ゴーティス使い俺、呪術の次元は禁止カードが多すぎる【改訂版】   作:月日は花客

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☆40:ゴーティスの精霊

 

 ふわふわ、ぷかぷか。

 なんだか水中にいるような、無重力の宇宙にいるような不思議な感覚が身体を包んでいる。

 周りは銀河と星々が見え、時折水泡がどこからか現れては弾ける。

 その幻想的な空間に俺は思わずぼーっと眺めてしまった。

 

 警戒せずにぼんやりと景色を眺められたのは、なんだか自分を包む暖かさが安心感を覚えさせたからだろうか。

 無重力の空間を揺蕩いながら、俺はここがカードの精霊の空間だと察していた。

 

「ここは……最果ての宇宙……」

『そうです。わがマスター』

 

 ぶわりと、突然近くに《最果てのゴーティス》が現れた。その巨体は俺が何千人いても超えられそうにない。

 そんな巨大生物を前にしても、俺の心には恐怖も何もなかった。ただ、安堵だけがあった。

 

「ここに俺を呼んだのはお前か」

『ええ、そろそろこの世界について、異能について疑問に思う頃だと思いましたから』

 

 俺より遥かに力があって、体も大きいというのに、最果てのゴーティスはやけな丁寧な口調で俺を包み込んだ。

 ほんのり冷たい体は、俺の体温で火傷してしまわないか心配になる。

 

「お前達が……俺をこの世界に転移させたのか」

『そうです。我々はマスターともっと触れ合いたかった。言葉を交わし、より近くで戦いたかった』

「そんなに愛される事を俺はしたかな。ただのゴーティス使いの一般決闘者だぜ?」

『貴方の魂はとても綺麗だ。我々を受け入れてくれる、器としての素質があった』

 

 デッキに魂を移しても耐えられる精神、魂にゴーティスの存在が入り込んでも自我を保てる強さ。それが彼らが俺をこの世界に連れてこられた理由の一つらしい。

 随分と、まぁ、愛されてるなと思った。

 

「俺はお前達だけが心の支えになっていたよ。それもお前達の計算ずくなのかな」

『我々はマスターの精神をすり減らすつもりはなかった。ただ我々がマスターと一番そばにいられる世界が、ここしかなかったのです』

 

 数多の世界の中から、一番近くで、一番存在を感じられる世界を選んだら、こんな物騒な世界だったらしい。

 それでも俺ともっと近くで触れ合いたくて、ゴーティスたちは精霊の力を使って俺をこの世界に呼んだ。

 

『怒っていますか、我がマスター。我々の勝手な愛情が、貴方の人生を壊した』

「いや……怒ってないよ。お前達の愛は十分に伝わった。それに、お前達がいたから俺はここまで生き延びてこれたんだ」

 

 たとえ元凶が彼らだったとしても、俺はそれを恨む気にはなれない。

 俺のそばに居たくて、触りたくて、ただのカード以上の感情を抱いてくれたのは、正直嬉しかった。

 

『今、貴方の魂は我々と混ざっている。カードは不変。だからこそ貴方の不老や身体的本能の変化が起こっていたのです』

「なるほどね……。一蓮托生ってわけか」

『勝手な事をして、誠に申し訳ございません』

「いや、上等だよ。このままどこまで生きれるか、一緒に駆け抜けてみようぜ。なんなら何百年も生きれるかもな」

『……我がマスターながら、すんなりと受け入れてくれて驚いています。我々を恨むなりすると思っていました』

「愛するデッキに愛されてたんだ。それ以上に嬉しいことはあるか?」

 

 ゴーティスのみんなはいつだって俺のピンチを救ってくれた。

 この世界に俺を呼び出したのもゴーティスだけど、守ってくれたのもゴーティスだから。俺は彼らを嫌いになんてなれない。

 

『我々はいつでも貴方を守護している。厳しい世界だが、どうか生き延びて』

「ああ、簡単には死んでやれねーよ。……羂索のやつがなんか企んでいるみたいだしな」

『ああ、あの胡散臭い呪詛師ですか……。じきに波乱が訪れるでしょうね』

「勝てるかな?」

『我々とマスターなら、きっと勝てるでしょう』

 

 ふわふわ、ふわふわ。最果てのゴーティスの尾に乗りながら、俺は羂索の計画について考えていた。

 真人が要となっているのはわかる。他にも花御や特級の仲間がいると確定していいだろう。

 

「なぁゴーティス、これは俺の我儘なんだが」

『なんでしょう』

「しばらくこの空間で修行をしたい。やりたいことがあるんだ」

『……わかりました。この空間は我々と貴方だけのもの。術式を全力で扱うためにも、ご自由に使ってください』

「ありがとう」

 

 俺はゴーティスの元を離れると、自分の術式を強く意識する。

 もっと広く、もっと自由に。解釈を広げ、呪力を練る。

 これが完成したら、きっとそれは、必殺の技になりうる。

 無重力の空間の中で、俺はひたすら、自分の術式に対して理解を深めていった。

 

 *

 

 遊海宙が行方不明になったことは、そう遅くなく高専全体に広まった。

 冥冥が連絡がつながらないことに気づき、窓や補助監督による捜索が行われるもの結果は白紙。

 強力な一級術師の突然の失踪は、高専メンバーを大いに動揺させた。

 

「死体は見つかってないんだよね」

「はい、本当に何も痕跡が無く……」

「最後に会ったのはいつ?」

「数日前、京都校と決闘大会を開いていた時に途中離脱をしたのが最後かな……」

「遊戯王カードが残っているあたり、彼はまだ生きているはず。問題はどこにいるかだが……」

 

 夏油や五条も遊海のことは気に入っている。夏油は特に恩があり、そんな彼の失踪はショックだった。

 しかしその精神のぶれをなんとか抑え込み、捜索の芳しくない結果を頭に入れる。

 

 伏黒達も、心配気にそれを見つめていた。

 いつもは楽し気に遊戯王で遊んでいるというのに、今はその紙の存在を確かめるようにシャッフルを繰り返している。

 

 京都校は無事に東京校にリベンジを果たしていた。しかし、あれだけ熱意があって、そして実力も十二分にある彼が簡単に死ぬとは思っていない。

 必ず、何かに巻き込まれているだろう。

 与は唯一彼が羂索と繋がっている事を知っていたため、より心労が溜まっていた。

 

 羂索に連れ去られたかもしれない。殺されたから傀儡にされているかもしれない。

 しかしそれをいうには縛りが邪魔をする。

 もどかしいままに、やはり与もデッキをシャッフルし続けることしかやることがなかった。

 

 遊戯王が手元にあるというのに、その表情は暗い。

 いつもは彼のハイテンションな軽口が、この場を明るく照らしてくれたというのに。

 今になって、彼がどれだけの人数の心を救っていたのかと、思い知らされる。

 

 そんな折だった。

 

 10月31日。渋谷。19:00

 東急百貨店及び東急東横店を中心に、半径およそ400mの帳が降ろされる。

 

 後に言われる「渋谷事変」が始まろうとしていた。

 

 

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