュエルで解決するんだよ、わかるよな?
「取り敢えず基本ルールの理解から始めようか。はいこちらにパワポがあります」
「うわっ急にプレゼン始めた怖」
「これで君も決闘者だ」
「タチの悪いネズミ講??」
もし、もしもだ、この不老の原因が俺の術式なのだとしたら。五条にすらわからない秘密が隠されているのだとしたら。
俺は決闘者としてもう一つステージを上がれるかもしれない。
その為には、なにやら色々研究してそうなコイツを利用するために
そう考えると、俺と羂索は案外似ているのか……?
考えたくないな。
*
「待て、『任意と強制』はわかった。じゃあ『対象に取る・取らない』はなんなんだ」
「えーお手持ちの資料45ページをご確認ください」
俺と羂索はそれから、遊戯王のルールについて講義を始めていた。
気づけば昼のピークタイムをすっかり過ぎ、夕方に差し掛かろうとしている。
都度料理や飲み物を注文して店の邪魔にならないようにしつつ、手持ちのパワポと資料によって遊戯王のルールを説明していた。
なんせ羂索、とてつもなく細かい部分にまで質問してくるのだ。
伏黒くんや夏油君たちの時は「裁定で迷ったら俺に聞いて」と言っていたところを、羂索は自分が納得するまで重箱の隅をつつくように質問してくる。
だから、俺も途中で上級者用裁定資料(少し前に暇つぶしついでに作っていた)を引っ張り出してきたわけである。
「ルール上《伝説の都アトランティス》が存在しないってどう言うことだ、あるじゃないか」
「《海》として扱うから……」
「じゃあ《アトランティスの戦士》が言ってる都アトランティスはなんなんだ」
「特殊裁定入ってるから……。というか、海デッキ使いたいの?」
「こういうルールの穴は知っておきたいだろう」
たぶんそれやり始めたら止まらないやつだぞ。俺も遊戯王wikiで特殊裁定一覧とか見たことあるけど、まともに頭に入ってこなかったもんな。ジャッジの人あれちゃんと覚えてんのかな、すげーな。
「デッキ選び先にやれば良いのに」
「先にルールを知っておかないと不便だろう」
「そりゃそうだけどさぁ……そろそろカラオケ行こうぜ、店員の視線が痛い」
「それもそうか」
……今のこの状況を高専の誰かに見られたら死ねるなぁと思いながら、俺は近所のカラオケに予約の連絡を入れるのであった。