交わり過ぎた世界   作:難波01

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要は喧嘩です1

無燈和真は一般人である。

 

一般、否。一般人と言い張るには少し無理があった。

 

聖杯の剣を片手に駆け出す、驚くホムラと口角を持ち上げるオッサン。

 

そう、世間一般の二十歳の青年とは違う。

 

異常な喧嘩慣れと対応能力、攻撃の軌跡を先読みしているかのような身のこなし。無燈和真が持つ現代で生かされない才能(センス)である。

 

「むぉう!?」

 

ホムラが受け止める左の鞭が、二撃目のために引き戻される刹那、展開した聖杯の剣から伸びた光刃が掠めてオッサンの元に戻った左腕は血を流していた。

 

「ありがとう!」

 

「ど、どういたしまして・・・」

 

先ほどまで尻もちをついていた青年とは思えない動きにホムラは呆気取られていたがすぐにヒステリックな怒号で現実に戻される。

 

「“新世界”の民である私にっ!ガキ共がぁぁぁぁっ!!」

 

手あたり次第に左手の鞭をふるい、二発目の注射機を打ち込んだオッサンが、右腕を鎖鎌状に変化させた。

 

「ホムラちゃん、だっけ?こっちだ!」

「え?あ、はい!」

 

再び走り出した二人を化け物、そういっても過言ではないオッサンが睨む。

 

「逃がすかぁ!!」

 

乱雑に放たれた鎖鎌の一投は、二人が消えていった雑居ビルの出入り口を刻んだ。

 

 

 

 

 

人気の消えた繁華街、そこで行われている異能バトル。

 

雑居ビルの一階出入り口はオッサンに破壊されて使用不可、閉じ込められてしまった和真とホムラ。

 

異常な事態でも落ち着いていた和真にホムラは怖くないのかと気になった。

 

「その、怖くないんですか?」

 

「大丈夫、ちゃんと怖い」

 

そう返す和真の手は震えていた。

 

和真にホムラの気持ちが伝わるようにホムラにも和真の心境は伝わる。

 

ブレイドとドライバーは一心同体、お互いの気持ちはわかる物だ。

 

落ち着いているように見えるだけで和真も恐怖心は感じている。ただ、悟られないよう必死に虚勢を張っているにすぎない。

 

雑居ビルの間取りなどどこも似たようなもので二人が隠れているのは一階の事務所、廊下をまっすぐに入って右の部屋が幸いしたのか先ほどからオッサンの放つ攻撃は瓦礫を貫いても部屋を直撃することはなかった。

 

「落ち着いてください、一人ではありませんから」

 

ホムラは先に和真を落ち着かせることから始めた。

 

今にも過呼吸を起こしそうなほど動揺している和真の手を両手で包むホムラ。

 

彼女の心配しているのが和真に伝わる。不思議と理解できるソレは仕草から察することのできるものではなく、なんといえばいいのか気持ちが伝わるといえばいいか・・・。

 

「ふぅ、そうだね・・・落ち着いた。落ち着いたと思う、でさ?あのオッサンが言っていた新世界って何?」

 

「わかりません。新世界という言葉があの人にとって何を指すのか」

 

「だよなぁ、今を乗り切ってから考えよう。ホムラちゃん」

 

「ホムラでいいですよ?」

 

「そう?じゃあさ・・・・跳ぼうか?」

 

「え!?」

 

和真はホムラを抱きかかえるように窓へ助走をつけて跳ぶと数秒前に二人の頭があったあたりの壁が爆ぜた。

 

窓ガラスを破り、駅から出て散策していた時に見た公園に転がり込む二人。

 

倒壊するビル、それも先ほどまでいた一棟ではなかった。

 

 

 

 

「逃がしはしないぞ!ガキ共!?」

 

土煙の中、怒声とともにオッサンが現れる。

 

右腕は鎖鎌状に変化し、左腕は鞭、その容姿はもはや化け物のそれに近いものになっていた。

 

穿いているスラックスがサラリーマンの名残を思わせる。

 

「ところでオッサン、喧嘩慣れしてないだろ!?」

 

オッサンが怒鳴りながら鞭の二撃目を繰り出すと和真は左からの横一線を聖杯の剣で受け流して吐き捨てる。

 

「だからどうしたと!?」

 

「いやぁ分かりやすい“軌道”だなと思ってさ」

 

連続攻撃を捌いていく和真と入れ替わりバリアで防ぐホムラ。

 

二人のコンビネーションは即興ながら様になっていた。否、即興というには息が合っていた。

 

「ところで“新世界”ってどういう事?その突然変異(メタモルフォーゼ)が関係あるの!?」

 

鎖鎌の一撃を左下から打ち上げた和真が尋ねながら駆け出した。

 

化け物・元オッサンは先ほどまでは逃げていた青年が向かってくることに驚いた。それ以上に驚いたのは自分の攻撃が奇抜な剣一本に防がれていること、そこを鞭が通ると見えているのかと思う挙動である。

 

「知ってどうする!?」

 

「そりゃ命狙われている理由知りたいでしょ!?」

 

喧嘩・・・戦いにおいて長物に間合いを開けるのは実は悪手である。

 

自分が遠距離攻撃手段を持っているなら別だが、なければ相手が一方的に暴れる時間を増やしてしまう上にこちらはダメージを負いかねない。

 

「ぐ、くっ!」

 

元オッサンの眼前を赤い奇抜な剣が通過する。

 

「なら、もういいや」

 

横一線に振るった和真が空いていた左拳を元オッサンの顔面に打ち込んだ。

 

「ホムラ、もう決めよう」

 

「はい!」

 

尻もちをついた元オッサンが顔だった部分を上げるとホムラと和真が、一本の剣を互いにもって天に掲げた。

 

元オッサンは、“力”を渡してくれた男の言葉を思い出す。

 

“同調していたとしたら気をつけなさい、その人はもう人間をやめています”

 

展開した刀身から伸びる高熱のエネルギー刃、それを目に焼き付けながら元オッサンは恐怖した。

 

「「バーニング・ソード!!」」

 

化け物はエネルギー刃に飲み込まれ、振り下ろした二人は互いに肩で息をしていて闇夜に消えていく。

 

翌日、新宿の一角でガス爆発が起きたとニュースになったと知るのはもうちょっと後の話。

 

 

 

 

 

というのが昨晩、ホムラと同調してから起きた事である。

 




無燈和真君は逸脱人です。
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