ゴーティス使い俺、呪術の次元は禁止カードが多すぎる【改訂版】 作:月日は花客
伏黒は決闘者であるが、その前に呪術師である。
宝玉獣を愛し、最近はキマイラにも手を出し、更にその腕を磨く決闘者なのだが、その前の前提として、呪術師なのである。
遊海が羂索とズァークデッキ強い弱い論争をしている頃、伏黒、虎杖、釘崎には任務が降っていた。
なんでも、自宅マンションでのエントランスで呪霊による刺殺が起こっているらしかった。しかも連続で。
そして幾つかの情報収集や実践(バンジー)を経て、たどり着いたのが八十八橋下河川を超えた先。
呪霊の気配どころか、視認できるほどの生得領域。
そして第二の呪霊の存在。
伏黒にとって、これは姉、津美紀にも関わる重要な事件だ。今後のことも踏まえ、ここで確実に潰しておきたい案件。
「虎杖は釘崎の方へいけ! こっちは俺だけでなんとかなる!!」
どこかへと吸い込まれた釘崎を追うように虎杖に指示を出す。
この呪霊はただのモグラ叩き。そこまで苦戦する相手じゃない。
「戦闘には使えない……ね」
遊海はカードを持つ者全員に何度も言いふくめていた。「これは戦闘では使えない」と。
あくまでも遊海が近くで呪力を流すことで実物として顕現され、さらに遊戯王のルールによる縛りによってその強力な力を発揮できる。その遊戯王ルールは遊海の体に刻まれたものであって、たとえ同じように伏黒が縛りを課してカードに呪力を流しても、それはただの仮想現実的な立体に過ぎない。
触れれば透けて、攻撃もできない。かろうじて目眩しに使えるくらいか。
ただ、それは今大きな価値となる。
「《宝玉獣─ルビー・カーバンクル》! 《宝玉獣─サファイア・ペガサス》! そして玉犬、呪霊が出てくる穴を見はれ!」
そもそも、「モンスターは攻撃できない」事を知っているのはカードを持つ者及び遊海と関係のある者のみ。
一介の呪霊にそんなものはわからない、知らない。つまり、モンスターも同じように攻撃してくるかもしれないという“可能性”を与えることになる。
「これでっ……! 終わりだ!」
その“可能性”は大いに呪霊の動きを鈍らせた。
「終わった……これで二人の加勢に」
そう言いかけた時だった。
ぞくりと、あの少年院で感じた怖気と似たようなものが背筋を伝う。
それは特級の訪れ。格上の証拠。絶命の危機。
「っ……!?」
殴り込まれた呪力の塊が頭に掠る。
確実に宿儺の指を取り込んだ相手だ。しかも少年院のものとはレベルが違う。
眼前に迫る拳に、咄嗟に玉犬・渾に体を守らせながら、伏黒の脳内には過去の出来事が走馬灯のように駆け巡り始めた。
「恵ってさぁ、本気出したことないでしょ」
「死ぬ時は、独りだよ」
「もっと欲張れ」
それは白髪の、第一の師の言葉。いつもは軽薄なのに、時折重たく血の匂いがする言葉を吐く人。それは今までの経験や、祓ってきた呪霊の数、救えなかった人の屍体の上に立つが故の重厚さだった。
それは伏黒を奮い立たせる言葉でもあったが、少しばかり、それより長く二人目の師……遊海の言葉が脳裏を伝う。まるでシャッフルされるカードのような、紙を切る音がBGMのように流れながら。
「最強のカード、というものは存在しないが、存在する」
「……? どういうことですか?」
それは幼い頃、伏黒がふと口にした「最強のカードが欲しい」という言葉に反応した物だった。
すでに何回かの決闘を終えた後で、床に広げたプレイマットにはカードが散らばっている。
遊海はそれを整理しながら、淡々と話し始めた。
「最強のカードや奥の手、最終手段というカードは存在しない。というか、決めるのをやめといたほうがいいかな」
「なんでですか?」
「それに頼りきりになるからさ。例えばそうだなぁ……伏黒くん、君の術式に、出したら絶対に戦闘に勝てる式神がいたとするじゃない?」
「……!」
その時、伏黒はある式神を思い出していた。それの存在を遊海に話したことはないが、否応にもそれを想像してしまう。
十種の最後の式を。
「それを出したらぜっったいに戦いに勝てる。ならそれを出せばいい。それさえ出せば、自分は勝てるんだ。……ここまででどう思う?」
「え……? だ、出せばいいじゃないですか。勝てるんだから」
「んとねー、今の伏黒くんには難しいかもしれないけど、奥の手が完全な状態で出ることって意外と少ないし大体巻き返せないんだ」
「へ?」
思わぬ返答に、呆けた声が出る。
「奥の手なんて出すことになったら、相手の盤面は大抵完成してるわけじゃん? ステータスを下げられたら? 無効化される効果を残されていたら? セットカードがあったら? リリースされたら? 裏守備にされたら? な、ただ“出す”だけじゃちょっと考えるだけでこんだけの対処法が浮かぶ」
「ええと、それは遊戯王の話で」
「伏黒くんはその遊戯王に近い事を今術式で練習しているよね?」
その言葉にグッと喉が詰まる。
まさに融合や魔法カード化を試している最中で、それは遊戯王のルールから着想を得た拡張術式だ。
自分が遊戯王と似たような事をしているのだから、相手がしてこないとは断言できない。
「それに、もし相手がその奥の手を事前に知ってたら対策なんていくらでも張られる。メタカードを入れられる可能性だってある。なにより、使えない状況にさせる事が一番手っ取り早いだろうね」
「使えない、状況……」
「……例えば、俺だったら右腕を切り落とされたらその時点で負けが確定する。子どもにこんな話したくはないけどさ、決闘者としての俺は死ぬし、術式も使えなくなる。それか声を奪うとかだな。宣言ができないとカードの効果が使えないから」
つらつらと、遊海はなんでもないように自分の弱点を挙げていった。それが当然だと、理解しているように。
幼い心で、遊海はずっと決闘をしていて、自分と闘ってくれるのだと思っていた伏黒には衝撃の言葉だった。
右腕を取られただけで、術師としての完全な敗北。それは己にも言えた事だった。影法師は、両手がないと作れない。
「奥の手も同じで、俺で言う右手を切り落とされる状況に陥るかもしれない。それに奥の手に頼りきりの相手の動きは読みやすい。伏黒くんの場合、さっきの試合どうしても《究極宝玉神レインボー・ドラゴン・オーバー・ドライブ》を出したいだろう?」
「はい……」
「だから俺は究極宝玉神モンスターを除外したり、融合を止めるカードを使ったよな。ほら、一点を止められただけで戦況は宙ぶらりん。盤面には何も無し、手札も無い。そしてダイレクトアタックを決められて終わり」
まさについさっきの決闘での負け方を指摘され、伏黒はギュッと己の服を握った。
油断していたのだ。完全にこちらの流れが来ていた。ついに本気の遊海に勝てると、そう心に隙があった。
だがそこを突かれ、《融合解除》からのゴーティスの展開を止められず盤面を空っぽにされて負けた。オーバードライブを出せば、このモンスターさえ出す事ができれば勝てると、そう思っていたのに。
フィールドに立たせてすらもらえなかった。
「だから、奥の手や最終手段なんてカードも、最強カードも存在しないんだよ」
「じゃあなぜ、『ある』とも言ったんですか」
「それはな……エースモンスターこそが、最強カードだからだ」
遊海はさっきまでの真顔とは打って変わって、にやりと悪戯っ子のような笑みを浮かべた。
「人によってエースモンスターの定義は様々。展開に必ず必要な初動札であったり、そこから導かれる最後の盤面に立つモンスターであったり、個人的にただ好きなだけ……そんなカードだったりする」
「それが、『最強』?」
「エースモンスターを信じろ。このモンスターが共に戦うから、自分は絶対に勝つって考えるんだ。奥の手じゃ無い、いつも心にある、絶対に心を支えてくれるそんなカードを!」
俺にももちろん、そのカードはいるんでね。
そう言った遊海の手には《最果てのゴーティス》が握られていた。
「今ならその言葉がわかります……俺はもう、奥の手に頼ったりなんかしない」
伏黒は、そっと手を組む。両手を、何かを挟むように、何かを掴むように、平行に、指を牙のように曲げて。
「玉犬二体と蝦蟇で……シンクロ召喚」
次回オリジナル式神出るので苦手な方は注意。
遊海のイメージ画像を書いてみました。髪型派手にしすぎた気がする。
見なくても本編に支障はないです。
ただこんなイメージで書いてるよーというだけですね。
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