次回からは毎週金曜日に更新予定です、よろしくお願いします。
「そんなぁ、一緒に行ってくれないなんてぇ……」
私の名前は月宮 桜、ピッチピチの高校生♪
今私は、色々あって詳細は省くけど、とりあえず命がけで化け物と対峙することになりました。
一緒に来ていろいろと教えてくれたアントニオさんも収容室の中までついてきてくれると思ってたけど、どうやら他の入口から私の作業を見ているそうです。
なんでも、今から私が対峙する幻想体という怪物たちは、精神汚染を引き起こすものもいるそうで、今回はその可能性が高いとか。
なので外から私のことを観察して、ヤバそうなら無理やり連れだしてくれるとのこと。それで無理なら諦めろって、酷いよぉ……
「でも、頑張らないとね! 神様仏様~どうか私をお守りください~」
とりあえず扉の前で両手を合わせてお祈りをしてみる。
そして扉に手をかけて、思い切って開いてみた……
「あら? 初めまして、お嬢さん」
「……えっ、女の子?」
収容室の中にいたのは、とても白い、白い、真っ白な少女でした。
初雪のように真っ白できめ細やかな肌に、髪もまつげも、全てが透き通るように白い少女。
さらには身に纏うワンピースも、真っ白なものでした。
そんな幻想的な少女に思わず見とれてしまった私は、彼女の笑い声でようやく我に返りました。
「ふふっ、そんなに見つめられると照れてしまうわ」
「あっ、ごめんなさい! その、こんなところにあなたみたいな可愛い女の子がいるなんて思わなくって……」
「大丈夫よ、お外が怖いのは、私も知ってるから」
そうやって鈴を転がすような可愛い声で上品に笑う彼女は、先ほどまで聞いていた恐ろしい化け物には、まったく思えなかった。
というか、ちゃんとこんな風に会話できるような人? がいること自体に驚きだよ!?
いや、そもそもこの子って人? それとも幻想体ってやつ?
「えっと、失礼なことを聞くけど、貴女って……」
「言いたいことは分かるわ、私は人間よ。でも周りの人たちからは幻想体って呼ばれてたの、酷いでしょ?」
「えっ、えっ?」
「私が不死身なだけでこんな施設に入れられちゃったの! あっ、今はその施設はないみたいなんだけど……」
「えっ、不死身? でも、人間…… あれ?」
彼女の話をうまく呑み込むことができずに、困惑してしまう。
えっと、この子は人間だって言ってるけど、周りの人たちは幻想体だって言ってて…… でも、この子は不死身で、だけどそれ以外に力はなさそうで……?
「あら、ごめんなさい。困惑させるつもりはなかったの。たぶん貴女は私のことを幻想体って存在として扱った方がいいと思うわ」
「私としては、人間として扱ってほしいけど……」
そういって悲しそうに目を伏せる彼女が見ていられなくって、私は思わず口を開いた。
「だ、大丈夫! 私は貴女のこと、ちゃんと人間として扱うよ!」
「えっ、本当? でも、私は不死身の化け物なんだよ? それなのに……」
「たとえ不死身でも、貴女は貴女だよ! だから、そんな悲しいことを言わないで」
「……ありがとう、サクラちゃん」
悲しむ彼女を抱きしめると、体が震えていることに気が付く。
きっと、これまで辛い目にあってきたんだと思う。なら、私だけでも彼女に優しくしてあげないと……
「ごめんねサクラちゃん、いきなりこんなこと言っちゃって」
「ううん、大丈夫だよ? えっと……」
そういえば、この子の名前を聞いてなかった。
……あれ? そういえば私いつ名乗ったっけ?
「あっ、ごめんなさい。私まだ名乗ってなかったわね」
「ご、ごめんね。私も最初に聞いてなくて」
「いえ、いいのよ。どのみち私の名前は、ここに来た時に奪われてしまったのだから……」
そういってまた、悲しそうな顔をする彼女。
でも、次の瞬間には笑顔になって、何かを思いついたかのように手を合わせた。
「だから、良かったら私の名前を考えてくれないかしら? サクラちゃんが付けてくれた名前なら、きっと好きになれると思うの」
なるほど、そんなことがあったんだ……
前の名前でもいいのにって思うけど、きっとつらいこととかも思い出しちゃうんだろうなぁ。
なら、私がしっかりと名前を考えてあげないと!
「うーん、どんな名前がいいかなぁ……?」
とはいえ、私が今までペットにつけてきた名前は、大体毛並みの色だった。
そうなると、この子はシロだけど、さすがに安直すぎるしなぁ……
「あっ、マシロ、とかどうかな?」
真っ白だから、マシロ。うん、いい感じ…… はい、どう考えても安直ですよね?
でも、彼女は気に入ってくれたみたいで、とても喜んでくれた。
「マシロ…… それなら被ってないし、大丈夫か…… ありがとう、サクラちゃん! この名前、大切にするね!」
「えっと、うん! ありがとう!」
とりあえずよし!
……あれ、そういえば作業ってどうすればいいの!?
「あ、あの…… そういえば私って作業をしに来たんですけど……」
「あら、それなら大丈夫よ? だってこんなにお話してくれたじゃない」
「えっ、それでいいの?」
「他は分からないけど、私はこれでいいの」
「よかった……」
とりあえず、マシロちゃんとはこんな感じでよさそうだ。
初めてだからどうなるかと思ったけど、これなら今後もやっていけそう!
「それじゃあ、私そろそろ行くね」
「えっ、もう行ってしまうの?」
「あっ、大丈夫だよ! またちゃんと来るから!」
「本当に?」
「なら、約束だからね?」
「……ふぅ、何とか終わりました」
マシロちゃんとのおしゃべりという名の作業を終えて、収容室から退出する。
とりあえずこんな風な感じで大丈夫かと思ったけれども、たぶんアントニオさんの突入もなかったし、大丈夫だったんだよね?
そんなことを考えながら収容室の扉を出ると、いきなり何者かに捕まりました。
「ふぇ!? ちょっ、助け……」
「よかった! 中で何があったのかと、心配していたんだ……!!」
そういって私を捕まえたのは、ううん抱きしめているのはアントニオさんでした。
えっと、なんだかよく状況が呑み込めていないのですが……
「観察室から覗いても収容室の中には幻想体どころか君すらいなかったし! 慌てて収容室の扉を開こうとしてもロックされてて中に入れなかったし! どれだけ外から君を呼び掛けても、返事もなかったし……!!」
「えっと、その……」
「私はもう、目の前で誰かに死んでほしくないんだ……」
そういって力いっぱい私を抱きしめるアントニオさんからは、とてつもない悲壮感のようなものを感じました。
だから私も、彼を抱き返そうとして…… いや、ギブギブギブッ!! 力強すぎ! 見た目ひょろい癖にお相撲さんかよ!? ぐえっ、息できない……
「あっ、すまない! ……大丈夫か?」
「けほっ、こほっ…… はい、大丈夫です。さっきまでは」
「あぁ、本当にすまない……」
とりあえず息を整えてから再び事の経緯をお互いにすり合わせる。
つまりは、私が話していた少女であるマシロちゃんは、かなりヤバいかもしれないとのこと。以上!
「サクラ、もうその幻想体とは会わないほうがいい」
「……わかりました」
彼女との約束、守れなくなっちゃったなぁ。
でも、アントニオさんに心配かけられないし……
そんな後ろ髪を引かれる気分で、私の初めての動物園デビューは幕を閉じるのでした。
【サクラ Is Alived:O-01-i01と楽しくおしゃべりをする(愛着作業をする)】
O-01-i01『真っ白な少女』
危険度クラス:ZAYIN
全て真っ白な体に、真っ白なワンピースを着た少女。O-01-i01『安らぎの揺り籠』の変異体。
彼女がいつの間にここに来たのか、誰も分かっていない。『動物園』の主である、園長であっても……
しかし、彼女自身に人に危害を与える力は残っていない。
ただ、誘蛾灯の如く呼び寄せることしかできないのだ……