ゴーティス使い俺、呪術の次元は禁止カードが多すぎる【改訂版】   作:月日は花客

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☆46:ゴーティスの宙

 

 あれから俺は、津美紀ちゃんのようにエクシーズされた人たちを片っ端から祓って回った。

 何人もいるその人たちを書類作業と並行しながら治していくのは骨が折れたが、無事に目を覚ましたことに喜んでくれる人がいるから悪い気はしなかった。

 

「てゆーかさ、その力あるんだったら宿儺何とかなるんじゃないの?」

 

 ふと、虎杖くんがそう言う。

 今は束の間の休息というやつで、俺の身体──主に精神面──を回復するための時間というやつだ。今日の決闘のお相手は虎杖くんだったのである。

 その言葉に、俺は思わずシャッフルの動きを止めた。

 

 俺が宿儺について知っていること。

 なんかやべー術式持ってて、指が屍蝋化してて、それを虎杖くんが取り込んでもう一人のボクみたいになってること。クソ強いこと。

 そして使うデッキはサクリファイスだということ。

 

「えーでも決闘してくれるしなー」

「遊海さんのその決闘者相手に無限に甘くなるのダメだと思うよ」

「いやだって、俺にとっての最優先事項は遊戯王だし……」

 

 それが満たされてるなら、あと大人しくしてるならわざわざ藪蛇踏む必要あるかなって……。

 それに分離させても戦えるタイプだったらどうするんだ。漏瑚の持っていた指は高専で厳重に保管されている訳だけど、虎杖くんに食べさせるかはまだ決定が追いついていない。

 

「えー、でも宿儺はやっぱ殺したほうがいいって思うよ」

「小僧、お前の口からそんな不遜な言葉が出るとはな。手札を全てバラしてやろうか」

「てかさ、そんな急いで殺さないといけないやつな訳? しょーじきな話、このまま指は高専保管で虎杖くんが寿命で死ぬまで現状維持でいいんじゃないの」

 

 屍蝋として禁止カードになり、さらに生き残った一部も虎杖くんの力で制限になっているなら、下手にセットされているそのカードが相手の効果でフィールドから離れ、墓地へ送られた場合または除外された場合に発動できて、デッキ・EXデッキからモンスター1体を特殊召喚する必要も無いと思うんだけど。

 

「えー、だってコイツ嫌がらせに俺の手札バラしてくるじゃん! やる事が地味に嫌なんだよ」

「まぁ確かにそれは困るなー。サクリファイスサポートのカード出たら優先的に渡すからやめてあげてくれない?」

「断る。小僧の邪魔をするほうが楽しい」

 

 断られてしまった。

 こちらとしては虎杖くんと正々堂々戦いたいのだがね。まぁお互いに手札を見せ合って戦うっていうのも特殊ルールで楽しそうでありだな〜。

 次のトーナメント……いつできるかわからないけど、はそれにしようかな。

 

 最近の呪術界は忙しい。

 羂索の死によって呪術界上層部に大量の裏切り者がいる事が発覚したり、渋谷の事件を不安に思った気持ちで呪霊が増えていたり、俺は特級認定を受けたから更に仕事が増えた。

 ブラックもブラック。ドブラックである。邪神アバターより黒い。

 

「ほらー遊海まだ仕事残ってるんだから逃げないの」

「ちょっ夏油君まだ決闘始まったばっかりアー!!!」

「頑張って〜遊海さーん」

 

 残念、また仕事の時間のようだ。

 

 *

 

「津美紀!!」

「恵……! おはよう」

「ああ……おはよう」

 

 今回の仕事は伏黒くんの付き添いだった。

 ようやく面会が許された津美紀ちゃんは痩せ細っていて、筋肉も体力も落ちている状況。数週間のリハビリを経て、ようやくベッドに起き上がれるようになっていた。

 そんな姿に、伏黒くんは珍しくも涙を流して喜んでいた。

 津美紀ちゃんにそれを指摘されたら、ぶっきらぼうに照れていたけれど。

 

「遊海さんが、私を助けてくれたんですよね……?」

「まぁ、そうだね」

「ありがとうございます。本当に……何度感謝しても足りません」

「んー、俺は俺にできる当然のことをしたまでだからさ。その言葉はずっと津美紀ちゃんを心配してた伏黒君に言ってやってよ」

「恵も……ありがとうね、ごめんね」

「……いい」

 

 津美紀ちゃんと伏黒くんは、穏やかに笑っていた。それが伏黒くんにとってどれだけ待ち望んだ光景なのか、それは本人にしかわからない。

 でも、これで良かったと思う。

 

 俺は、津美紀ちゃんや他の目覚めた人が誰かと面会をするときは必ず同行するよう言われている。

 万が一、「エクシーズしていた何か」が復活した場合にその人を殺すためだ。

 これは伏黒くんも察しているだろう。

 でも、俺は……俺の中にいる精霊は、もうそんなことはあり得ないと断言している。

 墓地も除外も第二第三の手札というが、そこにすら存在しない彼方へと散ったと。過去の遺物へと成り下がったと。

 

 精霊と心臓を交換したことを自覚した俺の生活は、そこまで変わりはなかった。

 特級昇格で忙しくはあれ、今も身体の時は止まっているし、睡眠も食事も嗜む程度。

 決闘は楽しいし、人が死ぬのを見るのは悲しい。書類仕事は辛いけど、パック開封はワクワクする。

 

 あれからゴーティス達と、生得領域でよく話すようになった。

 少しの休憩時間、補助監督の迎えを待っている時間、ふと足元に宇宙が広がり、ゴーティスたちの領域に呼ばれるのだ。

 そして、いつの決闘ではよく戦ってくれたとか、逆に油断していたなとか、取り留めのない話を交わすのだ。

 俺の魂、俺の心臓。そんな彼らが俺を愛して一緒に戦ってくれるなら、この世界がどんなに厳しくても何百年と生きられる気がした。

 

「ゴーティス、愛してるよ。もし俺が死んだらさ、その宇宙の彼方……最果てに連れて行ってくれよな」

「ああ、わかった……。まぁ、遊海は我々が死なせないがな」

 

 星々が浮かび、水泡が弾ける宇宙(うみ)の中、今日も俺はデッキのみんなと会話する。

 己の魂を確かめるために。

 

 *

 

「クソッ……これは二級呪霊なんかじゃない! 一級……いや特級だ!!」

 

 とある二級術師の男は叫んだ。

 この世界において、等級の誤認というのはよくあることだが、今回は最悪だった。

 なんせ二級から一気に特級……圧倒的なまでの危険度に跳ね上がったのである。

 

 しかし男は狼狽えず、その腰元に差したデッキを撫でる。それはお守りのように、自分の生存をなんとか確実にするための祈りのようなものだった。

 

「ここで()()()()を使うべきところか……! 呪術界に何百年と伝えられた、この文言を言う時が来るとは!!」

 

 それは、かつて最強と言われていた男、五条悟すら認めていたものだ。別に長い詠唱じゃない。むしろ人によっては馬鹿らしいと思うだろう。

 しかし、遊戯王という術式はここ数百年で一気に浸透し、補助監督にさえデッキを持つ事が推奨されるほどになっていた。

 

 それは何故か。現状の呪術師において、天元を除いて最高齢であり、しかしその姿は若い青年。

 青い和装に身を包み、その腕には銀河を模した機械が装備されている。

 五条悟の最強という称号を受け継ぐことを拒否し、「決闘者」という称号を手に呪霊を祓う者。

 

「遊海様! ここに……特級(1BOX)がいます!」

「オーケー! 開封式は終わったらな!」

 

 次元の裂け目から飛び出してくるのは、その深い青に星を散らしたような着流しで。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 今日も彼は、相棒の精霊達と呪霊を祓っている。








これにて完結となります。
全46話、ご愛読ありがとうございました。
色々未熟な部分や書ききれてないところがありますが、それは番外編などで書いていけたらなと思います。
遊海の活劇はいかがでしたでしょうか? 面白く感じてくだされば幸いです。

番外編リクエストはハーメルンの感想欄ではなくましゅまろで受け付けています。
よければ送ってやってください。
https://marshmallow-qa.com/ilpwsmttzut0dgc?t=XxuEvt&utm_medium=url_text&utm_source=promotion

改めて、ここまで読んでくださってありがとうございました。
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