ゴーティス使い俺、呪術の次元は禁止カードが多すぎる【改訂版】   作:月日は花客

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☆37:カラクリの与幸吉

 

 与幸吉は不幸だった。

 いや、現在進行形で不幸だ。

 天与呪縛によって満足に体を動かせず、傀儡操術によって偽りの身体でしか学校生活を送れない。その代わりに得た膨大な術式範囲と呪力も、彼にとっては自らの現状を戒める楔にしか思えなかった。

 

「だから裏切った」

 

 呪霊に頼ってでも正常な体を手に入れたかったのはそうだ。何も否定できない。

 裏切り者と罵られて、殺されても仕方のないことをしている。

 しかし後悔はしていない。この選択は間違っていなかった。そう信じている。

 いや、少し間違っていたかもしれない。彼女は自分のことを軽蔑するだろうか、失望するだろうか。それを考えると、なんだか生きること全てを辞めたくなるので考えないようにしている。

 

「遅かったな、忘れられたかと思ったぞ」

 

 これは彼女を騙し続けた罰なのだ。

 与幸吉は不幸だったが、その中の一握りの幸いが彼女だった。

 扉の前に影が二つ。真人と……羂索。百鬼夜行の主犯、謎の呪詛師と最悪の特級呪霊。吐くほど嫌いなそいつらに頼るしか無い現状。

 ああ、本当に不幸だ。

 

「私達に協力し情報を提供するその対価として、真人の『無為転変』で体を治す。そう言う縛りを私たちは彼と結んでいるからね。殺すのは治した後だ」

 

 いけしゃあしゃあと、さも縛りを大事にしてますよとアピールするコイツが嫌いだ。

 

「呪霊と議論する気はない。さっさと治せ、下衆」

 

 真人は下手に育てられた餓鬼のように我儘を言う。そんな無駄口を叩いている暇があったら、さっさと自分を治して殺し合ってくれ。

 自分は裏切り者だが同時に京都校のメンバーを大切に思っている。共に切磋琢磨してきた仲間だと認識している。

 その二律背反に苦しんだ夜が幾夜もあった。それでも己の体を諦めきれなかった。

 

「ほらよ」

 

 ……体の痛みが消えていく。感覚が正常と言われるものに変わっていく。認めたくないが、これは真人にしかできない芸当だ。

 しかしここで喜ぶことは、まだできない。

 まだやる事が残っている。

 呪ってやる。

 殺してやる。

 彼女の障害になるもの全てを焼き払う。

 あの眩しさに、自分の名前を呪わずにいられたのだから。

 

 

「シン・陰流『簡易領域』」

 

 全て見てきた。

 

 これでみんなと会うんだ。どんな罵詈雑言を吐かれたって構わない。生身で、この身で、皆んなに────!!

 

「無理だよ」

 

 操縦席が破壊された。何故? 確実に簡易領域をぶち込んだはず。何故? 何故生きている?

 いや違う、あれはデコイ? 倒された、フリ?

 

 死ぬ。

 

 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ。

 

「───あ、」

 

 気がつけば、()()()()を口にしていた。

 交流戦、伏黒に言われた特殊召喚条件。

 “本当の命の危機”にだけ使えと言われた、あの魔法カード。

 

「いいか、本当に命の危機の時だけだ。死が頭を埋め尽くした時だけに、言え」

「コンナモノデ、本当ニイイノカ?」

「いいんだ。あの人にとって、アレは一番の餌になる」

 

 そんな言葉を交わした、あの穏やかな時間。

 京都校、東京校生徒全員が知っている、秘密の合言葉。

 

 それは、遊戯王でいうところの……速攻魔法、発動。

 

「ここにっ……特級(1BOX)がいる! 遊海!」

「死に晒せよ特級呪霊ー!! BOX置いてけ! お前BOXだろ!? なぁ! BOX置いてけ!!!!」

 

 あまりにも簡単に現れた青色に、与幸吉は初めて新生した身体で笑みを浮かべた。

 

 *

 

 ドーモ、特級呪霊=サン。遊海デス。

 しめやかに爆発四散して消えろ、1BOX置いてけ!!!!

 

 1BOXの気配を感じて飛び出した先は、なんだか未来的なコックピットの中だった。

 とりあえず目の前にいた邪悪そうな物体を蹴っ飛ばし、開いていた大穴から脱出。ふむ、どうやらここはダムの上らしい。

 

「なんでってまたこんな所に特級が……って、羂索!?」

「まさか君が来るとはね、遊海。1BOXがあると言われたらどこにでも現れるのかい?」

「いやなんか直感で飛んできただけだけど……ってメカぁ!? クソでかいメカがいる!! なにこれ!?」

「何一つ情報を理解できていないようで悪いが、あの呪霊を祓ってくれ」

「え誰?」

「使用デッキはカラクリだ」

「おk把握よしぶち殺すぞ特級呪霊」

 

 なーんだメカ丸くんかぁ!! 本体ここにいたんだね!

 どうやらさっき蹴っ飛ばしたのが特級呪霊らしいので、俺はデッキをデュエルディスクにセットして構えた。

 

「羂索……お前、また特級呪霊引き連れて悪さしてんのか」

「悪いが私は決闘者である前に呪詛師なんだ。それにこれは君と知り合う前から交わしていた縛りだった」

「そうか……取り敢えず、そこにいる呪霊は祓──」

「真人、帰るよ」

 

 は!?

 1BOXを逃す俺ではないのだが??

 そう思って動こうとした時。

 

「バラしてもいいのかい?」

「……っ!!」

 

 その言葉に固まってしまう。アイツと俺の関係は、そのまま俺の人質となって縛り付けている。

 あの時遊戯王に誘ったのはプレミだったかもしれない。

 だが、こちらにも手はある。

 

「そうか……なら、この《オッドアイズ・フュージョン》はストレージに埋めさせてもらう」

「なっ、それは私の覇王龍ズァークに相性の良い……!」

「適当にストレージの中に入れる。どうせ明日はワクワクストレージ漁り祭りの日だからな、それが終わったら俺ですらどこにあるかわからなくなる」

「グッ……脅しか」

「さっきからなんの話してんの? 羂索様子おかしくない?」

 

 特級呪霊が困惑したように羂索を見た。

 羂索は一度覇王龍ズァークを相棒にしたいと思ってしまったら何がなんでも実用化したいようで、相性の良いカードをニューロンで探しては仮回しをしている。

 《オッドアイズ・フュージョン》はその中でも特に欲しがっていたカードだ。さっきの任務のパックで偶然出た。まさかこのカードも開封されて早々人質……カード質? に取られるとは思っても見なかっただろう。

 

「……いや、まだズァークのためのカードは他にも候補がある。何もそれに拘らなくたって」

「《轟雷帝ザボルグ》もある」

「ぐぅぅうっ……!!」

「本当になんの話してるの?? なんでダメージ受けてんの??」

 

 特級呪霊の困惑が止まらない。なんならメカ丸くんの困惑も止まらない。

 まぁまさか俺と羂索が繋がってるなんて考えられないだろうしなー、時間とか調整して会ってたし。

 

「わかった……高専には言わない。だが真人がやられるのは困る。適当に調教した特級呪霊一体をリリースするからそのカードは今度私に渡せ……」

「まぁ同じ1BOXならそれでいい。条件を飲もう」

 

 カード欲に負けるラスボス枠みてぇな奴ってどう思う?

 いやまぁ遊戯王って割とそんなもんか。

 羂索は特級呪霊を連れて去っていった。適当な別の特級呪霊を置き去りにして。

 哀れ生贄にされた特級呪霊はさっさと除外して祓う。主人が放棄したからか何も抵抗してこなかった。1BOXうまうま。

 

「……で、どういうこと?」

「俺もそれは聞きたいんだが」

 

 メカ丸くんに仔細を問えば、おんなじことをキッパリ言われてしまった。

 まぁそりゃそう。

 うーん、どうすっかな……。

 

「じゃあ先に俺が事情を言う、そしてメカ丸くんも事情を言う。そして俺たちは共犯者になって、お互いのことを他人に明かさない。この縛りでどうだ?」

「…………わかった。で、アンタは羂索と繋がっていたのか」

「繋がってるって言うか……決闘者仲間なんだよな」

「は?」

 

 説明が長くなるぞ〜これ☆

 取り敢えず座ろうぜ。と俺は超巨大メカの残骸に腰をかけつつ、ついでに持ってきた某コンビニのスナック菓子を頬張った。

 その姿にメカ丸くんの頬が引き攣っていたことは、見ないふりをした。

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