ゴーティス使い俺、呪術の次元は禁止カードが多すぎる【改訂版】   作:月日は花客

57 / 62
「封印中の両面宿儺の指に転生した主人公が虎杖に受肉されるまでずっと遊戯王で遊ぶ話」というリクエストをいただいたんですが、どうしても虎杖と宿儺が拒否して呪霊に受肉という形になってしまいました。
ごめんなさい……。







リクエスト番外編:宿儺の指in遊海

 

 朝起きたら指になっていた。

 

 なんて、フランツカフカもびっくりの変身を遂げました。21歳大学生遊海宙。元人間現指でございます。

 まって、頭おかしいとか言って逃げないで。俺は今、確かに指になってるんだ。

 

 しかも誰かの体に繋がってるんじゃない。本当に、指だけなんだ。たぶん中指か薬指なんじゃなかろうか。いや、どうでもいいけども。

 意識すれば、自分の人間だった頃の体が指の中に収まる。俺の意識をそっちに移して、俺は指の形をした空間にポツンと居座ることになった。

 

「……なんで??」

 

 ほんまなんで??

 事故や病で死んだわけでも、なにか不幸があったわけでも、予兆があったわけでもなく唐突に指になった。なんだこれ。

 しかも見た目が妙に禍々しいんだ。内側からだけど、ミイラみたいな感じだ。嫌な雰囲気である。

 そして、身体……指は動かせない。何かを巻き付けられている感覚がある。なんだろ? と思い引っ掻いてみようとしたら、弾かれた。この巻かれた何かが俺の動きを制限しているらしい。

 どっちにしろ、俺はこのどうしようもない状況に直面して、ただ呆けた。

 

「暇だ……」

 

 転生なり憑依なりするとして、なぜ指だけなんだ。神は頭おかしいのか?

 こんな場所じゃ遊戯王も……いや待てよ。

 

「さっき自分の身体を内部に作れたんだから、カードくらい作れんじゃねぇ?」

 

 そう思って、試しに手の中にカードをイメージしてみると、ぱらりと《ゴーティスの灯ペイシス》が落ちてきた。成功だ。

 

「よし! 取り敢えずしばらくは時間を潰せる!」

 

 カードを作り続けると、たまにフッと意識が無くなる。気力的なものを使っているのだろうか? 知らんが。

 まぁ指に睡眠なんてないだろうが、俺はとにかくカードを作り続けた。

 

 それは、やがて40枚と15枚のデッキとなった。サブで入替用のカードも用意した。立派なデッキである。

 テーマは大好きなゴーティスだ。

 だけど…………。

 

「対戦相手がいねぇ」

 

 なんだって一人回しだけで遊ばなならんのか。対戦相手が欲しいぞ対戦相手が。

 しかし意識のある相手は流石に作れないらしい。

 俺は孤独だ。

 このグロい指の中で、頼れるのはカードのみ。しかし対戦相手も話し相手もいない。

 

「…………狂うな」

 

 これはおそらく精神がもたないぞ。と俺は直感した。

 人は孤独や無音、社会への不参加を続けると短時間で狂えてしまうのだ。ネットで見た。

 ここは俺以外誰もいない、音もない空間。いくら叫んでも反響しないし、返事だって返ってこない。

 

「なんでこんなことに……」

 

 あーあ、せめてここにもう一人誰か居てくれたら対戦相手にできたものを、なぜ孤独にカードを弄ってなくちゃいけないんだ。

 デッキの調整は終わったし、出来を試したいというのに。

 指の形の部屋は変わることなく動くこともない。

 

「最悪だ……」

 

 寝ようにも素直に睡眠という行為もできない。俺は縋るようにカードを作り続け、ふと訪れる意識の途切れを救いとしていた。

 

 *

 

 ある時、自分の身体を包んでいたものが取れるのを感じた。

 おや?

 これは……もしや解放された!?

 目が無いので外部の様子などわからないが、俺は自由を得た。しかし状況も何もわからないから、適当にウニョウニョと指を動かすしかできない。

 尺取り虫的なサムシングでなんとか移動できないか。

 

 っていうかさー。

 暇な時に考えてたことなんだけど、もしかしてじゃなく俺って誰かの指の一パーツなわけじゃん? 切り落とされた指なわけじゃん?

 つまり、他パーツと合体させられたら俺の自我は消えるのでは????

 それはつまり、死では??

 

「もしかして封印が解かれたのも融合させられるからでは……?」

 

 某アークファイブ主人公的なサムシングで合体しないか、精神が。それはちょっと嫌だ。かなり嫌だ。だってそれもう俺じゃないもん。個としての確立を保てて無いじゃん。俺主人公みたいに包容力とか無いんで無理です融合地雷です。

 それじゃあどーすんのって話だけどさー。

 

「──」

「ん?」

「──ぁ──ど」

「んんん?」

 

 なんだか外から声が聞こえる……。耳が無いのに聴覚を得たのか? というより、音に込められた力をたどっている感じ?

 

「この指は食いたくないって、どういうことだよ宿儺」

「それは最早俺ではない。別の何かが外部的に宿り、定着してしまっている。不純物だ」

 

 その言葉に、俺はピピーンときた。この宿儺ってやつが俺の指の持ち主なんだ。

 食うって、自分の指を食うの? どういう文化の方??

 いやでも、消化して同化するって可能性はあるな……やっぱり自我消滅の危機じゃねーか!!

 いやだ! いやだ! せめてこん中に対戦相手作れるようにして、何戦か遊戯王させてから食ってくれ!! もう俺のメンタルも限界なんだ。

 

 死にたいけど死ねない、遊戯王があるのにできない、ずっと意識を保ち続ける無音の空間。そこではもう、俺の弱い神経なんて簡単に捩じ切れてしまえる。

 でも、自我を失いたくない、精神的な面で尊厳を失って死にたくはない。

 そんな自己矛盾がずっと頭の中……指の中で起きてるんだよ。どうにかしてくれ!!

 

「これを食ったら、小僧の中にさらに人格が増えるかもしれんぞ」

「はぁ!? お前ですら手一杯なのに!?」

「別の呪物へと転化してしまった……という事か。どうしようね?」

 

 うん? いやちょっと待て、自我が消えるのが嫌なら、相手の自我を乗っ取って仕舞えばいいじゃない。

 もうしのごの言ってられない。ここから脱却できるなら人の一人や二人殺せるぞ。

 食え! 食え! そしたら俺がお前になって、好きなだけ遊戯王をやるんだ!!

 自由に身体を動かして、美味しいもの食べて、ぐっすり寝るんだ!!

 

 な? な? 食えよ。

 俺はなるべく飲みやすそうに指をまっすぐにして動きを止めた。丸まったほうがいいか?

 

「ははっこやつは食べられたがっているようだぞ」

「……五条先生、中身が危険なやつの可能性は?」

「あるね。悠仁を乗っ取ろうとしてる気配を感じる」

 

 げぇっバレた! でももう嫌なんだよ、無音の空間でデッキを眺めるだけの時間は!!

 俺をここから出してくれ! なぁ! 出してくれよぉ!!

 

「……別の方法を試そう」

「別の方法?」

「これを呪霊に食わせる」

「はぁ!? 正気か先生!!」

「どうやらこの指は身体を欲しがってるみたいだ。与えてみて、可能ならこちらで管理するなりすればいい。かなり知能はありそうだ」

 

 お、おお? なんかいい方向に勝手に転がってってないか?

 身体を得られるなら俺はもうなんでもいい! いやなんでもいいは嘘だな、カードを持てる姿が良い。

 

「早速適当な呪霊に与えてみようか。ちょうど高専が捕縛した実験用の呪霊がいたはず」

「えー……良いのかな……」

 

 移動する揺れを感じる。そのジュレーってやつがなんなのか知らないが、絶対に乗っ取って身体を得てやるからな。なんなら自分の姿にカスタムしてやる。

 今の俺ならそのくらいの力があると確信できた。

 

 そして、何かに飲み込まれる感覚があった。同化はしない。むしろ俺が侵食する。変異させ、好きに作り直し、組み直す。デッキを弄るみたいに、体のパーツを減らして増やして色を変える。

 なんだかゲームのアバターを作っている気分だ。普通に前世? の俺の姿にするけど。

 

 出来上がったのは人間の男。そこそこ背が高い、青の瞳を持った21歳大学生。お気に入りの青のパーカーに、腰には指の中で作ったデッキを下げて。

 

「……ほんとに……受肉した……」

「これは……宿儺でもなんでもない、全く別の呪力と術式……!?」

 

 俺は瞳を開ける。

 

「……こんにちは、俺は遊海宙! 21歳大学生の一般決闘者だ!」

 

 おはよう、決闘者(おれ)

 これからの自由に最果てからの祝福あれ!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。