「つまり、ここならお金を稼げるんですか!?」
「えぇっと、そういうことになるんだけど……」
お姉さんの話を聞いて、ここならいっぱいお金を稼げるかもしれないってことを知ってしまった。
これならお母さんに楽をさせてあげられる!
その事実にそわそわしていると、お姉さんは困ったような顔をして口を開いた。
「あのね? 確かにお金は稼げるかもしれないけど…… 幻想体っていうこわ~い化け物のお世話をしなきゃいけなくて、もしかしたらその時に食べられちゃうかもしれないんだよ?」
「でも僕、いつも食べられそうになってるから怖くないよ!」
「えぇ…… こんな小さい子がそんなこと言うなんて、都市って本当に終わってるんじゃ……?」
お姉さんはぶつぶつと何かを言っているけど、どうかしたのかな?
「まぁまぁ、いいじゃありませんか」
「園長!?」
しばらくしたら、顔が変な人がやってきました。
顔の周りが夜空みたいに真っ黒なもやがかかっていて、その中に綺麗な宝石みたいな光がいっぱい集まっている。そんな吸い込まれそうな顔? を見つめていると、園長と呼ばれた人はかがんでその顔をボクの顔に近づけた。
不思議なことに、この時僕はこの人と目が合った気がしたんだ。
「良いかい少年、この場所はもしかしたら死ぬよりもひどい目に遭うかもしれないけど、うまくいけばきっとお金を稼げるようになる。そんな場所だ、それでも行くのかい?」
優しく語り掛けてくれる彼の言葉をよく聞いて、頷く。
だって、もしかしたらこれでお母さんの病気を治せるかもしれないんだ。今までボクのために頑張って来てくれたんだから、今度はボクがお母さんのために頑張らないと!!
「そうか、それならさっきお姉さんが注意してくれたことをしっかりと守って、頑張るんだよ」
「うん!」
さっき、お姉さんが教えてくれたこと。幻想体というオバケが出たらどうすればいいか、お金になるえんけふぁりんの手に入れ方、情報の大切さ……
どうなるかはわからないけど、このまま弱っていくお母さんを見るよりはずっといい!
「それじゃあ、行ってきます!」
ボクを心配そうな目で見ながら手を振ってくれる二人に挨拶して、ボクは『動物園』に一歩踏み出した。
「うわぁ……」
動物園の中を歩いてしばらくすると、植物が生い茂った奇麗な場所についた。さっきまでいたお出迎えエリアと違ってどことなく空気がひんやりしていて、どこか気持ちの良い風が吹いているように見えた。
「ここのどこかに、幻想体がいるんだよね?」
お姉さんの話では、お部屋の中にいるときと、外に出ちゃっている時があって、外に出ているのは大体危ない奴らしい。だから外で出会っちゃったら、逃げるか隠れるかしてねって言ってた。
「……あれ、何か音が聞こえる? ……うわぁ」
音のする方へ行ってみると、誰かがオバケと戦っていた。たぶんあれが幻想体なんだよね?
一人は鋼のような銀色の髪をしたお姉さん、もう一人は真っ白な髪と髭をしたおじいさん。二人とも刀って言う武器をもっていた。
この二人の特徴を聞いて、ボクは彼らが誰であるかたぶんわかった。
きっとあの人たちは、『刀狂い』っていう恐ろしい人たちだ。刀を極めるためならどんな相手とでも戦う恐ろしい人たち。お母さんにその人たちを見かけたら全力で逃げるように教えられてた。見つかったら試し切りされちゃうんだって。
「逃げなきゃっ」
お母さんの言いつけ通り、急いで逃げる。最後におじいさんの方と目が合った気がしたけど、気のせいだよね?
「……ここまで来たら大丈夫だよね?」
しばらく走って逃げたけど、あの人たちが追いかけてくる様子はなかった。たぶん大丈夫ってことだよね?
「それにしても、どうやってえんけふぁりんを見つけたらいいんだろう?」
「もし、そこのお方」
これからどうしようかと頭をひねっていると、どこからかしわがれた声が聞こえてきた。
不思議に思って周囲を見渡すけど、周りに人がいるようには見えない。
「そこではありません、下です、下!」
声の言う通り下を向いてみると、奇妙な鳥さんがいた。
たまに見る空を飛ぶ渡り鳥のように見えるけれど、その体はハート形の金属と溶けて混ざり合っているように見える。
その鳥さんの周りからは生き物の匂いはほとんど感じられず、金属と埃の匂いが混じった、どこか寂し気な匂いを漂わせていた。
「君は、誰?」
「私は、かつては『F-02-i49』と呼ばれていました。今では『愚かな施し』と……」
言葉を話す不思議な鳥さんは、悲しそうな顔をしながらそう喋っていた。
「それって名前なの? そんな感じしないけど……」
「えぇまぁ、そう呼ばれているだけなのでなんと呼んでいただいてもいいですけど」
「じゃあ鳥さん! ぼく、えんけふぁりんを探しているんだけど、何か知らない?」
もしかしたらこの鳥さんなら幻想体という存在についても知っているかもしれない。そう思って鳥さんに聞いてみると、鳥さんは小さく頷いてこっちを見た。
「あぁ、そう呼ばれているものなら私の家の近くで見た気がします。もしよければ案内しますので私を運んではくれませんか?」
「本当に? ありがとう!」
鳥さんを両手で抱えて持ち上げる。小ささのわりに意外と重くて、ちょっとびっくりしちゃった。
「こちらこそありがとうございます! お詫びに、私の家についたらお宝をお渡ししますね!」
「本当に? 楽しみだなぁ~」
そういっておしゃべりしながら鳥さんの家に向かう。こうして僕は不思議なこの『動物園』という場所で、新しいお友達が出来たのでした。