名無し本読み妖怪なモブですが、何故か地霊殿の主にストーカーされてます。 作:クレナイハルハ
幻想郷、それは妖怪の賢者と呼ばれる
ゲーム、東方Projectの舞台となるその世界で私は、仰向けに倒れ空を見つめていた。
「そっかぁ………そりゃあ勝てないよね」
空へと伸ばした手が何も掴むことなく地面へと戻る、私が何故こうなっているか。
その答えは至ってシンプルかつ簡単だ、私はスペルカードルールによる戦いで負けたのだ。
『スペルカードルール』
それは東方Projectのゲーム作品の主人公である
道端で本を読んでいただけで人間に対して特に何もしていなかったのだが、何故か博麗 霊夢に不意討ちされてやられてしまった。
しかも読んでいた『非ノイマン型計算機の未来』というシリーズ物の小説を三冊とも取られてしまった。
はぁ、果たしてこれが主人公のやることなのだろうか?
まぁ、彼女なら間違いなくやるのだろうけど。
流石は博麗の巫女きたない。
このあと
「転生、それも後から記憶を思い出す感じのか」
そう言いながらゆっくりと体を起こし、地面に胡座で座りながら、これまで共に過ごしてきた新しい体を見下ろす。
黒を基調としたゴスロリと呼ばれる服、前世の記憶であるソレよりはるかに小さな視点。
記憶をたどれば、人間の里で買い物した際に見た鏡に映った自分の姿を簡単に思い出せた。
銀髪をボブカットにして前髪と両サイドのもみあげが青、そして一対の青い角が生え赤い鳥の羽が生えた人成らざる少女の姿。
東方Projectに登場するモブキャラとも言えるキャラクター、ネットでは名無しの本読み妖怪や朱鷺子とも呼ばれる妖怪に、私は転生していたらしい。
「あの本、読むの楽しみにしてたんだけどなぁ」
幻想郷では中々手に入らない外の世界の本への心からの声が漏れる、そした独り言が鳥達の鳴き声でかきけされ、なんとも言えない感情が沸いてくる。
いやまぁ、もう手元に戻らないんだし追い掛けたところで今度はもう一人の主人公である
「はぁ」
本来の私なら強気に追いかけるのだが、前世を思い出した私が、そんなことする度胸も勇気も無いわけで。
読まずして奪われた本に後ろ髪を引かれる思いだが、こればかりは仕方がないと割りきりたい。
電子書庫が流通するなか、電子書庫より本物の書籍派だった私は、友人から良く本の虫と呼ばれていた。
決して、電子書庫を否定したいわけではない。
ただ、実際に手にもってページをめくるあの感覚が何となく好きなのだ。
そんな前世を思い出した私だが、正直思い出したことで前世で見てきたアニメや漫画、小説達が見たくてたまらなくなっている。
それは、先程理不尽なまでに本を取られ退治されたこと等忘れてしまうほどに。
「見たい、もう一度………あの作品達を」
タイトルに騙された、希望も魔法もあると思わせてきたが実際は絶望ばかりな魔法少女の物語。
侍の、いや銀色の魂を持った男の涙あり笑いあり、むしろ笑いしかない物語。
死神の代役になった青年がなん…だとする物語。
ハーフボイルドな探偵が記憶喪失の彼女とイチャつきながらUSBを割る物語。
二十一世紀からやってきた猫を模したロボットと少年達の日常や冒険探。
わがまま姫と呼ばれ民衆の革命によって死刑となったお姫様が人生をやり直し、死刑になる運命を変えるため奔走する逆転物語。
すべての悪意の自分へと集め、自分を殺させることで世界を平和にしようとした世界一優しい嘘つきの少年の物語。
遥か彼方の星からやってきた光の巨人が地球を守るため、侵略者と戦う物語。
名馬と言われた馬達の魂を受け継いだ少女達が人々の夢と希望を背負い駆け抜ける青春スポーツ物語。
あぁ、幻想郷に住んでいる身でそんなの望んでも意味がないとわかって────。
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【画面縮小】
「は?」
突如として目の前に現れた四方形のスマホやパソコンのような画面が現れて私は思わず間抜けた声を出した。
TENSEI GIFT?TENSEIはたぶん転生だしGIFTは贈り物……つまり、異世界転生あるあるの転生特典?ってことなのだろうか。
目の前の画面?らしきそれに触れてみようと手を動かすが特に画面が変化することはなかった。
あれ、操作出来ない?
どうすれば良いかと片手に顎を乗せて思考する、矢印が点滅しているから恐らくはこれを動かすのだろうけど、問題はいくら手を振っても画面に変化がない。
ふと、手ではなく矢印をビックリマークのついているお知らせへ動くよう念じると矢印が動いた。
なるほど、脳で考えればその通りにこの画面を動かせるのか。
画面の縮小を選択すると『RE:AC』というアイコンのような物が視界の隅に現れ先程までの大きな画面が消え先程まで見ていた幻想郷の景色が見えた。
ふふ、これなら楽園の素敵な巫女に本を強奪されたのも、これから起こるであろう異変にも耐えられるし引きこもって本を読む生活も出来そうだ。
「いや、でもずっと何もない所を見つめてるのは流石に変に思われるかな?」
なら、フェイクではなく周りに本を読んでいるように思わせるためにも本は必要か。
「この世界で、本を読みながら好きなように生きてみようかな」
そう思いながら私は立ち上がり、自分の家がある場所を記憶を辿って歩き出す。
さぁ、博麗霊夢や霧雨魔理沙といった原作メインキャラクター達と出会わないようモブはモブらしく、目立たずスペルカードルールを仕掛けられないよう生きていこう。
私が『名無しの本読み妖怪』や『朱鷺子』と呼ばれる妖怪に生まれ少しの時間が過ぎた。
人里で様々な仕事のアルバイトをしたり、家の庭に作った畑で育てるのが簡単な野菜を育てて食べたり人里に売って生活をしている。
アルバイトもアーカイブぷれみあむを小さく表示して見ながらやれたりする簡単な物をやったり、アーカイブぷれみあむで見た飯テロアニメのご飯をどうにか再現しようと人里で買えた食材で頑張ったりと、中々楽しい日々を過ごしている。
今日も人里に出掛けた私は、お気に入りのお茶屋さんで私はお茶をしに来ていた。
「…………」ジー
来ていた、のだが。
「…………」ジー
ここ最近、私はとある悩みがある。
この世界で前世、そして自分の存在がどういった物なのか思い出した私は数日前からとある人物にストーカーされているのだ。
チラリと背後を見れば、何度も目にしてきた外の世界なら目立つであろう桃色の髪の毛。
そして彼女の顔の横には赤い目玉のような物が浮いており、フリルの多くついたゆったりとした水色の服を着た少女がいる。
皆さんご存知、小五ロリ……というのも失礼だと思うが、心を読む程度の能力を持ち地霊殿の長である
ちなみに誓って言わせて貰うが前世の記憶が甦えった後も前も彼女との面識はない。
出会ったことも会話したこともない、筈だ。
最初こそ偶然なのだと思っていたが、ここ最近は本当に凄く行く道の先々で出会う。
流石にモブである私から声をかけるのは出来ないし、そのうちストーカーを止めてくれることを祈りつつ視線を戻す。
少し行儀が悪いだろうけど、奥の席に座ったから大丈夫だよね?
そう思いながら届いたお団子を食べつつ膝に置いていた本を開くと同時にアーカイブぷれみあむでアニメを開始させる。
今回みているのは、わがまま姫と呼ばれ死刑になったお姫様が幼い頃に戻り、死刑にならないよう未来を変えるため国を巻き込んで大暴れする作品だ。
やっぱりこういう話は一話を見るのが一番好きだ、何より主人公の過去と現在の差を楽しめるし対応の違いとかをみて笑える。
そう思いながら、私は口の中のお団子を流すためお茶をすすった。
私、古明地 さとりは最近人里に出掛けることが増えている。
お燐、ペットの
実際、何かあったかと聞かれるとない。
ただ、
そう、その気になることが原因で私が何度も人里に出掛けるようになってしまっている。
そして何度も出掛けているが、イライラして気になって仕事が出来ないしている原因が減るどころか増え続けている。
今日も私は、そのイライラを解決したくて人里に来ている。
私がイライラして、とあることが気になっている原因は今、店の奥の座敷に座りお団子を食べている彼女。短く切り揃えられた銀と青の髪に鳥の羽を生やしいつも本を手に持っていることが特徴的な妖怪、彼女が私をこうしてイライラさせてくる原因だ。
そんな彼女と同じくらい、いや彼女より早く店を出ないようよりこの店に長居しても大丈夫なよう、店員には既に注文は済ませてあるしお茶と菓子も到着済みだ。
後はこれらを少しずつ少しずつ消費して、この店で彼女があの本を開く時を待つだけだ。
そっと、彼女の方を見れば彼女は団子を口に運びながら手に持った本を開いた。
いまが好機!
即座に胸元の第三の眼、サードアイを本へ視線を向ける彼女の方へと向ける。
すると彼女の考えていることが、映像が私の脳内に映し出された。
映し出されたのは、鉄によって作られた牢屋だった、真っ暗な牢屋で簡素なワンピース着た金髪の人間が何処か虚ろな瞳で見るからに寒そうな石で作られた床に座り本にペンを走らせている。
(彼女は恐らく罪を犯した人物なのでしょうね、でなければ人間がこんな場所に居るわけがない)
そんな彼女の元へ鎧を着た人間が現れる、鎧を着た人間は手に持った二つの皿を人間の前へと置いた。
(これは…)
そこには腐った様子がみられる、赤茄子(トマト)とカビの生えたパンが置かれていた。
そしてそんなパンへと手をのばす女性に、鎧を着た人間は近付くと女性の口を開けるように顔を掴み、ニタリと笑いながらその腐った赤茄子を無理やり口に押し込んだ。
女性は押し込まれた赤茄子が腐っていたからか、それとも別の理由か咳き込みながら地面へと吐き出す。
『あーあ、もったいねぇ。そういや、お姫様はこのトマトがお嫌いでしたねぇ』
(下劣な、彼女が苦手と分かってこの扱いとは。人間とは同じ人間相手にここまでできる物なのですか)
『これが最後の食事だぜ、好きなように食えばいいさ』
そう言い、鎧を着た人間が部屋から出ていくと女性は見るからに固くカビの生えたパンを口へと運ぶ。慣れた様子でパンを噛り、咀嚼し嚥下する。
次の瞬間に、彼女へと来客を告げる人間の声と共に目の前の風景が変化し、見えていた場所が牢屋から雪が降り白の所々が白く染まった城に変わる。
城の前には、多くの人間達がいて城壁に詰め寄っておりそんな人間達の視線の先には、大きな断頭台がありその刃が光っていた。
すると、そんな断頭台の近くから先程の女性は胸元に先程持っていた本を抱えて出てきた。
心なしか、彼女の髪が先程より整って見えるのは気のせいだろうか?
裸足の彼女が、一歩一歩と断頭台へと向かいペタペタという足音を立てて歩く、雪が降っているためか、女性は口から白い息を吐いている。
『どう、して………どうして』
うわ言のようにどうしてと繰り返す女性は、城の前にいる大勢の人間から罵倒され続ける。やれ早く殺せなど、性悪女など聞くに耐えない言葉ばかりだ。
そしてとうとう女性はその断頭台に頭をいれ、断頭台の上に登っていた刃が落ちる。
何かの切れる音と共に、彼女が近くに置いたのであろう先程抱えていた本に彼女の血が付着する。
(これで、終わりですか……っ!?)
目の前の光景が、血の着いた彼女の本。
段々と暗くなっていく光景にそう思った次の瞬間、目の前の光景が歪み出した。
そしてまるで全てが戻るように先程のまでの女性や他の人間の行動が逆になる、そしてやがて幼い人間の少女が叫び声をあげながら飛び起きた。
なんと、幼い人間の少女は先程牢屋にいて処刑された女性であった。
(まさか、生き返った!?いや彼女は幼くなったと言っていた、つまりは過去に戻った?)
その後、音楽と歌に合わせて先程の幼い人間の少女や様々な人間が踊り表情をころころと変える姿が流れていく。
そして歌が終わると彼女は自身のみに起きたことに不思議に思いながらも、行動する光景が目の前に広がった。
そして幼い自分が経験していたこと、食材と調理してくれた料理人へと感動し涙を流した。
そんな彼女は自身のおやつ、ケーキと呼ばれるおやつを運んでいるなか転びおやつを台無しにした紅魔館の従者のような格好をした少女に怒り、地団駄を踏む。
『なんてことをしてくれるの貴方!顔を上げなさい!!』
『も、申し訳ありません……姫様ぁ』
おやつを台無しにした少女は泣きながら顔を上げる、姫様と呼ばれた人間の少女は目を見開き二人を除いた全てが消えた真っ白な世界に変わる。
先程までの怒りが嘘のように、呆然とした様子の姫様と呼ばれた少女は呟いた。
『あ、なたは………』
次の瞬間、目の前の光景が人里のお茶屋さんへと戻った。
「……えぇ!?」
え?は!?あの紅魔館の従者のような格好をした少女と姫と呼ばれた少女は!?絶対に今の二人の関係について掘り下げられる大切な回想シーンですよね!?
「まいどありがとうな、嬢ちゃん!」
「ご馳走さまでした、美味しかったでーす!」
呆然とした私の耳に聞こえてきた彼女の声に私は思わずギリッと歯を慣らし、届いていた甘味を一口で頬張り、とっくに冷めたお茶で流し込む。
ダンッと思わず大きな音を立てて湯飲みを置く、その様子に店主が少し怯えたのが見えて、笑顔でなんとか誤魔化しお会計を済ませる。
「ご馳走さまです」
「あ、ありがとうございました……」
また、まただ。
また、
気になることが、増えてしまった。
最近イライラするのも、こうしてさっきのお茶屋さんで迷惑をかけてしまったのも全部あの妖怪のせいだ。
私は、自分で言うのも何だが読書家だ。
私の持つ能力、相手の心を読む程度の能力のせいで私は村の劇や会話にあまり面白味を見いだせない。
でも、書物ならば先の展開が分からないまま最後まで読むことが出きる。そう言った理由から私は、本が好きだった。
少し前、私は道端で面白そうに本を読んで笑う彼女の姿を見つけどんな物を読んでいるのか気になりサードアイを向けた。
すると、何故か私の目の前には本を読んでいた妖怪である彼女が読んでいた本の内容とも思われる風景が目の前に広がっていたのだから。
彼女にサードアイを向けることで、彼女の読んでいる本の内容を知ることが出きる。
しかも彼女が想像したのか、声だけではなく歩く音や場を盛り上げる音楽までしっかりと聞こえるのだ。ここまでなら、単に面白い妖怪がいたで済む話です。
ですが、何故か彼女は毎回続きが気になるタイミングで読むのを中断したり、移動したり能力の範囲から出てしまうなどして、話の続きが分からず終いになってしまいます。
彼女の読んでいた本を探そうにも、その本のタイトルは知らないため探し出すことは困難。
人里で探しても彼女の持つ本と似た外表紙はいくつもありましたが、どれも彼女の読んでいた本とは思えない。
だから私は彼女を追いかけては、彼女が本を読むタイミングで能力を使って続きを知るために彼女の心を読んでいる。
なのに、何故か毎回読む内容もジャンルも違うしどれも面白く続きが気になるタイミングで能力の範囲から外れたり、本を閉じるなどするため彼女の読んでいた本で、続きが気になる物が既に両手で数えられない程になっていた。
地霊殿で仕事をするときも、あの後どうなったのだろう?あの人物と主人公の関係は?と考えてしまう程だ。
そんな訳で、いつかは続きを見ることが出来るのではと、私は彼女を追いかけサードアイを向け続けているのだ。
これは別に私が悪いわけじゃない、そう悪いのは毎回続きが気になるタイミングで本を読むのを止めるあの妖怪のせいだ。
これまでわからず終いで妄想するしかなかった続きが気になる、あの妖怪が読んでいる本の題名を知るまでは、そして今まで気になるところで終わったすべての物語の続きを見るために。
こそ、彼女の読む本の内容を最後まで見て満足する、そして彼女の読んでいた本を買って見せます!
そもそも何なんですかあの妖怪、読書家としてあんな続きが気になるタイミングで読むのを止めるだなんてありえません!!
そんなことを考え人里から地霊殿への帰り道を歩く古明地さとり、彼女が行っていることが外の世界でいうところのストーカーに近いことを、彼女を含めまだ誰も知らない。
ご愛読ありがとうございました
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