ゴーティス使い俺、呪術の次元は禁止カードが多すぎる【改訂版】 作:月日は花客
あれから、術師たちは全員「渋谷事変」と命名された先の事件の後始末に追われた。
大量の死体の処理、政府への説明、一般人に向けての情報操作──また、渋谷に多く出るようになった呪霊を鎮める作業も並行して行われた。
俺はと言うと────
「もうやだ……書類見たくない……」
「これは君が無断でいなくなったことへの罰でもあるんだ。きっちり働きたまえ」
「夜蛾さ〜ん、俺高専所属じゃないですってぇ」
「似たようなものだろう」
書類に追われていた。
様々な時系列処理や損壊した建物の被害額、その他諸々面倒な事務作業の数々……。なんなら五条や夏油君の分まで押し付けられていた。あのクズどもめ。
手伝ってくれる七海君や灰原君が神の使いに見える。
羂索と決闘者として繋がっていたことはおとなしく全て話した。
高専の情報を流していないことは誓っているし、俺のせいで五条封印の一端が握られていたが俺の領域展開で無事に脱出できたので不問とされた。
つまり、完全無罪! やったね!
まぁでも突然無断でいなくなってみんなを心配させたり、任務をすっぽかしたことについてはしっかり怒られた。
ゴーティスの精霊……つまり自分の術式に拐われていた、と話せば、次第に話題が説教から領域展開の話に移っていく。
「あれはつまり、デッキとの絆の具現化なんですよ」
「ほう?」
「カードの精霊に認められ、信頼された決闘者を守る……そんな機能なんです。破壊されても決闘者の気力があるなら数分で復活しますし、効果だって使える」
「しかしそれはあくまでも領域展開を習得する際の副産物に過ぎなかった……と」
「もともと俺のゴーティスは俺を無理やり生得領域に拐えるくらい実体を持ってましたから。本来ほとんど必要ない効果だったんですけど……今まで色んな人に遊戯王を勧めてきた結果ってことで」
「なるほどね……」
横で同じく書類仕事をしている冥冥さんは、納得したのか頷いた。
俺は無心で印鑑とボールペンを動かして、紙の山を片付けていく。もっとデジタル化しろよ呪術界。
絆による召喚はいわゆる次元召喚に近く、レベルやランク、召喚条件が合わなくても本人の精神力があれば顕現可能だ。気力なんて、呪術師には十八番だろうし、他メンバーの怪我や死の危険から守ってくれたようで何よりだ。
「感動しましたよ、私の《心宿りし青眼》が私と共に戦ってくれた」
「僕の《転生炎獣レイジング・フェニックス》も活躍してくれたんですよ!」
七海君たちも無心でボールペンとキーボードを動かしながら笑った。
冥冥さんも《ブラックフェザー・アサルト・ドラゴン》が羂索の使わした呪詛師や呪霊に対抗してくれたと言っていたから、副産物とはいえ侮れない戦果になっていたのではないか。
「よっすー、遊海仕事してるー?」
「お前よりはな、五条」
終わらない白い紙を整理していたら白い髪の馬鹿が来た。
その手にはこれ見よがしにケーキ箱が握られているが、騙されてはいけない。あれは全部五条が食べるもので、俺たちには一口たりともくれないのである。
「ちょっと気になったことがあってさー、来ちゃった」
「なによ?」
「真人が遊海に触った時、魂が無い〜とか言ってたじゃん? あれ、なんだったわけ?」
「えっ遊海さん魂ないんですか!?」
「灰原」
そういえばそんな事言われてたっけ。
俺はもう顔も覚えてない呪霊について考える。たしか人の魂を改造してなんやかんや……て術式だったはず。
「ああ、俺の魂はこの身体には入ってないんだ」
「は?」
ケロリとそう伝えると、五条以外が呆けた声を出す。
別に冗談で言ってるわけじゃ無い。
「俺の魂はこのデッキケースの中にあるカードたちがそれぞれ持ってる。逆に俺の中には精霊の居場所がある。お互いの心臓を交換したみたいな感じだな!」
「ああ……六眼で見た時、何かが取り出されてるって思ったのは魂で、何かが混ざってるって思ったのは精霊な訳ね」
「ちょっと……オカルトが過ぎませんか」
「それ
この世界に来た時点で、俺の魂は全てカードたちが持っていたらしい。その代わり、精霊としての存在の核を俺に移した。それにより俺は術式が使えるようになり、カードたちは俺と共鳴することができた……。そう言う事らしい。
らしいらしい言ってるのは、全部《最果てのゴーティス》からの受け売りだからだ。
俺本人が完全に理解してるわけじゃ無いし、体感は魂の存在とかキャッチできないし。
「決闘者の魂はデッキに宿る……つまりそう言う事だ!」
「って事は、僕らもいつかカードに魂が移っちゃうのかな」
「さぁ? そこら辺は今度領域展開でもして聞いてみる?」
「簡単に領域展開するとか言わないでください、あなたのは規模も効果範囲もやばいんですから」
まぁなんせ半径400mの帳を全域囲えたからね、余裕で。多分頑張ればもっといける。
でもそれを言うなら、逆に効果範囲を小さくする事だって……と言うところで、「あ、そういえば」と五条の軽い声で打ち切られた。
「遊海、特級昇格おめでとー」
「え!? 聞いてねぇんだけど!?」
「そりゃさっき決まったからね。推薦者は僕〜」
特級扱いというのは、本来の呪術師なら誉なのかもしれないけど、俺にとっては違う。
ほら冥冥さんが「へぇ……」って顔してる! 俺まだ冥冥さんから独立してないからこの人の部下なんだよ! 絶対こき使われまくるって!!
「そんな遊海くんに最初のお仕事でーす」
「もう書類仕事って地獄を見てるんだけど?」
「まぁまぁ、これは遊海にも大いに関係することさ」
「……なんだよ?」
五条はその目隠しの下で目を歪めているのだろう。
「津美紀を起こしに行く」
*
訪れた病院は真っ白だった。
原因不明の昏睡状態……それも呪術によるもの、をまとめてこの病院で管理しているそうだ。つまり呪術師の息がかかった病院って訳だな。
「遊海の使ったカード、あれなら掛けられた呪術を剥がすことも可能かもしれない」
「それで先ずは津美紀ちゃんを……か。伏黒くんは同意してるの?」
「『遊海さんなら大丈夫でしょう』だってよ。もー信頼勝ち取っちゃって〜」
「照れる」
伏黒くんは羂索ラストの口悪カードゲーマー特有のクソ煽りマンである俺を見ていないため、ちょっとよそよそしくなった虎杖くんみたいな変化はなかった。
虎杖くんは単純に俺の普段見ない表情を見てビックリしてるだけみたいだから、じきに元の態度に戻ってくれそうだけど。
「……待て、これは……」
よしじゃあ津美紀ちゃんの呪い祓ったろやないかいと意気込んでベッドサイドに近寄った時、俺はどこか違和感を覚えた。
津美紀ちゃんだけれど、津美紀ちゃんじゃない。
そう、カードで表すならエクシーズのような……「重なり」を。
「これは……そうだな、《紋章の記録》。すまん、すこし津美紀ちゃんに負荷をかける」
津美紀ちゃんに
俺自身の魂が外にあるからか、他人の魂にも多少なら干渉できるらしい。ゴーティスが言ってた。
無事に取り出されたカード状のそれを、俺は握りつぶして除外した。これは遊戯王カードじゃ無い、もっと邪悪な何かの化身だ。
津美紀ちゃんを素材として召喚されていた、何某かの異物。
「ちょっと、今の何? 六眼でも上手く掴めなかったんだけど」
「エクシーズ、効果無効、除外ってとこだな」
「その遊戯王用語で説明すんのやめてくんない??」
「…………ぅあ?」
説明するまもなく、津美紀ちゃんはうっすらとその瞳を開けた。
遊海のカードゲーマー特有のクソ煽りにここ好きが集まってて笑いました。
いつもありがとうございます。