ゴーティス使い俺、呪術の次元は禁止カードが多すぎる【改訂版】 作:月日は花客
「喜びなさい東京校共。私たちが直々にリベンジしにやってきてあげたわ」
「あ゙? 帰れ」
どうも中継の遊海です。今、俺は東京校の教室にいます。京都校のみんなと一緒に。
あれから京都メンバーと決闘の講義や実戦を経て、彼らは大きく成長した。
決闘者として。
あ、与君の罪は許されました。俺が弁護したのもあるし、本質的には京都校メンバーを守っていたとわかったからだ。
そのかわり京都メンバー全員から一発ずつ殴られていたけれど、本人は嬉しそうだったのでヨシとしよう。
一番効いていたのは三輪ちゃんの弱パンで、受けた瞬間吐血しながら倒れたよ。それを俺たちは微笑ましいものを見る目で眺めてたけど。あわてる三輪ちゃんにさらに死んでいた。いやぁ春が来てますねぇ。
与君も遅れて決闘講座に入り、彼らはもう立派な決闘者。これなら東京メンバーにも良い試合ができるだろうと俺が太鼓判を押したあたりで、《次元の裂け目》を使って東京へご招待したのである。
東京メンバー全員に任務が無い時間を見計らってね。
「遊海……お前最近見ないと思ったら京都にいたのか」
「いくら」
「で、京都メンバーが私たちにリベンジ? そんなに暇じゃ無いんですけど」
「あら、じゃあそのプレイマットに広げられたカードはなんなのかしら?」
「はい喧嘩しない」
マジで釘崎ちゃんと真依ちゃんは相性が悪いのか、会うたびに即喧嘩ムードになる。どうにかしてくれと頼もうにも男性陣が頼りなさ過ぎる。真希ちゃんは火に油を注ぐだけだし。
「私の《魅惑の女王》でブラックローズをコテンパンにしてあげる!」
「まぁこんな感じでみんなリベンジがしたいそうなので付き合ってあげてください。優勝者にはこちらの1BOX開封権をあげよう」
「「やります」」
与君の時にゲットした1BOXをとっておいたのだ。これなら東京メンバーもやる気出るだろうて。
ということでデュエルトーナメント・オブ・高専交流回part2はーじまーるよー。
「トーナメント表はクジな、はいこれ引いて名前書いといて。使用デッキは自由、ポイント制は継続だけど東京側のハンデは無し。リミットレギュレーションの確認は怠るなよ〜」
急な任務さえ降りなければ俺も参加できるぜ!
と言うところで俺の仕事用携帯が高らかに鳴った。
「はいもしもし」
「任務だよ」
「ドチクショウ」
伏黒君がジャッジできるほどに成長してて良かった。俺の代わりにやっててくれ頼む。
「ごめーん! 俺任務入った! あとはお若い皆さんでご自由にー!!」
「なんだぁしゃーねーなぁ」
「頑張ってくださいねー!」
みんなの声援を受けつつ、俺は任務に向かう。
いや、任務ではない。
その携帯端末に書かれていた名前は、「羂索」だった。
*
「で、わざわざ呼び出してどういうつもりだよ? 羂索サーン」
「まぁそう警戒しないでよ、このプレミアムサブレチョコバナナシーソルベアイスクレープを食べている間だけでいいからさ」
「なんで毎回俺と会う時甘いもん食べてんの?」
五条悟もだけど、強いやつは甘いもの食べないと死ぬの?
「今回はね、まぁひとつ提案しに呼んだのさ」
「ズァークデッキの構成がついに決まったのか?」
「そっちはまだ。君、自分の術式をよくわかってないだろう」
そう言われて、俺は視線をデュエルディスクにみやった。
外せない、いつの間にか現れていたこのディスク。何故か実体化するカードたち。
確かに、俺は自分の術式をよくわかっていない。
「五条悟に調べさせたんだろう? うちならもっと細かく調べられる」
「んー、却下」
「何故? 術式の理解を深めることは君にとっても良いことのはずだ」
「なら俺も言うけど、俺はお前を決闘者としては信用しているが呪詛師としては信用していない。お前んとこに人を改造できる呪霊がいるだろ? そんなやつに自分の術式を暴かせる奴がいるかよ」
そう言うと、羂索は笑った。
「ははは! 確かにそれはそうだ。悪いね、こちらの好奇心を優先しすぎた提案だった」
「どーせ断られるのわかってて言ったんだろ、この狐ヤロー。許可したら適当に情報を抜き取って都合のいい思考に改造するなりしたとか?」
「馬鹿じゃない術師は嫌いじゃないよ。まぁいい、これで私の用は終わりだ。帰っていいよ」
「てかお前いつの間に俺のアドレス知ったんだよ、しばくぞ」
額の傷に似つかわしくないかわいいキュートなお菓子を頬張りながら。羂索はしっしと払いのけるジェスチャーをした。
あーそーですか、帰りますよ帰りますよ。
俺は男が一人で入るには気まずいかわいいクレープ屋さんを出て、街を歩き始めた。なんかそんな気分だったのだ。
羂索は悪い奴である。呪霊と手を組んで、人を殺すことを厭わない狂った奴だ。しかし決闘には意外と真面目で、チェーン確認なんかも怠らずルールを守る。
ズァークデッキになんだかんだ飽きてないのもその印だろう。
ただ、だんだんと興味が薄れていっているような……そんな気がした。
「お前とは、立場が違ったらいい友達になれそうだったのになぁ」
路地に回り、薄暗くなってきた道を黙々と歩く。
自分の術式は、なんなのだろう。遊戯王ができるのはいいが、何故歳を取らず、睡眠や食事が要らないのだろう。
突然世界を飛び越えてしまったのは、何故なんだろう。
黙々とただひたすらに歩く。
頭の中の黒板に、考えては書き連ねてまた消していく。
正直、俺はこんな世界に来たいわけではなかった。命が軽く子どもが戦わなくちゃいけない、気持ち悪い存在が蔓延るこんな世界に来たくはなかった。
それでも遊戯王があったから正気を保てていた。
「……まて」
ふと、誰もいない十字路で立ち止まる。辺りはパイプや排気口のせいで煙たく、人なんて誰も来ないであろう場所だ。
遊戯王のカードには精霊が宿ると言われている。
それは人ならざる力を持ち、アニメではさまざまな影響を主人公やキャラクターに与えてきた。
「いるのか? 俺のデッキにも、精霊が」
この世界に来たから遊戯王の精霊が存在することになったのではない。
そう考えた時、ふと足元が宇宙に変わった。
「あ」
悲鳴を上げることもなく、俺はその宇宙に飲み込まれる。
とぷん、とまるで水中に潜るようなそんな音が、排気音の煙に溶けて消えた。
*
「遊戯王にも飽きてきたな」
羂索はクレープを食べながらひとりごちた。
確かにシステムは面白い、TCGとしては複雑だし色々といい加減な部分はあるが、しっかりと作り込まれている。
しかし、それは羂索の長年の暇を潰せるほどではなかった。
ズァークを一度呪力を流して召喚してみたが、それはただの立体映像に過ぎず、遊海が呪力を通さないと攻撃もできない。
結局は、少し物珍しい
「そろそろ大きいことをしようか」
スプーンに掬われたアイスは、青く溶けかかっていた。