ゴーティス使い俺、呪術の次元は禁止カードが多すぎる【改訂版】 作:月日は花客
「宙ってさぁ、ゴーティス以外のテーマって使わないの?」
カードショップ“雨だれ屋”は俺達が常連となっているカードショップだ。
遊戯王のカードが多く入荷していて、新弾の告知も早い。定期的に大会も行われている、決闘者にとってホットな場所である。通販システムもあるのが助かるところだ。
俺は手癖になったシャッフルを止めて、対面に座る青髪の親友に目線を向けた。
大学デビュー! と笑って染めたらしい青は、ふわんだりぃずの三匹の鳥を思わせた。白いメッシュもご丁寧に入っている。
穏やかに細められた瞳は、純粋な疑問を映している。
コイツは
「えー? なんか、浮気してる気分になるから……かね」
「浮気かー、なんかわかるかも。僕もふわんだりぃず以外のデッキ使うと罪悪感あるもの」
所謂嫁テーマ、というものを決めてしまうと、サブデッキや気分転換に他テーマを触るのが偲びなくなる。なんだか嫁テーマから視線……あり得ないが……を感じてしまうのだ。
じっとりとした湿度を感じるというか、彼女に口紅のついたシャツを見られた気分だ。彼女いた事ないけど。
「僕さ、浮気される側の気持ちがわかるから余計にね」
「ああ……伝説の四股事件な……」
「やめて、思い出したくない。あれは記憶の底にしまってあるんだよ」
旅途はその穏やかな雰囲気と、カードゲーマーにはあるまじき(こう言うのはどうかと思うが)清潔さで、モテる。
高校の時点でバレンタインにチョコを何個ももらっていたし、実際告白もされていた。高校時代は受験を理由に断っていたのだが、大学に進学して重荷も取れたため、付き合ってみた彼女がとんでもねぇ奴だったのだ。
四股。四股である。信じられるだろうか。
一応、「旅途くんが本命なの!」と叫んでいたが、浮気は浮気。判明したのが付き合って一年目の記念日だったと言うのだから、可哀想で仕方がない。旅途の他に三人の男にブランドバッグや化粧品を貢がせ、それを纏って旅途とのデートに行っていたのだ。寒気がする。
勿論旅途は別れた。すっぱりと、カードゲーマー特有の判断の速さで関係を切った。
それから少し女性恐怖症気味なのだが……大丈夫だろうか?
俺としてはリア充め……と付き合っていた頃は思っていたが、四股が判明してからは流石に同情したし、俺も少し女性が怖くなった。ウワキダメゼッタイ。
そんな事件があってから、旅途は更に遊戯王にのめり込んでいた。遊戯王は男性比率が高く、カドショにも大抵男子しかいない。それが少し安心材料になっているのかも。女性とすれ違う時、こっそりと離れていくのを俺は知っているぞ。
「僕もふわんだりぃず以外のテーマをメインで使う気は無いけど、たまに翼の知識量が羨ましくって」
「ああ、アイツはコロコロデッキ変えてたもんな〜」
こちらも大学デビューと青緑のメッシュとピアスをバチバチに開けた陽キャである。カードゲーマーには珍しい根明だ。
しかし凝り性というか、知識を蓄えるのが好きな奴で、いろんなデッキに手を出しては展開を理解し、満足したらまたテーマを変える……と言うことを繰り返していた。
最終的にクリアウィングに落ち着いたようだが、アイツのテーマ知識は凄まじい。そこからくるメタはかなり厄介で、俺たち三人の中では多分一番遊戯王を知っているだろう。
因みにマスターデュエル重課金勢だ。廃課金にならないかハラハラと見守っている。
「やっぱ使わないとわからない穴とか弱点があるからさ、せめてMDで試すなりした方がいいんだろうけど」
「ふわんだりぃずは外部テーマ入れ辛いもんな〜。シムルグとか帝王とか……アドバンス召喚に依存しがちだし」
「うう……ふわんだりぃず新規はよ」
「ゴーティス新規もはよ」
なんならイラスト違いとかでもいいから、恵んでくれ運営。せめてスリーブとかカードケースだけでも! オタクは供給に飢えるものなんだぞ!!
「てか、もうこんな時間かぁ、昼飯行こうぜ」
「確かに。テキトーにファミレスかどっか行こうか。……あ、翼が今こっち向かってるって」
「あそう? ならもう一決闘して待ってるか」
片付けかけたプレイマットを敷き直し、俺と旅途はお互いのデッキをシャッフルする。
そしてニューロンを起動し、ダイスロール。
先行は旅途だった。
「完璧な手札だ……!」
「はいはいカンペカンペ」
「《ふわんだりぃず×ろびーな》を召喚」
「《ゴーティスの陰影スノーピオス》の効果発動」
「あ、クソが」
「へへーんやーい初動札クソ細〜」
「はっはっは、泣かす。翼が来るまでに絶対泣かす」
「害鳥駆除の時間だぜ」
カードゲーマー特有のクソ煽りをかましながら、俺たちは試合を繰り広げていく。
《ふわんだりぃず×えんぺん》の召喚を阻止し、《ゴーティスの双角アスカーン》の召喚を阻止され、《ゴーティス・フューリー》を発動し、《ふわんだりぃずと怖い海》を発動され。
「ダボカス害鳥〜!!」
「雑魚が!!」
「ふざけんな焼き鳥にしてやる」
「あ? 三枚おろししてやんよ」
カードゲーマー特有のクソ煽り(2回目)を挟みながらも最後には俺が勝った。
これで今日は5戦2勝だ。負けてるって? しょーがねーだろ相性悪いんだよ!!
「おーおー、やってんね〜」
「あ、翼。ようやく来た」
「はー、煽りあってたら腹減ったわ。ファミレス行こうぜファミレス」
「お昼食べた後どうする?」
「テキトーにカラオケ? あ、翼はシフト今日?」
「んや、今日明日は休み〜。シフトあったらこっち来てないっての」
「おー、そっか。じゃあ旅途、ゴチになりまーす」
「ふざけんな」
勿論、クソ煽りも本気で言ってるわけじゃ無い。決闘中のお遊びという奴だ。もっと語録が飛び交う日もあるが、語録はつい大声を出してしまうのでカラオケや誰かの家でしかやれない。
もっと「ミーのターンナノーネ!」「変な語尾ザウルス」「モンスターではない……神だ!」「AIBOー!!」とか言い合いたいんだけどな。いかんせん店内なもので……。
「はー、何食べるー?」
「肉、肉、ハンバーグ!」
「スパゲッティの気分」
「僕はピザにしようかな〜」
なんてことない日常だ。平和な日々だ。
しかしそれが叶わなくなった今、あの日が無性に恋しくなる夜がある。
呪い合うには、まだこの記憶が鮮烈にのこっている。
お察しの通り、遊海は呪術メンバーには決闘中かなり猫を被っています。
相手のカードを害鳥呼ばわりしたり、語録を飛ばしあったりもしません。だいぶマナーの良い決闘をしています。
遊海がそんな感じなので、伏黒くんたちはカードゲーマー特有のクソ煽り現象に侵されてはいません。夏油と五条は除く。
遊海は猫を引っ剥がすとかなり口悪いですし、生意気な性格をしていました。月日でかなり丸くなってます。諦めたとも言う。