ゴーティス使い俺、呪術の次元は禁止カードが多すぎる【改訂版】   作:月日は花客

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暗いよ! 遊海宙が五条たちと同級生だったらif。


リクエスト番外編:高専所属遊海宙

 

 

 遊海宙という男は、転校時点から一級呪術師と定められていた。

 黒い制服をわざわざ青くカスタムし、腕に銀河のような変な機械を取り付けた少年。歳は自分と同じ16歳。

 夏油傑はそんな彼を一目見て「一般人のようだ」という感想を抱いた。

 

 六眼ほど見えるわけではないが、呪力は薄いし雰囲気も擦れていない。呪霊に当てられて性格や空気感が荒れる術師が殆どだというのに、その青年はまるでそんなものを感じさせない明るい雰囲気を纏っていた。

 

「遊海宙でっす。今日から高専一年生! よろしくね〜」

「うへぇ、雑魚じゃん。術式なにそれ? キモ」

「お前のその性格もキモいな。真っ白な髪してるのに腹は真っ黒なんだ、ウケる」

「あ?」

 

 五条のいつもの煽りが入ったが、それにも構わず打ち返す胆力。

 しかし呪力的に五条が格上だということはわかるだろうに、どうして……というか、なぜ一級呪術師になれたんだ?

 

「せんせー! コイツなんで一級呪術師なんだよ。呪力も少ないし術式も意味不明な矛盾多すぎの雑魚!! 一級呪霊を祓えるとは思えないんですけどー」

「遊海は一級呪霊を問題なく祓える。それ以上の理由がいるか?」

「俺だって祓えるし!! てか信じらんないんだけど、なんかズルしてんじゃねーの」

 

 五条のその言葉に、夏油は失礼だと思いつつも同意してしまう。彼は特別肉体に筋肉があるわけでも、呪力があるわけでもない。術式が余程強いのだろうか? しかし、五条曰く矛盾だらけのガラクタのような術式だという。

 

「アンタらのことは聞いてるぜ。五条悟に夏油傑、ともに一級術師でブイブイいわせてんだろ? なら俺が一級でもなんもおかしくねーじゃん」

「俺はお前の術式が見える。だからこそ言ってんだ。お前のそのおもちゃみたいな機械も、中に入ってるカードも何もかもぐっちゃぐちゃ。術式自体に矛盾抵抗無力が詰め合わせアソートされてる。そんな術式でどうやって呪霊を祓ってんだよ」

「そりゃ、俺は決闘者だからな。決闘で倒してんだよ。……てか、もういいか? 自己紹介ターンにしては長過ぎるぜ。先生、構わず授業を始めてくれよ」

「あ、ああ……」

 

 素直に夏油の隣の席に座り、遊海は大人しく授業を聞いていた。五条のように居眠りしたりすることも無く、普通に高校で授業を受けるように。

 なんなんだコイツ。というのが夏油の最初の遊海への印象だった。

 

 その認識は、さらに強くなっていく。

 

「ぐえっ」

「体術雑魚すぎ。本当になんで一級になれたんだよ」

 

 体術訓練で、遊海は家入にすら負けるぶっちぎりの最低点だった。受け身を取るのは上手いし筋肉が全くないわけではないのだが、本人にやる気もないし殺意も無い。

 手を抜いていると夜蛾に怒られそうなものなのに、夜蛾も何も言わない。ただ黙って訓練の様子を眺めているだけだ。

 

「任務にも行ってるだろー? 体術できなくたって死ぬわけじゃないし」

「死ぬんだよ! 馬鹿が。本当なんでこんなのと同じ一級なんだよ……」

 

 遊海はたびたび任務に呼ばれていた。近場の任務を任されているのか、ものによってはその日のうちに高専に帰ってくる。

 しかし時折とんでもない遠距離の土地のお土産を渡してくるから、夏油は瞬間移動の術式なのだろうかと考えてもいた。

 しかし、それなら体術は磨くべきだろう。

 遊海への謎が増えていく。

 

 そんな遊海だったが、同級生三人にしょっちゅう誘っているものがあった。

 遊戯王、というTCGらしい。聞いたことがなかったが、なんでも遊海しか持っていないカード……つまりオリジナルのゲームということらしい。

 家入はカードゲームに興味がなく、五条は遊海と相性が悪いのか最近は話すこともしていないようだ。

 夏油としてはなんだかんだ親友と言えるような立場となった五条とも仲良くして欲しいのだが、こればっかりはどうしようもない。

 遊海の術式があまりにも矛盾が過ぎて気持ち悪い。五条はそうたびたび言っていた。

 

 しかしそんな五条にも、遊海は数日に一回は遊戯王に誘う。まるで遊戯王をやってくれれば通じ合えるとでもいうように。

 しかし反応は芳しくない。

 そのたびにしゅんと落ち込む遊海を、夏油は少し哀れに思って遊戯王に付き合ってやることにした。

 

 結果から言うなら、遊戯王は普通に楽しかった。

 ルールは複雑だけれども慣れてしまえばさまざまな戦略が楽しめるし、なによりカッコいいドラゴンやモンスターは夏油の少年心をくすぐった。

 遊海は夏油が試しに組んでみたデッキを大いに褒め、相性の良いカードやカードを保護するプロテクター、プレイマットなんかを惜しげもなくくれた。

 単純に友人として、夏油は遊海をよく思い始めていた。こんなふうに、放課後にカードゲームに興じるなんて、中学以来だろうか。

 任務によって摩耗した精神も、その時ばかりは正しい16歳の姿に戻れているような気がした。

 

 

 そんな生活が崩れ始めたのは、五条が特級認定を受けてからだった。

 星奬体の保護を失敗して、五条は死に目に遭い覚醒した。

 二人で最強だったのに、どんどん置いていかれるような感覚に夏油は自らの精神がおろし金で削られるような感覚を覚える。

 遊海は相変わらず一級呪術師として、呪霊を祓っては何事もなかったかのように遊戯王のカードを触っている。

 その不変さが、夏油にはありがたかった。

 家入も反転術式の使い手として重宝され始めている。自分はただ、不味い呪霊を何体も何体も取り込んで、それでも特級認定は受けられない。

 いや、特級認定を受けたとしても、絶対に五条には敵わない。その自信があった。

 

「私はもう、非術師を守りたくない」

 

 そう溢してしまったのは、九十九という女性にあった後の遊海との決闘時だった。

 カードをシャッフルする手が止まる。

 

「私はもうあんな人間……いや、猿を守りたくない。守る価値を感じない」

 

 術師として言ってはならないことだ。それでもいつまでも不変さを帯びている彼になら話しても良いと思えるほど心を許していた。

 ただの同級生の弱音のように、受け止めてもらえると思っていた。

 

 用意された言葉は考えてもいなかったことだった。

 

「じゃあ逃げれば?」

「……は?」

 

 その提案を、夏油はすぐに受け入れられない。

 確かに非術師は嫌いだ。なんなら呪術師もあまり好きではない。しかし理性が「道を外れるな」と叫んでいる。夏油の内心はそればかりだった。

 そんな中、遊海はまるで「コンビニでアイス買おうぜ」とでも言うかのような気軽さで逃亡を提案した。

 

「無理だ、呪術師として、守ることから逃げるのは許されない」

「え、でもそれで夏油の精神がもう無理になってんだろ? なら逃げれば良いじゃん」

「それは、呪詛師になるってことだ。私はもう猿を守りたくない、尊重したくもない」

「なれば? 呪詛師」

 

 本当に、軽く。スーパーで安売りしているスナック菓子のように軽く遊海は呪詛師になることを勧めて来た。

 呪詛師というのは、呪術師が殺すべき悪だというのに。

 友が、それになろうとしていると言うのに。

 

「あーでも、そしたら対戦相手いなくなるな……。俺もついていって良い? 決闘してくれるなら非術師くらい殺してやるよ」

「ちょっと、待って……なんでそんなことを軽く言えるんだい。犯罪者になるって話なんだよ!?」

「え、俺遊戯王やれるなら別に人殺そうが呪霊祓おうがどうでもいいし」

「は……?」

 

 狂ってる。夏油は狂い始めている自分の頭に冷や水を浴びせれられた気分だった。

 目の前にいる、ごく普通の高校生といった顔をした同級生は、もうとっくに狂ってしまっていたのだ。

 夏油は思わず空笑いをこぼした。悩んでいたことが馬鹿らしくなってきて。

 

「縛りを結ぼう。私は遊海と遊戯王をし続ける。ただし、遊海は私と共に呪詛師に堕ちてくれ。そして、裏切らないで」

「俺が決闘に誘ったら深夜にだって付き合ってくれるなら」

「いつでも付き合うよ。でもデッキ調整の時間なんかは欲しい。遊戯王をプレイするための時間は必ず用意するから」

「ならいいよ。なろーぜ、呪詛師」

 

 夏油は久々に心から笑った。

 自分たちはこれから幾つもの死体を踏み越え、幾つもの失望を殺意を向けられるだろう。

 しかしの自分のカード(共犯者)となった遊海がついてきてくれるなら、もうどこまでも堕ちられる気がした。

 

 シャッフルを止めた夏油の手から、《鎧皇竜-サイバー・ダーク・エンド・ドラゴン》がこぼれ落ちた。








○遊海宙
高専によって自由がない&遊戯王をやってくれる人がいないことにより精神崩壊済み。
唯一遊戯王をやってくれる夏油のためなら文字通りなんでもする。
ただし夏油が縛りを破ったらその限りではない。
目は死んでるし口の悪さは隠さない。
術式をあまり公表してないので謎の呪詛師扱いされている。

○夏油傑
呪詛師に堕ちた。というか遊海に堕とされた。
最初は憐憫で始めた遊戯王に普通にハマった。使ってるデッキは《サイバーダーク》。
遊海があまりにも純にも濁にも染まらずそのままでいるから、五条のように置いていかないと判断して縛りを結ぶ。
今のところはHAPPY。
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