勇者王は偉大なる英雄《ヒーロー》   作:しらすの番人

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サブタイは変態王子が元ネタです
ちょっと見直そうかな


鈍感王子と隠さない猫。

 

「・・・・・・あ」

 

 少し、明るさに目が驚く。白い蛍光灯が光り、太陽が照らすこの眩しさは──どう考えても自宅のアパートではない。

 

「病院か」

 

 是、ここは病院である。ディスイズアホスピタル。知らない天井などではない、あいやカマソッソにとってはこれが初の病院だが。

 

 

 つまる所カマソッソは病院に搬送されてそのまま一夜を明かした。あのステインが再起し、言いたいことだけ言って気絶した後、カマソッソも出血多量により意識を失ってしまったのである。その後、通報によって駆けつけた救急車によりカマソッソは静岡にある病院へと運ばれた。同じく出血多量によって、カマソッソが助けたヒーローも同じ病院へ運ばれている。

 

「先生!森鎌さんが起きられました!!」

 

「分かった、すぐ向かおう」

 

 実際の所、カマソッソは背中以外には傷を負っていない。だが、カマソッソはステインが本気で振るった刀の一撃を、助けるためとは言えまともに受けてしまった。それは『必ず殺す』とステインの殺意がこもっていた一撃。背中からの出血だけで気絶する程、傷が深くなってしまったのだ。

 

 

 

「えー森鎌さんね、今回背中の傷が深かったんで、とりあえず止血はしときました。・・・・・・傷自体は問題なく治るよ、君結構回復力高い体してるから。・・・・・・けど」

 

「けど?」

 

「斬られた跡って言えばいいのかな、受けたこの・・・・・・刀だよね?傷は治るんだけど、この刀傷はどうしても残っちゃう。それだけは覚えておいて」

 

「・・・・・・分かった」

 

「傷跡も消して上げたかったんだけどね、深すぎた。・・・・・・もう一つ、肩ら辺にあった方は擦り傷だから消せるんだけど。背中の方はね、もうパックリ皮が開いちゃってたの。だから君は出血多量で意識失っちゃったわけだし。・・・・・・ごめんよ」

 

「いや、油断してしまったオレのミスだ」

 

「森鎌さんヒーローなんだって?辛気臭いことは言いたくないんだけど、この出血の量、跡二箇所くらいかな、同じように出血してた場所があったら、多分君この病院来る前に出血多量で亡くなっていたと思う」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「別にヒーロー活動辞めろって言ってるわけじゃないよ?だけどね、君をずっと心配して、君のために泣いてる女の子がいた。ずっと君の側にいるもんだから、流石に途中で一緒にいたエンデヴァーさんに送って貰ったけど・・・・・・まぁ、君が傷ついて、悲しむ人がいるってのは理解した方が良い。あんなに暗い表情してたエンデヴァーさん始めてみたよ」

 

「・・・・・・すまない」

 

「礼と感謝は本人達に伝えてあげてね。あ、念の為今日も入院して、問題ないようだったら明日退院ね」

 

「了解した」

 

 ふと、一つ、二つ、カマソッソは疑問を覚えた。何か感じてた違和感、でもそれがなかったら助けることが出来たモノも助けられなかったのだと気づくと、カマソッソは今度本人に会った時に聞いてみようと心の中にしまいこんだ。

 

 

 

 

 

 

 

「カマソッソ!いるか!?」

 

 それは突然の訪問だった。院長からの説明も終わり、手持ちのスマホで暇つぶしがてら入れたアプリゲームをポチポチと進めていた時だった。

 

「エンデヴァー」

 

「・・・・・・無事に意識が戻ったようで何よりだ」

 

「わざわざ来てくれたのか?オレのために」

 

「む、そこまで謙遜しなくても良いだろう。病院から意識が戻ったと連絡があったから飛んできた。お前程強い者が昨日あそこまで消耗していたのだ、心配の一つくらいするだろう」

 

「・・・・・・感謝する。・・・・・・情けないな、オレは。エンデヴァーとオールマイトの前で二人共越えると言ったばかりなのに。それに、オレがもう少し速く気づいていれば、助けられた命を、オレは助けられなかった・・・・・・」

 

 ─カマソッソがステインがいた現場に到着した時、現場にはステインと意識はあるヒーローとないヒーローの三名がいた。意識があったヒーロー、カマソッソが身を挺して庇ったヒーローは助かったが、その友人、意識がなかったヒーローは、病院で既に死亡していたことが判明した。

 

 

「・・・・・・ヒーロー殺しは強かったか?」

 

「単純な強さだけで言ったら、多分オレは余裕で勝てただろう。だが、アイツには信念があった。執着じみた己の芯が、ブレないからこそ、アイツは強かった」

 

「・・・・・・失うというものは辛い。己の未熟さに気付かされる」

 

「エンデヴァー?」

 

「もっと、強くなりたいと、思っただろう?」

 

「・・・・・・あぁ」

 

「俺も、もっと強くならねばならん。お前も感じただろう、『弱くては何も守れない』。だが、カマソッソ、お前は──」

 

 

「人を一人、救った。紛れもない、お前の活躍で。失ったモノを数えるなとは言わない、自分の弱さを再確認出来るからな・・・・・・。だが、助けたモノも見ろ、失ったモノ以上に、救ったモノもいるのだから」

 

「助けたモノか・・・・・・ありがとうな、エンデヴァー。少し、気が楽になった」

 

「俺は何もしていないさ、では、これで失礼する」

 

 エンデヴァーは普段通りの態度でカマソッソに挨拶し、部屋を出ていった。──カマソッソの見舞いに来て、励ますつもりだったのに、自分にも刺さる言葉を言って帰っていったエンデヴァー。カマソッソはもちろん感じ取っていた、『エンデヴァーにも何かがある』と。だが、触れるのは今ではない、然るべき時に、然るべきことは行われるから。

 

 

 

 

 

「・・・・・・いた」

 

「やはり来たのか」

 

 十七時、本日二回目にして最後の訪問客。カマソッソはエンデヴァーが『連絡を受けた』と言っていた時点で薄々察してはいた、恐らく雪芽にも連絡は行ったのだろうと。そしたらやはりというか何と言うか、彼女は来たのだ。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 お互いに少し気まずい沈黙が流れる。いや、片方は何から聞けば良いのか考えていて、片方は無事生きていたことを実感しているだけなのだが。

 

 

「雪芽・・・・・・昨日はすまなかった」

 

 一歩先に進めたのはカマソッソ。とりあえず聞きたい疑問は棚上げし、昨日の自分の行動を謝罪することを選択。

 

「オレはお前を待つ時間、少し街を見て歩きたくなってな・・・・・・それで少し転々と」

 

「結局着いたのは駅から2Km離れたひっそりとした閑散街ってどういうことなの?」

 

「むぅ・・・・・・」

 

 カマソッソは特に理由があってふらついていたわけではない。ただ本当に手持ち無沙汰な時間をただただ意味もなく浪費するために、自分の本能にただ任せ歩いていたに過ぎないのだから。

 

 

「・・・・・・偶然ステインと出会ってしまったにしろ、オレはステインと戦ってしまった。今思えば、戦うしか選択が無かったようにも思えるが・・・・・・結局、個性で身動き取れず、お前が来てくれなければ死者が一人から二人になってしまっていた」

 

「それに、本来ならオレが守りきらなければならないお前を戦わせて、怪我もさせてしまった・・・・・・怪我の具合は?」

 

「大丈夫、私がやられたのは腕だけ、昨日少しお医者さんにも診てもらったし、『リカバリーガール』・・・・・・保健室の先生にも診てもらったからもう大丈夫」

 

 あの時は痛かったけどね、とはにかむように笑ってから、雪芽はすぐ黙る。カマソッソの続きの言葉を促しているように

 

 

「改めて、あの時来てくれて本当に助かった。・・・・・・正直言うとお前が来てくれて本当に良かった。あのままだったら、オレは体も動けず、目の前で人を殺され、オレもどうなっていたか・・・・・・そうしたら、絶望するどころか、お前とこうやって話せていたのかも分からなかったのか。今回は逆に助けられてしまった、本当に助かった、ありがとう」

 

 カマソッソはそれで自分が言いたいことは言い切った。雪芽が来る前のカマソッソは、一種の悟り状態というか、諦めの状態にあった。自分の全てをステインに伝えた、訴えた。あの場でカマソッソは出来たのはそれこそ神に祈るくらいのものだった。それで、全力を伝えた上で、殺されるのならば、そこがきっと自分のこの世界でのゴールだったのだろうと、無意識に悟りのような考えを持ってしまっていた。

 

 

「・・・・・・それだけ?」

 

「・・・・・・?」

 

 だが、彼女はそんなこと知らない。彼女にとってのカマソッソは、ただ自分を助けてくれて、ただ隣で笑ってくれて、ただ自分より少し年上の優しい大人。カーン王国?勇者王?そんなもの、事情を知らない一般人にとっては考えつく領域のないモノだ。

 

─雪芽は、『自分を助けてくれた命の恩人で、片思いしてしまった人』が死にかけたのだ。

 

 

 

「・・・・・・ねぇ、私がどれだけ心配したのか分かってる?やっと着いて、間に合った、助けられた、って思ったら、『出血が多すぎて間に合うかどうか』って言われた時の気持ち」

 

「・・・・・・それは」

 

「一瞬だけさ、ヒーロー殺しも、想太さんが助けたヒーローのことも恨みそうになっちゃった。『どうして今日なの、どこか別の日に知らない場所でやってよ!』って。でも、あなたは違うよね。あの日私を助けてくれたように、モールの時も、今回の時も、他の事件でも、当然のように人を助けに行ってしまうから」

 

「・・・・・・」

 

「謝ってよ!『心配かけてすまなかった』って!『もうこんなことしない』って!!私、駅に着いてあなたがいなかった時、『珍しいな』って思って少し待とうとした!・・・・・・でも、実際には遠く離れた場所で、あなたはフラフラと彷徨ってた。それでしょうがないから電話かけても想太さんの電話通知offで気づいてないし!飛び出したと思ったら定位置で動かなくなった!!『何かあった』って思う方が普通!そしてあなたの活躍を聞いて、見てたら、嫌でもヴィランと戦ってるって分かっちゃう!何かを守るために!!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「必死でエンデヴァーさんに電話して、個性使って全速力で駆けつけて、無事だと思ったらあなたの背中は血塗れで!あなたの顔は酷く絶望していて!!あの時は無我夢中だった!・・・・・・でも、でも!」

 

 

「怖かったよ、ヴィランを相手にするのも、あなたが死んでしまうと思ったのも。・・・・・・だから」

 

 それだけ言うと、雪芽はカマソッソが寝ているベッドに近づいて、布団にストリと頭を投げ、しくしくと次第にわんわんと泣き、『生きてて良かった』と口にした。

 

 

 

 カマソッソはこの中で、『何故ここまで自分のために泣いてくれるのか』という質問は出来なかった。しなかった。言ってしまえば、『◯◯◯◯◯◯◯◯◯』とたった九文字で終わる質問。何かが終わり、何かが始まる質問は───少し、早かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、なんでオレの位置が分かってあそこまでこれたのだ?オレ雪芽に位置伝えていないよな?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「うーん・・・・・・前想太さんのデビューの時さ、想太さんスマホ私に預けたまんまトイレに行ったの覚えてる?」

 

「そんなこともあったような・・・・・・」

 

「その時に私のアカウント追加しといたの」

 

「・・・・・・何を?」

 

「『全離』またの名前を『全距離確認サービス』。これを友達同士でやるとね、相手の位置が筒抜けになるの!」

 

「・・・・・・は?それをあの時追加したのか?一瞬で?」

 

「元々想太さんのスマホに入ってたよ?想太さん自分のスマホなのに全然機能把握してないじゃん!!」

 

「えぇ・・・・・・」

 

「まぁこれがあったおかげで私想太さんの場所分かったわけだし・・・・・・お相子ってことで!」

 

「何が相子なのだ・・・・・・?」

 




今回のことですれ違い通信起こることになるのをまだ知らない
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