ダンジョンに初代ロトの勇者がいるのは間違っているだろうか。   作:ドラクエ11激推し侍

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想像を超える好評に驚きを隠せません。
まさか日間ランキングの一位を独占するほどとは、素直にびっくりです。

皆様評価や感想等、ありがとうございました。
これからも素人の拙い作品ですが、楽しんで頂ければ嬉しく思います。


『静寂』

 

 

 

 

 

 

 

 アルフィアから放たれる覇気は無作為にばら撒かれているのではなく、イレブン達への指向性を持っていた。

 非常識(フィクション)みたいな真似を平然とやる。それが才禍の怪物と呼ばれた才能の暴力という理不尽を体現した英雄、『静寂』のアルフィアなのだ。

 

 その覇気に殺気は含まれていない。

 あくまでもアルフィアという絶対強者が()()()()()()()()()()()()()()()のこと。

 たったそれだけで、第一級冒険者であろうとも尋常ならざる威圧感に呼吸を忘れるような、生存本能を直接刺激されるような恐怖を思い起こされる。

 第二級冒険者未満は戦闘態勢に入ったアルフィアの眼前に立つことすら儘ならないだろう。

 

 だが、アナーヒター・ファミリアは並ではない。

 第一級冒険者の中でも上澄み、神々からも英雄として扱われるLv.7以上に至っている。

 とある絡繰があって、真の実力は同レベル帯を優に超えており、矛を交える前から怯むような軟弱者は一人もいない。

 むしろ条件反射で戦闘態勢に入り覇気を跳ね除けている者、風に揺れる葉のように受け流す者さえいる。

 

 しかし、イレブンはどれにも当て嵌まらない。

 静かに真正面から受け止めて見詰め返す。ただそれだけだ。

 

 一秒間か、一分間か。或いは、一時間かもしれない。

 誰もが時間感覚は曖昧になっていた。

 突如として、張り詰めていた空気が抜けていくようにアルフィアから発せられていた威圧感が萎んでいく。

 それに合わせて意識も戦闘態勢から日常へと切り替わる。

 アルフィアの様子を見て、一部の対抗していた面々も気を落ち着けるようにして、最低限の警戒以外を解いた。

 

 

「──お前は変わらないな」

 

 

 ほんの僅か、小さく笑みの形を作る。

 あのアルフィアが、何処か満足気にも見える微笑みを浮かべた。

 

 

「真っ直ぐに揺らぐことのない、まるで凪いだ湖面の如き静けさ。曇りなき鏡のような美しさ」

 

 

 そのまま品評するかのように語る。

 己こそが上位者とでも言わんばかりの態度に、ベロニカなどは思わず顔を顰めてしまう。

 けれど、アルフィアは安堵しているかのようにも見えた。

 

 

「その深奥には、決して折れることのない大樹のような芯を秘めている。静かに心を燃やす者の眼。そういう眼をする者が────」

 

 

 これまで開き続けていた左右で異なる色の目を億劫そうに閉じる。

 その身は既に()()()()()()()()()()が、目を閉じているのが楽であることに違いはない。

 最早それは癖のようなものだった。

 

 

「──私は存外、嫌いではない」

 

 

 その言葉には、一体どのような感情が込められていたのだろうか。

 アルフィアとアナーヒター・ファミリアの関わりは濃いが、極めて時間が短い。

 互いの為人を知るには時間が足りなさ過ぎた。

 けれど、命の奪い合いと信念のぶつけ合いを経たからこそ、否が応でも理解してしまった部分などもある。

 例えば、アルフィアという女性(おんな)が、とんでもなく面倒な性格であること、とか。

 

 何か言いたげな仲間を視線で抑えて、イレブンは改めて向き合う。

 十五年前や七年前を知る者なら驚くほどに、アルフィアは穏やかな表情をしていた。

 生来の鋭い面持ちこそ変わらないが、険が抜けたとでも言うべきだろうか。常に張り詰めていた緊張感が薄れている。

 

 

「そういうアルフィアは、雰囲気が変わったかな?」

「……ふんっ。白々しい。変わらないと言ったが、やはり少し生意気になったか?」

「多少はね。あれから六年も経ってるんだから」

 

 

 気怠そうに片目だけを開けて、イレブンを軽く睨む。

 けれど、全く意に介さない姿を見て面倒そうにも、楽しそうにも思える表情で溜息を吐いた。

 そして、何かを思い出したかのように眉を顰めた。

 

 

「ここに来る前、アストレアとロキの小娘共の顔を見てきた、が…………あの腑抜け具合はなんだ?」

 

 

 話は変わり、再びアルフィアの気配が鋭くなる。

 恐らく抑えてはいるのだろうが、漏れ出た怒気によって応接室の空気がヒリつく。

 

 

「『重傑(エルガルム)』と『九魔姫(ナイン・ヘル)』がLv.7になり、あとは『剣姫』がLv.6に上がっていたな。これはまあ、いいだろう。アストレアのところは全員Lv.5に昇格だったか。あれが七年間の成果か、なるほど。────()()()()()()()()()

 

 

 両目を見開く。隠しきれない怒りが発露する。

 ──直前で、深呼吸をした。

 他派閥の問題である以上、イレブンには関係のないことではある。

 これではただの八つ当たりでしかない。

 アナーヒター・ファミリアには一つたりとも瑕疵はないのだから、流石にお門違いというものだ。

 

 

「…………はぁ。お前に言っても仕方がないな」

「そうだね。他所のファミリアの方針に干渉するのは難しいかな。でも、ただ顔を見てきただけじゃないんでしょう?」

「当然だ。()()()()()()()()()()()()()()()()。無理なら次代の英雄の器ではなかったというだけだ」

「それなら僕達はどうかな?アルフィアには、()()()()()

 

 

 そう尋ねたイレブンと他の仲間達をチラリと見る。

 特に迷うこともなく、アルフィアは告げた。

 

 

「……お前達は問題ないな。今朝のギルドでの騒ぎも知っている。そこまで(Lv.8)至るとは、流石とでも言えばいいか?『人類の希望』は一味違うようだな」

 

 

 何処か揶揄うような口調。

 イレブンがそう呼ばれることを嫌がっていると、事前に知っていたかのような話し方。

 ベロニカとセーニャが、そわそわし始めた。

 

 

「そういうアルフィアも、僕と同じだよね」

「ああ、お前の言う通りだ。Lv.8にランクアップした。五年も前の話だがな」

 

 

 事もなげに語る姿に、アナーヒター・ファミリアも誰一人として驚くことはない。

 あれから強くなった自分達でも()()()()()()()()()()()()()()()()()と思った。それだけ分かれば、敢えて言われるまでもなく察するくらいは容易いだろう。

 

 

「それで、()()()()()()()()ってことでいいのかな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んでしょう?」

「ああ。お前達には必要ないと判断した」

 

 

 アナーヒター・ファミリアの成長は、アルフィアから見ても満足のいくものだったらしい。

 相対的にアストレア・ファミリアとロキ・ファミリアの評価が下がってしまっているようだが、彼等だって遊んでいたわけではないのだ。

 規模が大きくなった関係で組織運営に時間を奪われたり、平和になったからこそオラリオの警邏により力を入れて探索が多少なりとも疎かになってはいたかもしれないが。

 けれど、その中の誰一人として七年前のことは忘れていない。

 最後に『奇跡』さえ起こらなければ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 だからこそ、ロキもアストレアのところも、ただ機会に恵まれなかっただけなのだ。

 そういう意味ではいいきっかけなのかもしれない。

 アルフィアという、かつて辛酸を舐めさせられた相手が再び壁となった以上、これで奮起しないほど平和ボケはしていない。

 何よりも自分達がもっと強くなければ守れるものも守れないと、否が応でも思い出さずにはいられないだろうから。

 

 

「そうだ。これからしばらく私もオラリオに留まることにした。ギルドとお前達以外は私の存在を知らない。公表する気もないから、吹聴してくれるなよ?」

 

 

 突然告げられた言葉には、流石にみんな驚いた。

 存在を隠すつもりのようだが、人の口に戸は立てられないものだ。

 いつかは露見する可能性が高い。オラリオを襲った『悪』の一人として知られているため、その時は大きな騒動になってしまうだろう。

 ロイマンの顔色が悪かったのは、もしかしたらアナーヒター・ファミリアの所為だけではなかったのかもしれない。

 

 

「オラリオに……もしかして、以前話していた甥が?」

「あの糞爺に唆されてな。ハーレムを作るなど宣った時には記憶を飛ばしてやろうかと思ったものだ」

「……アルフィア、改宗(コンバージョン)してる?」

「よく分かったな。今はヘスティア・ファミリアで厄介になっている。本格的に冒険者としての活動に戻るつもりはないが、食い扶持稼ぎで多少潜るくらいはする。お前達の世話になる時もあるだろう」

 

 

 もしこの会話を十五年前から地上にいる、或いはヘラを知る者が聞いていれば胃を痛めたことになっただろう。

 現にアナーヒターは、嘘でしょ、と青白い顔で呟きながらお腹を摩っている。

 あのヘラが眷属の改宗(コンバージョン)なんて認めるはずがない。そう思わせるだけの神格(せいかく)をしているのだ。

 

 実際には、ヘスティアならば何も問題は起こらない。

 ヘラにとってヘスティアだけは尊敬に値する女神として慕っており、逆に言えばそれ以外だったら大変なことになっていただろう。

 だが、そんな裏事情も知らなければ意味がないこと。

 アナーヒターは真相を知るまでの間、密かに胃を痛め続けることになった。

 

 

「ねえ、ちょっとイレブン。アンタまさかとは思うけど……」

「はい、そうですイレブン様。もしかしてこの六年の間に、アルフィア様と連絡を取り合っていたのですか?」

 

 

 そこで、遂に我慢できなくなった二人がイレブンに尋ねる。

 何やら先程からの会話に少し違和感を覚えていた。

 どちらも妙に互いの事情に詳しいような、そんな気がしていたのだ。

 異性として気になる男性(イレブン)が、知らないところで他の女性と接触していた可能性に思い至れば黙ってはいられない。

 

 

「ふっ……なんだ小娘共。妬いているのか?」

 

 

 だが、そこでアルフィアが鼻を鳴らして失笑した。

 その瞬間、ゴングが鳴り響いた音をイレブンとアナーヒターは聞いた気がした。

 

 

「アンタには聞いてないわよ!オバさんは黙ってなさいっ!!」

「お、お姉様!?言い過ぎでは……!」

「────ほう?本当に威勢がいいな、貴様は。気が変わった。そこまで言うなら相手をしてやろう」

「望むところよ!メッタメタにしてあげるんだから!!」

 

 

 あっという間の出来事だった。

 誰もが止めに入る隙もなく、二人は視線で火花を散らしながら立ち上がる。

 水と油というか、どうにも相性が悪いらしい。

 ここは思いっきり戦ってスッキリしてもらうのが一番かもしれないと、シルビアに目配せする。

 

 

「はいはいっ、注目ぅ〜!まさかベロニカちゃんも、アルフィアちゃんも、こんなところでおっ始めるつもりじゃないでしょうね?」

「なによっ、シルビアさん!止めるつもり!?」

「あらんっ、アタシそんなこと言ってないわよ?()()()()()()()()って言ってるの。地下にオリハルコンで作った訓練場があるの。案内するわ、アタシが審判もしてあ・げ・る!」

 

 

 察しの良いシルビアはすぐに得心したように頷いて、続いて立ち上がると手を叩いて注目を集めた。

 そのまま有無を言わさない勢いで場をまとめて、二人を先導するように応接室を出る。

 無言で睨み合ったベロニカとアルフィアも後に続き、怪我をした時の回復要員としてセーニャもパタパタとついていった。

 

 

 

 

 

「──アルフィアは、()()()()()()()?」

 

 

 

 

 

 部屋を出る直前、イレブンの言葉が響いた。

 そんなに大きな声ではないにも関わらず、不思議と他者の意識を惹きつける引力のようなものがあった。

 

 アルフィアも足を止める。

 そして、振り返らないまま答えた。

 

 

()()()()()。憎んでさえいる」

 

 

 言葉とは裏腹に、透き通った声だった。

 どんな表情をしているのか。背を向けられているイレブンには分からない。

 

 

「覚悟を踏み躙り、()()()()()()()()。誰がそんなことを頼んだ。余計な世話だとな」

 

 

 だが、唯一目にしたシルビアは口に手を当てて驚いていた。

 そんなまさか、とでも言うように。

 

 

「何が『奇跡』だ。ついでとばかりに、私の罪業まで奪っておいて。もしお前の意識があれば、その場で殺していたかもしれないな」

 

 

 七年前にイレブンが、正確にはベロニカとセーニャの三人で起こした『奇跡』の代償は重かった。

 当時を知る者は知っているが、ベロニカとセーニャは一ヶ月、イレブンに至っては一年もの間、目を覚さないほどの対価を払うことになった。

 それだけ起こした『奇跡』は凄まじいものであったのだ。

 

 

「主犯の一人であった私と()()()は生かされ、()()()()()()()()()()()。正邪が巻き起こした『死の七日間』は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 オラリオ史上最悪の事件『死の七日間』。

 同時に、こうも言われている。

 

 『奇跡の一夜』、と。

 

 地獄のような七日間で多くの人々が死に絶えた。

 無辜の一般市民も、オラリオを守るために戦った冒険者達も、闇派閥(イヴィルス)側にも多数の死者がいた。

 その中には肉片一つ残さず吹き飛んだ者もいたし、拷問でも受けたかのような惨殺死体もあった。

 何柱もの神々が天界に送還されて、恩恵を失った元冒険者達が嬲り殺しに遭ったりもした。

 

 その地獄が、たったの一夜で塗り替えられた。

 突如としてオラリオ上空に現れたのは、()()()()()()()だった。

 誰もが見上げる中、優しい光がオラリオ全土を照らし、瞬く間に()()()()()()いく。

 闇派閥(イヴィルス)の死傷者はそのままに、オラリオ側の冒険者や一般市民の傷が癒えて、死んだはずの仲間や家族が生き返った。

 

 そして、誰かが言った。

 

 

「『奇跡』だ。『奇跡』が起きた!」

 

 

 浮遊する大樹に溢れる涙を流しながら、跪いて祈りを捧げる。

 続いて、多くの者が同じように祈った。

 あの大樹の光が、必死に抗った我々に『奇跡』を齎してくれたのだと。

 

 そんな人々の前に、大樹から三つの光が降りてきた。

 緩やかに地上に降り立った三つの光の中からは、三人の小さな子供が出てきた。

 精霊か、神様かと思っていた人々、いや神々さえも驚いた。

 そこにいたのはアナーヒター・ファミリアのイレブン、ベロニカ、セーニャの三人だった。

 『奇跡』を起こしたのは精霊でも、神でもなかったのだ。

 

 こうして、イレブンは『大樹の勇者(セフィロト)』、または『奇跡の子』と呼ばれるようになった。

 そして、役目を終えると同時にすぐに姿を消してしまった空に浮かぶ大樹は、失われた命を蘇らせる生命の樹として、神々によって『命の大樹』と名付けられた。

 

 

「恨みもした、憎みもした。────だが、それ以上に感謝している」

 

 

 何故か生き返ったアルフィアとザルドは呆然としている間に捕えられて一年間投獄されたが、諸悪の根源たるエレボスの嘆願によって解放された。

 それでも無罪放免とはいかず、オラリオを追放されることになったが、その際に目を覚ましたイレブンと話をした。

 『悪』を背負った理由や妹の忘形見のことなど、話すつもりもなかったのにイレブンの透徹とした眼差しの前に洗いざらい話してしまったのだ。

 

 そして、イレブンは至極当然のように背を押した。

 両親を失った子供に会いにいってあげてほしい。ずっと寂しがっているはずだから、と。

 自分も同じだったから分かるのだと、優しく微笑みながら。

 

 

「お前のお陰で、あの子に会えた」

 

「あの子の成長を側で見守ることができる」

 

「本当に感謝している」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私を救ってくれてありがとう────イレブン」

 

 

 そう言って振り返ったアルフィアは、いつかのイレブンと同じような、優しい微笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なお、この後にアナーヒター・ファミリアの地下訓練場がボロボロになるほどの激しい戦闘を繰り広げたという話は、余談だろう。

 ちなみに修繕費はもちろん、ツケである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





修繕費、12,000,000,000ヴァリス。
ベロニカとの折半なので半分の60億ヴァリスになりますね。気が昂ってやり過ぎた模様。
いきなり莫大な借金をこさえてきた伯母さんに、新しい紐の女神と兎みたいな甥っ子はどんな顔をしたのでしょうか。
まあ、アルフィアが本気を出せば60億くらい一瞬なので問題ありません。

とまあ、七年前にはこんなことがありましたよ、って話ですね。
ちょっと説明っぽくなってしまったのは申し訳ありません。大目に見てもらえると助かります。
アルフィアとザルドは生きてますが、他の闇派閥は死んだままです。『奇跡』の詳細は不明ですが、対象の選択ができたのかもしれません。

アルフィア(31歳)……意外と悪くないな、面白いじゃん先が楽しみ!
そう思った方は高評価、お気に入り、感想、ここ好きなどして頂けると作者のモチベーションに繋がります。
それでは、また次回をお楽しみに。



【人物紹介】

・ザルド
45歳。男性。臙脂色のショートヘアー。
ゼウス・ファミリアの元幹部。現在は????・ファミリアに所属している。二つ名は『暴喰』。
七年前のオラリオ襲撃時はLv.7だった。今は????。
基本的にダンまち原作と同じ流れを辿ったが、本来死ぬはずの運命を捻じ曲げられて現在も生き続けている。イレブンとの関係性は良好。
大剣使いで、前衛を超えた超前衛。『力』と『耐久』が極めて高く、戦闘技術も卓越している。
実は、アルフィアの甥っ子からおじちゃんと呼ばれている。あとなんか、ベヒーモスの毒は既に克服した。ザルドもフレイヤのところに顔見せに行っていたが、そこで何が起きたかは不明である。近所には轟音と悲鳴が聞こえていたとか、いないとか。
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