「何故・・・・・・何故俺の邪魔をする!?」
「人を傷つけてるからに決まってるでしょ!?」
「全ては、正しき社会のためなのに・・・・・・!」
「人を殺しても成り立つなんて、そんなの正しい社会なハズがないよ!!」
「黙れ黙れ黙れ・・・・・・!!」
何故、今ここに雪芽がなんて考える必要はない。アイツは、オレのことを探してくれていたのだ。だが、ステインは今不安定な状態にある、もしその牙が雪芽に向いたら──
「逃げろ雪芽!コイツはヴィランだが、強い!!」
「黙ってて想太さん、私勝手にフラフラどっか行って、更にこんなコトになってるの許してないからね」
「だが」
「私仮免持ち!もう守られる側じゃないよ!それに、目の前で人が倒れてるのに逃げろって言うの?」
「それは・・・・・・」
「大丈夫、私がするのはあくまでも時間稼ぎ。もう通報してあるから、あと十分もしない内に来るよ、エンデヴァー」
「!」
「想太さんの名前出したらすぐ向かうって言ってくれたよ」
エンデヴァー、そうか、あいつの持ち場は静岡方面だったな・・・・・・あいつの目の前で、『エンデヴァーもオールマイトも越える』と宣言してしまっただけに、この姿を見せるのは情けないが。だが、エンデヴァーが来る。それならば、雪芽に伝えなくてはならないのは一つだけだ。
「雪芽、アイツに血を見せるな。血を舐められるとこうなる」
「・・・・・・分かった」
「エンデヴァー、アイツも”贋物”だ。粛清しなければ、オレを倒していいのは”本物”のみ・・・・・・!!」
「私、時間稼ぎとは言ったけど、勝つつもりがないワケじゃないから」
「女、お前も良い・・・・・・誰かを守るために最適な行動をするその姿・・・・・・生かす価値がある」
「想太さん達をあそこまでやっといてなんて上から目線・・・・・・!!『
パキパキパキ・・・・・・
雪芽の体の周りに直径三十センチ程の氷で出来た剣が次々と現れる。次第に剣達は綺麗に並び、雪芽の周りをゆっくりと回り始める。
これこそが涼原 雪芽の個性『氷雪』の真骨頂。彼女の個性は自身の水分や体内エネルギーから氷や雪を作り出し、形にしたりそのまま発射したり出来る、というものだが、『体外の水分エネルギーでも同様』。つまり、天気が雨と雪に限る、もしくは雪山等の限定された環境でのみ、雪芽は無限に氷や雪を生成することが出来るのだ!言うなれば『無限の氷製』。また水たまりや川・海等の水も使えるため、彼女の活躍の幅は広いと言えるだろう。
「ハァッ!!」
「オォッ!」
遠距離から一方的に、雪芽の剣がステインを襲う。対してステインは飛んでくる剣を刀で対処し続ける。雪芽は氷や雪を意のままに操れるが、一度バラバラになってしまったり、形が崩れたものまでは操れない。要は行きだけの一方通行の命令しか出来ないのだ。
「しぶとい・・・・・・!」
「・・・・・・・・・・・・!シィッ!」
「ッ!?いた!」
一瞬、ほんの一瞬だった。雪芽は剣を飛ばす、剣を作るという二つを同時処理していたが、集中力が持たなくなってしまったのか本当に一瞬だけ動作にもたつきが生まれてしまった。そしてステインはその一瞬を見逃さなかった。一瞬の内に懐からナイフを取り出し、雪芽の腕に目掛けて投げ、当てることに成功した。
「飛び道具、まず・・・・・・」
「そう思うのならばすぐ行動に移せ」
ザシュ
「ッ・・・・・・!!」
「・・・・・・さて、残念だったな、”本物”の卵。・・・・・・レロォ」
ゾク
「う、あ──でも!」
「・・・・・・?」
「「残念なのは、貴様(あなた)の方だ!!」」
ドゴッ
「ガッハ・・・・・・!?」
「ハァ、ハァ、”本物”・・・・・・!お前達、最初からこれを狙って・・・・・・?」
「想太さんなら、必ずやってくれるって、信じてたから」
「・・・・・・雪芽も思い切ったことをするものだ、
──雪芽が倒れてから、ステインをカマソッソが後ろから殴る今の一連の動作は、示し合わせてやったわけではない。雪芽がナイフを投げられてから最善を考えカマソッソを信じて託し、硬直が解けたカマソッソがそれに応えただけ。だが、それだけでも、ステインに『希望』を抱かせるには十分だった。
「・・・・・・あぁ、良い!やはり”本物”だ!お前達は!!お前達は、俺の目の前で!俺の、『英雄回帰』が正しいと証明した!仲間を信じ、託す!今の一連の行動は確かに自己犠牲で生まれたモノだ!互いが互いに犠牲となり、俺に一撃を入れた!!」
「それはち──グッ・・・・・・」
「想太さん・・・・・・血が」
「・・・・・・ここで倒れるわけにもいかないだろう。ステイン、今の行動を自己犠牲で生まれたモノと言ったな」
「言ったな、そうだろう?お前達は傷つき、それでも諦めず次へと繋いだ。其処に報酬も見返りも何もないというのに。『英雄回帰』そのものだ。お前達も!”本物”なのだ!描かれた理想の英雄像!贋物だらけのこの社会で、確かな輝きを持つ者なのだ!!」
「自己犠牲、見返り。そんなものでお前は本物か贋物かを判断して良いのか?」
「・・・・・・は?」
「自己犠牲だと!?オレ達は何も好き好んで自らを犠牲にしているワケではない!見返り!?そんなもの───あればあるほど良いに決まっているだろう!!ヒトは褒美があれば力を十全に発揮する、それが自分の求めるモノであるほど!!オレでさえ、『情報』を得るためにヒーローになると決めたのだから!!」
「・・・・・・な」
「先の行動は確かに互いの行動が作用した結果だった!だが、それは偶然だ、偶然を結果として見せかけただけだ!オレがもしもあの時まだ動けていなかったら?そんなことは考えたくないがな。それに、アレは雪芽の自己犠牲などではない。『信頼』、それだけで説明の済むことなのではないか?」
「ふざけるな、確かに俺には”本物”に映った!それにオールマイトなら!俺が見た本物の英雄は!見返りも求めず、己のみで戦っていた!!」
ステインの憧れはオールマイト?『英雄回帰』の思想も、ヤツの行動からということか?
──『吐いて貰うぞ、オール・フォー・ワンの居場所を・・・・・・!!』──
「オールマイトも、欲望の一つや二つくらいあるだろう」
「何を・・・・・・!」
「ステイン、先も言ったろう、『英雄回帰』自体は素晴らしい考えだ。それこそヒーロー全員が心がけるものとして立派なモノだ、が!」
「それを押し付けるのは違う!それは強欲だ、自己満足の我儘だ!!人類は欠点を補いながらここまで来た!ヒトはヒトである限り『欲望』が付き纏う!!貴様の『英雄回帰』は共感者が現れたとしても、『理想』にしかなり得ない!!全てのヒーローが『英雄回帰』を実現するのは矛盾によって不可能!例え実現された世界があったとしても、『同じ考えしか持たない人類』に成長・存続などあり得ない!!それに、多様性があることこそ、人類の利点ではないのか!?」
「・・・・・・分かった」
「・・・・・・納得するのか?」
「あぁ、『英雄回帰』は・・・・・・『理想』ではない!実現する『義務』だからだ!!”本物”よ、もう一度!倒れていろ!!」
ゾク
「・・・・・・なッ」
「想太さん!?」
「刀にお前の血が残っていないわけがないだろう・・・・・・そうだ、最初からこうすべきだった。他の言う事に騙されず、俺は俺の為すべきことをすればいい。俺は、俺が、今までしたきたことをを無駄だとは言わせない・・・・・・」
二分・・・・・・雪芽も倒れているから、今誰もアイツを止められない!
「なんでこっちに来るんだよ!?」
「贋物は、駄目だ。贋物がいては駄目だ。本物の妨げになってしまう・・・・・・!やはり、誰かが、血に染まるしかないのだ!
「ステイン・・・・・・!自己のために、力を振るうなど・・・・・・!それこそ本当の
「・・・・・・”本物”、オレはこいつを殺したら、動けず警察に捕まり牢獄に行くことになるだろう。だが、俺は必ず戻って来る!その時こそお前が俺を殺しに来い!!俺は、”本物の英雄”に本気の戦いで敗れるなら!それはそれと受け取ろう!!」
駄目だ、やめろ。殺すな。
「全ては──」
「嫌だ、死にたくねぇッ──」
オレの前から、もう。
「正しき──」
「嫌だッ!嫌だッ!死にたくねぇッ!!」
命を奪うな!!動けよ!オレの体ッ!!!
「社会のために───」
『根津校長先生!今までありがとうございました!!』
『卒業おめでとうなのさ想太君!!君は普通科でありながら、ヒーロー足らんと目指した!私にも心打たれるモノがあったよ!』
『俺、雄英じゃ仮免取れませんでしたけど、いつか必ず仮免も、本免も取って!無個性でもヒーローになれるんだって見せてやります!』
『君なら出来るさ!頑張りたまえ!あ、でも──』
『校訓は忘れるな、でしょ?』
『そうとも!君の人生はまだまだこれからなんだ、辛い時、やるせない時、あと一歩で届きそうな時、諦めたくない時』
『まだ行ける!ってこの言葉で自分を励まして、あと一回頑張って見る!』
『そう!この言葉は、勇気が出る、希望に満ちた言葉なのさ!!』
『それでは失礼する』
『いや待ったカマソッソ君』
『む?何か忘れていたか?』
『そうではないんだけどね──いや、大丈夫なのさ!』
『少し昔を思い出してしまったよ、君は、口調とか色々、少し変わってしまったようだけど、「本質」は、あの時と変わらない、メラメラと希望に満ちたあの時のままだ』
『・・・・・・?』
『おいおい、まさかアレまで忘れてしまったわけではないだろう?どんな時も、自分に勇気が湧いてくるあの言葉。辛い時、諦めたくない時、胸をぐっとこらえて叫ぶ魔法の言葉』
『『さらに向こうへ───』』
「
「何・・・・・・!?」
「オオオオオオッッッ!!!!」
ドッ・・・・・・!!
奇跡ももたらす、雄英高校の校訓にして、オールマイトの決めゼリフ。何故かは説明出来ない、なぜならそれは奇跡だからであろうが、勇気が満ちる魔法の言葉は、確かにステインの個性で止められたカマソッソの体を動かし、ステインにありったけの力を込めた一撃を喰らわせた。
「エンデヴァー、現着した!・・・・・・!!カマソッソ!」
「エンデヴァー・・・・・・来たか」
「お前程のものがこんなにも出血を・・・・・・!?救急車は!」
「もう、呼んだよ」
「その声は、通報してくれた少女か。それに、『ヒーロー殺し』・・・・・・!!」
「想太さんがね、力を振り絞って、ステインの個性による硬直をまるでなかったかのように飛び出して殴って気絶させたの。だから、私が個性で腕を組んで凍らせといた。起きても、動けないはずだよ」
「そうか・・・・・・む、あなたは・・・・・・」
「・・・・・・俺は何も出来なかった、まだ学生の女の子と、漢が気ぃ張って戦ってたのに。
「・・・・・・そっちの方は」
「・・・・・・もう息が止まっちまってる」
「・・・・・・・・・・・・」
重苦しい空気が流れる、『ヒーロー殺し』に打ち勝ったというのに、その後は決して勝利を喜ぶような状況ではなかったからだ。・・・・・・だが、そんなことを知らないように、目ざとくあいつらはやってくる。
『「ヒーロー殺し」が現れたと通報があり、私達も現場に到着しました!そして──あ!いました!エンデヴァーと・・・・・・そんな、見えますでしょうか!?デビューした間もないヒーロー「カマソッソ」が倒れてしまっています!!』
「テレビ・・・・・・?どうしてこんな時に・・・・・・」
「警察か、もしくは俺が緊急出動したことで漏れたか・・・・・・?どこまでも嗅ぎつけてくるやつらだ」
「・・・・・・正しき、社会、を」
「「「「!?」」」」
「エンデヴァー・・・・・・!!”贋物”・・・・・・!!!」
「ヒーロー殺し・・・・・・!」
「手が凍らされてるのに立って・・・・・・!?それに、ステインもかなりの怪我のハズ・・・・・・」
「・・・・・・ステイン」
「”本物”・・・・・・いや、
「だが!!」
バリッ
「氷を・・・・・・!」
「エンデヴァー・・・・・・!!ハァ、貴様は”贋物”だ!・・・・・・正さねば、誰かが血に染まらねば・・・・・・!」
「”
「ッ・・・・・・!!」
「来い。来てみろ、贋物」
「俺を殺していいのは、カマソッソとオールマイト・・・・・・”本物の英雄”だけだ!!」
「・・・・・・!?気絶、している?」
「立ったまま・・・・・・」
ステインは、幾重に重なったカマソッソの攻撃により、内蔵損傷・骨折等で動ける体ではなかった。だが、それでも──
その場に居合わせたテレビ局により、『ヒーロー殺し ステイン』の情報が全国に向けて発信。ステインが提唱していた『英雄回帰』と、その場にいた雪芽とプロヒーローの証言から──
ヒーロー カマソッソとしての思想『人類理想』が広く、流れることになった。
カマソッソがすんごいカッコいいことを言い過ぎなくらい言っていても、勇者王だよ?で全てを乗り切る気でいます
ステインが何か意固地だと感じるかもしれませんが、真っ向から思想を反対されてキレてたからとでも思って下さい。
『人類理想』の思想について
・人類は人類だからこそ『欲望』は生まれてしまう。でもそれは当然のこと
・人類は違う考えのモノ同士が支え合ってきたから今がある。
・人類は今の人類だからこそここまで来た。目指す理想を掲げるのは良いが、それはあくまでも理想であって強制してはならない。
・人類は多様性があることこそ利点。人はそれぞれの考え方がある。
大まかにはこんな感じです、ちょっと脚色ついてるとは思います。