闇の魔法使いの卵   作:黒歴史量産機

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今回はちょっと短めです。
前回サブタイトルつけ忘れていたので修正しました。


10 軋轢

「スポンジファイ!」

 

 即座にバーティが階段に呪文をかける。カパルディが衝突する直前に階段はまるでスポンジのように柔らかくなり、いくらか落下の衝撃を緩和した。

 カパルディの被害は最小限に防げたが、そのために背を向けたバーティをグリフィンドール生は見逃さなかった。バーティめがけ、二発目の呪文が炸裂する。

 

「させっか!」

 

 なんとか手を伸ばして教科書で呪文を受け止めるが、表紙と半分以上を黒焦げにされた。もう次を受け止める強度は残っていないだろう。すでに相手の内二人は杖を振りかぶっている。まずい。

 

「フリペンド!」

 

 グリフィンドール生が呪文を唱える前に、バーティの呪文が一人を吹き飛ばす。残った四人は驚いて吹き飛んだ生徒の方を振り返った。その隙に俺は教科書を投げ出し、ローブから杖を抜き取り、杖を振りかぶっていたもう一人にバーティと同じ呪文をかける。

 

「カパルディを頼む!」

 

 眼の前に生徒がいるが、後ろで倒れたカパルディも心配だ。分厚い教科書がボロボロになったのだから、あいつの食らったダメージも少なくはないだろう。今まで動きを見せなかった無口な少年に頼むと、小さく頷いて階段を降りていった。

 

これで現在の形勢は2対3。若干こちらが不利だが、俺とバーティが使った呪文は相手を後ろに吹き飛ばすだけのものなので、もう少しで呪文を食らった二人も復帰してくるはずだ。対してこちらのカパルディは階段を転げ落ちているし、無口な少年はその救護をしている。増援の見込みはない。

 向こうもそれを理解しているみたいで、リーダー格の背の高い男子生徒は口に笑みを浮かべている。だが――

 

 ――こちらにはバーテミウス・クラウチ・ジュニアがいる。

 

 原作でバーテミウスは闇祓いの中でも古参のアラスター・ムーディを倒し、ホグワーツのO.W.L.試験で、すべての科目で最も高いOの評価を得ている秀才だ。まだ幼少期だとはいえ、先程のようにその実力の片鱗を見せてくれるはずだ。

 

「ヴァーミリオス!」

 

 グリフィンドールのリーダー格の生徒が再び呪文を放つ。狙いはバーティだ。さっきカパルディを助けたときと反撃したときの早打ちの技量からして、一番厄介だと判断したのだろう。観察眼が鋭い。

 バーティは体を大きく仰け反らせて呪文を避けるが、体制を整える必要がある。その隙を狙ってグリフィンドール生の一人がバーティの足下をめがけて呪文を放つ。

 

「プロテゴ!」

 

 すかさず俺が防ぐ。バーティ、グリフィンドール生共に驚いた表情を見せるがまぁ無理もない。プロテゴは成人の魔法使いでも使えない奴が一定数いるくらいの難易度の呪文だ。

 俺がこの呪文を使えるのは、幼少期に親に教えられた闇の魔術を練習する代わりに、隠れて密かにこの呪文の練習をしていたからである。そのせいで教えてもらった闇の魔術は知識としてはあるもののほとんど使い物にならない。バレたら殺される。 

 しばらく怯んだグリフィンドール生とは違い、バーティはすぐに呪文を放った。一人を吹き飛ばすことに成功するも、先程呪文を当てた二人が体制を整えつつある。失神呪文が使えない俺らにとって、この状況はかなり危ない。

 

 向こうの二人が同時に呪文を放つ。俺が防御し、バーティが反撃する。

 この戦法でなんとかしばらく時間を稼いだものの、決定打のないこちらは徐々に押されていった。あと一歩でも下がれば階段から落ちてしまう。

 

「先生! こっちです!」

 

 ふと、グリフィンドール生たちの向こう側から先生を呼ぶ声が聞こえた。俺達はその声を聞き、戦闘を一旦中止した。

 廊下の角から、スリザリンの服を着た女子生徒が顔を出した。確か同学年だったはずだ。その後に続いて、エメラルド色のローブを着た魔女――グリフィンドールの寮監、ミネルバ・マクゴナガル教授が鬼の形相で走ってきた。

 

「あなた達! 夜中に廊下で喧嘩など、何をしているのですか! 全員から10点ずつ減点!」

 

 マクゴナガル教授は俺たち7人から減点すると、グリフィンドール生たちに事情を聞き始めた。俺達は喧嘩を売られた側なんだから、点数を引かれるのはおかしくないか?

 

「一体、何があったのですか? 説明しなさいブリッグズ」

 

 ブリッグズと呼ばれたリーダー格の生徒は慌てて、何度も噛みながら言い訳のような説明を始めた。

 

「カ、カパルディが悪いんです。あいつ、普段は寝てるくせにっ、今夜だけやけに目立ってた! 絶対、なにかしたんですよ!」

「お前、得意教科って言葉を知らないのかよ」

「黙れスリザリン!」

 

 バーティの野次に、ブリッグズは激昂した。おそらく、グリフィンドール生である彼からすれば、我々スリザリン生は皆『悪』で、俺達が誰かから称賛されるようなことがあればそれはなにかの間違いだ、という認識なのだろう。

 

「カパルディですか? ここにはクラウチとセルウィンしかいませんが?」

 

 マクゴナガル教授は怪訝そうに周りを見渡し、階段のあたりで突然止まった。

 

「まさか――あなた達、カパルディを階段から突き落としたのですか!?」

 

 教授の顔は真っ青だった。階段の下ではカパルディが無口な少年の肩を借りて立ち上がっていた。状況は、見るに明らかだった。

 

「グリフィンドールから、更に20点減点!」

「そんな!」

 

 ブリッグズを始めとしたグリフィンドール生たちは猛抗議するが、教授は聞く耳を持たなかった。この学校の多くの教授たちとは違い、マクゴナガル教授は公平な方だ。だから自分の寮の生徒に非があるような事件が起きても、容赦なく減点する。

 

「あなた達の罰則についてはまた後日話します。まずは寮に帰りなさい! さ、カパルディ。マダム・ポンフリーのところへ参りましょう」

 

 グリフィンドール生たちは教授の前でこれ以上いざこざを起こす気にはならなかったようだが、こちらを恨みがましく睨みつけてから渋々去っていった。

 

 教授がカパルディと医療塔へ向かった後、教授をここに連れてきた女子生徒がこちらに近づいてきた。

 

「入学してまだ一週間も経ってないのに、大変ね」

「そうだな。助けてくれてありがとう」

 

 俺が焦げた教科書などを拾っている間、女子生徒と話し始めた。

 

「バーテミウス・クラウチだ」

「お噂はかねがね。私はオードリー・オズワルドよ、よろしく」

 

 オズワルドはバーティを貴族扱いして茶化してから自己紹介をした。オズワルド家は確か聖28族ではなかったものの、そこそこの純血一族だったはずだ。

 

「まったく、この関係どうにかならないかなぁ。目が合えばすぐに喧嘩なんて疲れない?」

 

 彼女の懸念は最もだろう。ほとんどの第三者は、グリフィンドールとスリザリンに良好な関係を築いてほしいと願っているだろう。これ以上の争いは不毛だと。だが――

 

 

「疲れるけど、仲良くなるよりはマシだろうね」

 

 

 俺はそうは思わない。




オズワルド家

聖28族ほど歴史があるわけではないが、そこそこ名の通った名家。クラップ家やゴイル家と同格くらい。魔法戦争では中立を保っている。
作者がでっち上げた。
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