新人指揮官だけど部隊の空気が最悪です 作:rezeaizen
背嚢
食料
水
キャンプ用品
煙幕(いっぱい)
処理用拳銃
馬(アンダルシア。指揮官命名)
馬用装具一式
「帰れ!!!俺はもう二度と蹄鉄なんざ作らねえって言ってんだ!!!」
飲み終わったお酒の空き缶が飛んできて、私達は作業場から追い出されました。指揮官を庇いながら扉を閉めて、私───ハチは、大きく溜息をつきます
今やアークの中で蹄鉄を作れる職人は彼しか居ない。どうしますか、なんて聞く前に、指揮官は不貞腐れるでも無く、私を見て何かを決めました
「ハチ。彼を地上に連れていこう」
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その馬は、指揮官の事をずっと見ていました
私、ハチがスコープを覗くと、必ずその馬は指揮官の方をじっ、と見つめていたんです
まるで人間に興味が有りまくり、と言わんばかりに。たまに他の指揮官と話していても、その視線の先はウチの指揮官ばっかり!
その事を報告すると、指揮官はへえ、なんて言いながら何処かウキウキでアークに戻って……
なんと、馬用の装具一式をどこかから貰って来たんです
「いやー、良かった良かった。富裕層連中は何でも大切に保管してくれてて」
「それ、かなりしたんじゃありません?富裕層からの買取りって……」
「いや、タダだ。廃棄する所を貰って来た」
それって壊れてるんじゃ……なんて言葉を飲み込んで。指揮官は私達を連れて地上への物資回収任務に向かいました
エレベーターで地上に到着して、扉が開いた瞬間。私達の前にはその白馬が居ました
「ハチ、コイツか?」
「う、うん」
驚いた。全員が銃を構えそうになる程に。嘶く事もせず指揮官をじっと見つめて、指揮官が一礼すると、答えるように一礼して
指揮官がその顔を撫でる為に手を差し出せば、白馬の方から顔を擦り寄らせ、指揮官の匂いを嗅いで、満足そうに鼻息を鳴らしました
「随分素直だな……よし、今日からお前の名前はアンダルシアだ」
アンダルシア、と呼ばれたその白馬は、嬉しそうに鳴く事はありませんでした。ただ満足そうに鼻息を鳴らし、大人しく馬用装具の一式を着けられ、指揮官に背中に乗るよう促すのです
野生の馬だと言うのに、まるで最初から主を決めていたような振る舞いに、私は少しばかりむっとしていました
皮肉な話ですが、アンダルシアのお陰で作戦効率が上がりました。指揮官の休む回数が劇的に減り、1日の移動距離が大幅に増加したんです
最初こそ尻が痛いだの痔になるだの喚いていたものの、用具一式の中に入っていた衝撃吸収ゲルクッションによってその喚きも無くなり、1日の移動距離が大幅に上昇、休憩の回数も少なくなり、指揮官は上機嫌、アンダルシアも上機嫌、私達は不機嫌、と言う図式が出来上がってしまい……
更に困った事は、アンダルシアがとても賢い事です。休憩の為に指揮官をわざとラプチャーの居ない小川に連れて行って一緒に水浴びしたり、体も洗わせたり、ブラッシングまでさせたり。動物ってこんなにも頭いいんだ、なんて関心してましたけど、アンダルシアは私達を見ると、勝ち誇るように鼻を鳴らすんです。バラしてやろうかこの馬なんて考えたのは秘密です
更には、アンダルシアに乗っている指揮官がとてつもなくカッコよく見えるから困ります。それこそ、絵本で見るような白馬の王子様、と言っても過言では無く……
別に普段がカッコよくないと言う訳ではありません。寧ろ最近は地上での活動の為に更にジムに通って体力作りをしてるんです
あのトレーナーニケもそれが嬉しいのか、トレーニングメニューを作ったりして体力作りをサポートさせて……汗まみれの指揮官はほんとに最高でした。指揮官にblablaでおねだりして良かったです
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話を戻しましょう。そんなアンダルシアを、指揮官は凄く頼りにしますし、アンダルシアの為に蹄鉄職人さんにコンタクトを取ったんです
アークで声をかけた時、蹄鉄職人さんはアルコール漬けでした
それを口説き落としたのは指揮官の熱意と……アンダルシアの美しさでした
喚く蹄鉄職人さんを私と指揮官で地上へと引っ張り、アンダルシアの前に引きずり出すと、蹄鉄職人さんはその美しさに一目惚れして、息を呑みました
普段なら私達にすら最低限触らせるだけのアンダルシアが、蹄鉄を履かせる為の蹄を見せたり、ベタベタと身体を触らせたり、珍しい物を見ている気分になれば、すっかりアルコールの抜けた職人さんの目には、炎が宿っていました
「俺にやらせろ。コイツの蹄鉄を作ってやる。走らせ、使い潰して、俺に寄越せ。アークの中でのただの貴重品じゃねえんだって、俺に分からせてみろ」
「アンタならそう言うと思ったよ」
男同士通じる物があったのか。それとも何かそう言える理由があったのか。作戦参謀(?)である私を連れ回して行われたこの騒動は、ようやく終わりを見ました
「……指揮官、ところで何でああ言うと思ったんですか?」
気になっていた事は聞かねばならぬ。作戦参謀(?)として私はそんな事を指揮官に聞いていました
彼は少しばかり悩んだフリをして、私を見ながら言ってきます
「本当に職人を辞めたなら、道具の手入れも作業場の手入れもしてない筈だ。なのに彼は酒を飲みながらでも作業場に居て、掃除もしっかりとしていて、道具の手入れもこなしていた。何だかんだ言いながら、作りたくて仕方無かったんだよ」
聞こえないように耳元で囁いてくる指揮官に、思わず私はドキドキしてしまって、彼の言っている事はほとんど覚えていませんでした
???「アンダルシアがまたウ〇コしてる……」
???「するのは良いけどたまにわざとこっちに向けてしてくるの許せない」
???「まあまあ、動物だから仕方無いよ」
???「よくアンダルシアと指揮官の写真撮ってる奴は言う事違うわ」
???「は?じゃあお前らアンダルシアに乗った指揮官の写真いらないんだな?」
???「私が欲しいのはアンダルシアと顔付き合わせて笑ってる写真だから……」
???「ツラが良いんだこの1人と1匹……」
???「でも時々向けてくる勝ち誇った顔は許せん」
???「草。嫉妬心メラメラじゃん。そうだよね〜、指揮官の上に乗りたいもんね〜」
???「お前も同じ穴のムジナじゃろがい!!!」