Legacy of Reverie   作:名無しの権兵衛

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???:つながり

 ……都市には、今日もあらぬ噂が流れている。

 

 曰く、契約を破れば全てを奪う魔法使いがいる。

 

 曰く、貧しい人々に希望を与える神父がいる。

 

 曰く、人々の死骸を集めて人形に作り替えるものがいる。

 

 曰く、刀狂いが夜な夜な辻斬りを行っている。

 

 曰く、昨日死んだはずの人間が、翌日も何故か歩いている。

 

 曰く、路地裏で奇妙な生体兵器を作ろうとしているイカれた研究者がいる。

 

 そして……

 

 

 

 

 

 

「よし、今回も何とかなったな」

 

 そう独り言を語るのは、黒いスーツを着た特に特徴のない中年男性だ。どこか飄々としていて、捉えどころのない彼の名はローラン。気が付けばこの地にいて、手足を切り取られた上に無理やり治され強制労働させられる可哀そうな男である。

 

「それにしても、なんなんだここは?」

 

 あたりから光のあふれる奇妙な廊下を歩きながら、ローランはそうこぼす。

 

 ここは旧L社跡地の中心、謎の霧に包まれ誰も外部から侵入できない不思議な建造物の中。都市の人々はまだ、ここが『図書館』と呼ばれる場所であることをまだ知らない。

 

 『図書館』、それは欲する知識を有する本を巡り争う狂気の場。勝者は目的の本を得て、敗者は新たな本として図書館に取り込まれる。そのような恐ろしい場であっても、招待客は強制的に図書館に招かれるわけではない。招待者の同意とサインがなければ内部に招かれることはなく、それ以外の方法で内部に侵入することは不可能である。

 

 そのためこの悲劇の絶えない都市においては有数の公平な場であると言えるだろう。 ……その本性さえ知らなければ。

 

「ようやく来たわね」

 

「ようアンジェラ」

 

 廊下を進み大きな部屋までたどり着くと、そこには青白い司書が待っていた。

 

 空色の短髪に黒い司書服、そしてその肌はまるで血が通っていないようなほどに青白かった。

 

 アンジェラ、旧L社で作られた超高性能AIのロボットであり、旧L社崩壊の原因。そして都市の禁忌に触れた存在でもある。

 

「最初に色々吐き捨ててた割にはうまくやって入れているわね」

 

「……初対面の挨拶があんなに最悪だったのに、どんな返事を期待しているんだ?」

 

「俺もびっくりしたよ。知らない場所にどさって落ちたら、初対面の人がいきなり手足を切ってきたし……」

 

 当時のことを思い出してか少し顔色の悪くなるローラン。なお、目の前の元凶はまったく顔色を変えた様子もなかった。

 

 そんな様子を気にもせず、ローランは少し表情を変えて続きを口にする。

 

「最初は途方に暮れてたけど、何回かやってみたら大体どうやってゲストを接待するのかもわかってきたし」

 

「まったく不満がないってわけじゃないけど……」

 

「不満?」

 

 ローランの口から滑った言葉に、アンジェラが反応する。どうやら自分の行動に不満が出るとは思っていなかったらしい。

 

「またまた、そうやってにらんできて。言葉も出ないな……」

 

「……いいから話して」

 

 アンジェラに促され、ローランはなるべくアンジェラを刺激しないように気をつけながら返答をする。

 

 曰く、今はまだ相手が弱いから一人でも何とかなっているが、今後強い組織やフィクサー事務所が出てくればそうもいかない。それに相手をただ殺すのではなく感情も引き出さなければならないとなるとさすがに一人では厳しくなってくるので何とかしてほしいとのことだ。

 

「……」

 

「……なんだ、その微妙な表情は?」

 

 その言葉を聞いて、アンジェラは少し眉間にしわを寄せて黙り込んでしまった。

 

 その様子をローランは訝しんでいたが、やがてアンジェラはその口を開いた。

 

「方法が全くないわけでもないわ、それが最善の方法かはわからないけど……」

 

「君も出てくれるのか?」

 

「いいえ、代わりに助けを借りられる存在がいるの」

 

 アンジェラはそういうとローランに背を向けて歩いていく。ローランもそのあとをついていくと、とある本棚の前で立ち止まった。

 

「その存在ってなんだ?」

 

 アンジェラは本棚から一冊手に取ると、小難しい説明を始めた。

 

 要約すると、『本の中にいる存在を倒せばその存在が力を貸してくれるし、ついでに一緒に中に入って眠っている司書を連れ出せば人員も補充できる』ということらしい。

 

「へぇ、それじゃあこの本のなかにもよくわからん奴が入っているってことか?」

 

「っ!? 待ちな……」

 

 ローランが何気なく本棚から一冊の本を手に取った瞬間、アンジェラが珍しく感情をあらわにした。ローランはその様子を見てすぐさま手を放そうとするも時すでに遅く、その本は独りでに開いてローランを取り込んでしまった。

 

 

 

 

 

「いてて……」

 

 本の中に取り込まれて地面に投げ出され尻もちをついたローランは、腰をさすりながら立ち上がって周囲を見回した。

 

「これが、アンジェラが言っていた空間か……」

 

 彼女の小難しい説明の中には、本の中の存在にとって居心地の良い空間ができていると言うものもあった。

 

 しかし内部は陰鬱としてどんよりとした曇り空が広がり、大地に草木はなく荒れ果て、周囲の民家と思わしきものたちはすべて風化し崩れ去り、原形も分からないほどであった。

 

「こりゃあ、中にいるやつはろくでもなさそうだな」

 

 周囲を見渡しながらそうつぶやくと、ローランは何かが落ちていることに気が付いた。

 

「あれだな」

 

 ローランは武器を構えて警戒する。それは、人の腕の形をした白い蝋の塊のようだった。救いを求めるように天に伸びる蝋の指先からは、青白い火が灯ってゆらゆらと揺れている。

 

 ……いや、違う。あれは腕の形をした蝋ではなく、人の腕を蝋にしたものだ。

 

 『栄光の手』、罪人の腕を切り落とし蝋燭に加工した呪具である。

 

「……うん?」

 

 まるでローランがそれを発見したことを認識したかのように指先の炎が激しく揺らめいたかと思うと突然灯火が消え、代わりに蝋全体が激しく揺れ始めたのだ。

 

「おいおい、嘘だろ……!?」

 

 そして、それは根元から勢いよく青白い炎を噴き出すと、ローランめがけて一直線に飛んできたのであった……

 




『魂の種』

体力:30

混乱抵抗値:10

速度:1~4

耐性:体力 混乱抵抗値

斬撃:耐性 耐性

貫通:普通 弱点

打撃:弱点 脆弱

◇パッシブスキル

・火種
 火傷で体力にダメージを与える代わりに、混乱抵抗値にダメージを与える。

・不始末
 火傷を持つ相手とのマッチ時に威力+1、持たない相手とのマッチ時に-1
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