ゴーティス使い俺、呪術の次元は禁止カードが多すぎる【改訂版】 作:月日は花客
(制服は)白いよ! 夏油くん!
みなさんこんにちは。交通事故で死んで生まれ変わった遊海宙改めて夏油傑です。混ぜて夏油宙って呼んでください。
遊戯王をやりにカドショに行こうとしたら、歩行者専用通路を無視した車にアクセル踏まれて吹っ飛びました。クソ痛かった。あのドライバー死ぬまで呪うからな。
そして生まれ変わった世界で何だかんだ中学生にまでなったんですが、なんかこの世界、おかしい。
多分ホラー漫画とかの世界なんだと思う。怪異みたいなお化けみたいな気持ち悪いのが街中にちょくちょくいる。
でも、気持ち悪いのは俺がそれを食えるってこと。
ある日部屋にちっこい怪異がいて、やべぇどうしよう新聞紙でいけるかなと思ってたらなんか黒い球になって、それを本能が食えという。ので、味に吐きそうになりながら飲み込んだらそいつを操れるようになった。
誰得?
この世界に遊戯王が存在しないらしいので、俺のデッキはこの食べてきた化け物たちということになります。
最悪すぎん?
「でも一週間も連れ歩けば愛着が……わかないわ。普通にリリースしてぇ」
正直毎日吐いたもん処理した雑巾飲み込むような生活続けてると精神参るんだよね。遊戯王無いしさ。
マジでなんで遊戯王無いの? 壊してぇ〜、世界。
「君らさぁ〜なんかこう……もうちょっと見た目マシにならない? アンデット族なのはもうこの際いいけどさー、こう……融合してカッコよくなってよ、ドラゴンとか」
そう言って怪異を操ってみると、ぐちゃぐちゃと体をつぎはぎしてアンデットなドラゴンが誕生した。遊戯王じゃないけど、スカルグレイモンみたいな感じだ。この世界には遊戯王は無いけどデジモンはあった。なんでや。
「ほーん? なんかこう効果とか持てないわけ? 君ら今ただの大型通常モンスターじゃん」
なんらかの効果を得られないかと聞いても、「いや無理っす」みたいな無音の返事が返ってきた。なんでや。
通常モンスターを活躍させる方法かぁ。
「なら外部的に……こう……フィールド魔法的な概念をだな……」
通常モンスターをサポートする魔法や罠があればいいわけだ。
たとえば、場の通常モンスターを墓地に送って相手にバーンダメージ、とか?
「お?」
なんか手のひらに丸い球ができた。これは呪霊を取り込む時とはまた違う、なんか中に空間がありそうな球だ。
これはもしや、フィールド魔法の卵?
「もうちょっと広げらんないか……? フィールド魔法みたいにさ……うーん、うーん、よっと!!」
ボンっと破裂させるイメージでやってみると、一気に球が膨らんで俺を飲み込んだ。
《アンデットワールド》みたいな不気味な空間だが、確かに俺のスカルグレイモン(仮)にバフがかかっている。
俺は追加で弱い怪異を召喚し、効果を試してみることにした。
「墓地の通常モンスターが多いほどステータスにバフがかかって、1ターンに一度通常モンスターを墓地に送って相手にバーンダメージ……みたいなやつ、できない?」
すると、スカルグレイモン(仮)がこれならいけそうだと頷いた。
いけるらしい。
その次の日、俺は東京都立呪術高専というところからスカウトを受けた。
*
「ゆ……夏油傑です。よろしくおなしゃーす」
「……なんだお前」
「よろっすー」
なんでかそのまま高専に入学することになって、古臭い教室に入ってみる。同級生は二人らしい。少なくない??
一人は白髪で長身の男。もう一人は未成年なのにタバコ咥えてる女の子。
おいおい、癖が強いって。
「お前だけなんで白い制服なんだ?」
「なんか、問題児認定された。りょーいきてんかい? を頻繁にやるなってよ」
「はぁ?」
「いやでもさ、俺の手札ってそれがないとまともに回ってくんねーんだもん。仕方なくね? っていうかこれ汚れ目立ちそうで嫌」
寮生活だし自分で洗濯しないといけないよなこれ。カレーうどんとか食べらんないじゃん。
「お前の術式……うへぇ、気持ちわり。どんだけ呪霊食ってんだよ」
「キモいよな〜わかる。あれでもカッコよくなろうとドラゴンとかに融合してくれんだけどさ、まーイラストアドはもう求めてないっていうか」
「はぁ?」
俺の言葉に、俺の術式を知ってるらしい白髪の男が呆けた声を出す。なんだよ、キモい術式ってことは自覚してんだよ。
でも俺が言ったことはちゃんということ聞いてくれるし、イラストアド無視して環境デッキ組んでる気分だわ。
「お前、もう領域展開できんの?」
「え、中一の時にはもうできてた。てかあれないと困るから先生に直訴しようかな」
「……よくわかんねぇ、キモい、マジで意味わかんない」
「ギャル?」
お前オタクに厳しいギャルを心に飼ってるやつだったのか……普通に傷つくんだからな。
やめて! たとえ俺の術式で出てくる怪異がキモくても彼らも24時間働いてくれる大切なリソースなの!
まぁ裏側除外してビーム撃つのに使ったりしてるけど。
*
「これ……なんだよ」
「なにって、化け物ですよ」
任務で赴いた先、そこには虐げられた双子が座敷牢に収められていた。
かわいそうに、震えて傷だらけだ。
「原因になった呪霊は祓ったんで、彼女らは原因じゃないすね」
「そんなことない! コイツらが私たちを呪って──!!」
ギャーギャー喚く村人たち。あーもー、五月蝿いな。
「わかりました。彼女らはこちらで尋問させるために連れて行きます。呪いも解かせます。それでいいでしょう?」
「え、ええ……なるべく早く殺してくださいね」
そっと双子に近寄る。尋問、という言葉を聞いて二人は身を寄せ合って痛みに耐えるように目を瞑っていた。
被虐され尽くしてきた者の、反応。
「大丈夫、君たちは助ける」
小声で言ったその言葉を、信じてほしいと切に願った。
*
「なー傑、お前が前行った村あんじゃん?」
「前っていつ? 最近任務多すぎて村って聞いても特定できん」
「三ヶ月前だよ。あの村、ダムの決壊事故で沈んだんだって。未曾有の人災だってニュースになってたぞ」
「ニュースなんて見てる暇ここ暫く無かったんだよ……で?」
ダムの老朽化に何度も連絡が入っていたらしいが、村人全員が土地に執着しそれを無視。結果、案の定ダムの決壊事故が起きておそらく村人全員死亡だそうだ。
「へぇ……村組織って怖いな、ダムの老朽化なんてすぐ逃げる案件だろうに」
「そもそもの工事が断線とか機材のメンテ不足で遅れてたんだってよ」
「つまり施工側のミスってこと? 普通に人災じゃん」
現場ネコを知らないんですか? 指差し確認、ヨシ!
「…………で、どこまでがお前の仕業?」
「なんのこと?」
「誰にも言わないから」
「だから、なんのこと? まさかダム決壊が俺の仕業だって? それだったら俺は既に呪詛師として手配済みでーす。やな冗談やめろよな」
「……本当だよな?」
本当だよ、まったく……と俺は缶コーヒーを煽った。
ダムは決壊させてない。やったのはSNSでその近くにあった映えスポット(一般人立ち入り禁止)を拡散しただけだ。
断線も、機材の損傷も、その映えスポットに釣られたSNS依存症患者がやったんだろう。
でも俺はただ、ちょっと良い景色をみんなに共有したかっただけだ。
な? 何もやってないだろ?