新人指揮官だけど部隊の空気が最悪です 作:rezeaizen
なのに、運命は俺を指揮官に仕立てあげやがった
「助けて!!!死にた」
目の前で1人の人間がラプチャーに踏み潰された。命乞いなんて関係無いと言わんばかりの凶行に、俺は何処か無関心だった
いや、正確には現実逃避しているのだ。次は自分の番だなんてぼんやりと考えながら、それでも身体は動いていた
どうしてシェルターを開けたのか。誰があんな報道をしたのか。そんな事は今はどうでもいい、必要なのは生きる事だ
「うわっ!!!」
何かに躓いて転んだ。足下はしっかりと見ていたハズなのに。転ぶ原因となった物を確認すると、ソレは人間の腕だった
痛みと恐怖で現実に引き戻される。嫌だ、認識するな、まだ生きないといけないんだ
親父みたいに死んでたまるか
「大丈夫ですか!?」
量産型のニケから声をかけられ、腕を引っ張られて立ち上がる。彼女の身体もボロボロであり、片手で持っているアサルトライフルは、今も熱を帯びている
恐らくは射撃をした後。何故自分を助けたのかは分からないが、彼女を率いる指揮官の姿は見当たらない
「指揮官は!?アンタを指揮してる人間は!?」
「居ません!!!我々は警備部隊です!!!ACPUの所属でも無い為、指揮官が居らず個々での対応なんです!!!」
「クソッ!!!散発的な防衛になるだろそんなの!!!近くに他のニケは!?どう言う風な計画をしてたんだ!?」
「分かりません!!!現在混乱が広がり続けていて……臨時の指揮をお願いします!!!」
コイツは一体何を言っているのか。俺が指揮官にでも見えるのか。指揮官の学校だって行ってないのに俺に何を求めているのか
だが、ここで指揮出来るのは確かに俺しか居ない。アーク内でどのようにラプチャーが攻めてくるかなんてシミュレーションした事は無いが、それでもやるしか無いんだ
「先ずは散発的に防衛戦闘を行っているニケを集める!!!その間は交戦禁止、ラプチャーに発見されそうになったら消火器等による煙幕で撤退、良いな!?」
「了解!!」
親父、俺はアンタの事を尊敬してたんだぜ?だからこそあんな風に死んだ事が信じられなかった
俺は死にたくなかった。なのに今の俺は、アンタが言ってたような事を言ってる
ああ、なんだ。やっぱり俺は───
指揮官なんて向いてない
「前方に防衛戦闘中のニケを確認、援護しますか?」
「俺が消火器を投げる。それを撃ち抜いて煙幕として展開した後に合流、ラプチャーを殲滅する」
「了解」
こんな非常時に、親父の事ばっかりが頭に浮かぶんだ。消火器を何本もぶん投げて撃ち抜かせて煙幕にして合流するなんてよ。親父が昔言ってた事そのまんまだぜ
ああクソ、もっと親父の言ってた事を聞いときゃ良かった
「合流!!!所属は!?」
こちらを見失っているラプチャーを横目にカバーへと滑り込む。スーツのパンツがビリビリに破れるのすら気にせず、未だ応戦を続ける根性の有るニケに話しかける
待ってましたと言わんばかりではあるものの、コチラをちらりと見て民間人と判断したらしい。それでも指揮が欲しいのか、此方に口を開く
「地上資源採集部隊α-19!!!指揮官はここを死守せよとの命令後撤退!!!臨時の指揮をお願いします!!!」
「他ニケは!?ぐっ!!!応戦開始!!!小型種から仕留めた後中型種を排除!!!」
視界が晴れ、ラプチャーの攻撃が始まる。コンクリートで作られている壁がガリガリと削られるのを聞きながら周囲を見渡す
どこもかしこも煙が上がっている。この戦闘音を聞けばきっと他のラプチャーも集まってくる
ジリ貧だ、頃合を見て後退せねばここで圧殺される
「先程までスナイパーの援護がありましたが今はありません!!!同部隊かも分かりません!!!」
「スナイパーの位置は!?あのビルか!!!」
「恐らくはそのビルの屋上です!!!」
汚れている携帯端末の画面を拭き、キラリと光るのを確認する。陽光を反射させて200m程離れたビルの屋上に光を当てる
瞬間、此方に飛びかかってきていた小型ラプチャーが撃ち抜かれた。どうやら他の場所を援護していたのか、此方に気づいて援護を再開してくれた
これで大分楽になる。一通りの排除を行った後、スナイパーに手を振り、blablaの友達申請画面を見せて連絡を取る
『指揮官不在。定点援護を行っているが、反対側の区画で2名のニケが戦闘中。援護に向かって欲しい』
『了解』
こういう時blablaは非常に便利だ。次の作戦目標が決まると同時に指示を出し、俺達は反対側の区画へと向かう
もしここで指揮官が居れば、俺は即座に止められていただろう。だが運がいいのか、それとも運が悪いのか、指揮官らしき人物は一切見当たらない
混乱の最中である事に変わりないからか、それとも……
『かなり押されている。早急に援護を行って欲しい』
「言われなくても……!!!目標前方ラプチャー群!!!射撃しながらカバーへ向かう!!!」
一体何時以来だろうか、口はカラカラに乾いているし、喉は痛みを訴えている
だと言うのに。俺はこの状況を欲していたと言わんばかりだ。心臓はバクバクと脈打ち、呼吸は乱れ、ラプチャーの弾が頬を掠めるのが、堪らなく心地良い
「ぜー、はー……到着!!!所属部隊は!?」
「西区画警備部隊ニケ2名です!!!他ニケは市民にまとわりつかれて……」
「……防衛戦闘を開始する、弾薬は?」
「先程カーゴが弾薬を届けてくれました、潤沢とは言えませんが……」
「よし、退路を確保しつつラプチャーを排除する。俺達の目標はアーク内に入ったラプチャーの排除では無い、生き残る事だ、良いな?」
スナイパー以外に途中で拾ったペットボトルに入った水を手渡し、飲ませる。此方も半分程一気に飲み干して、指示を飛ばせるように口を潤す
交差点の1区画を封鎖するようにしたのは悪い判断では無いと思いつつ、俺達は防衛戦闘を開始した────────
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「では、君の処遇だが」
副司令と呼ばれる人間の前に、俺は手錠に繋がれて座らされていた
あの後、俺達は30分ほどその場で踏ん張った。ラプチャーの無限とも思える数に対抗しながら、何とか退却もした
1名も欠ける事が無かったのは奇跡と言えるだろう。だからこそ、こんな事をされるいわれは無いと思うのだが
そんな文句すら口に出せない。出したら殺されそうだ
「君の経歴も調べさせてもらった。亡くなった父親は優秀な指揮官、推薦がありながら指揮官にはならず、大学卒業後就職
……言わせて貰えば、今回のように見事な指揮を出来る人間は1握り……いや、五指に入ると言えるだろう。エニックに判断を求めた所、無許可のニケへの指揮及び、人材を放っておく訳には行かないと判断された為……特例で、君は現在から指揮官となる」
「……それは構いませんが、俺が指揮していたα-19のニケの指揮官は?」
「死亡した。大型ラプチャーと対峙して自分だけ逃げようとしてな」
「……そうですか」
倍率50倍を潜り抜け、1年のカリキュラムを終えた結果がそれだ。やり切れないと思うのは致し方ない
そして、自分が指揮官になると言う事もやりきれない。何故俺は直ぐに逃げなかったのか?
俺に出来る事があったからか、それとも……
「部隊は既に君が指揮した量産型ニケの部隊を用意している。君は亡くなったα-19の指揮官の代わりに、地上へ赴き、物資を回収して貰う」
「…………承りました」
「うむ、抵抗があると思ったが手錠も必要無かったな。失礼、5分後に会議があるので失礼するよ」
カチャリと音を立て、俺の手首を締め付けていた手錠が外れる。副司令と言われる人物が部屋から出ていくのを見送り、思わず大きな溜息が漏れる
「ああそれと」
「うわぁ!?」
出て行った人が現れる事ほど驚く事は無い。特に愚痴をはこうとした時は
アンダーソンと呼ばれる副司令はその反応に満足そうに頷いては、不敵な笑みを浮かべたまま告げる
「君に勝利の女神が微笑まんことを」
「は、はぁ……」
カツカツと音を立てて廊下を歩いて行く音を聞きながら、改めて大きく溜息をつき……俺は、自分の部隊が待つ地上エレベーターへと向かう
???「あんなにも的確な指示してくれる指揮官とか大当たり過ぎるでしょ、アンタもしかして知ってたの?」
???「黙秘します」
???「地上でもアレが続くと良いけどね。指揮官になったから横柄になったり」
???「それは無いね。ニケに対してあんなにも人当たり……ニケ当たり?が良いんだもん」
???「そーそー。あの人ならきっと私達の事大事にしてくれるって」
???「二ケフィリアだったらどうするの?」
???「寧ろラッキーでしょ、私達の事もっと大事にするし」
「「「「「(まあ選ばれるのは私だろうけど)」」」」」