ゴーティス使い俺、呪術の次元は禁止カードが多すぎる【改訂版】   作:月日は花客

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☆26:ゴーティスのカラオケ

 

 俺は羂索とカラオケに来ていた。

 羂索に遊戯王を布教し、解説し、沼に沈めるために。スーパーフリーでドリンクバー付き。メロンソーダを飲みながら、俺は遊戯王特殊裁定シリーズのパワポを作っていた。

 

「そういえば、どうして君は呪詛師に自分の術式を事細かに教えてくれるのかな。術式開示による威力増強を考えてみたが、どうにもこれは初見殺しの方が強い」

 

 期間限定パイン果肉入りスイートモヒートを飲みながら、俺に尋ねてくる羂索。男のみカラオケでキラキラ女子が飲むような酒を飲むな。

 その言葉に俺はパワポに文字を打ち込む手を止める。

 確かに、俺が今やっているのは敵に塩を送る行為だ。なんならサシでファミレスとカラオケに行っている時点で裏切り者だと呪術師に蔑まれてもしょうがないことをしている。その自覚はある。

 ただ、それは今の俺にとって然程重要ではないのだ。

 

「優先順位の問題……かな」

「優先順位?」

「俺にとって遊戯王は全てに優先される最重要事項なんだよ」

 

 俺ってさ、戸籍無いわけ。血縁も、幼少期の友達も、大学の籍も家も無い。行ってしまえば、今すぐ呪霊に殺されても何にも残らないような、異物だ。

 そんな世界に放り出されて、それでも俺から離れなかったのが遊戯王だ。

 お袋の味を忘れ、大学の所属を忘れ、友達の声を忘れた俺に寄り添ってくれたのが遊戯王だ。ゴーティスだ。俺のデッキだ。だから、俺の精神は遊戯王に依存している。

 

「遊戯王が無いと死ぬんだよ、俺。呪霊への対抗手段をなくすとかじゃなくて、メンタルとか気力とかが」

「自分の術式にそれ程までに依存している術師も珍しいね。確かに一つのアイデンティティになっているだろうけど、そこまでかい?」

「んー、例えば朝起きたら俺の手元から全てのカードが消えて、高専のみんなが遊戯王の存在を忘れたとするだろ? その瞬間、俺は首吊って死ぬと思う」

 

 だって、前いた世界から付き添ってくれた遊戯王が無い世界では、俺は本当の孤独になってしまう。

 この世界がいくら前の世界と近くて、遊戯王以外に知ってる作品があったとしても、俺にとって前の世界を感じさせてくれる、孤独を癒してくれる物は遊戯王しかない。

 辛いぜ〜? 今まで当たり前にいた家族や友人が丸ごと消えんの。戸籍だって、言わば「自分がその土地にいる証」なわけだしさ。

 喪失感が無かったわけじゃない。それでもひとり知らない世界に投げられても狂わずいれたのは、遊戯王っていう存在があったからだ。

 たとえ俺しか遊戯王を知らなくても、これが俺を現世に繋ぎ止めてくれた。

 

「……高専の仲間に裏切り者と追われても、遊戯王があるなら良い?」

「良い。責任とかはもちろん感じるけど、結局は遊戯王があるなら良いか! ってなるな、たぶん。呪霊を倒すのだって、正直人を助けたいとかじゃないんだよ。倒せばカードが落ちるから、倒してる」

 

 人を助けることに達成感は感じるし、助かってよかったとも思うけど、俺は割と人を見捨ててきている。

 判断力の話だ。俺の仕事は呪霊を祓うことで、祓わないとカードがドロップしない。たとえ呪霊が子どもを人質にとろうが、子ども一人の犠牲で十の人間が助かるなら俺は子どもごと呪霊を倒してきた。

 俺って、トロッコ問題でこっちを選ぶタイプだったんだなと、初めて思った。

 それに対して、なにか「俺は悪くない」だとか「仕方がなかった」とは言わない。

 ただ、俺にはそれしかできなかった。それだけだ。

 

 人間、非常時にはいくらでも冷酷になれる。俺にとって、この世界に来た時から何十年経とうがずっと非常時なのだと思う。

 自分の精神を保つために、カードのために人を犠牲にする。カードのために呪霊を祓い、敵だろうが決闘者に勧誘する。

 遊戯王という、自分が存在している証を集め続ける。

 

「五条とか夏油は割とクズってみんなから呼ばれてるけどさ、本当は俺みたいなやつをクズって言うんだよ」

「そうかい? 私は呪術に関わる者はそれくらい狂ってないといけないと思うけどな」

「わー、わかってたけどアンタもなかなかにカスだな」

「お褒めいただき光栄です」

 

 別に高専のメンバーに感情を偽ってたわけじゃない。

 夏油君が人の道を外れずにいてくれて安心したし、二年生の成長に驚いたし、伏黒くんに懐かれていて嬉しい。

 ただ、俺が遊戯王を布教したのは、彼らのためになるだろうと言う感情三割と、自分の遊戯王の欲求を満たすため七割だ。

 俺にとって異世界であるこの場所で、他人と関わるツールが遊戯王しか無いんだ。なんせ経験してきた世界が、言葉通り違うんだから。

 ま、これは俺のコミュ障を上手く誤魔化してるだけな気もするけど。

 

「だからさー、なんていうの? お前が最悪の呪詛師だろうが、どんだけ人殺してようが、関係無いんだよね。遊戯王やってくれるなら」

「遊戯王をやらないと言ったら?」

「今ここでブチ殺して高専に突き出すよ?」

 

 遊戯王やってくんないなら呪詛師に、俺の術式を悪い奴らに言いふらす可能性のある奴に用はないわな。

 そう言うと、羂索は思いっきり笑い始めた。ここがカラオケ部屋でよかったと思うほどの大爆笑だ。

 

「良い! 良いね! その利己的なエゴと破綻した思想! あー、呪術師ってこうでなきゃ」

「うへー、趣味悪いね」

「君の遊戯王にかける感情はわかった。なるほど、そこまでの感情を自分の術式(道具)に向けるか。面白い、面白いぞ……!」

 

 なんか羂索がひとりで盛り上がり始めている。俺はそれを放置してメロンソーダを飲み干した。

 シュワシュワと強めの炭酸が話疲れた喉に追い打ちをかけてくる。ホットのお茶とかにすればよかった。

 

「そこまでの感情を向けられる遊戯王というゲーム……すごく興味が湧くよ。ルールは複雑で煩雑だがよくできているし、なにより解読できない不思議な力を感じる」

「ふーん? 俺としては遊戯王やってくれるならなんでも良いぜ。さっさとルール覚えてデッキ選べ〜」

 

 はー、シリアスはもうこれで終わりっ!

 なんか雰囲気出てたけど、俺はちゃんと高専メンバー好きですから! 今の状況にちゃんと罪悪感も感じてますから!

 切腹とか顔合わせられないとかまではいかないわけだけども。

 だって遊戯王しか俺の前の世界を繋ぐものないんだもの。遊戯王が無かったら今頃発狂する若年男性として精神病院にボッシュートだったかもしれないんだぜ? オマケに戸籍親族縁者無し。

 そりゃ執着もするってもんですわ。前の世界から強かったゴーティス愛が更に深まっておりますわよ。

 

「あ、でも遊戯王やらない呪詛師とつるむ気はないから。お前が他の呪詛師連れてきてそいつが遊戯王やらないって時は普通にその呪詛師お縄させてもらうんでヨロシク」

「それは私もわかってるさ。呪霊も同様だろう?」

「そりゃカードになりますんでねぇ」

 

 対戦相手もそうだけど、カードプール増やすことも大事だからね。呪霊さんは大人しくパックになってもろて。

 

「じゃあ特殊裁定の解説の続きなんだけど」

「はいはい」

 

 羂索はルールちゃんと説明しないとカード選ぼうとしないのが面倒だなぁ……。適当にパッションと第六感で選べば良いのに。そしたら実践形式でルール叩き込めて楽なんだけどな〜。

 そう思いながら、俺はパワポ資料をクリックするのであった。







遊海呪詛師落ちエンドとかはしません。ご安心ください。
ただ羂索を仲間に引き入れる以上一度遊海の思想は入れといたほうがいいかな〜と思い書きました。
遊海はちゃんと高専メンバーを大事に思ってます。それ以上に遊戯王が大切な半分発狂済みです。
羂索のエミュわかんないんで違和感あったら申し訳ない。
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