勇者王は偉大なる英雄《ヒーロー》   作:しらすの番人

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No.1ヒーロー オールマイト

 

「オニーサン本当は想太(そうた)って言うの?さっきまで言ってたカマソッソはどこに行っちゃたの?それに・・・・・・あなたは何者?」

 

「・・・・・・それは」

 

 塚内なる警察が去った後、六時を迎えようとする市街地には身長150cm程のバリバリ現役JK、「涼原(すずみはら) 雪芽(ゆきめ)」と名乗った少女と190cmを超える長身の森鎌(もりかま) 想太(カマソッソ)が残された。塚内の前では何事も無かったかのように接していた雪芽だったが、彼女はカマソッソに大きな不信感──と言っても興味五割、疑念五割くらだが──を抱いていた。自分を助けたことに感謝はするが、カマソッソの言動を彼女は全て見ていたのだ。大仰な態度を取り、「カーン」や「カマソッソ」と言った聞き慣れない言葉、更には凶悪(ヴィラン)を軽く倒す圧倒的な戦闘能力。逆にカマソッソに対し何の疑念も持たない方がおかしい程だ。

 

 不味い、とカマソッソは態度には出さないものの、心の中で呟いた。彼はカマソッソであり想太でもある。カマソッソの記憶と想太の記憶を持っているが、自我は体の持ち主である想太ではなくカマソッソが全面に出ているという、奇天烈な状況に置かれているのだ。それもカマソッソ自身何故そうなっているのか把握出来ていない。というかカマソッソは慣れない体で戦闘を行ったことによりとても眠い。何か答えなければと思いこそすれとっととベッドに横になり惰眠を貪りたいというのが本音だった。

 

「あ分かった、あなたもしかして『ヒーロー名』がカマソッソ、なんでしょ。仮免許持ってるって言われてたもんね。見た所あなた大人だよね?そっか、仮免許で緊急の時は個性使えるようにしているのね。いいなぁ、私はやっともう少しで仮免許試験なのに」

 

「・・・・・・ぁ?」

 

 ヒーロー名、ヒーロー名とは何だ。・・・・・・ええい分からん!依代!・・・・・・なるほど、ヒーローの仮免許を持っているということは仮ヒーロー。この世界のヒーローは活動するのに『ヒーロー名』、つまるところ第二の名を名乗るのか。いいぞ、言い訳を考える必要もなくこの女は勘違いした。カマソッソはそれに甘えるとしよう。

 

「そうだ、強大なるカマソッソはいつだってカマソッソたらんとするが、カマソッソを名乗るのはヒーローの時のみ、だが常にカマソッソたることが重要なのだ」

 

「へぇー、じゃあさっき言ってた「カーン」ってやつはなぁに?」

 

 女、さっきから聞いていれば疑問が多いな。カマソッソは常に寛大だ、しかし、こうも続くと面倒臭くもなる。オレは今猛烈に眠いぞ、主に慣れない体で動いたことと依代がバカみたく飲んだ酒のせいで。だが、カーンの事となれば、真実のみを言うしかなかろうよ。

 

「カーンは、オレが育ち、オレが育てた国だ。それはもう立派な国だ」

 

「ふーん、世界にはそんな国もあるんだ、知らなかった。・・・・・・あ、私今日午前中だけ学校あるんだった。あちゃあ、やっちゃったな。バイバイ、強くてデカいオニーサン。・・・・・・あれカマソッソって呼んだ方がいい?それとも想太さん?まぁいいや、多分近い内会うだろうし、そしたらメッセ交換しようね!お礼も何もしてないし、じゃーねー、出かける時は服着といた方がいーよー」

 

 カマソッソが何かを言うより早く雪芽はそう告げると、パッと市街地の奥へと消えていった。

 

「・・・・・・自分勝手、嵐のような女だったな」

 

 カマソッソはそれがブーメランとなって自分にも言えることを理解していない。カマソッソは自分では気づいていないが割と気分屋、質問ばっかりカマソッソに投げかけていて少し雪芽に対しイラァとしていたが、それ以上に睡眠の方が重要と考え、さっさとアパート一階の自分の部屋に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 以上の事がカマソッソが汎人類史の地球に意識ごと来て数時間の出来事。これから考えなくてはいけないことが多々あるが、カマソッソはそんなこと知らんとばかりに寝る前に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()について考えていた。

 

 

 ミクトランでのオレ程ではないが、確かにこの体に存在していた蝙蝠の爪、耳、牙。そもそもこの依代は「無個性」なはずなのに急に蝙蝠の部位が生えたこと自体怪しい。オレが知覚したのはあの洗面台に行った時だ、そこから厄介事に巻き込まれ、塚内なる警察の到着を待っている間にいつの間にか消えていた。オレはこの世界の”個性”についての知識が足りん。少なくとも依代の記憶を探っても多種多様な個性があるとしか分からなかった、必要な時自動的に蝙蝠の部位が生える個性とかか?だがそうすると洗面台の時に生えていた理由に説明がつかんな。「そういう個性だ」と納得してしまえば良いのだろうがいつ蝙蝠状態になるのか分からんのでは不便だし、そもそもミクトランのオレと同じ蝙蝠、ということ自体きな臭い。やはり個性についてもだがオレはこの世界に対する知識が圧倒的に足りないな、オレがここに来た理由も分からないし。やはり自分の身で情報を集めるしか───

 

 

 真面目に頭を稼働させ考え事をしていたからなのだろうか、ベッドに横たわっていたカマソッソの意識が次第にぼんやりとしていき、つまる所、寝落ちした。ミクトランでのカマソッソは睡眠を取らないでも活動は出来たが、こちらでは普通の日本人。いくらカマソッソとは言えこちらの世界では睡眠・食事は必須事項としなくてはならないのだ。

 

 

 

プルル、プルルルルル、ルルルルルルルル

 

「・・・・・・ぁン?」

 

 カマソッソの意識が依代に入ったのは2017年のまだ梅雨の土曜日、だが今日は日曜日である。カマソッソは土曜日に朝の七時に寝落ちした後、二十四時間以上爆睡したのだ。そしてカマソッソは日曜日の昼過ぎの一時。スマホから鳴るコール音で目覚める事となった。

 

「ここをスライドさせりゃいいのか・・・・・・」

 

『もしもし、森鎌さん?こちら警察官の塚内です。昨日の凶悪(ヴィラン)の確保、本当に感謝しています。ついては、今から警視庁へ来てもらうことは可能でしょうか?』

 

「(昨日?)・・・・・・あぁ、問題ない」

 

『良かった、一緒にいた涼原さんもお呼びしています。場所は東京都の──。お待ちしています。それでは失礼します』

 

 塚内は必要最低限の情報だけ伝えるとガチャリ、と通話を切った。

 

 

「意外と便利だな・・・・・・この機械」

 

 カマソッソは会話の内容より今しがた通話していた携帯端末、スマホに少し驚いていた。嘗てのカーン王国は例えるならばテレビも、空を飛ぶ船も製造可能な程技術が発展していた超高度文明王国であったが、そのカーン王国でも遂にこのスマホが作られることは無かった。恐らくそれはカーンの民達の生活が関係している。カーンの民達は別にスマホが無くても情報を伝えるのに苦労はしていなかったのだ。そもそもカーンの王国の戦士達は全てを無きモノにするORTに立ち向かう程勇敢で、太陽が存在しない環境でも発展していることから体力等も相当高かったと思われる。故に演算するための機械はあっても連絡だけに使う電話機器は作られなかったのだ、いざとなったらその身で報告しに行くから。

 

「さて・・・・・・と」

 

 カマソッソは記憶力が良い。嘗てのORTの戦いで散っていった臣民達を未だ覚えているくらいだ。そしてカマソッソは頭も良い、スマホを初見ながら少し触っただけでその操作方法を完璧に理解出来る。これにて塚内から聞いた住所を検索することが出来るため、少なくとも警視庁に向かえないということは無くなった。

 

カマソッソは自分が一日以上寝ていたという事実に驚愕しながらも、腹が空いていたため部屋の棚に置いてあったポテトチップスを一袋開けると、流し込むようにして食べ、着替えだけ済ませると、悠々とアパートを後にして警視庁に向かうことにした。

 

 

 

「あ、オニーサン、昨日ぶりー」

 

「森鎌さん、こんにちは。改めて今日は来てくださりありがとうございます、本日案内役等を務める塚内(つかうち) 直正(なおまさ)です」

 

「・・・・・・あぁ」

 

 カマソッソは強大だ、雄大だ。少なくとも忘却をしなくなったカマソッソは嘗てのカーンの民と国を一層誇りに思うようになった。だが、それは決して今を生きるヒト全体に対しての価値観が変わったわけではない。ミクトランでのカルデアに対する対応がまさにそうだったが、基本的にカマソッソはヒト、人間を「猿」や「糧」として見下している。だが見下しているが人類には「糧ゆえ滅んでは困る」と中々面倒くさい考えをしている。つまるところ、普通に挨拶して対等だと思われたくないのだ。故にカマソッソはこの女や塚内に対しどう接するか絶賛悩み中である。

 

 

「・・・・・・?寝不足ですか?」

 

「いや違う、少なくとも寝不足ではないな」

 

「そうですか?大丈夫ならいいんですが」

 

 それにカマソッソはカーンの王や勇者王としてのカマソッソとして接してはいけない。客観的に見てカマソッソは今「森鎌 想太」なのだ。なのでカマソッソには想太としてのロールプレイング、もしくは最低限おかしくないような立ち振る舞いが求められる。だがカマソッソはオレはオレだと考えるタイプの王なので、記憶を辿り本質から「ザ・善人」と評価した想太として振る舞うことはないだろう。形だけ想太として行動することはあっても。

 

 

「じゃあ早速今回の件での功績を称えて君達二人には賞状を「わぁたぁしぃが───来た───!!!!」」

 

「「!?」」

 

「オールマイト!?」

 

 

 突如上空から声が聞こえ、とてつもない勢いとともに地面に着地する画風が違う男を、カマソッソは見た。黄色と赤が混ざった衣装、現代で言うアメコミ風な格好をしている、カマソッソより数十センチ程身長が高い大男は立ち上がり、ニヤリと笑った。

 

 あぁ、この男は知っている。オレは知らない、だが俺が知っている。憧れで、夢で、俺がヒーローになりたいと思った理由、無個性でもヒーローになれるんじゃないかと思わせてくれた理由。オールマイト。

 

「やぁ塚内君!昼食を取ろうと出かけたら(ヴィラン)がいてね!今日君はこの警視庁に昼からいると言っていたからそのまま来た!!」

 

 ほら、と目がグルングルンしている嘴がついた異形のヴィランを出すと同時に、オールマイトは二人ほど見慣れない人物がいるのに気付いた。

 

「あら、お客人?邪魔しちゃったかい、塚内君?」

 

「邪魔も何も君にも言ったじゃないか、今日賞状を贈る人達がいるって。この人達があの『人攫いのゴロウ』を捕まえたんだよ」

 

「あぁ!なるほど!君達が!!」

 

 オールマイトはすぐさま雪芽とカマソッソの方へ向き、私も追っていたんだよ、凄いじゃないか!と声をかけた。

 

「森鎌さん、涼原さん、君達も知っているだろうけど、彼が『オールマイト』、正真正銘、日本でNo.1のプロヒーローだ」

 

「自己紹介が遅れたね!森鎌君と涼原少女でいいのかな?私はオールマイト、いきなり空中から失礼した!」

 

 手を差し伸べられたので二人はそれぞれ自己紹介しながらオールマイトと握手を交わす。だがもちろんカマソッソは気づいていた、オールマイトが自分と握手する時、「コイツが?」というような視線をわずかながら向けていたことを。

 

 

「それでは塚内君。私は失礼するよ、また後で」

 

「あぁ、気をつけろよ、オールマイト」

 

 警視庁の職員にヴィランを引き渡した後、オールマイトは元きた方向へ空中へ飛びながら去っていった。

 

「さて、少しイレギュラーなことが起きてしまったが、気にせず僕達も行こうか」

 

「塚内さんって、随分オールマイトと仲が良さそうなんですね?」

 

「⋯⋯あぁ、仕事柄何かと一緒になることが多くてね、今では普通にプライベートな友人でもあるのさ」

 

雪芽はそれに普通に納得した。だがこれもカマソッソは見逃さない、塚内の目は何かを誤魔化す色合いをしていた。知られたくない、秘密にしておきたいという、そんな色。

 

そこからは何事もなかったわけではないが進んだ。塚内に案内されたのは数十人かの警察官が整列している部屋。警察官以外にもテレビ局の人間だろう者がカメラやマイクをそれぞれ持って話したり待機したりしている。今回捕まえた「人攫いのゴロウ」というものはそれだけ存在が大きかったらしい。恐らくニュースか何かで中継されていたのだろう、雪芽とカマソッソの二人が賞状を送られた時、何回かのフラッシュが二人を巻き込んだ。警視長による感謝文で授賞式が終わった後、雪芽とカマソッソの二人はテレビ局のインタビューに少々付き合わされた。

 

 

「いやー大変だったね、まさかテレビの人達がいたとは」

 

「の割には随分受け答えがはっきりしていたようだが?」

 

「学校柄ねー、ああいうの前にもいたし」

 

 インタビューされた時、オレよりも雪芽の方が二倍くらい注目されていた。それはただただ学生の女だったからなのか、いや、それは違うとオレは踏んでいる。

 

「女、お前は何者だ?昨日オレはお前の質問に答えてやった、ならば次はお前が答えるべき時だ。あの時間に外出していた女がまともなヒトだとは思えんからな」

 

 すると雪芽──この日本を生きる学生からすれば憧れの制服を着ている女子高生はこう言った。

 

「女じゃなくて雪芽かせめて涼原で呼んでほしいんだけどなぁ。まぁいいや、改めて、私は『雄英高校ヒーロー科1-A』涼原 雪芽、個性「氷雪」。あそうだオニーサンスマホ持ってきたよね?メール交換しよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オールマイト、君から見て彼等はどう見えた?」

 

「うーん、いや、まったく信じないっていうのは彼等にとっての冒涜になってしまうが、調査では本当に森鎌君がゴロウと倒したと言っていたのか?」

 

「あぁ、それは僕が直接行って聞いたんだ。少なくとも嘘は吐いていなかったよ」

 

「えー、だってあの時は触れなかったが、涼原少女雄英生だろう?こう言っては失礼だが、森鎌君と握手した時、本当に何も感じなかったんだ。まだ涼原少女が倒したと言われた方が信じられるんだが」

 

「嘘を吐く理由がないしなぁ。それにそんなバレバレな嘘吐いてたら僕が分かるさ。それに、ゴロウを森鎌さんが倒したと言ったのは、他でもない涼原さんなんだから」

 

「まぁ彼、ガタイいいし個性も何持ってるのか想像すらつかなかったからな。もしかしたら、世に出ていないだけで相当な個性を持っているんじゃないか?」

 

「・・・・・・いや、たった今その可能性はほとんど除外された」

 

「──どういうことだ?」

 

「これを見てくれ、オールマイト。『森鎌 想太』、彼、雄英の卒業生だよ」

 

「ふむ?むしろ強力な個性持ちなことがより現実味を帯びてきたじゃないか」

 

「よく、見てくれ」

 

「森鎌 想太───普通科?無個性!?バカな!?それでどうやってゴロウを倒したと言うんだ!?」

 

「彼はもしかするとヒーロー志望だったのかもしれない。だが現実は残酷だ、この世界では四歳までに個性が発現しない場合」

 

「・・・・・・一生涯、無個性のまま──ッまさか、アイツが関係しているとでも言うのか!?」

 

「一概にそうとは言えない、が、注意すべき対象としてリストアップしておこう。個性を欲しがった結果、個性を与えてくれる者──()()()()()()()()()()に接触した可能性はゼロじゃないんだから」

 

 

カマソッソを取り巻く環境は、一段階ヒートアップしていく。彼が、真実を見つけぬ限り

 

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