ふらーとカマソッソ関連の動画を見てたら急にビビッ!と来たのでとりあえず書いてみることにしました
拙い文章ですがお楽しみ下されば幸いです。
『光る赤子』が世間に報道されて以来、この世界では超常現象が頻繁に多発するようになり、世界総人口約八割が”個性”と呼ばれる超常能力を持つに至った現代社会。
物を浮かす、物を飛ばす、物質を生成する、自然現象を操る。中には能力を悪用する悪い考えを持った奴らも出てくるわけで、そんな悪事を働く奴らは『
「・・・・・・ここは」
頭が痛い、気分は悪くない。弾けるような意識の覚醒の中、男は一人、照明が消されたアパートの部屋で目覚めた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
今まで何をしていたのだろう、俺は会社からたまたま早く帰ってきて、明日は休みだったから早くからビールを飲んでつまみでもとチー鱈を食べてそれから─────
太陽無き世界で侵略生物が現れて、星を喰う怪物に立ち向かんとする民達と共にオレは立ち上がり、戦士も、臣民も、精霊も、オレ以外に文字通り全てがなくなって、
六百万年の月日の中で何かを忘れて、カルデアの神官が現れて、『人類最後』だったカルデアのマスターにオレは同じ気持ちを覚えて───
あぁ、その後は鮮明に思い出せる。何故なら先程までそうだったから、先程まで忘却を禁じられていたから。
『ニトクリス』。復讐に燃え、復讐を成し遂げた女は、ソレを忘却するでもなく、ソレを無かったことにするでもなく、ただ、「復讐を忘れず、ソレをどんな正義があろうと、罪だと自覚し、犯した罪を忘れんとした女」。復讐の後の解放こそ、あの女の人生の報酬だったのに、自ら命を絶ち、楽園にも行かなかった女。絶対的な正義、絶対的な権利を持ちながら、
あの女に、オレは【忘却を禁じられた】。不死身だった体も、
はずだったのに。
「なんだ、この体は」
この体は「カマソッソ」足らしめる蝙蝠の体ではない。細く、それでも命をつなぎ続ける。それこそカーンの王だった時のオレの体のような───
「ヒト」
そうだ、この体は蝙蝠ではない。十万年かけてカーンは成長した。十万年かけて哺乳類から始まりヒトになった。ヒト、またの名前を、「人間」。
「・・・・・・何故だ」
何故、何故何故何故何故?ミクトランにはカルデアのヤツラを除いて現代人はいなかったはずだ。それも、このような異文化の装飾も、ミクトランには無いモノだ。
見れば見るほどおかしい。周りを見渡すと、まず自分が横たわっている白の床──ベッドはカーン時代なら兎も角、今のミクトランには無い。そもそもディノス達がベッドなど使うハズもない。そしてベッドから見れる液晶、これはテレビか。そしてベッドとテレビの間にあるテーブル、の上にあるこの端末は何だ。これは知らない、というより見るからにカーン王国には不要なもの───横の凸部分を押すと電源が付き、液晶が動くのか。なるほど、
やはり、ここはミクトランでは無い。外の世界───まさか、ここがカルデアのヤツラがいた地球か?不思議ではあるまいな、ヤツラはサーヴァントを召喚する技術でさえ、己が物として使っていたのだ。ストーム・ボーダー、だったか。あのようなミクトランにまで来れる機械を作れる世界なら、嘗てのカーン王国と同水準かそれ以下の文明まで発展していてもおかしくないだろう。
いや、そんな些細なことはどうだっていい。考えるべきは「何故オレが地球に意識がある状態で目覚めたのか」、「これからどうするべきか」。そして、「この体の持ち主は何者だ?」
前二つはいつだって考えられる。今は最後の一つが重要だ。オレは今カマソッソとしての記憶があるが、それと同時にもう一人の男の記憶が混在している。名前、名前が──「
少なくともこの男の今までの記憶があることは確かだ。だが、この想太という男よりも意識としてオレ──カマソッソの意識、自我が全面に出てしまっている。
少し、申し訳ない気がするな。オレも良く分かってはいないとは言え、オレは、カマソッソとしての生は一度、確かに終わりを告げた。戦士達、市民達がカーンの国に────そして、カーンの王に。命を、家族を捧げる程の存在だったと、最後に知れただけでも、良い結末と言えたのだ。もうオレは、忘却をしない。過ぎ去った時間が、失ったものが美しく蘇る、「思い出す」ことの何たるかを最期に知れたのだから、もう民達と同じ所で眠るだけで良かったのに、この者の体の主導権を握ってしまった。
「・・・・・・顔を、洗うか」
意識を乗っ取っているモノの分際で言えたものじゃないが、この男、酒を飲み過ぎだ。目の前には缶ビールだろうものが三本も開けられているし、目覚めた時に頭痛がしたのは、二日酔いとかその辺りの症状なのだろう。何故、アルコールに強くないのに大量の酒を飲んだのか。おまけに服は脱ぎ捨てられていて上半身裸ではないか、オレ的にはこのままでも何の問題もないが。
「なんだ、これは」
男の記憶を頼りに顔を洗うために洗面台に移動したのはいい、頭痛以外に少し吐き気があるのもまだいい。問題はオレの体と顔だ。
この男はカルデアの神官のような黄色人種、日本人だ。肌は太陽が無かったカーン王国の民のように白くはなく、また嘗てのオレのように太陽に焼かれ続けたからこその褐色でもない。ただ普通の人間。
ではなぜ蝙蝠のような翼がこの男にはある?なぜ蝙蝠のような耳が頭部に着いている?この男の記憶に拠ればこの男、想太は”個性”なる超能力じみたものを持つヒトが人口の八割程になった今の個性社会において、個性がない「無個性」のヒトのはずだ。嘗てのオレのようにとはなるまいが、この蝙蝠の翼と耳、そして獲物を屠り、捕食するためにある牙と爪はとても無個性なる者のものではなかろうよ。
そして極めつけはこの顔だ。付け加えるとこの肉体も。自慢ではないが整った顔立ちと鍛え上げられた肉体の筋肉。そしてこの目は───鏡など見なくても間違えない。カマソッソたるミクトランでのオレに、限りなく似ているのだ。それこそ肌をカマソッソのように褐色にしたら肉体はまだしも、顔はオレと瓜二つになるくらいには。
いや、いやいやいやいやいや。いくらなんでもそんな偶然がないだろうということはオレにも分かる。オレの意識が魂ごと汎人類史の地球に何らかの要因で飛ばされて、意識が飛ばされた器が日本人の肌であることを除いたらオレと瓜二つ。こんなことがあってたまるか、となれば偶然ではなく必然?何かしらの要素が必然的に作用しオレの意識を魂ごとこの器───カルデア的に言えば依代に入れられた、と?いや、そもそもオレは汎人類史からすれば異聞帯、剪定されるべき世界の人間なのだ。それがカルデアにならまだしも、何の縁もない汎人類史の地球なんぞにオレが引き寄せられるわけが───
「きゃああああああ!!!!」
「・・・・・・何事だ」
声の出所は外か、今を何時だと思っている?依代の酒のせいで目覚めてしまったとは言え、まだ五時だぞ五時。明け方とは言え不敬極まりすぎだ、まだ人も眠っている時間帯だろう。それも依代の記憶によれば今日は土曜日、休暇の日ではないのか?いや、一旦外の空気を吸うことで現在の混迷した状況を一旦忘れるか。永遠の忘却はしないがな
「うるさいぞ、ヒト。オレは今混濁した状況にいるのだ。強大なるカマソッソの前で騒ぎ立てるとは、即ち蛮勇。だが駄目だ、過ぎた蛮勇は無謀に──」
「誰か、助けて───!!!」
「・・・・・・お?誰だぁ、アンタぁ」
見た所、ただ騒ぎててていただけ、ということではないらしいな。ヒトの番同士でも、泣き叫んでいる女を無理やり捕まえようとする男なぞいないだろう。いや、血族内暴力、だったか?カーンの王国でも契を結びあった者同士の暴力沙汰というのもあった気がするな。だがここはカーンの王国ではない、依代の記憶も言っている、アレは犯罪。罰せられるべき行動だと。
「名乗りが欲しいか?ヒトよ。だがまずは聞こう、何をしている?」
「あぁん?見りゃ分かんだろ。俺は人攫いだ。ここら辺に住む女はなぁ、顔が良いから良い値で売れるんだ。すこーし味見しちまうと一気に値段ガタ落ちだけどよぉ。元々誰かの使用済みだしあんま変わんねぇだろ。だから俺はこうやって定期的に見回りして良い女がいないか探してるワケ」
この世界で悪事を働く者、依代の記憶によると、「
「やめて!離してよ!!」
「へへ、そりゃ俺が許しても神が許さねぇってもんだ嬢ちゃんよ。そもそもこんな時間に一人で出歩いてる嬢ちゃんも悪いとは思わねぇか?良い子はまだ家でおねんねしてる時間だぜ。じゃあ今出歩いてる嬢ちゃんは悪い子だ、そしてそんな時間に出てる俺も悪い子。悪い子同士仲良くしようぜぇ、へへへ。」
あの男、黒い服にマスクをして徹底的に犯行がバレないようにしているのか。猿は本当に浅知恵は回るものだな、見た所今のオレより身長は高いのだから他に知恵を回せば良いものを。
「不愉快、実に不愉快だ。目の前に敵対するかもしれない生命体がいるのにそれを無視するなど。カルデアの神官でも、目だけは真っ直ぐオレの方を向いていたというのに」
「あぁ?意味分かんねぇこと言うなよ。てかお前なんなんだよ、急に出てきやがって。一丁前にヒーロー気取りか?見た所少し身長高いだけの──ってなんだテメ!翼!?」
「真っ直ぐ、真に見ていないからこそ、そうやって一部を見落とす。大事なことをまるで無かったかのように、気づかないままでいてしまう。それは怠慢だ、怠惰だ、忘却だ。───嘗てのオレも、そうだったがな」
ふむ、この依代にもし意識が戻ったなら、少し謝罪をせねばだな。この体は何故かは知らんが蝙蝠の体付きに少し近づいている。この依代はある時期からまともに運動をしていないな、身体が傷つかぬよう調整はするが、加減を怠ったらどうなるか分からん。だが、蝙蝠であるならば、カマソッソであったオレの経験も活かせるだろうよ。
「やる気かテメェ?冗談だろ?俺はこう言っちゃなんだがこの界隈じゃそこそこ名が売れてんだぜ、少なくとも大人一人くらいにタイマンでやられる俺じゃねぇんだ。「人攫いのゴロウ」と共に「人荒らしのゴロウ」とも言われてんのよ俺は」
「お願いそこの人助けて!助けてくれたらなんでもするから!!」
オレは別に、面倒事に首を突っ込むつもりじゃなかったのだがな。だが仕方あるまい、この依代が言っているのだ、「助けたい」と。どうもこの依代、ヒーローに憧れていたくせに”個性”が発現しなかったらしい。無個性なりに努力はしたようだがな。ならば今、仮称「蝙蝠」の個性が発現し、身体を間借りしているオレがこの依代、「想太」の代わりを果たすべきだ。ヒーローなぞ、勇者王たるカマソッソには似合わないというのに。
「改めて挨拶をしよう猿ども!愚弄にも犯罪を犯さんとする
「そして民達が誇るカーンの王、カマソッソの強大さにな!!!」
たかがコウモリの爪、だがそれは勇者王にしてカーンの王が振るう蝙蝠の爪。
現代に宿るカマソッソが、勇者王或いはカーンの王或いはヒーローとして、猛々しく敵に飛びかかった。