Legacy of Reverie   作:名無しの権兵衛

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あらぬ噂
とある路地裏:始まり


「うわあぁぁぁぁ!!!!」

 

 絶叫を上げながら、体を起こす。その時に目の前に被せられていた布を取り払った。

 

「はぁっ、はぁっ……!! ゆ、夢……?」

 

 周囲を見渡し、自分の身体を確かめる。

 

 ……うん、何処も悪くなってないし、首も大丈夫。締め付けられた様子もないし、息もちゃんとできている。

 

「……よ、良かったぁ」

 

 自身の安全を確認したら、全身が脱力してしばらく動けなくなってしまう。

 

 どうやら今回も、私は生きているみたいだ。

 

「それにしても、今回は『動物園』かぁ……」

 

 はっきりとした夢の内容を思い出し、今回も危機を事前に脱する。

 

 これは私、臨模(りんぼ) (ひかり)の特別な力、予知夢だ。

 

 とはいっても、この力は生まれ持ったものじゃない。あの日、崩海という恐ろしき場所で生き残るために目覚めた、と思っている力。

 

 自分の死ぬ一日を夢として見る、わりかし使い勝手が悪いというか、普通に死の瞬間の生々しさが残るので有難迷惑な能力だけど、この力のおかげでたぶん今日まで生きてこれたんだと思う。

 

 まぁ、この予知夢ってそこまで正確じゃないし、夢でいった場所じゃなくてその周辺に私を殺した存在がいるとか結構アバウトなものだったりするけど……

 

「とりあえず、今日はハムハムパンパンいけないなぁ……」

 

 せっかくお金がたまっても、贅沢もできない。

 

 何なら夢でお金がたまってただけで現実ではそんなことなかった、みたいなこともよく起こるのがこの予知夢の信用できないところでもある。

 

 そこで試しに隠し金庫(という名のただの箱)の中を確認すると、やっぱり組織に献上するお金しかなかった。

 

「はぁ、どっちみちハムハムパンパンにはいけないかぁ」

 

 それならそれで諦めがつくし、掃除屋に会ったり『動物園』に行かなくてもいいのかもしれないけど……

 

「いや、もしかしたら『動物園』には行った方がいいのかも……」

 

 そうだ、あの時園長さんが言ってたことが本当なら、あそこにいた幻想体は余計なことをしなければ大丈夫なんだ。

 

 つまり夢の私がしたみたいにあの幻想体を助けるんじゃなくて、見捨てたら安全にエンケファリン? を貰えるってこと?

 

 なら……

 

「行ってみよう、『動物園』に……!!」

 

 何事にもリスクはつきもの、この限界寸前の生活を抜け出すには『動物園』に行く。

 

 たとえ危険な場所であっても、予知夢で場所や時間がずれても相手の容姿や特性が違ったことはない。ならこのチャンスは掴むべきだ。

 

「えぇっと、確かあの時『動物園』に行った方法は……」

 

 そして私は、『動物園』に行く準備を始めるのでした……

 

 

 

 

 

「よ、ようこそ! 『動物園』へ!」

 

「……えっ?」

 

 何とかして『動物園』にたどり着いた私は、出迎えてくれた人物が園長ではなく少女であることに驚きを隠せなかった。

 

 ……というか、もしかしてこの服装って!?

 

「あの、もしかして貴女も日本から来たんですか?」

 

「えっ? もしかして貴女もですか!?」

 

 まさかの同郷との再会に、思わず興奮してしまう。こうして同郷の人間と出会えるのも、崩海にいたころぶりだ。

 

「そっか、私以外にも生き残りがいたんだ……」

 

「うんうん…… あれ、生き残り?」

 

 思わず手を握って涙がにじむ、まさか私以外にも崩海の生き残りがいたなんて……

 

「あっ、ごめんなさい! 私の名前は、臨模(りんぼ) (ひかり)! ぜひヒカリって呼んでね!」

 

「はっ、はい…… 私の名前は月宮(つきみや) (さくら)です。よろしくお願いします……」

 

「今まで大変だったよね? 私も大変だったからわかるよ! あっ、もしかして貴女も生活に困ってこの動物園に?」

 

「あっ、いえ、私はここでお手伝いすることになって……」

 

「そっか、そんな手もあるんだね…… あっ、もしかしてお仕事の邪魔しちゃったかな!?」

 

「だ、大丈夫ですよ? まだそんなに人来ませんし、ちょっと色々お話聞いてみたいし…… 怖いけど」

 

「?」

 

 なんだろう、ちょっと反応が…… あっ!? そっか、私の距離感が近すぎちゃったのか!! 久しぶりの同郷の人にちょっと興奮しちゃったみたい、反省しないと……

 

「ごめんね! いきなりなれなれしくて、こうして人と喋れるの久しぶりでつい…… それじゃあさっそく『動物園』に案内してくれる?」

 

「えっ、その…… 説明とかはいりますか?」

 

「うん! せっかくだからお願い!」

 

 いくら予知夢で見たからと言って、情報のすり合わせくらいはしておかないと……

 

 そう思って話を聞いた私だけど、おおむね話の内容は夢で見たものと同じだった。

 

「……というわけなんですけど、大丈夫?」

 

「うん、ありがとう! それじゃあ私、行ってくるね」

 

「そ、その! 無事に帰ってきてくださいね!」

 

「大丈夫、ちゃんと帰ってくるよ」

 

 そういって入口に向かっていく、地獄の入口に、夢の私を殺した場所に……

 

 

 

 

 

【お出迎えエリア】

 

 

 

 

 

「……よし、やっぱり夢の通りだ」

 

 動物園の中を歩きながら、夢の通りの道を歩いていく。

 

 きっと夢の通りに歩けば、あの幻想体がいるはず……

 

「大丈夫、やらないと、やらないと……」

 

 さっきは同郷の女の子がいたから、興奮と見栄があった。でも、こうして一人になれば、心にあるのは恐怖と、不安と、期待と、願い……

 

 なぜ危険だとわかっているのに立ち向かうのか。

 

 それはリスクがあってもそれを回避する方法を知ったから、というのもある。

 

 でも一番は、何故かわからないけど、夢の自分を乗り越えないと、私は前に進めないと思ってしまう。

 

「だから、乗り越えないと……」

 

 私の目の前には、夢で私を殺した幻想体がいる部屋の扉がある。そこからはもちろん、誰かの悲鳴を聞こえてくる。

 

 これは幻想体の声なんだろうけど、私には夢の私の声でもあるように聞こえた。

 

「それじゃあ、行くよ」

 

 思い切って収容室の扉を開く。

 

 

 

 

 

「あぁあぁぁぁぁ!!!!」

 

 私の目の前で天井から吊るされているのは、確かに夢で見た幻想体でした。

 

 夢の私は同情から彼を縄から救ったけど、私は知っている。

 

 同情するなら、逆を行え、と。

 

「今すぐ、楽にしてあげますからね」

 

 そういって私は、思い切って彼の身体に抱き着いて、下に力を入れる。

 

「ぎゃあぁぁぁあぁ!!!!」

 

「大丈夫、貴方のしたいことは分かってますから!」

 

 正直恐れはあるし、罪悪感もある、抵抗感も拒否感もある。

 

 でも、これが不死身の存在である彼に対する正解である。そう自分に言い聞かせながら、思いっきり引っ張っていく。

 

「はぁ、はぁ、もうだめ……」

 

 どれほど時間がたっただろうか、結局私の力では、彼を殺してあげることはできなかった。

 

 肩で息をしながら、両手を膝に置く。

 

「ごめんなさい、私じゃダメ見たい……」

 

 彼に申し訳なさを覚えながら、収容室から退出する。

 

「あり…… が、と……」

 

 失意に飲まれながら扉から出る前に、彼から何か言われた気がした……

 

 

 

 

 

【ヒカリ Is Alived:T-01-54を殺そうとする(本能作業をする)】

 

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