「お母さん、大丈夫?」
「あぁ、お母さんは大丈夫。ちょっと休んだらすぐ元気になるから、お前は気にしなくても大丈夫さ」
そういってお母さんは、ボクの頭を優しく撫でた。でもその手は骨みたいにガリガリで、昔みたいに柔らかさと温かさがなかった。
ボクのお母さんは、今病気だ。うちは貧乏でお父さんもいないから、お金が無くて何とかしようと無理して病気になっちゃった。
だから今度はボクが頑張って、お母さんを助けなきゃ!
「……でも、どうしたらいいのかな?」
お金を集めるって言っても、まだ子どもの僕に何ができるんだろうか?
お母さんが寝ちゃったので、そんなことを考えながら家の外に出る。本当は一人で家の外に出てはいけませんって言われてたけど、このままだとお母さんが大変なことになっちゃうし、仕方ないよね?
「……誰もいないよね?」
家を出る前に周囲を確認する。今の時間なら大人が口すっぱく言う掃除屋もいないはずだし、最近はぶうちゃんちもここらへんで活動していないって言うし…… 外に出るなら、今しかない!
「よし、行ってきま~す」
寝ているお母さんを起こさないように、静かにドアを開けて外に出る。
家の外は、いつも通り薄暗くて、人通りが少ない。その代わりに血と腐った肉の混ざった臭い、それと変な香辛料の匂いがじめっとした空気と一緒に流れてくる。
昔は近所にいたお友達も、すでにみんな消えてしまった。大体はぶうちゃんちか掃除屋に連れていかれるけど、この前仲のよかった女の子が近所の肉屋に並んでいたのを見た時は、家に帰ってわんわん泣いたなぁ……
「……あれ?」
道を歩いていると、何かが曲がり角を曲がったような気がした。人よりも明らかに小さくて白いそれは、絵本で見たウサギにそっくりだったけど、何故か服を着ているように見えた。
「もしかしたら、高く売れるかも!」
この先は袋小路だし、もしかしたら捕まえられるかも! そしたらお母さんが無理しなくても大丈夫! そんなことを考えながらさっきの曲がり角を曲がると、そこには何もいなかった。
「……あれぇ? さっきの見間違えだったのかな?」
あたりを探してみるけど、さっきのウサギっぽい何かはどこにも見当たらず、隠れられそうな場所もない。
「……こんなところに扉なんてあったっけ?」
そこでふと正面を見ると、見かけたことのない真新しい白い扉があることに気が付いた。近づいてその扉を詳しく観察してみると、正面からだと壁にくっついているように見えていたけど壁から少し離れていた。
「なんなんだろう、これ?」
なぜこんなものがこんなところにあるのだろうか? そんなことを考えながら扉のドアノブに触れると、ボクの視界は真っ白になって思わず目をつぶってしまった。
「ようこそ、動物園へ!」
「……えっ?」
そして再び目を開けた時には、綺麗なお姉さんが笑顔でそんなことを言っていたのでした。