ふふっ、この都市にも希望の光が差し込んでいると思うと、思わず笑みがこぼれてしまいますね
種は次々と芽吹く
貴女もその煩わしい口を閉じて静かに待てばよいものを……
動物園:都市怪談について
「都市怪談……?」
なんだか、耳馴染みのない単語が出てきたんですけど、いったいどういうことなんでしょうか?
「あの、都市怪談って何ですか?」
「えぇ、詳しく説明したいところですが、私よりも詳しい人がいるのでそちらに任せるとしましょう」
そういうと園長さんは私に背を向けてどこかへ歩いていこうとする。
「続きは閉園後にしましょうか、全員で情報を共有しておきたいのでね」
「さて、それでは現状についてお話を始めましょうか」
『動物園』の閉園時間が過ぎ、この場所には私たち従業員…… ってことでいいのかな? まぁ、そのメンバーたちしかいなくなっていた。
日々ピアノの演奏でエントランスに花を添えている、少し焦燥したようなアントニオさん。毎日エンケファリンの買取と売買を頑張っている、日々ちょっとずつお腹の大きくなっていくクロさん。現状殆どの人となりがわからず、情報もほとんどわからない銀河のような頭をした人? 園長。そしてまだほとんどこの都市に馴染めていない私。
そんな4人でエントランスのソファに腰かけ、紅茶を飲みながらテーブルを囲っている。
「まずはこの『動物園』についてですが、ついに新しいエリアの開放となりそうです」
園長さんはそういうと園内の見取り図を取り出した。
エントランスから入ったところにお出迎えエリア、向かって右に森林エリア、そして新たに向かって左に荒野エリアが解放されたそうだ。
「ここからはもう少し危険な幻想体が出現することでしょう。正直、現状は命の危険が少なめのものばかりでしたが、ここからはそうもいきません」
えぇ…… 今までも十分危険な奴ばっかりに感じるんですけど、あれでまだ安全なの?
「先ほど言った通り、この『動物園』にやってきた人は、自分に合った幻想体に惹かれやすくなります。そして重要な話になりますが、現状解放されている幻想体の中で相性が良い幻想体が存在しない人物はこの動物園に導かれないようになっているのです」
「おそらくですが、強大な力を持つ人物ほど危険度の高い幻想体の方が相性が良くなることでしょう。そもそも対面するには強い心を持たなければならない幻想体も高ランクには多い」
「つまりは、これからより広い範囲で人々がやってくるということ。それはより幅広い人種がやってくるということであり、今まで以上に強い人物がやってくるということでもあります」
「なのでサクラさんにはこれまで以上に強くなってもらわなくてはなりません」
「ふぇっ!?」
ほうほうと話を聞いていた私は、いきなり話題を振られて思わず肩をびくりと揺らしてしまう。
えっ、確かに私も案内役をやってますけど…… そういう強い人たちは園長さんが対応してくれても良くないですか!?
そんな考えが顔に出ていたのか、園長さんが呆れた様な雰囲気を醸しながら答える。
「あのですね、私が常に対応できるわけでもなければ、いつでもクロが助けられるわけでもありません。『動物園』が呼び寄せる人間は人間性を考慮しているわけもないので、貴女を与しやすいと思えば襲うなり人質に取るなりする人間が現れてもおかしくありません」
た、確かにそうだけど…… というか、そういう相手が来る可能性が高いのってやっぱりこの都市って危険なんじゃ……
「というわけでサクラさん、さっそく新しいエリアに言ってみてください」
「……えっ?」
そんな、いきなりですか!?