プロヒーロー免許取得試験。それは『仮免許試験』と『本免許試験』の二つがあり、六月と九月の年二回開催される。二つの共通点として、『ヒーロー』の素質を見極めるということがある。ヒーローとは事件・事故・災害etc、あらゆる状況から人々を救い出すのが仕事。情報力・判断力・機動力・戦闘力、他にもコミュ力や魅力・統率力など様々な観点からヒーローの素質を見られるという点で仮免許試験と本免許試験は共通していると言えるだろう。
では相違点は?『仮免許試験』は試験とは言え仮、逆に仮とは言え試験とも言えるが、本免許よりも採点基準等が甘いのは必然と言えるだろう。その他上げられるのとして「難易度」。プロヒーローはいついかなる時も迅速に行動し、その時の最善を見極め行動し続けなければならない。いざという時に動けないヒーローなど求められていないのだ。故に『本免許試験』は仮免試験より試験内容そのものが難しくなり、求められる行動のハードルも高くなる。仮免は毎年五割程の者が落ちると言われているが、裏を返せば五割の者は受かっているのだ。本免は受かる確率実に約一割。プロとはそれだけ厳しい世界なのだ。
そしてその本免許試験当日、受けると決めたカマソッソはどうしているかと言うと、
「・・・・・・眠ぃ」
圧倒的睡眠不足!それもそのはず、カマソッソは本免許試験を受けると決めた日曜日の次の日、つまり月曜日から今日金曜日まで五日間、依代である想太の職場でキチンと働いていたのだから!幸い仕事は事務仕事で、カーン王国時代でパソコンと似たような物を使っていたカマソッソはすぐ仕事に慣れることができ、同僚や上司からも「少し口調変わった?けど仕事効率上がってるね!」と思われる程度には頑張っていたのである。
「今日乗る新幹線は七時三十分発だったか、遅れないようにせねばな」
もはや普通にこの世界に順応し始めたカマソッソだったが、当初の目的を忘れてはいない。情報を集め、何故自分はこの世界に来たのかを解明する。そのためにも自由に個性が使えるようになるプロヒーロー本免許は取っておいて得しかないのだ。カマソッソは自分から動ける有能な王、何も免許に向けて何もしないままただ仕事をしていたわけではない。
主にカマソッソが行っていたものは、試験時に自分が着る服の調節、そして仮免と高校・大学時代に想太が使っていたサポートアイテムの点検である。カマソッソは仮称個性「蝙蝠」と使うと背中から翼が生えることを、アパートで使用し再確認。翼が生える位置を鏡で確認し、当日着る服が翼が生えて破れないように該当箇所をハサミで切ったりするなど工夫をしていたのだ。そして想太がアパートに保管していたサポートアイテムの中で、カマソッソは自分で使えそうな物を何個か選別し、ちゃんと使えるかの確認をした。カマソッソが使えると判断したのは『加速シューズ』と『肘当て』、『膝当て』の三つ。無個性時代の想太はとにかく鍛え上げた肉体で駆け、助け、殴り蹴るという超肉弾戦スタイルだったので、身体が蝙蝠のようになるという個性のカマソッソでも、いくつか装備出来るものがあったのである。
「モグモグムシャムシャ」
カマソッソは基本的に何でも出来る。最近は自炊にも慣れてきたカマソッソはご飯・納豆・野菜炒め・味噌汁という健康的な和食を作って食べ、持ち物等の確認。最後に、「仮免合格したよ!」と昨日雪芽が写真付きで送ってきたメールを見て、本免許試験会場へ行くためにアパートを出るのだった。
「ここか」
カマソッソが朝七時に出発して電車に乗り、一時間と少し電車の旅をし、そこからバスに乗ったりとしている内に着いたのは国立多古場競技場、静岡県にある競技場で、奇しくも昨日雪芽が仮免試験を受けたのと同じ場所である。仮免、本免どちらも当日十時に多古場含め三つの地で試験が行われるのだ。
「プローヒーロー本免許取得試験会場はこちらでーす!参加者は誘導員の指示に従いコスチューム等へ着替えるための場所に行ってくださーい!」
「さて、行くとしよう」
想太はプロヒーローになることを辞めてから給料の良い会社に就職する事に変更。よってコスチュームなぞ持っていないし、持っていたとしてもカマソッソの蝙蝠とは合わなかっただろう。コスチューム製作会社に製作を依頼する事も考えたが時間がないため断念、よってカマソッソは市販で買えるもので蝙蝠と合うような暗めな色の服を用意し、更にミクトランで着けていたような民族風の装飾品を付ける事で擬似コスチュームとしてそれなりに仕上げた。
ざわ、ざわざわ・・・・・・
『えー・・・・・・では本免のアレをやります。あ、僕ヒーロー公安委員会の
人が多い場所に集められたと思ったら、何だあの目良という男、オレよりも眠たげじゃないか、オレが言えたことじゃないが睡眠を取っていないのか?
『昨日もここ仮免で使ってたんで、後片付けしたり今日の準備したりでろくに寝れてない・・・・・・人手が足りない・・・・・・!眠たい!!そんな信条の下、ご説明させていただきます』
あぁ・・・・・・さぞかし眠かろうなそれは。オレも眠い。
『まず、この場にいる受験者1000人一斉に、先着100人の勝ち抜けを行ってもらいます』
「十分の一・・・・・・?」
「いや、でも確率としては仮免の時より大きいか・・・・・・?」
なんだ一斉にざわつきおって、黙れ黙れ、気が散るだろう。
『現代はヒーロー飽和社会の一歩手前と言われ、年々ヒーロー志願者は増えていっています。”ヒーローは見返りを求めてはならない”、”自己犠牲の果てに得る称号でなければならない”、最近はこういった意見もネットに上がるようになってきました』
『一個人としては命がけで人助けしてる人間に、”何も求めるな”は、ちょーっと無慈悲だなぁとか思うんですが・・・・・・とにかく、対価にしろ義勇にしろ多くのヒーローが切磋琢磨してきた結果、事件発生から解決までの時間が引くほど迅速になってます。仮免を超え、本免許を取得しようとする人にとって、その引くほど迅速なスピードについて行くのは当たり前です。よって先着百人、まぁこれでも多いんじゃないかって意見がありましたがね』
『で、条件達成者先着100名が通過となるワケですが、その条件となるのがコチラ』
「あ、ボールとターゲット!」
「これ仮免試験で使ったヤツ!」
「仮免と同じ・・・・・・いやそんなことあるのか?」
『はいまぁ仮免で見たことある人もいるでしょう、本免ではこんなもの使いません。本当に使うのはコッチ』
「あれ?ターゲットが少し変わったくらいしか変化してなくない?」
「少し小さくなってる・・・・・・のか?」
『先程見せたターゲットのちっちゃい版という認識で良いです、受験者はこの片手で持てるターゲット六個と、コスチュームに付けられる専用の袋を渡すので、ターゲットを袋に入れて持ち運び、そのターゲットを他の受験者にくっつけて下さい、ターゲットを三個くっつけられた場合、その人は”倒された”判定になります。渡すのは六個ですが、四個ターゲットを他の受験者にくっつけられた人から通過になります。ターゲットをくっつける時は別に同じ人を連続で狙わなくても大丈夫です、とにかく四個ターゲットを誰にでもいいからくっつければいい。ターゲットはどんな服やコスチュームにもすぐくっつくようになってるんで安心して下さい』
「なるほど、ターゲットをつけなきゃいけないから仮免の時より更に密着しなくちゃいけないんだ・・・・・・!」
「難しいなぁ、私遠距離個性だよ・・・・・・」
『えーじゃ
「展開キター!!」
「てことは・・・・・・」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・・・・
ふむ、成る程、この説明会場自体がそもそも試験会場だったと。山、都市、工業地帯、山林・・・・・・よくもまぁこのスペースで再現出来るものだな
『プロとは言え、各々苦手な地形、好きな地形はあるもんです。自分を活かして頑張って下さい。・・・・・・こんなモノのせいで睡眠が』
『5』
「・・・・・・おい」
「何だよ」
『4』
「あのデッカイ人孤立してるじゃん、デカいし的だろ?皆であの人から狙わないか?」
「確かにいい考えだな・・・・・・おい皆」
『3』
む・・・・・・何処からか視線を感じるな。というかオレ以外、意外と固まってるヤツラが多い
『2』
あそこか、ついでにあそことあそこからも・・・・・・成る程?
『1』
一つ、説明を入れておこう。ヒーローの仮免と本命は一般・学生関係なく受けることが出来るが、仮免の場合、学生は「学校単位」で受ける所が多いため、仲間達でチームアップし合格者数を増やすという戦法が可能となる。
で、それが本免にどう影響するかと言うと
『START!!』
「よし、全員あの孤立してるヤツを狙え!」
「おおおお!!」
高校一、二年で仮免を取った同じ高校の者同士が結束し、少人数または孤立している人から優先的に排除するという事が起きる。大学以降だとそもそも学校が違う者同士でまだ連携がなってなかったり、個人でも勝ち上がれる人が出てくるので起こりにくい。
そして孤立しているかつ身長が高いことで嫌でも注目されてしまうカマソッソにとって、これは大変不利な状況である。が、
「ははは!最初から来ると分かっていればいくらでも対処のしようがあるというもの!!それに──」
「お前達、少し遅すぎだ」
「な!?翼!?そういうのは最初から体に出ているものじゃ──」
「待ってそれよりもこの人──」
「「「「「くっっっっそ早ええええ!!??」」」」」
『早ッ!!開始十秒ですがもう一人通過者出ました!!うお!?脱落者二十名!?自分のだけじゃ飽き足らず他の人のも奪って脱落させたの!?ひゃっほい!今日は早く帰れるかも!!あ、情報が入り次第こうやって私が放送席から逐一アナウンスさせられます』
『ピピ通過者は控室へ移動して下さい』
ほう、この袋、喋るのか・・・・・・ではないな。音声用のマイクロチップが埋め込まれているとかだろう。恐らくデータを送受信しているのもこの袋。凄いなこれは。
『早よ』
「オレ以外まだ誰も来ていないか、少し早すぎたか?」
開始十秒で一人通過と言っていたな、タイミング的にオレ。別に一番にこだわりがあるわけではいが、やはり一番と言われると気持ちがいいな。
「あれ、もう先客がいる。どもども、早いっすね〜。あなたも個人勢ですか?」
「あぁ、一人と言えば一人だな」
「奇遇っすね、自分もなんすよ。あ自己紹介遅れました、ヒーロー試験なんでヒーロー名で言った方がいいかな、自分『チャッカマン』です」
「カマソッソだ」
「うへぇ、カッコいい名前してますねぇ。自分個性から適当に取っただけなんすわ。ネーミングセンスの差ァ!!」
ふむ、こいつ今カッコいいと言ったな?言ったよな?この強大なるカマソッソをカッコいいと!!ふむ、こいつはヒトの中でも見る目がありそうだな。良いことだ。
「お、続々通過者来てますね。そろそろ次に備えないと」
「む?他に何かあるのか?」
「仮免の時もそうだったじゃないですか。ラスボスは第一形態倒しても第二形態あるよね!なアレです。これはあくまでも多い受験者をふるい落とすための一次試験。仮免の時と同じように、おそらくある次の二次試験でプロの素質が見られると自分は踏んでます」
ほう、二次試験もあるのか。・・・・・・本当だな、依代の記憶にもある。内容は・・・・・・災害で要救助者を助けながら
『っしゃゼロォ!100人!たった今埋まりました!終了です!!ハッハァー!!はい、これより残念ながら脱落してしまった皆さんの撤収に移ります』
『はい合格した100人の皆さん、お疲れ様です。えー、てことでこのモニターご覧下さい』
ボン、ボン、ドガアアアアアアアアンン!!!!!
「「「「「また爆発したー!!!!」」」」」
・・・・・・?????何故折角組み立てたであろう都市等を爆破したのだ?それにまた?こいつらは仮免の時も爆破されたのか?・・・・・・あ、依代の時もされてるのか。
『泣いても笑っても次の試験でラスト!皆さんにはこれから、この被災現場でバイスタンダー、現場に偶々居合わせた人として救助活動を行って貰います。さらに──』
ゾロゾロ、とモニターに覆面をした集団が映される。
『今回は最初からクライマックスです。現場には