Re:ゼロから始める騎士団生活〜TSラインハルト&TSユリウスを添えて〜   作:リゼロ好き

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筆が進みすぎて5000文字超えちゃった……
分からない、またはエアプの部分は想像で進めてます。


剣聖は未だ恋を知らない

 

 騎士学校に入学した……のは良いものの、一向に剣聖ラインハルトの姿を見ない。

 まあ、そもそもクラスが違う……というか年齢的に一個下なんよね。俺は編入だし普通に会うことがない。

 今日剣聖来てたってよ! みたいな噂話を聞いて探しに行っても全然いないし……。

 

「本当に剣聖いるんだよな……?」

 

「よそ見──してんじゃねェ!!」

 

「あ、マジでごめん……」

 

 脳天に向かってきた木刀をサラリと交わし、隙だらけの胴に剣をぶちかます。

 うっ……! と苦悶の表情を浮かべ、演習のペアであるアズ・リバティーくんが倒れ伏した。

 

 考え事してたのはマジで申し訳ない。

 さすがに演習の時くらいは真面目にやらないとな。

 

「ごめん。次は真面目にやる」

「チッ、分かれば良いんだよ」

 

 差し伸べた手を払い除けられお兄さん、涙。7歳の子どもに舌打ちされるのは精神的にまあまあ来るものがある。

 よそ見してた俺が悪いけど。

 

 

 プラス要素としてめちゃくちゃ申し訳ないのだが、ぶっちゃけ同学年で相手になる人間が一切存在しないのだ。

 これは正直《写見(うつしみ)の加護》による恩恵と、近衛騎士団所属の父親と訓練していたことがデカい。

 

 騎士学校に通ってるだけあって、別に弱くはない。本当に弱くはないんだよ……。

 

「チッ、コネ入学だからって調子に乗りやがって」

 

 俺とアズくんの演習を見守っていた外野からそんな声が出る。周りの生徒たちも同意するように頷いているのを見て、俺はため息を吐いた。

 

 そう、俺はこの7歳の子どもたちに全力で嫌われている。

 一切話しかけられないし、目を合わせるだけで嫌な顔されるくらいに嫌われている。

 

 まずもって、騎士学校というのには入学試験が存在する。

 現時点での実力と学力が一定に満たしていないと普通に落とされるし、倍率は5倍くらいある。

 騎士は花形だからな。人気は高い。

 

 そんな中でやってきた編入生という存在。

 実際編入試験とかいう明らかに入学試験より難しいだろ、って試験をパスした身ではあるものの、親が近衛騎士団所属なのもあって完全に同級生からコネ入学だと思われている。

 

 うん、君たちすごいね。

 俺が7歳だった時はコネが何なのかすら知らんかったよ。

 精神年齢高いよ、君たち。

 

 友達ofゼロ。

 Q.今からでも入れる保険ありますか。A.(あるわけ)ないです。

 

 泣きたいけど泣けない。俺長男だから……。

 

 

「チッ、やめろよお前ら。おれはよそ見してるコイツに実力で負けたんだ。コネだろうがおれが負けたことには変わんねぇよ」

「アズくん……」

「アズくんやめろ。家名で呼べ、カス」

「ミキティー……」

「リバティーだカス!」

 

 俺は猛烈に感動した。

 多分というか普通に嫌われてはいるんだろうけど、その中でも自分の不甲斐なさを自覚し、大衆の前でそれを認めることの凄さよ。本当に7歳?

 

 さてさて、俺がアズくんを少々イジりながら遊んでいると、そこに演習担当の教官が俺のもとへと手招きをした。

 

「なんですか?」

「もう君が相手になる者はいないだろう。私も含めてね。君の実力は君の父に聞いていたが、あいつは少々親バカなところがあった。どうせ過大評価だろうとは思ったが、あいつに勝利したのは本当だったようだ」

「父さんと親しいんですか?」

「あぁ。俺は元近衛騎士団だ。解体でクビになったがな。まあ、丁度辞めようと思っていた頃だったし、教官の仕事は天職さ」

「元近衛騎士団……なるほど。それで……どうしたんですか?」

「実力が過度に離れている者同士のやり取りは成長に繋がらないだろう。そこで、君に紹介したい生徒がいるんだ」

 

 ついておいで、と教官は演習場を出る。

 紹介したい生徒? と疑問を覚えながら後をついていくと、アズくん以外の生徒が恨めしそうに俺を睨みつけていた。  

 ……当然特別扱いしやがってって思うよなぁ……。

 

 ある意味特別扱いではあるから何も言えないのが本音ではある。

 まあ、騎士団配属になったら同僚になるんだしその時仲良くしてくれればそれで良いさ。

 

 

「ここだ」

 

 しばらく歩いていた教官は、騎士学校の離れにある旧演習場の前に立った。

 

「ここは……しばらく使われていない旧演習場だったような気がしますけど……」

「あぁ、そうだ。あまりおおっぴらはできないからね」

 

 その時点で俺は何となく察していた。 

 紹介したい()()……実力に関する話……父親と知り合い……おおっぴらにはできない。

 

 ここまでヒントが揃えば答えみたいなものだ。

 

 ──この扉の先には剣聖がいる。

 

 間違いない。《写見の加護》が警鐘を鳴らしている。

 とんでもない量のマナが旧演習場の中で渦巻いている。

 

 こんな芸当ができるのは、あの剣聖ラインハルトの他にはいないだろう。

 

 最初は自衛で始めた修行。

 自分が強くなっていく感覚は新鮮で楽しかった。

 

 己の力がどれだけ剣聖に通用するのか……いや、まだ剣聖として力を開花してから時間が経っていないラインハルトなら……勝てるかもしれない。

 

 俺は武者震いをしながら扉を開けると────

 

 

「──だれですか」

「お前こそ誰だよォ!!!??」

 

 

 ──赤毛の美幼女がいた。

 髪は長く、瞳は青い。まるで表情のない怜悧さは、機械を彷彿とさせた。

 よくよく見れば、めちゃくちゃテレシア・ヴァン・アストレアに似ている。最早生き写しと言っても過言ではない。

 

 ……まさか……いや、嘘だろ、嘘と言ってくれ。

 

 俺の心の中の懇願と同時に、彼女は名乗りを上げた。

 

 

「わたしは、アリシア・ヴァン・アストレア。当代の剣聖です」

「ア、ハイ、シャリン・アイズ……デス。ヨロシク」

 

 

 ラインハルトTSしてんだけどォォ!?!?!?

 

 ただでさえ複雑なリゼロ世界をややこしくしないでくれますかねェ!!(オットー的叫び)

 

 

「シャリン・アイズ……あなたが父の言っていた方ですか」

「エッ、俺ハインケル……さんに認知されてんの?」

「ええ、会ったら半殺しにしてくるように言われています」

「嫌な認知だなおい」

「どうやらあなたの父親に恨みがあるようで」

 

 まァ……絵に描いたような正義を好む父さんとハインケルはそりゃ馬が合わないだろうとは思ったよ。そんなに恨まれてるとは思ってなかったけどなァ!!

 

「ですので──参ります」

「おいおいいきなりかよ──っとォ!」

 

 話すことはないと言わんばかりに演習用の木刀を構えた──と同時に俺は咄嗟に同じ木刀で防いだが、防御した右手から強い痺れが走った。

 

 ──威力ヤバすぎるだろォ!  

 

 慌てて《写見の加護》を起動。

 瞳に……取り繕わずに言えば写輪眼の紋様が浮かび上がる。

 

「……っ! 目が……」

「すぐにやられるとでも思ったかね、剣聖さん。残念、加護持ちです」

 

 剣聖の一挙手一投足も見逃さないように目を凝らしつつ、やはりラインハルト……ではなくアリシアは父親であるハインケルの言いなりになっているようだ。

 まずはその思考をぶっ叩いて叩き直さねぇとなァ!!

 

 剣聖としての働きを強制させられているアリシアの目を覚まさせるには、『最強だからこそ剣聖』という前提をひっくり返せば良い。

 なにせ今の剣聖は負け無しだ。

 敗北を知るのは早い方が良い。

 

 ──とはいえ。

 

「当たり前のように強いな……!!」

 

 襲いかかる猛攻を凌ぎながら俺は愚痴を吐く。

 加護と今まで累積した努力で何とかついて行けている。

 

「わたしの攻撃を防ぐなんて……」

「ハッ、攻撃を防がれただけで驚くなんて随分と傲慢じゃねーの」

 

 ──交わした剣の数だけ、目が慣れてくる。

 ()さえ慣れれば《写見の加護》は応えてくれる。

 

「──反撃だ」

 

 今度は俺から攻撃を仕掛ける。

 上段から仕掛けた袈裟斬りは、俺とアリシアが鏡写しになったように同様の攻撃方法だった。

  

「──なっ」

 

 鍔迫り合いで近くなったアリシアの表情は酷く驚いていた。

 《武神の加護》を持つ剣聖さんの動きは非常に参考になる。

 

 形作られていた俺の剣術が冴え渡るように、さらに形を成していく。洗練されていく。

 

「そんな騙し騙しの真似で──!」

「真似かどうかは分からないぜ?」

 

 次の攻撃動作は──首元に向かっての突き。

 それを先んじて読み、俺はアリシアよりも早く同様の突きを仕掛けると、彼女は驚愕に染めながらも慌てて防御姿勢に入るが、俺の一撃が木刀の持つ右手に当たり──彼女は木刀を落とした。

 

「──そこまで」

 

 落とした木刀を拾い上げようとしたところで、ずっと戦いを静観していた教官が戦いを止めた。

 まあ、演習って部分なら俺の勝ちだな。  

 

「休憩を取った後に、教室に戻るように」

 

 これ以上巻き込まれたくないのが分かるぜ、教官。

 スタコラサッサと逃げていった教官の後に残されたのは、静かに勝利の余韻に浸る俺と、膝を立てて俯いたアリシアの姿。

 

「まけた……剣聖はまけちゃいけないのに……おばあさまから受け継いだ力でまけるわけにはいかないのに」

 

「それは──父親から言われたのか?」

 

「…………」

 

 アリシアは小さく頷いた。

 やっぱりどうもあのハインケルとかいう輩がアリシアを傀儡にしているのは間違いないようだ。

 だが幼い剣聖は完全に傀儡になりきっていないように感じた。

 揺れている。己の感情と、父親の言葉と。

 

「そうだな。確かに剣聖なら負けちゃいけなかったかもしれない。……だが、現にお前は俺に負けた。──なぜだ? なぜお前は負けた?」

「それは……わたしが剣聖として不甲斐なかったから」

「違う。お前が剣聖としての在り方を悩んでいるからだ。──悩みは強さを鈍くする。本当にお前が己の信念を持って勝利を目指していたのならば、新たに加護を獲得するだろ。でも、戦いの最中に加護を会得することはなかった。それはお前が望んでいないからだ。勝利を。剣聖としての振る舞いを」

 

 《剣聖の加護》。ラインハルトことアリシアのその他にも加護を複数持ってる上に、望んだ加護を会得するとかいうチート能力を持っている。

 現に彼女の剣からは間違いなく《武神の加護》の気配を感じたし、原作の力は間違いなくあるはずで、本来ならば俺に劣勢な時点で新たな加護を会得するはずなのだ。

 

 だが彼女は悩んでいた。揺れていた。

 そのせいで彼女の剣聖としての力が発揮されず、押し切られるままに俺に負けた。

 ……悩んでいても剣聖は剣聖だ。

 あり得ないくらい強かったが、俺の勝ちは勝ちだ。

 

「そんなはずが……父様が……」

「目を覚ませアリシア! 父様はお前より強いのか!? 違うだろ!! お前のやりたいことを止められる人間は今や俺しかいねぇんだ! お前が暴走したら俺が止めてやる。だから──我慢するな! アリシア!」

 

 ────しまった、初対面でやりすぎた。

 激情の赴くままに言葉を発してしまった。

 だけども、それが俺の全てで本音だ。

 

 時には──勝者にしか伝えられない言葉があり、敗者にしか伝わらない言葉がある。

 彼女が抱えていたのは、先代剣聖を殺したのはお前だ、という罵りと、圧倒的強者ゆえの孤独と苦悩。

 

「でも……おばあさまはわたしが殺したようなもので……おじい様はわたしを見る度に辛そうな表情をする……そんなわたしが自分のやりたいことをしていいわけない……ッ!!」

「やりたいことを止められる権利を持ってんのは自分以外いねーよバーカ!! 父親だけじゃなく自分で自分に枷かけてどうすんだよ! ──お前の知ってるおばあさまは! こんなこと望むのかよ!!」

「──ッ」

 

 

☆☆☆

 

 ──花を愛でるのが好きだと聞いていた。

 誰よりも美しく、可憐で、本来は虫も殺せぬ少女だったとヴィルヘルムはアリシアに言っていた。

 表情は澄ましているが、明らかに得意気な表情に、アリシアは当時呆れたものだ。本人にさっさと言ってしまえば良いのにと。

 

 アリシアがテレシアと会話をした記憶はほとんどない。

 剣を振る理由をヴィルヘルムに奪われたとて、剣聖として活動することは多岐に渡るからだ。

 そこに"いる"だけで効力を発揮するのが剣聖という称号なのだから。

 

 父、ハインケルはテレシアが死ぬ前まではまともだった。

 尊敬する両親を持ち、剣の才が無いことが分かっておきながら努力することを厭わず、妻を愛す父親だった。

 

 だが祖母テレシア・ヴァン・アストレアが、白鯨討伐における大征伐の最中、『剣聖の加護』がアリシアに移り変わったことですべてが変わった。

 白鯨討伐に失敗し、死した祖母。

 

 喪に付す中で、ハインケルは自分の娘を酷く罵った。

 おまえのせいで、おまえのせいで母は死んだのだと。

 

 優しかったヴィルヘルムも、テレシアの生き写しのようなアリシアに寄り添うことも、完全に見捨てることもできず、アストレア家を出奔しても時々静かに様子を伺っていた。

 

 そして彼女は孤独のまま『剣聖』というあまりに重すぎる称号を背負うことになった。

 

 母を失い、妻が眠りから覚めずに床に伏せたままのハインケルは悲しみと怒り、憎しみから歪み、アリシアに剣聖としての働きを強制させ、己のものにしようという魂胆があった。

 

 しかしアリシアは優しさを知っていた。

 父や祖父の笑顔を知っていた。

 

 だからこそ、もう一度見たくて。

 父の行為が間違っていると知りながら言いなりになった。父から……祖父からまた愛されるために。

 

 そのためには強くあらねばならない。剣聖として。

 剣聖とは最強。最強であるためには、誰にも負けてはならない。   

 

 

 

 しかし彼女は負けた。

 それもほとんど歳の変わらない少年に。

 

 揺らいだ。彼の言葉に。叫びに。

 何を知っている。どうして知っている。

 

 けれど、彼の言葉は揺らぎ続けているアリシアの胸に酷く刺さった。

 

 

 彼女は本当は、ただ普通に過ごしていたかった。

 敬愛する両親と祖父母のもとで、ただ静かに暮らし、普通に恋をして過ごしたかった。

 

 奇しくも彼の放った「暴走した時には俺が止めてやる」という言葉は、かつて憧れた剣鬼恋歌にも近しい口説き文句だった。

 

 揺れる。揺れる。

 

 もしもアリシアが男で。恋に対する憧れと、失った愛情の中にある祖父の表情を知らないままでいたならば、結果は変わったかもしれない。

 

 

 だが、剣で負けた剣聖は、今はただの少女に過ぎなかった。

 

 

「わたしは……好きに過ごして良いの……?」

「あぁ、やりたいことやって一人前だろうしな」

「わたしは普通に恋をしてもいいの」

「エッ、うん、良いんじゃね? やりたいことがいっぱいあるなら全部やりゃいいしな」

「──っ!」

 

 そうだ、とアリシアは思った。

 諦める必要なんてない。

 父母の愛も、祖父の愛も、自分の恋もすべてやり遂げて見せればいいんだ、と。

 

 彼が適当に放った一言は、アリシアを強欲の海に沈めるきっかけになった。

 

「お前のやりたいこと。俺は応援するぜ? こんなことまで言ったんだ。責任取って見届けてやる」

「……決めたよ。わたしは父様もおじい様との仲直りも諦めないし、わたしのやりたいこともする。おばあさまから託された《剣聖の加護》も正しく振るってみせる」

「へっ、随分強欲なことで。俺もお前に負けるつもりは毛頭ないからな。俺を超えてみせると良いさ」

 

 そんな彼の言葉は、最後は震えていた。虚勢を張りすぎなのである。

 彼の様子に気が付かないアリシアはそこで初めて笑顔を見せた。

 

 ──剣聖は未だ恋を知らない。

 

 

──

剣聖恋歌第1幕より




正直初対面で何言ってんだコイツ、って傍から思われるだろうけど、ずっと悩み続けてきた苦しみに真正面から……しかも勝者が言うと刺さるんですよね、多分。でも、主人公くんはいきなりすぎるので加減を覚えてください。一歩間違えれば不審者です。

アリシアちゃんはまだ6歳なんでね。恋に憧れはあるけどそれがなんなのか知らないんで、主人公くんは恩人と憧れの人で止まってます。
成長したらどうなるんだろうな〜?
 
背景部分は想像なので、あまりに原作と違いすぎたら教えてください。
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