「・・・・・・ハァ」
無駄に強かった、このヴィランは。速度も大事だが、こういうダメージを軽減出来るような個性持ちには火力を一点突破させて倒すしかないな。とりあえずコイツは一旦宿へと持ち帰り拘束するとしよう
洸汰と通形ミリオは無事だろうか、あいつらが行ってからもう十分近くは経つが─
『A組B組総員──』
『プロヒーローイレイザーヘッドの名に於いて、戦闘を許可する!!』
マンダレイのテレパス!
ハ、緊急事態とは言え中々思い切りがあるじゃないか相澤!!
『
『生徒の「
『聞こえてる!?この二人はなるべく戦闘を避け単独では動かないこと!!』
通形ミリオが伝えたか!ならばこれでオレはヴィランの殲滅と雪芽達の保護に移れる!
「最優先は生徒達全員の確保!次にヴィラン!そこは履き違えるなよカマソッソ!!」
「『デトロイトスマッシュ』!!!」
「散開!後5・7・2は一斉掃射」
「「「了」」」
まぁそうだな!私が居ると分かって襲撃してくるのならば当然!私の対策はしてあるか!!何とか四人気絶させたがまだ半分以上!!
ダダダダダダ・・・・・・
「Auchi!人間に銃向けちゃダメって習わなかったかな!?『オクラホマスマッシュ』!」
「生憎、銃弾を風圧で飛ばすことが出来る存在を我々は人と学んでいない」
「口が良く回るな!!テキサス──」
「グレネード投下!ヤツに何もさせるな!!」
BOM!!
・・・・・・マジかよ。音・光・煙だけで殺傷力は無いに等しいが、それでも爆弾を使うか!?
いや、発砲してこそいるものの私を殺す気はない。そしてこの衛兵達は全員私に向かってくるが、プッシーキャッツの皆の方へ向かう様子もない。
つまり『私だけ』を狙い撃ちにした足止めがコイツらの役割で、指示された命令!!
「これは更に急がないと不味そうだ!」
正直、これは宿周辺にあまり被害を出したくないと思ってやっていなかったが、やむを得ないだろう!今はプロだけじゃなく、生徒達もいる。一刻を争う事態だ!
「飛んだぞ!総員撃て!!」
ダパラララララ・・・・・・
上空へ翔んだオールマイトを撃ち落とすために撃たれる弾幕の雨。
ニューハンプシャースマッシュを使い傭兵達の視線を移動させ続けるオールマイト。
そろそろライフルのマガジンが尽きそうになった時、オールマイトは移動を止めた。
「さて、覚悟しろよヴィランども!!」
何故オールマイトは上空で移動し続けたのか。それは傭兵達の視線を上に固定するためだ。衛兵達の視線が上に向いていることを利用して『上を向かせながら移動させる』ためだ。
「ッ!?総員散開──」
『傭兵は全員オールマイトによってひと固まりになるよう誘導された』。
この事実に気づいたのは今回の依頼のリーダーのみ。
「もう遅いさ!『カルフォルニア──』」
「スマッシュ』!!!」
SMASH!!!
オールマイトが傭兵達がいる地面に向け放ったパンチは、地面にクレーターを作るほどの威力。
オールマイトは直接殴らないよう調節したものの、至近距離での衝撃は脳を揺らし、意識を刈り取るに十分なモノだった。
一人一人仕留めるのは手間?なら一発で皆仕留めれば良い!!
あまりにも脳筋な考えだが、それを行えるのがオールマイト。脳筋だとして、何も考えないでNo.1の座につけるほどヒーローは甘くはないのだ
「ご・・・・・・」
「おっと、全員気絶させたつもりだったけど・・・・・・まだ意識があったのかい。流石はリーダーと言うべきか・・・・・・ん?」
この男のポケットに入っていた・・・・・・名刺かなこれは?『NFFサービス』・・・・・・民間軍事企業?思えばプッシーキャッツの二人が戦っているヴィラン達とは見た目も何も統一されているとは思っていたが・・・・・・何故軍事企業がここに?
「どうにもきな臭いけど・・・・・・今は全員拘束した後で生徒を保護しに行くのが先だ」
日中B組の子たちを指導していたからマッスルフォームでいられる時間ももう三十分くらい・・・・・・急がなければ!!!
「(まっすぐこっちに向かってきているのが3・・・人かな?流石は名門校だよなぁ・・・・・・気づく奴も切り抜ける奴もいるんだね)」
場所は代わり現時点で生徒達十名以上の意識を奪ったガスの中心地にいる、マスクを着けた小柄なヴィラン『マスタード』。
彼は今回の林間合宿襲撃メンバーの中でも最年少、かつ最大の妨害個性を持つヴィラン。その個性『ガス』によって雄英高校の生徒達を毒ガスで昏睡させたりしており、ヴィラン連合でも随一の被害を出している凶悪ヴィランである。
そして、その個性であるガスの揺れも感知出来るので人数把握にも長けている。彼は既にゆらぎを感知し数人が自分の方へ向かってきていることを認知している。
「でも、悲しいよなぁ」
「どれだけ優秀な”個性”があっても」
「堕天、天喰!こっから頼むぞ!?」
「人間なんだよね」
BLAN・・・・!!!カキィ!!!
「・・・・・・!銃弾が!?」
「あっぶ!やっぱ作っといて良かったコレ!!」
一年B組
その場にある素材を使うことで物質を作ることが可能だ!
他にも錆びた物だったりをすぐ加工してピカピカにも出来る!!
朔弥は事前に木を使って簡易的な盾に加工。それで何とか銃弾を防いだのだ。
「そうか、『加工』。いたねそんな奴・・・・・・でも関係ないよ。数撃てば──」
「させないッ──ありがとう過程、さん。ここからは俺に任せてー!」
「『再現』か!今日のメニューは──」
「バーベキュー、タコやイカ、鶏肉!色々食べた!!」
右手にタコ、左手にイカの足、そして足には鶏足。三つの動物を手と足に『再現』した天喰 環はヴィラン相手に接近戦を挑んでいく。だがそもそもマスタードに近接戦をする予定も力もない、迫りくるイカ足とタコ足を周りの木を使いのらりくらりと躱していく。
「とっとと、まぁ、このガスの中どれだけ息を止めてられるかが・・・・・・」
マスタードはそこで違和感に気づいた。『何故こいつらは普通に会話出来ている?』。マスタード周辺に漂っているガスは有毒、それも発生者近くのため濃度も濃い。
だがこの二人はガスマスクをするどころか息すら止めていない。
「まさか!」
「今更気づいても遅い!外気膜『エアリアル』!我の力で有毒成分をカットしていた!!」
マスタードの所へ向かっていたのは三人。過程・天喰、そして堕天。彼は自分のカロリーを使うことでガスだけを除く膜を三人の体に張っていたのだ。
「──アッハハ!上手くガスを無効化したみたいだけどさ、銃で終わるよね?」
「何かと思えば厨二患者が増えただけ!知ってるよ、君『並行して能力は使えない』んでしょ?」
「・・・・・・」
「今!君はガスを吸い込まない代わりに何も出来ないただの的なの、分かる?ていうか名乗り上げたのいらなかったでしょ、位置晒しちゃうんだから。なんでそういうのも考えられないかなぁ?雄英生でしょ?夢見させてよ、そんなんだから襲撃許しちゃうんだよ・・・・・・」
BLANN!!
「「!」」
「今こっち話してるよね?回り込もうとしてもさぁ、このガス僕が出してるって分かる?”ゆらぎ”でね、バレバレなの」
カチャ
「動いたらコイツ撃つから、そしたらその膜も無くなるね?」
「「・・・・・・」」
「僕さぁ、君達みたいに何も考えてないのに、学歴だけでチヤホヤされる世の中っておかしいと思うんだよね」
「あ、僕さ。動いたら撃つって言ったけど別に動かなくても撃たないとは言ってないよ?」
「ッ堕天!」
BLAN!!パキン・・・・・・
「・・・・・・は?」
「──詠唱完了。我この地点今この一時だけは『人』に非ず。顕現せよ、再臨せよ。我を写し身にして」
「ふざッ──けんなよ!!!」
BLAN!BLAN!BLAN!・・・・・・パシ
「全能神たるゼウスの化身が紡ぐ!喝采を!祝祭を!祝砲をあげよ!!絶対なる悪が裁かれることに合唱を!!」
「なんでッ!?二つは使えないはずじゃ!」
「我は越えた、限界を突破した」
「故に裁く!神は言っている、ここで終わる運命だと」
「絶対の悪に正義の雷を!!『
一つ、マスタードにミスがあったとするならば、
それは銃を堕天に向けた時、すぐに撃たなかったことだろう。
ヴィラン連合との狼煙が上がってから早十分。既に民間傭兵軍団『NFFサービス』、血狂い『マスキュラー』、ガス使い『マスタード』がヴィラン連合で戦闘不能になった。
正直、このままだと目的達成は出来たとしても撤退が困難。だが目的は順調に達成へと近づいている。先でやられたヴィラン達、現在プッシーキャッツと戦闘しているスピナーとマグネ達はあくまで陽動に過ぎない。
「ラグドール!これッ・・・・・・私達で止めないと!!」
「ダメ!逃げるの!」
「ア"ア"ア"ア"ア"」
ムーンフィッシュは個性『歯刃』を使い逃げる雪芽とラグドールを追いかける。ムーンフィッシュの口から出る無数の刃は自在に変形し、獲物を決して逃さない密度で二人に迫りゆく。
「ッ・・・・・・!」
雪芽は氷の壁を作り出し、放出。無惨にも壁は刃に切り裂かれるが、それでも少しの時間は稼げる。
「ラグドール!戦闘許可も出された!ここで戦わないと──」
「・・・・・・雪芽ちゃん?」
「あ──」
友達を巻き込まないようにヴィランを足止めしたかったのに、と雪芽は心の中で毒づく。
肝試しの時、雪芽とカマソッソの後は天喰&波動ペア。雪芽達と天喰達を境にして、ラグドール・ピクシーボブはそれぞれ逆回りで生徒達を保護しようとしているのが現状。
そして雪芽達の後続、それが
ここに、オール・フォー・ワンの狙いの個性五つの内、『サーチ』『氷雪』『再生』の三つが揃ってしまった。
「仕事・・・・・・報酬増える・・・・・・ア"ア"ア"ア"ア"」
「トキ!逃げて!!」
ズガガガガガガ
刃の雨が降り注ぐ、避けても避けても無数に伸び、無数に襲いかかってくる。戦うにしても、逃げるにしても、この刃の雨をどうにかしない限りどちらも叶わない。
「くぅ・・・・・・!三人とも、一旦森の中へ!!」
四人は森へと素早く飛び込む。依然刃の雨は降り注ぐが、道ではなく森の中なら、完全ではないがいくらか姿を暗ますことが出来る。
「あちきはどうしたら・・・・・・」
ラグドールは相手の弱点・居場所を特定出来る『サーチ』という強個性だが、相手がムーンフィッシュのような、物量で攻めてくるヴィランとの戦闘向きではないことは誰が見ても明らか。せめて、彼女に出来るのは相手の情報を仲間に伝えることくらい──
「ラグドール!戦いましょう!このままだとどっちにしろジリ貧です!!それに、私に一つ、とっておきの策があります!!」
「・・・・・・・・・・・・」
『ムーンフィッシュ』。個性『歯刃』、弱点『刃が届かない背中側』。
「ごめん!三人とも!!」
プロは卵よりも前にいるべきだ、生徒は私が守らなければ。
──そんな考えを、ラグドールは捨てた。
「悪いヴィランをやっつけよう。協力、してくれる?」
三人の卵はそれぞれ肯定の意を示した。
「耐えなきゃ、仕事・・・・・・ア"、肉み、たい。にくめん─!」
「ふぅん!」
危険と感じたらすぐ撤退する、これがラグドールが生徒達と共にヴィランを迎撃するに当たって言ったことだった。だが多少のリスクがあるのはもうどうにも出来ない。それがヴィランに立ち向かうヒーローというモノだから。
時間も無い中で立てられた作戦は、『とにかくムーンフィッシュの背中に攻撃する』のみ。策がある雪芽をフィニッシャー役にして、他三人はそれのサポート。
まず
「肉面、ヺヺヺヺ」
当然、ムーンフィッシュはそこを狙い攻撃を仕掛けてくるため、
送戻 時の個性は『再生』。自分や触れた人・物を倍速にして再生出来る。つまるところ、スピードの倍化。倍化の場合だと、最大『三倍速』まで動きを早めることが出来る。
そして送戻がオール・フォー・ワンに狙われている最大の理由が『逆再生』。触れた対象の「状態」をどんどん戻していくことが出来る、要は時の逆行。自分に逆再生を使い続ければ、身体年齢・身体状態が少しずつ戻っていき、最終的に
そしてここからが作戦の佳境。ムーンフィッシュは、自分の刃を使い常に空中にいるため、このままでは雪芽の攻撃がまともに届かない。
ので、ラグドールが接近戦を挑み、ムーンフィッシュの体を地上に叩き落とす。
「ここが体の張り時にゃんね!!」
幸いにも、森の中には所々太い枝となって頑張れば登れる木がいくつかあったのだ。それを利用し、ムーンフィッシュに上または横から奇襲する、というのがラグドールの作戦だった。
「肉、に"く"を”・・・・・・あ?」
ムーンフィッシュは己の目的のためにずっと下を向き続けて攻撃を仕掛けていた。
そこに慢心はあれど油断は無く。生徒とプロ一人ずつが自分の視界から外れたのに気づいていても、自分ならどうにか出来ると高をくくっていた。
「にゃあああああ!!!」
下調べもした、ラグドールというプロは個性は強力だが戦闘向きの個性で無い上に戦闘能力で見れば今回来ているプロの中で最弱だと。
その最弱がまさか自力で木に登り奇襲を仕掛けてくるとは思ってもいなかった。
「・・・・・・後は私が」
ラグドールのおかげでヴィランは地についた。やるなら今、チャージの時間も考えて出来るのは一回だけ。・・・・・・というか二回やろうとすると私の体が持たない。
「急速冷凍!」
早く、速く、疾く。ヴィランが起き上がる前に、ヴィランが立ち上がる周りの空気だけに撒く。それでお終い。少し体が寒いけれど、それでも耐えなきゃ。耐えて、その先にある勝ちの一手の掴むんだ・・・・・・!!
「アガ・・・・・・肉、肉面ヺ」
きっと、ここさえ乗り越えれば後はオールマイトが、想太さんが何とかしてくれる。
せめて今だけは、自分の友達を守らなきゃ
「『塵吹雪』」
凛とした空気が流れた。
真っ暗な夜でも微かに見える白色の雪は、細かく細かく、空気に紛れてムーンフィッシュの方へと流れて行く。
「ヺ?ヺ、ア、ア"、ア"ア"・・・・・・」
雪芽の個性『氷雪』の真に恐ろしい技。塵吹雪は、自分の体で限界まで冷たくした雪と氷が混じった粒を吹く技。されどただの雪と侮るなかれ。
小さな塊は喉・口から体に侵入し、一時的に体の内蔵・組織を氷漬けにし停止させる。
するとどうだろうか、外見は変わらないのに目を見開いたまままるで凍ったように動かないムーンフィッシュの姿がそこにはあった。
「はぁ、はぁ・・・・・・」
自分の個性柄冷気・寒気には耐性がある雪芽だが、流石にこれはそうはいかない。
何故なら塵吹雪の小さな塊は自分の体内で作り出す。自分でもその冷たさを感じているのだ、いくら耐性があるからとは言え極限の冷環境にずっと耐えれる程の強さは人間の体に備わっていない。
「良かった、これで皆無事・・・・・・」
雪芽は辺りを見渡して少し違和感を感じる。
ヴィランを無力化したのに、三人の姿が見当たらない。別行動となったトキと有弓はともかく、近くにいるはずのラグドールまでいないのはどういうことなのだろうか
「ラグドール?トキ?有弓ちゃん?どこに・・・・・・?」
皆の名前を呼んでみる。反応は無し。
まるで消え去ってしまったみたいに、いる気配を感じない。
「え、誰もいないの?おーい!誰かいないのー?」
「はいはい、いますよー。」
「ッ誰!?」
雪芽はすぐに警戒態勢を取る。声はこの森のどこからか聞こえた。
だが、それはトキやラグドールのような女性ではなく、男の声。
「彼女達なら俺のマジックで貰っちゃった」
「一人はアドリブだけど、安心してくれ。君も──ほら」
「ッ後ろ───」
雪芽は男の声が後ろから聞こえた瞬間、咄嗟に反応しようとしたがすぐ視界が真っ黒で覆われた。
最後に見たのは帽子を被り、マスクを着けた怪人、と──
「マジックで消えてしまいました。さて、彼女達はどこに行ったでしょう?」
「貴様ッ!雪芽、を!!!」
優しくて頼りがいのある、蝙蝠の姿をしたヒーローだった。