「うぅ、いきなりなんて鬼畜すぎますよぉ……」
「まぁそういうな、今回も私がついていってやるから」
そうアントニオさんに励まされながら、お出迎えエリアを進んでいく。
私たちが今向かっているのは荒野エリア、この『動物園』に新しく追加されたエリアだ。
これから私に力が必要だと判断した園長さんによって、新しいエリアの探索と特訓のために向かうように言われていくことになったのだ。
「それにしても、わざわざ私が行かなくても園長さんが行けばいいんじゃないですか? そもそも、園長さんって新しい場所ががどんな場所かわからないんでしょうか? 一応ここを作ったのって園長さんですよね?」
確か最初に言っていたけど、この『動物園』を作ったのか園長さんなはず。なら中にどんな幻想体がいるかとか、内部がどんな風になっているかくらいわかるはずなのに……
というか、サラっといわれてスルーしてたけど、新しいエリアができたってここは勝手に成長して広くなるってことなんでしょうか?
「あの男の考えていることは、私にもわからない。奴は秘密主義というわけではないが、聞かれた以外のことは離さないし、私もわざわざ藪をつつく気がなかったからな」
た、確かに…… 何か聞いて聞いちゃいけないような情報をサラっと言われるかもしれないと考えると嫌だなぁ……
でも気になるし、帰ったらさりげなく聞いてみようかな?
「……さて、そろそろ荒野エリアに着くぞ」
「……はい」
お出迎えエリアを森林エリアへ行く方と逆へと向かっていくと、そこには今までなかった扉が存在していた。
この扉の向こうが、荒野エリア。危険な幻想体がいるかもしれない、新しいエリア……
「それじゃあ、行こう」
「あぁ」
ドアノブに手をかけ、祈るように心を落ち着かせた後、思い切って開く。
扉の向こうからは、乾いた風が吹きつけてきた……
「……ここが、荒野エリア」
まず目に飛び込んできたのは、荒涼とした広い大地、そして燦々と照り付ける太陽と青い空。
周囲には大きな岩や背の低い草木が点々と存在しており、所々にサボテンが立派に育っている。
日本と違い湿気を感じさせない風が吹くと砂ぼこりが舞い、ざらついた大地の香りを運んできた。
「……えっ、えっ? ここ外ですか!? どうなってるの!?」
「落ち着けサクラ、よく見てみろ。おそらくここも屋内だ」
予想外の光景に軽くパニックになってしまった私をなだめるべく目線を合わせて声をかけてくれたアントニオさんは、空に向かって指をさしていた。
なんだろうかと彼が示した方向を凝視してみると、そこは空のはずなのに部屋の隅のようになっていることに気が付いた。
「あれ、っていうことはこれ映像か何か? それにしてはリアリティがすごいけど……」
「何らかの特異点で作られているのかもしれないが、断定はできない。それよりも、落ち着いたなら見て回ろうか」
「は、はい!」
アントニオさんについて荒野エリアを探索していく。
ここは前回の森林エリアと違って遮蔽物がないから、幻想体がいたらすぐに見つかってしまいそうだが、現状は見える範囲には居なさそうだ。
「それにしても、今までが閉塞的だった分、少し違和感がありますね」
「そうだな、それにしてもこれほど見通しが良ければ、幻想体を見かけても、幻想体に見つかってもおかしくはなさそうなんだが……」
「もしかしたら収容室にいるとか? って、ここのどこに収容室が…… あれ?」
周囲を見ていて違和感を感じ、違和感を感じる場所…… 特に岩のあたりを凝視してみて、気づく。
あの岩一つ一つがちょうど今まで作業してきた収容室より一回りくらい大きくて、それぞれの岩に扉のようなものが付いていることが。
「もしかしてあの岩が収容室になっているんですかね?」
「なに? ……確かに、違和感を感じるな。確かめに行ってみよう」
アントニオさんと一緒に岩の方に向かっていく。
近づいてみると、岩と同じ色でわかりにくかったがそこには確かに収容室の扉が存在していた。
そういうことなら、入るしかないよね? 元々、そのために来ているんだし。
「……それじゃあ、行ってきますね」
「あぁ、気を付けていってこい」
アントニオさんに背中を押され、扉に手をかける。
そして、どこか確信めいた予感を抱きながら扉を開く。
「……あら、遅かったじゃない」
外れてほしかったその予感は、結局当たってしまったのだけれど。