ゴーティス使い俺、呪術の次元は禁止カードが多すぎる【改訂版】   作:月日は花客

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☆44:決闘者の渋谷事変④

 

「────あ゙?」

 

 ドスの効いた、普段の彼より何オクターブも低い声だった。

 目は見開かれ、その大きな目の割に小さい口は反吐でも吐くかのように歪められている。

 しかし、それもスッと真顔に変わり、次の瞬間には笑みにへと変わった。

 

「ふぅー……あははっ、そうか、決闘拒否か」

 

 領域展開をされており、かつ相手の術式に謎が多い場合。相手の()に乗らないというのは、戦闘においてとても大切な要素である。

 遊海の術式は五条の六眼を持ってしても謎が多く、かつ今までに無い特殊な効果を持った領域展開をされている。

 その圧倒的有利な状況で、決闘という遊海が磨き上げてきた作戦に乗ると言うのは、羂索にとって下策だと考えたのだ。

 

 それが、遊海宙の地雷を踏んだ。

 

「そうか、それじゃあ……何されても、文句は言えないな?」

「真人! こいつを殺せ!」

 

 その時、地下から真人が、虎杖と七海に追いかけられながらも広場に戻ってきた。おおかたその戦力に逃げてきたのであろうが、今はちょうど良い。真人に魂の形を捻じ曲げられれば、流石のこいつも死ぬ筈だ。

 さらに追い討ちとばかりに、視線を向けされるため手に持った《覇王龍ズァーク》を破ろうと両手に掲げた。

 

「──触んなよ、順番に殺してやっからさ」

「なっ……!?」

 

 遊海は、パシリと真人の手を払った。術式が発動していない。いや、真人は確実にアイツの身体を歪めようとした筈……。手を払った瞬間、虎杖のドロップキックによって真人と遊海は離れた。それに舌打ちする。

 なにより、命より大切なカードを破ろうとしたと言うのに、遊海はこれっぽっちも気にかけなかった。

 そして、カード自体もまるで鋼鉄でも扱っているかのように、破れやしなかった。

 

「まずは羂索、お前だよ。漏瑚? ってやつはもう消えかけてるみたいだな。真人ってやつも時間の問題か? まぁいいや、何があっても全員俺が殺してあの世に送ってやるよ」

「何をする気だ……!」

「まずはそうだな……《融合解除》」

 

 その瞬間、羂索(脳みそ)と体のつながりがつふりと途切れた。

 羂索はその場に倒れ込む。

 

「……は?」

「キモ。適当にビニール袋に入れとくか。あは、こんなにちっちゃくなんだな、お前」

「どう言うことだ……!? 術式がっ使えないっ!!」

「お前がズァークを破ろうとした時に《無限泡影》で抱きしめさせてもらったぜ。はは、今のお前はただの気もっち悪りぃただの脳みそなんだよ。わかるか? 無様なモツ野郎」

 

 遊海らしくない……いや、こちらが本性なのだろうか。口汚い言葉に、羂索もらしくなく脳の血管が切れていくのを感じた。

 

「お前が決闘を受けていれば、俺だってちゃんとルールでお相手したさ。だが、お前は決闘を断った。そしたら、俺の領域内では何されても文句は言えねぇよ」

「なら今から決闘を受けてやる! 私を脳みそから出せ! デッキなら──」

「ズァークはもう完全にお前のことを見限っている。今更おせぇんだよ、脳みその大きさ術式でデカく見せてんのか?」

「ぐっクソがあああああ!!!!」

「五月蝿い」

 

 遊海はどちゅ、と羂索を入れたビニール袋を手前に放った。やわい臓器はそれだけで潰れ、大量の血液がビニールの中を満たしていく。

 羂索は己が致命的なミスを犯したことを今更自覚した。

 遊海に関わるべきでは、最初からなかったのだ。五条対策の一つになればいいと考えて接触したが、この決闘モンスターにまともな力を要求することはしてはいけなかった。

 こいつも、五条悟と同列……特級に分類されるべき化け物だったのだ!!

 

「カードを粗末に扱う奴に決闘者の資格なんてねぇよ。領域の効果で俺はカードの効果を無条件に発動、召喚できる。これはお前が決闘を断ったからだな。自分の判断が悪い方向に転がっていくのは初めてか? 策略失敗童貞クン」

 

 遊海は一枚のカードをデュエルディスクに置いた。その丁寧に爪が処理された男にしては細い指が、カードを撫でる。

 

「《最果てのゴーティス》を召喚」

 

 そこに現れたのは、ドラゴンなのか魚なのか、それとも別の何かなのかわからない、巨大で壮大な、ヒレとヒゲをもったモンスターだった。

 まるでちっぽけな蟻を見下ろす神のように、羂索を見つめている。

 

「渋谷全域にいる改造人間、あとそこにいる真人とか言う奴、それに呪詛師も、全員……除外だ。俺のゴーティスの火力になれ」

 

「羂索! そいつなんで魂が無──」

「……あ」

 

 全てを言い終わる前に、真人はカード状に圧縮され消えた。

 己の作戦の最大の鍵となる存在が、呆気なく、祓われた。

 魂が無い? どう言うことだ? どうやったらここから巻き返せる?

 さまざまな思考が身体をよぎっていくが、羂索の優秀で姑息な思考回路は全て「死」を映し出すばかり。

 湧き上がるのは後悔と、恐怖。

 

「あ、あ、あ、」

「今更怖がるなんてカマトトぶってんじゃねぇぞ。たった一枚のカードで棒立ちなんて、笑っちゃうな♡ じゃ、さようなら。地獄で呪霊とヨロシクやってろよ」

「あ────」

 

 飲み込まれる。星月夜に、天の川に、星空に。

 そして消し飛ばされていく。それは何億光年も遠い宇宙から来た、最果てを游ぐモンスター。

 羂索の意識は真っ暗闇にチカチカと白む星が見えたところで途絶えた。

 

 *

 

「……………………っはー!! これにて一件落着! この渋谷での事件も終了! ってわけですかぁ!!」

 

 羂索をゴーティスの火力で消し飛ばし、帳もすっかり晴れて、平和な渋谷……いや損壊具合は平和ではないな。に元通り。

 無事に黒幕を殺せて良かったぜ。なぁ皆んな!

 

「…………」

「えっなんで目を逸らすんすか。ちょ、なんで遠ざかるの!? みなさん!?」

 

 なんだか気まずそうに目を逸らされるし、近づこうとすると避けられる。どうして。

 俺、なんか嫌われることした? 五条より避けられてる。ショックを隠せない。

 

「いやー、そりゃそうでしょ、遊海」

「五条……」

「領域展開無法過ぎ、口悪すぎ、迫力ありすぎ、避けられる3点ぜーんぶ抑えてっからね」

「あっ……!」

 

 そういえば若い子がいるからカードゲーマー特有のクソ煽りはやらないって決めてたのに、ブチギレて普通にいつものテンションでやっちゃってた!! やらかした!!

 

「いや、その、口が悪いのはちょっとハイになってたというか……怒ってたと言うか……」

「あの領域展開は何? アレのおかげで僕は獄門疆から出られたわけだけど」

「あれは俺の領域展開(フィールド魔法)《最果ての宇宙》! 基本的にはただのフィールド魔法なんだけど、なんかデッキ持ってて決闘者としてある程度カードの信頼を得たやつはそのカードが顕現される副次的効果?みたいなのができた!」

「頭痛くなってきたな。なんで領域の押し合いが発生しないの?」

「フィールド魔法は2枚まではルール上あるのはおかしくないからな、3個目が出てきたらキツかったけど」

「で、これが一番大事。なんでアイツが遊海のカードを持ってたの?」

 

 その言葉に、俺は思わず閉口する。

 これ、完全に言わないといけない流れだよな。ああやっぱりアイツと接触なんてするんじゃなかった。決闘者に誘うんじゃなかった!

 

「じつはその……決闘者として勧誘とかしてまして……」

「はぁ?」

「高専の情報とかは流してないって誓える! ただ、遊戯王に興味あるって言われたから……ついデッキを渡して……」

「……っはぁー……」

 

 五条から特大のため息が落とされた。

 これアレですか、裏切り者として首ちょんぱな奴ですか。

 俺としてはもっとゴーティスと一緒にいたかったんですが。

 

「取り敢えず、この事件の後始末が優先。遊海へのお説教はそれまで保留!」

「えっ、今すぐここで処刑とかじゃないんすか」

「何言ってんの? この事件最大の功労者を殺すわけないじゃん」

 

 五条は「なんだこいつ」という目で俺を見た。いつもの目隠しがないので、青眼使いらしい青い目がこっちを見つめているのがわかる。

 どうやら処刑とかは無いらしい。

 

「ま、この後の書類地獄を全部遊海に押し付けるけど」

「そっそれだけは! ちょ、七海君五条になんとか言ってやって……って避けないでぇー!!」








羂索ムーブ難しすぎてなんか小物感出てしまいました。解釈違いあったら申し訳ない……。
これで山場は終わりです。あとはゆっくり完結まで書いていきます。
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