勇者王は偉大なる英雄《ヒーロー》   作:しらすの番人

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芸能人が学校に来るアレ的な

 

「・・・・・・いただきます」

 

 フォークで刺すとシャキと鳴るレタス。半月に切って盛り付けたトマト。水々しいきゅうり、それらを覆う白色のフレンチドレッシング・・・・・・美味い。

 

「うむ、やはり朝はさっぱりとしたサラダと直後に飲む牛乳がいいな・・・・・・」

 

 もはや普通の社会人より真っ当な生活をし始めたよこの勇者王(カマソッソ)。何朝食ソムリエみたいな感想してんねんとか突っ込みたくなるがまずは置いておこう。カマソッソの本日の朝食はパン二枚、スクランブルエッグ、サラダにインスタントコーンスープ。パンに塗るためのマーガリンといちごジャム、更に牛乳。うん普通に洋食の朝ご飯だね。

 

 

『本日は午前中は青空が綺麗な晴れ、午後も晴れ間が続く見込みで、洗濯物は十分に乾くでしょう。ですが東日本では夕方五時頃から夕立の可能性がありますのでご注意下さい』

 

 

 追い打ちをかけるかのようなお天気ニュース(ザ・平和)!!お前最初の頃の何をしていけばいいんだ感はどこ行ったんだよ。だが、人間は順応する生物。これは人であるカマソッソも例外なく生活に順応していった結果と言えるだろう。

 

 

 今日カマソッソは早起きをして朝食の準備に取り掛かった。それはもちろん、今日は昨日根津校長とメールでやり取りした通り、カマソッソが静岡にある雄英高校に訪問しに行くためだ。故にカマソッソは健康的かつ手早く作れる洋食を選択した。パンの部分をコーンフレーク等にしてもいいかもとカマソッソは思ったりしている。その場合コーンスープが別なメニューになってしまうが。

 

 

「静岡に行くのは本免の時以来か、今回乗る電車は十頃。遅れることが出来ないからといって早めに行動しすぎたか?」

 

 午前中は根津校長の予定があるためカマソッソの訪問は午後一時から。訪問だけのことを考えるなら乗る電車は十一時くらいのでも十分間に合うのだが、根津から「カマソッソと言えば校内に入れるようにしておくから、折角だったら雄英の中を見て欲しいのさ!」と言われたため、カマソッソは一時間程早めに出かけることにした。

 

「静かにすれば授業も見ていいのだっけか、あ、スリッパも忘れんようにしないとな」

 

 今日はバリバリ月曜日、世の学生や社会人が憂鬱になる月曜日。なので普通に雄英でも授業が行われている時にカマソッソは訪問することになる。カマソッソ自身一週間程前までは想太が勤めていた『インターネット・エンカウンター』という会社で働いていたのだが、ヒーローに専念するため先日退社を果たした、とこの話はまた後日。依代である想太にとっては、普通科と言えど三年間通った母校なので、もし自意識が想太だった場合感慨深い気分になっていただろう。

 

「ヒーロー科は教師がコスチュームを着たまま授業を行っているのか・・・・・・服装は指定されなかったが、コスチュームを着てこい、ということなのだろうな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう、ここが・・・・・・」

 

『国立雄英高等学校、静岡県垢離里1-2。街から少し離れ小高い山の上にある我が校は個性の悪用による反社会活動を行う犯罪者勢力「ヴィラン」へ対抗するための「プロヒーロー」養成学科があることが特徴です。また、ヒーロー科以外の学科でも「Plus Ultra」の校訓の下、基礎レベルの高い座学と専門性のある活動を行っています。また雄英高校名物のランチラッシュがシェフを務める食堂は──』

 

「まぁ、自分の目で見れば良いだろう」

 

 今回も一時間程電車に乗り、バスで雄英高校前までやってきた。雄英高校の校舎は正面から見ると英語の大文字である「H」のような形であると分かり、造形が凝っているなぁとか思ったり出来る。

 

「名乗れば大丈夫名乗れば大丈夫・・・・・・」

 

 ただ校長に呼ばれてきただけなのに、有数のヒーロー高校に入ろうとした不審者と思われるのは頂けない。最悪セキュリティーに引っかかったり誰かに呼び止められたりした時の対処法を呟きながら、カマソッソとしては初めてとなる雄英にお邪魔するのだった、

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・普通に入れてしまったな」

 

 流石は雄英高校、それも校長である根津が呼んだ人物。校舎に入る前に軽い本人確認があったがあっさりと入ることが出来た。途中白色ののっぺりとした教師であろう者にテレビで見てます、と言われた時は流石に驚いたカマソッソだが、それでも不審者ではなく来賓扱いをされているということは、それだけ情報共有がしっかりしている証拠だろうと思い校内を見て回ることにした。

 

 

「こっちの方から声が聞こえる気が・・・・・・」

 

 スタスタとカマソッソは持ってきたスリッパを履いた足で歩く。右、左と廊下を曲がり、耳から聞こえる複数の声を頼りについた場所は

 

 

「カレーうめぇー」

「そのラーメン一口くれ」

「蕎麦一口食べさせてくれんだったらいいよ」

 

 

 食堂だった。それも見る限りめっちゃ制服を来た学生で賑わっている食堂。そう、カマソッソが雄英に訪れた時間は何とお昼真っ最中の十二時三十分。そりゃ食堂にはご飯を食べに来る生徒でいっぱいなはずである。

 

「賑やかだな、先のパンフレットにも書いてあった。確かランチラッシュという名の人物が───」

 

 

「・・・・・・あれプロヒーローのカマソッソじゃない?」

「んなわけ」

「や、見てみろってこっち見てるよ」

「嘘・・・・・・ガチ?」

「YOUは何しに雄英へ!?」

「ユーだけにって?」

「それ言っていいのオールマイトだけだから」

 

 

「うお!?何だ貴様ら!!」

 

 ガヤガヤしていた食堂が一斉にキャーキャーワーワー飛び交う地獄絵図へ。これあれです、テレビとかでよくやってる普通の学校に芸能人がサプライズで来るヤツ。それも人気俳優とか女優のガチな層が一定数いるタイプの。別に興味ない的なことを言っているヤツも一目見るタイプのやつ、なんなら手のひら返しで写真とか撮ってそうなタイプのやつ。

 

 

「経営科所属の者です!一言貰えませんか!?」

「俺最近アンタの動画ずっと見てる!!」

「すげぇ!ガチ本物!?」

「あれやって欲しいんだけど!『オレの名を語るが良い──』ってヤツ!!」

「カマソッソ様〜!!」

 

「オレ来賓!すまなかった、邪魔して!!」

 

 カマソッソはエゴサとかしないから全然知らないのだが、カマソッソのセリフ、例えば『愚形!憐れな程愚形!』だったり『オレの名を──』、『改めて挨拶をしよう!』辺りのカマソッソをカマソッソ足らしめるセリフは、カマソッソ動画が流行ったことにより通称『カマソッソ構文』としてネット民を中心にプチバズをかましていた。最近のネットはすぐ流行るから怖いものである。

 

 

 

「分かった、分かったから少し距離を──」

 

 

「・・・・・・想太さん?」

 

 状況を打開するための人物がここに一人。

 

 

「雪芽!ちょうどいいとこに!そうかお前雄英が何とかと言っていたな!見ての通りだ!なんか絡まれてしまって困ってる!へるぷみーだ!!」

 

「えぇ・・・・・・まぁ任せて!はいはいちょっと失礼しますねー」

 

 

「あぁ!せめて!一言だけでも!!」

「プロの人が生徒を名前呼び?・・・・・・妙だな」

「カマソッソ様〜!!」

 

 

 

 

「なるほどねぇ、それで雄英の中を見て回ろうとしたはいいけど、お昼時だったから食堂にいた人皆に集られちゃったんだ」

 

「そんな人をハエみたいに言っていいのか?」

 

「それだと想太さんが生ゴミみたいになっちゃうけど大丈夫?」

 

「前言撤回だ」

 

「・・・・・・ぶふっ」

 

 窮地?ではあったカマソッソを助けたのはもう恒例の涼原 雪芽である。彼女自身当の食堂に友達と向かおうとしていたところ、何やら騒がしかったので彼女単身で先に向かったのである。ちなみにどうでもいい情報だが雪芽は氷雪の個性を持つと言うだけあって髪はそれっぽい白色、彼女自身は純日本人だが、蒼の瞳を持つアルビノ系美少女である。

 

 

 

「あ、いたいた雪芽ってわ〜スゴイ!ねぇねぇアレって最近有名なあの人?」

「雪芽ちゃん早いよ・・・・・・」

「あ、三人ともここに・・・・・・ってええ・・・・・・」

 

 

「あ、皆!えーうーん・・・・・・まいっか、こちら『カマソッソ』こと森鎌 想太さん!」

 

「カマソッソだけで良かったのではないか?」

 

 

「わぁーやっぱりー!!・・・・・・あれ?ねぇねぇ雪芽ちゃん、何で雪芽ちゃんは本名も知っているの?不思議!」

 

「・・・・・・あ」

 

「(・・・・・・友にも話していないのか)」

 

「気になる気になる!ねぇどうしてー?」

 

 

「・・・・・・後で話すよ!それでカマソッソさん、あの不思議不思議言ってる水色ロングが『波動(はどう) ねじれ』」

 

「今はあのコウモリの耳生えてないんだね!不思議ー」

 

 

「で、あそこの赤髪ツンツンが『甲矢(はや) 有弓(ゆうゆ)』」

 

「髪の紹介しかされてなくない私?」

 

 

「で、ちょっとビクビクしてるあの灰色の女の子が『送戻(おくりもどし)  (とき)』」

 

「よ、よろしく・・・・・・です」

 

 

「で、雪芽ちゃん何で本名知ってたの?」

 

「後で話してあげるから!!・・・・・・ねぇ、カマソッソさん、もしお昼食べてないんならさ、私達と食べる?今から私達も食堂向かうトコだし」

 

「む、確かに食べてはいないが・・・・・・」

 

 カマソッソはちらりとスマホで時間を確認する。・・・・・・12:50。校長と直接話すのならば、というか立場的に上のものと話すのに遅刻などしていられない。カマソッソは元々少し校舎を見るだけのつもりだったので、あまり余分に時間を取ってきていなかったのだ。

 

 

「時間だな。すまないがまた今度だ」

 

「・・・・・・ちぇー」

 

「それでは雪芽の友達も失礼する」

 

「あ!ちょっと想太さん今日の放課後───」

 

 

「あれもしかしなくても出来てない?」

「そんな感じするね・・・・・・」

「出来てるってなぁに?」

 

 

・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「やぁやぁ初めまして!改めて私はこの雄英高校の校長をしている根津なのさ!今日は遅れてしまってすまない、後今回の件に了承してくれてありがとう!」

 

「気にしないで貰って大丈夫・・・・・・です。オレ、いや私は『カマソッソ』、本名は『森鎌 想太』だ・・・・・・よろしく頼む、みます」

 

「別にそんなに畏まらなくても大丈夫なのさ」

 

「そうです・・・・・・そうか」

 

「本題に入る前に、カマソッソ君、君には本当にお世話になったのさ。先の『人攫いのゴロウ』、あの犯罪者の手から1-A13番、涼原 雪芽を守ってくれてどうもありがとう。彼女も立派な雄英生だ。校長の私としては、君には感謝してもしきれない」

 

「アレは本当に偶々だったのだ。偶々雪芽が悲鳴を上げ、偶々ソレを起きていたオレが助けただけのこと。偶然、だがオレがいた以上助けるのは必然だ。雪芽は感謝こそすれ、あなたがそこまで頭を下げることではないだろう」

 

「そうかい?」

 

「あぁ。・・・・・・それにあいつ、助けられたら普通にケロリと帰っていったし、まぁ大丈夫だったのだろう」

 

「・・・・・・そうだといいねぇ」

 

「?」

 

「何でもないのさ、では本題に入ろうか。まず我が校では、一年生の生徒は夏休み最初に『林間合宿』、つまるところ個性強化合宿に行くことになっているのさ。カマソッソ君には今回、その合宿に臨時教師として着いていって貰いたいというのが依頼なのさ」

 

「一年?ということは雪芽達の学年か」

 

「そう、今年は中々に粒ぞろいでね。ウチの教員とは別に戦闘向きヒーローが二人程欲しいということになり、君ともう一人、聞いた限り今君が一番信頼を寄せているんじゃないかな?『オールマイト』を招集することにした」

 

「オールマイト、アイツも来るのか!」

 

「現No.1をアイツ呼ばわり出来るのに若干驚く私だけど、説明を続けるのさ。後は個性伸ばしのサポートとして『ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ』から『マンダレイ』と『ラグドール』の二人を招集、後は1-A、1-Bの担任として『イレイザーヘッド』こと相澤(あいざわ) 消太(しょうた)君、『プレゼント・マイク』こと山田(やまだ) ひざし。君達を含め、計六名のプロに今回の合宿に参加して貰うのさ」

 

「ふむ」

 

「相澤君と山田君は教師になってまだ日が浅いが、彼等は昔からの付き合いで連携もいいし何とかなるだろうさ。今度全員揃っての打ち合わせも予定しているのさ。後、臨時とは言え君は初めて教員として動くだろう?」

 

「そうだな」

 

「というワケでまず私からヒーローと教師の関係性とその脆弱性と負担について話していこうと思うよ、ここで私の教師論を聞いて林間合宿での糧として欲しいのさ」

 

「・・・・・・ん?」

 

「まず知っての通り我が雄英高校では、教師達は皆バリバリ現役のプロヒーローを採用しているわけだけど、これは生徒にヒーローのことを教える以上実際に現場を経験しているプロの方が信頼性があるという理念の下採用しているんだ──」

 

「・・・・・・」

 

 ここでカマソッソは一つ確信した。

 

 やっぱコイツ話長い!!!

 

 

 

 

 

 

ブロロロロロロロ・・・・

 

 次に雄英に行くのは今週の土曜日、それまでにとりあえずオールマイト以外の同行ヒーローのことを調べておくか、特に教師陣以外のマンダレイとラグドールとかいう二人、教師の方は雄英のサイト等を見ればある程度の情報は得られるだろうが、この二人はヒーローネットワークを使って調べなければ個性も分からんだろう。

 

 

 ・・・・・・などと澄ました顔で考えているが、カマソッソは実際の所めっちゃ疲れている。主に根津による二時間程に及ぶヒーロー科の先生とは何たるかという事を主題にした講義によって。多分ゼミとかで金取れるレベルの事を根津はカマソッソに言っていたが、カマソッソは途中から人前で寝ないことに集中しすぎて会話の内容をほとんど覚えていない。今一生懸命頭を動かしているのも、バスの中で寝ないようにするためだ。

 

 

 

 

 

「さて、これからしばしの時間つぶしと行くか・・・・・・」

 

 現在カマソッソがいるのは雄英高校がある隣町の駅前。昼の時に折角だからと雪芽と共に駅前をふらつくのを説得されてしまったため、当の本人が来るまでここで待機しなければいけない。学校が終わる時間等も考えてカマソッソとの時差は約一時間。カマソッソはとりあえず駅前でなく駅周辺を適当に歩くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

「塾、大型スーパー、駅周辺はああも賑やかだったのに対し郊外となると寂しくなるものだな・・・・・・」

 

 カマソッソがぶらつき始めて何分程経っただろうか。とりあえずカマソッソが歩いて駅前から閑散とした場所に行ける程時間が経ったのは確かである。夏とは言え五時も近くなると少しずつ空が赤色に染まり始めるというもの。数時間前は青色だった空はオレンジ色の綺麗な夕焼けになりつつある。

 

 

ザシュ

 

「・・・・・・」

 

 カマソッソは自分の耳を疑った。ここは何も無いただの閑散とした住宅街。今の音は、素早く、だが重く何かを斬るような音はここで鳴っては行けない類の音。音の発生方向はカマソッソから見て右の路地裏方面から。だが疑ったのは一瞬だけ、次の瞬間、最悪を想定したカマソッソは翼を展開しトップギアで音の発生場所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あ・・・・・・」

 

「英雄とは、自己を顧みず自らを鼓舞し、他者を他意なく助ける者のことだ。だが、お前はどうだ、金を目的としてヒーロー活動を行う?ハ、そんなものは贋物だ。本物のヒーローならば、報酬など無くても動くことが出来る」

 

「やめ、ろ」

 

「排除しなければならない。お前のような贋物の英雄を。正さなければならない、偽善と贋物で溢れたこの世の中を!!」

 

「ッ・・・・・・」

 

 

「やめろ」

 

「・・・・・・お前は」

 

 

 夕焼け空の路地裏にて一つ、血に染まったおぞましい姿のヒーロー殺しと、犠牲で生きた蝙蝠の姿の英雄の戦いが今、始まろうとしていた。

 

 




書いてて思ったんです、これステインを林間合宿でヴィラン側に入れたらいくらカマソッソいるとは言え林間合宿が地獄絵図になるの確定だと。でも英雄回帰とかはカマソッソ的にも入れたいので林間合宿には向かわせずここで戦闘させます

この作品の時間軸は原作一話の一年前なので、本編ビッグ3が一年生の時っていう
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