勇者王は偉大なる英雄《ヒーロー》   作:しらすの番人

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この世界で生きるということ

  

「はい、これ私のメール」

 

「・・・・・・あぁ」

 

 ピロン、とカマソッソが持つスマホのメールアプリの画面に新しい友だちが追加されたことが表示される。これでいつでもスマホでのメール送受信により、離れていても意思疎通が可能となったので、カマソッソと雪芽の関係は他人から知り合いにランクアップしたという所だろう。

 

「女、まだ話は終わっていないぞ。あの日、何故あんな時間にほっつき歩いていたのだ」

 

「待って」

 

「・・・・・・なんだ」

 

「その「女」って呼び方何とかならない?上から目線すぎてなんかムカツク。私ちゃんと涼原 雪芽って名前があるの。他の女の人と会話する時も女って呼ぶの?流石に失礼だよ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 何だこの女は、このカマソッソに楯突こうと言うのか?そも、お前こそ強大なるカマソッソと呼ぶわけでもなくただ「オニーサン」と呼んでるだけではないか。そもオレはカーンの民でも無いヒトを固有名で呼ぼうとなど微塵も思わん。

 

「私もオニーサンのこと想太さんって呼ぶことにするからさ」

 

 何だこの女は、オレの心でも読めるのか?ふむ、普段ならオレはカマソッソとカルデアの神官に名乗った時のように言っただろうが、今は依代の体を借りているのだ。なら、上辺だけ依代として振る舞えばいい、だがこの女のことは何と呼ぶべきなのだ?涼原と雪芽のどっちだ?・・・・・・女がこちらを名前の想太と呼んでいる以上、こちらも名前の雪芽と呼ぶのが正解と見た!

 

「成る程、了解した、雪芽」

 

「・・・・・・!何だ、言えるじゃない(ビックリしたぁ、意外と男らしいトコロあるじゃん)」

 

 何故、何故名前で呼んだだけなのにそんな驚いた表情をされなければならないのだ。汎人類史の生活、少し難しくないか?このカマソッソ、終わったはずなのにあのミクトランに帰りたいと少し思ってしまったぞ。

 

「それで、あの時外に出てた理由は何だったのだ」

 

「それはね・・・・・・運動してたから!」

 

「は?」

 

 運動、運動とはアレだよな。走ったり飛んだりして体力や筋肉、持久力を伸ばすなどある程度目標を決めた上でやることだ。それに軽い運動は凝り固まった頭をほぐすのにも良い。が、何故運動?運動してて犯罪に巻き込まれるとはどういうことなのだ。

 

「仮免試験がまだって私言ったよね、で、ヒーローの仮免試験はもう来週なの。私の"個性"的に、能力の心配はしてないんだけどどうしても基礎体力が心配でさ。少しでも体力がつくようにってランニングしてたら、いつの間にかあの(ヴィラン)に追いかけ回されちゃってたの」

 

「・・・・・・ふむ、成る程な。要は完全に巻き込まれた形、あの輩に絡まれていたのは偶然だったのか。それは大変だったな」

 

「え、普通に心配してくれるんだ。想太さんのことだから何をバカなことを、くらい言うのかと思ってた」

 

「オレを何だと思っている・・・・・・?オレは知っているのだ、思春期の女子(おなご)は大変だと。ちょうど雪芽のような年の女子は過敏な時期で、家族に黙って住処から出たり親に反逆する時だろう。オレはその類の最中ヴィランに襲われたのではないかと思っただけだ」

 

「なんか言い方が大仰しいけどそういうことね。少なくとも私は家族との関係は良好だよ。心配してくれてありがとう」

 

 思春期の子ども、特に団結した女子ほど止めるのに面倒くさいものは中々ない。普段ストレスが貯まっているから、と王宮内で力任せに暴れられた時は流石に抑えるのに骨が折れたからな・・・・・・あのような体験はあまりしたくはないものだ。オレどころか王宮の臣下達をも巻き込む騒動になってしまったのは今でも覚えている。

 

 

「あ、心配してくれたついでに一個聞いていい?」

 

「なんだ」

 

「想太さんは今回の『プロヒーロー免許取得試験』受けないの?私はそもそも仮免許すら持ってないからこその仮免許試験だけど、想太さんは仮免許持ってるんだよね、想太さんあんなに強いんだから本免許もすぐ取れると思うんだけど」

 

「プロ、ヒーロー」

 

 少し違和感が・・・・・・依代が反応したのか?そうか、もとより本物の想太はヒーローに憧れ、ヒーローになることを夢見ていたのだ。多少反応するのは当然か。

 

「それは今からでも受けることが出来るのか?」

 

「うん、原則試験の二十四時間前までなら受付すませたら誰でも受けれるよ。本免許の方は仮免許を持っているのが前提条件だけど・・・・・・ちょっとスマホ貸して」

 

 貸してというか今のはひったくりとかそういうのではないのか?・・・・・・む、雪芽、スマホの操作が早いな。流石はこの世界の住人だけあるか、オレも操作方法はあらかた覚えたつもりだが、やはり未知の部分にアクセスなどしてしまうと少し戸惑ってしまうな。

 

「あ、あったよ。ほら『プロヒーロー本免許取得試験』。へー、日にちは仮免許試験の次の日なんだ」

 

「ほう・・・・・・」

 

 成る程、成る程?『本免許を資格すると、ヒーローとして街中での自由な個性の使用が認められる』か。他にも事務所を立ち上げることが出来るようになる・・・・・・これはあまり関係なさそうだな。

 

「受ける?受けるんだったらこの画面から受付も出来るよ」

 

「いや、一旦考えさせてくれ」

 

「そーう?あ、じゃあさ!私もう帰らなきゃだから、もし想太さんが試験受けるならメールで教えてよ!」

 

「まぁ、いいが」

 

「約束だからねー!!」

 

 早い、早すぎるぞあの女。何なのだまったく。人と比べて途方もない時間をオレは生きてきたが、こんなぞんざいな扱いをされているのはそれこそ「人生初めて」というヤツではないか?・・・・・・くく、ははは!まさか今になって初めて経験するモノがあるとは!人の生とは本当に分からぬものだな。嘗ての忘却せしカマソッソならばこれはただ『不快』として片付けていただろうが、何故だろうか、今はそれすら少し愉快だ。気持ちがいい。

 

 

 説明を入れておくとカマソッソと雪芽が話していたのは警視庁を出て少し歩いた所。普通に人通りが多い場所である。雪芽は、身長が190と150でとても差のある者同士が会話している少し奇妙な光景に立ち止まる通行人が多くなってきたので、これ以上迷惑事にならないよう素早く帰ったのだが、カマソッソはそんなこと気にしないというか気づいていない。よってカマソッソは周りの通行人から、超上機嫌で笑いながら帰る身長の高い変なイケメン、という評価を下されていることにも全然気づかないのだ。

 

 

 

「ふーむ、ズゾゾゾゾゾ」

 

 カマソッソはアパートに戻り夕食としてカップヌードルを食し、スマホを見ながら考える。もちろん雪芽にも言われたヒーローの本免許についてだ。

 

 

 オレは結局、何をしに、もしくは何をさせられにこの世界へやってきたのだ?現状考えるべきことはまず「これからのこと」。依代は独身で稼いだ金をずっと貯金し続けていたからこの世界の生活面での金には当分困らない。後もう一つ「オレがここに呼ばれた理由」も考えるべきではあるが、今考えても無駄。何か考えるための要素がないような、もしくはオレが何かに気づいていないのか、分からないがとにかく今はオレがここにいる理由より、オレは何をすべきかの方が重要だ。

 

 となるとやはり───この『プロヒーロー本免許取得試験』、受ける以外の選択肢は無いな。現状、不足しているのは何より情報だ。個性が自由に使えるようになり、あの翼で素早く情報を集めることが出来るのなら、今のこの良くわからない状況の打破に繋がる可能性がある。ならばそれに賭けるべきだ、何もしないでただ可能性がゼロのまま待つより、その身で動いて可能性を広げて行く方がオレらしい。

 

「となれば早速、」

 

 先程の雪芽に見せて貰ったモノは──あった、『ヒーロー免許取得試験HP(ホームページ)』。ここの受付の所をタップして、

 

「入力画面か」

 

 名前・性別・住所・電話番号・メールアドレス。個人情報の入力とは面倒なものだな、もう少し楽な方法はないのか?

 

「む、『仮免許番号』と『ヒーロー名』、だと?」

 

 考えてみれば当然か、この試験は本免許取得試験。仮免許を持っている者にしか受けるのが許されない試験だ。ならば仮免許を持っている者にしか分からないモノを聞いてくるのは当然、猿が木から落ちるよりも必然なのだ。

 

 

「・・・・・・あった」

 

 

 依代の財布、革で出来た長財布のカード入れにそれはあった。証明写真が入っていて、何とも嬉しそうな表情をしているオレの依代。───コイツは仮免許試験を受けた時、『無個性』だった。周りは全員己の磨いてきた個性()で戦う中で、想太は己の体のみで挑んだのだ。余りにも無謀、笑えるほど無茶な挑戦。だが、コイツは、想太は努力をしていた。ヴィランを捕まえるためのフィジカルトレーニング。動けない要救助者を救うためのフィジカルトレーニング。いざ自分がその地を駆け、現場に行くためのフィジカルトレーニング。そして、どんな逆境でも諦めない心を持つメンタルトレーニング。異例だった、異端だった。周りからは「無個性で人を救えるのか?」「無個性は頼りない」と言われる中で見せつけた、己が磨いてきた身体(個性)

 

「・・・・・・この八桁を入力すればいいのか、3178 9110」

 

 磨いてきた時間が、生まれ持った体格が、諦めない努力がついに身を結び、個性持ちでも余裕で落とされる仮免許試験を、想太は突破したのだ。ヒーロー科ではない普通科の、それも無個性の人間が。それで想太が自ら付けたヒーローネームが『フィジカル・パワー』。

 

「ん?・・・・・・いや待て」

 

 想太は己の才能に気づいたのだ!身体を限界まで痛めつけ、身体を限界まで強くするその真髄に!!彼は笑った、彼の友達は爆笑した!!「力こそパワー」、「力があれば出来る」。彼はその文字通り体現したのだ、己の身体で!!

 

「いやヒーロー名もっとなんかあったろ!?」

 

 だが嫌がっても受付をするにはヒーロー名の入力は必須。カマソッソは泣く泣く一旦ホームページを閉じ、ネット申請から自分のヒーロー名を『フィジカル・パワー』なんてものではなく、勇者王にしてカーンの王『カマソッソ』に変更し。再度受付から個人情報まで始めから入力したのだ。

 

 

 

カマソ:雪芽、オレは本免許試験を受けることにした

 

ゆき:ぉおー!

 

ゆき:お互い頑張ろうね!!(=^・^=)

 

カマソ:あぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オールマイト!来たか!これを見てくれ!ヒーロー協会から提供してもらった、リアルタイムで更新される『プロヒーロー本免許取得試験』の参加者リストなんだが、ここ!この名前を!」

 

「森鎌君!・・・・・・そうか、受けるのか、本免許試験を」

 

「ああ。ヒーロー名が・・・・・・『カマソッソ』、うーん?オールマイト、何か知ってるか?」

 

「いや・・・・・・ちょっと調べて見る」

 

「頼む、記録によると、彼は仮免許試験を己の身体のみで合格したらしい」

 

「本当か!?なら、ゴロウもステゴロで倒したのかもしれんな。ステゴロウだけに!!」

 

「・・・・・・オールマイト」

 

「やめて、ごめん、謝るから。・・・・・・っと、出てきた。ウィキからそのまま参照するね、『カマソッソ、マヤ神話におけるコウモリの神。カマソッソは「死のコウモリ」を意味する。「ポポル・ヴフ」によれば、地下界「シバルバー」にあるコウモリの館に住んでる』・・・・・・だってさ」

 

「実在の神の名前をそのまま使っている、ということか。余程その神が好きなのか?」

 

「シバルバーとか若い頃の私なら反応しそうだけど・・・・・・今は良く分かんないなぁ。こういうの」

 

「だが、これで森鎌さんのことを見れる」

 

「そうだね、これでもし個性があった時は──」

 

「その時は、その時さ」

 

「よし、分かった。塚内君、その日の乱入ヴィランは誰が担当することになっている?」

 

「えっと、具足ヒーロー『ヨロイムシャ』とファイバーヒーロー『ベストジーニスト』のお二人を主として、その他エキストラの皆さん───まさか」

 

 

「あぁ、()()()()

 

 




カッコいい所は勇者王としてビシッと決めさせて上げたいけど、日常だと地球での生活にワタワタするカマソッソもそれはそれとしてイイと思うんだ
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