「初めまして、ジョシュアだ。同じ総記の司書として頑張ろうぜ、ローラン」
そういって手を差し出す男を見て、ローランは訝しげな表情を浮かべる。
少し濃い青髪の癖っ毛、どこか人懐こさそうに見える人相、背丈は標準的に見えるが、体は少し引き締まって見える。年齢は…… 少なくとも、ローランよりは確実に若いだろう。
そんな人あたりがよさそうに見える彼だが、ローランにはどうしても胡散臭く見える、というかトラブルの気配がしていまいち信用できないでいる。
「……あぁ、よろしくな」
この男の手を握っていいものかとしばらく逡巡したのち、ローランは結局その手を握ることにした。
その手はすこしひんやりしていて、どこか生気を感じなかった。
「それにしても、ここはどういうところなんだ? 図書館って言ったっけ?」
「いや、そんなこと俺が知るわけがないだろ? ぶっちゃけ体を人質にされて協力しているようなものだからな」
ローランの言葉は、ほとんど本心だった。そもそもローランとこの図書館の主、アンジェラの出会いは非常にすさまじいものであった。
ただハムハムパンパンに行きたかっただけのローランは気が付いたら図書館にいて、それを侵入者と勘違いしたアンジェラが四肢を切り落とし、勘違いに気が付いた彼女が彼の身体を
当時のことを思い出して遠い目をしているローランを見て、ジョシュアは苦笑いして手を離した。
その反応を見て、彼には何か思い当たる節があったのかもしれない。
「そういえば、あんたは元々ロボトミー社で働いていた職員、ってことでいいんだよな?」
「あぁ、ロボトミー本社で最期まで働いていたんだ。施設の中じゃ最古参、もちろん会社の終わりも見届けたぞ」
「へぇ、それじゃあ腕っぷしにも期待していいんだな?」
「……」
その問いに対してジョシュアは目を逸らした。かつてロボトミー本社でブイブイ言わせていたジョシュアであったが、現状はほとんど一般人であった。というのも、ロボトミー本社の中では自らの精神力で体を強化する特殊な身体施術を行っていたおかげで数々の幻想体たちと戦ってこれた。
しかし本の中で眠っている職員は記録部門にて記録されていた状態の肉体…… つまりは、ロボトミーコーポレーションに入社した当時の身体と違いはないのだ。
たとえ精神は当時から引き継がれていても、肉体は別。それは今のジョシュアにとっても同じようなものであった。
「えっ、何その反応? もしかしてその雰囲気で事務方だったのか?」
「あぁいや、そういうわけじゃないんだが…… どうやら肉体が弱体化してるみたいでさ」
「あぁ、もしかして体を作り替えられて強化施術とか全部ぱぁになった感じか? 確かアンジェラが肉体をうんたらかんたらとか、そんな話をしていたような……」
「たぶんそんな感じだと思う、よくわからないから確信はないけど」
そういって笑うジョシュアを見て、ローランは目を細める。もしかしたら彼なら自分の知りたいことについて何か知っているかもしれない。そうかすかな期待を込めて、質問を口にする。
「そういえばジョシュア、あのアンジェラと何かあったのか? あの様子からしてただならぬ関係だったように感じるんだか……」
その質問に、ジョシュアは思わず苦笑する。彼女との関係は複雑で、どのように伝えたらいいのか、どこまで話したらいいのかもよくわかっていなかったからだ。
だからジョシュアは、こう簡潔に答えるしかなかった。
「俺は、アンジェラと友達になりそこなったんだよ」
肉体の下り、どっかで聞いたような気がするけど、もし公式で言ってなかったら独自解釈ってことでお願いします